報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「仙台での聞き込み調査」 3

2023-04-11 20:16:18 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月6日10時53分 天候:晴 宮城県仙台市青葉区愛子中央 JR愛子駅→ローソン]

〔まもなく終点、愛子、愛子。お出口は、左側です。仙山線、作並、山寺方面はお乗り換えです。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕
〔「今度の作並、山寺方面、快速の山形行きは、3番線から11時47分の発車です。進行方向後ろ寄りの構内踏切をご利用ください。……」〕

 私達を乗せた電車は、ダイヤ通りに仙台市の郊外に到着しようとしていた。
 以前は国道を走るバスで通過しただけだったが、愛子副都心構想が持ち上がるほどなので、けして寂しい場所ではない。
 単線の仙山線も、仙台~愛子間は最も本数が多い。
 その分、利用者も多い。
 なので私とリサが座った4人用ボックスシートも貸し切りにはならず、相席となってしまった。

 愛原「さあ、着いたぞ」

 低い音程でゆっくり鳴る警報機が特徴の構内踏切を通過すると、電車はすぐにホームに入った。
 今や珍しい構内踏切だが、バリアフリーの観点からすれば、この方が良いのかもしれない。
 もっとも、安全性については跨線橋または地下道の方に軍配が上がるが。
 私達が乗った電車は、1番線に到着した。
 つまり、駅舎側のホームなので、構内踏切を渡る必要は無い。

〔「ご乗車ありがとうございました。愛子、愛子、終点です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。1番線に到着の電車は、折り返し、11時20分発、普通列車の仙台行きとなります」〕

 愛子駅の改札口もSuica対応の自動改札機となっていて、そこを通過する。

 愛原「小松先生の家に行く前に、コンビニに寄るぞ」
 リサ「お土産買って行くんだね?」
 愛原「そうだ」

 駅の外に出ると……。

 愛原「……案外何も無いな」

 駅前ロータリーにはバス停とタクシー乗り場がある。
 しかし、そのロータリーの周りにはコンビニらしきものは無い。
 一応、場所だけは確認してある。
 愛子駅前大通りを南下し、少し進むと国道457号線との交差点に出る。
 作並街道と言い、旧国道48号線であり、私達が以前作並温泉から乗った市営バスもここを通った。
 現在の国道48号線はここより南にできた愛子バイパスがそれであり、旧国道は指定を外されてしまった。
 そこで、重複していた国道457号線がクローズアップされたのである。
 ……ん?前にも似たようなことを述べたような……?
 その作並街道を左折し、少し進むとローソンがある。
 というか、この近くに既に小松家がある。
 古くからの国道ということもあってか、既に周りは住宅街になっている。
 バイパスができても、未だに交通量は衰えることはない。

 愛原「あった、ここだ」

 ローソンに入り、そこで菓子折りを選んでいると、リサがまた買い食いを始めた。
 新しく引っ越す時は、なるべくコンビニから離れた所の方がいいかな……。

 愛原「全く。オマエは油断も隙も無い」
 リサ「エヘヘ……」

 リサはフライドチキンを注文して食べていた。
 私は菓子折りを購入すると、店を出た。
 それから、小松家に向かった。

[同日11時15分 天候:晴 同地区 小松家]

