報恩坊の怪しい偽作家!

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“アンドロイドマスターⅡ” 「台風19号接近」

2019-10-22 15:49:13 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月12日18:00.天候:雨 東京都江東区豊洲 豊洲アルカディアビル18F・敷島エージェンシー社長室]

 敷島:「……ああ、というわけで今日は事務所に泊まるよ。そっちも一応マンションの上階部分だから大丈夫だと思うけど、くれぐれも気をつけて。……そっちにはシンディがいるだろ。こっちにはエミリーがいる。てか、二海もいるだろうが。それで何とかなるだろう。……ああ、トニーにもよろしく言っといて。それじゃ」

 敷島は自分のスマホで電話していた。
 その通話を終了する。

 エミリー:「アリス博士への御連絡ですか?」
 敷島:「ああ。あいつも科学館に泊まり込むかと思いきや、しっかり帰ってやがる」
 エミリー:「それはそうですよ。お坊ちゃまがいらっしゃいますから」
 敷島:「トニーも一緒に科学館に泊まったら?」
 エミリー:「それは無理です。それに……」
 敷島:「それに?」
 エミリー:「科学館は低地にあるので、浸水被害を受けやすく、危険です」
 敷島:「あー、そうか。毎年防潮板が稼働するような場所だったな」
 エミリー:「そうです」
 敷島:「昔のビルの防潮板なんかは分厚い鉄板でさ、これがまたすんごく重くて、大の大人3人掛かりでようやっと運ぶような有り様なんだ」
 エミリー:「多分それ、私に御下命頂ければ1人で運べると思います」
 敷島:「さすがマルチタイプだ」

 と、そこへ社長室の扉がノックされる。

 井辺:「失礼します、社長」
 敷島:「ああ、井辺君。どうだった?」
 井辺:「都内のイベントは全て中止です。やはりこの台風で、例え直接影響の無い場所であっても、やはり交通機関がマヒするような状態では開催できないということで……」
 敷島:「やっぱりか。やっぱそうなるよな」
 井辺:「現状、仕事ができているのは、大阪ボカロフェスに参加しているMEGAbyteの3人だけです」
 敷島:「19号は関西地方は直撃しないからな。今回の台風はいきなり東京直撃だ。困ったもんだよ」

 するとその時、エミリーがギラリと両目を光らせ、社長室のドアを睨みつけた。
 と、その直後、バァン!とドアが思いっきり開けられる。

 鏡音リン:「しゃちょー!お弁当買って来たYo~!」
 エミリー:「鏡音リン、何度言えば分かる!?社長室に入る時はノックして入れ!」
 リン:「ごめんなさい……」(´・ω・`)

 今度はドアが2回ノックされた。

 MEIKO:「失礼します。井辺プロデューサー、ここでしたか。プロデューサーにもお弁当買って来ましたので……」
 エミリー:「MEIKO、トイレのドアじゃあるまいし、社長室のドアノックは3回だ」
 MEIKO:「アンタはいちいち細かいのよ」
 井辺:「まあまあ。MEIKOさん、ありがとうございます」
 敷島:「井辺君も泊まり込み、悪いな」
 井辺:「いえ。総合プロデューサーとして、イベントの調整などをしなければならないので……。今回の中止は本当に残念です」
 敷島:「俺達も身動きが取れないようじゃ、例え主催者側が開催するっつたってムリだよ」
 MEIKO:「プロデューサー、お弁当温めて来ますね」
 井辺:「あ、すいません」
 エミリー:「待て、MEIKO!社長のお弁当が先だ!」
 MEIKO:「アンタの火炎放射器で温めたら?」
 エミリー:「アホか!」

 口ゲンカしつつ社長室を出て行くロイド2機。

 井辺:「最近のAIは口ゲンカするようになりましたか」
 敷島:「あいつらにあっては昔からだけどな。とにかくキミは仮眠室に泊まっていいから」
 井辺:「ありがとうございます。社長は?」
 敷島:「俺はここで寝るよ。こんなこともあろうかと、空気で膨らませるベッドがある」
 井辺:「さすがですね」

〔ピンポンパンポーン♪ 「こちらは防災センターです。館内の皆様にお知らせ致します。只今、東京23区内に大雨・洪水特別警報が発令されております。これに伴い、ビル周辺の交通機関が全て停止しております。館内に残留されるテナント関係者の皆様は、お手数ですが、防災センターまで手続きの方をよろしくお願い致します。また、外は暴風雨になっており、大変危険です。不要不急の外出は控えてください。以上、防災センターからのお知らせでした」〕

 敷島:「残留者名簿の作成か。防災センターも大変だな」
 井辺:「うちは社長と私だけでよろしいのでしょうか?」
 敷島:「他に誰がいる?」
 井辺:「エミリーさんとか、うちのボーカロイド……」
 敷島:「いやいや、今のは人間オンリーだろ!俺達だけでいいよ!」
 井辺:「な、なるほど」

 しばらくしてロイド2機が戻って来る。

 エミリー:「お弁当をお持ちしました」
 MEIKO:「同じく」
 敷島:「おう、ありがとう。火炎放射器使ったか?w」
 エミリー:「使ってません」
 井辺:「社長、私は事務室で食べますので」
 敷島:「おっ、そうか。MEIKO、井辺君と一緒に行ってやれ」
 MEIKO:「分かりました」

 井辺とMEIKOが退室する。

 エミリー:「ほうれん草のお味噌汁とカットフルーツもございます」
 敷島:「そうか。でも下のコンビニ、もう棚とかスッカラカンだっだろ?」
 エミリー:「そうですね。危ないところでした」
 敷島:「一応、非常食はあるんだがな。明日の朝はさすがに非常食か?」
 エミリー:「そうかもしれません。停電しなければ良いのですが」
 敷島:「なるほどな。まあ、ここは東京湾がすぐ目の前にあるような場所だ。高潮とかの対策はしっかり取られているわけだが、洪水の対策までなっているかどうかは分からんな」
 エミリー:「いざとなったら、私が社長とプロデューサーを抱えて離脱します」
 敷島:「そういう事態にならなことを願うよ。……あ、そうだ。さっきの放送聞いたか?」
 エミリー:「残留の手続きですか?」
 敷島:「そう。お前、ちょっと行って来てくれないか?」
 エミリー:「かしこまりました。残留されるのは社長とプロデューサーだけですね」
 敷島:「そうだ。他のマネージャー達には自宅待機命令を出しておいたから、今更事務所には来ないだろう」
 エミリー:「それでは行って来ます」
 敷島:「悪いな、頼むぞ」
 エミリー:「行ってきます」

 エミリーが出て行くと、敷島は室内のテレビを点けた。
 当然ながら、どこのチャンネルも台風情報を流していた。

 敷島:「浸水はしたとしても、ビルの18階にいりゃ何とかなるだろ。もっとも、停電でもされたら孤立確定だけどなw」

 敷島はニヤッと笑うと、幕の内弁当を口に運んだ。

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