 愛原「着いた」
 リサ「大きい。先生の家みたい」
 愛原「さすがは校長先生まで勤め上げた人の家だ」

 私はインターホンを押した。
 すると、家の中から犬の鳴き声がした。

 リサ「おー!ワンちゃん!」

 鳴き声が高いことから、恐らく小型犬だろう。

〔「どちら様ですか?」〕

 女性の声がした。

 愛原「こんにちは。私、愛原と申します。門伝先生の御紹介で、小松先生と面会に伺いました」

 すると少し間があって……。

〔「はい、どうぞ」〕

 と、門扉の鍵が開く音がした。
 どうやら、電子ロックになっているらしい。
 うちの実家は、さすがにそんなことはない。

 愛原「失礼します」

 私とリサが家の敷地内に入った。
 そして、玄関のドアが開いた。

 チワックス「ワン!ワンワン!ワン!」

 出迎えたのはチワワとミニチュアダックスフンドのミックス犬。

 老婆「シェリーちゃん、吠えなくていいのよ」
 シェリー「ワン!」

 チワックスのシェリーは、私達の匂いをクンクン嗅ぎまくる。
 しかし、リサの匂いを嗅いだ時、どうやら何かを感じ取ったようだ。

 シェリー「…………」

 リサの匂いを嗅いだ後、ピタッと吠えるのをやめ、スススと後ずさりする。

 リサ「かわいいワンちゃんですねー!」
 老婆「でしょー?」
 リサ「おいで」

 リサが近づくと、シェリーはバタッと倒れて腹を見せ、動かなくなった。

 老婆「あら、珍しいわね?シェリーちゃんは人見知りなのに……」

 い、いや、これはきっと……。
 野性の勘で、リサには一切逆らってはイカンという判断になったのだろう。
 公一伯父さんが飼っていた柴犬のジョンも、似たような反応だったような気がする。

 小松「おい、何をしている。早くお客さんを案内せんか」
 老婆「あー、ハイハイ。ごめんなさいね。うちの人、短気で……」
 愛原「突然、お邪魔して申し訳ありません」

 私が菓子折りを差し出しながら挨拶すると、小松先生は一転して、ニコッと笑った。

 小松「愛原さん……だね。門伝君から聞いてるよ。取りあえず、向こうで話を聞こうか」

 小松先生は御年80歳ということだが、足腰はしっかりしているようだ。
 長身痩躯の老人で、頭は殆ど禿げ上がっているものの、丸いレンズの眼鏡は老眼鏡ではなく、近眼用に見えた。

 小松「おい、愛原さんがせっかく折り菓子を持ってきてくれたんだ。お茶を出してやってくれ」
 老婆「はいはい」
 愛原「真につまらぬものですが……」
 小松「いやいや、却ってかたじけない」

 私とリサ、シェリーは応接間に……って!

 愛原「いや、リサ。犬は放してやれよ?」

 リサはシェリーを抱っこしたままだった。

 リサ「だってぇ、可愛いんだもん」
 シェリー「…………」
 小松「うーむ……。郵便屋がポストに郵便を入れにくるだけでも吠えるシェリーが、ここまでおとなしくなるとは……。キミ、只者ではないな?」
 リサ「学校では『魔王様』と呼ばれています」
 愛原「おい、リサ!」
 小松「ほお……。魔王とな?……なかなか面白いコだ」
 シェリー「クーン……(ご主人、このコ、鬼ですワン……)」

 結局、リサはシェリーを抱っこしたままだった。

 リサ「人間の赤ちゃんみたいな大きさで、美味しそ……あ、いや、かわいいですね」
 愛原「食うなよ?人んちの犬を……」

 私達は応接間のソファに座り、小松先生と対面した。

 愛原「私は東京で探偵をしております愛原と申します」

 まずは名刺を差し出して、自己紹介をした。
 そして、ここに至るまでの経緯をかいつまんで話したのだった。
 詳しく話すと、機密情報をうっかり漏らしてしまう恐れがあったからだ。

 愛原「……というわけで、先生が50年前、担任教師だった3年7組の斉藤玲子さんについてお聞きしたいのです」
 小松「ふーむ……。50年前か……」

 一応、私は件の卒業アルバムをデジカメで撮影しており、それを印刷した物を持って来ている。
 小松先生はしばらく考え込んでいた。
 何しろ50年も前の話だ。
 記憶の糸を手繰り寄せるのは大変なのだろう。
 果たして、詳しい話は聞けるのだろうか?

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「仙台... | トップ | “私立探偵 愛原学” 「仙台... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事