報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「師匠の災難と弟子」

2015-04-01 16:51:17 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月4日07:00.長野県某所・マリアの屋敷 稲生ユウタ&マリアンナ・スカーレット]

「おはようございます……」
 ユタは欠伸をしながら起床した。
 大きな屋敷にユタとマリアだけだが、当然部屋は別々だ。
 しかも、マリア自身は命令を解除しているとのことだが、使役している人形達の警戒が厳重である。
 ご丁寧に、『ご主人様をヒモ男から防衛隊』のたすきまで着けている。
 朝の身支度の後で、ダイニングに向かう。
「今日は何をしましょう?」
「師匠が帰ってくるまで、英会話のレッスンだな」
 弟弟子の言葉に、ニッと笑って答える姉弟子。
「たはは……。いつになったら、魔法を教えてくれるんでしょう?」
「今日は師匠が帰って来るから、それからだろう。ま、師匠のことだから、しばらく英会話レッスンとでも言うと思うな」
「マジですか……」
 緑色の長い髪をツインテールにしたミカエラが、ピッとテレビを点けた。

〔「えー……繰り返し、お伝え致します。雲羽百三氏、ついに自ら妙観講本部にデモです」「我々はァ!法華講武闘派被害者の会である!本日ゥ、ここにィ、正法折伏とは『法に正らば折って伏す』の言葉通りィ、折って伏された者の恨み節を届けにィ……」〕

「チャンネル変えますね」
「ああ」

〔「ちょっと困ります!勝手に取材は……」「“んっ?”さん!実は法華講員だというのは本当なのでしょうか?」「一言お願いできますか!?もし法華講員なら、大沢克日子さんとの論争は謗法になると思うんですが!?」「失礼します!」〕

「これも面白くない」

〔「沖浦さん、スキーに行くと見せかけてラブホテルに行っていたというのは本当なのでしょうか!?」「あなたね、そんな取材して何が楽しいんですか?怨嫉謗法はやめなさい」「お相手の方について、一言お願いできないでしょうか!?」「ジムの生徒さんだという噂もありますが!?」「長野県にはね、淫行条例なんてものは存在しないんです。御書よりも法律の方、勉強しなさいね。御書でも明らかです。『佐藤殿御返事』にも書いてあります。あなた達、御書読めませんねー!」〕

「……何で僕がいた宗派は、こんなスキャンダラスなんだ?」
「さあ……」
 ユタはもう1度、チャンネルを変えた。

〔「……昨日、ロンドンのヒースロー空港を飛び立った航空機が行方不明になっている件につきまして、航空会社からの記者会見が……」〕

「え?」
「ん!?」
 息を呑む2人。
 ロンドン・ヒースロー空港発、東京・羽田行きの飛行機がヨーロッパ圏内で行方不明になったという。
 実際に墜落したのか、そういうことは今も尚調査中とのこと。
「え……?どういうこと?」
「し、師匠……?」
「イリーナ先生が乗った飛行機ですか?」
 ニュースでは仕切りに航空会社と便名を告げている。
 マリアは部屋から予定表を持ってきた。
 イリーナが今日、日本に戻るという予定になっていたが、イギリスから乗る飛行機については……確かに航空会社と便名が行方不明機と一致していた。
「マジですか!?」
「う……そ……?」
「どどど、どうしよう!?僕まだ魔法教わってないのにーっ!」
 力無く椅子に座り込むマリアと、頭を抱えるユタだった。
「い、いや……。きっと師匠のことだから……もし仮に……飛行機が墜落したとしても、直前で脱出するとかして、きっと無事なはず……」
「そ、そうか!今、交信したら出たりして?」
「なるほど」
 マリアは自分の水晶球を持ってきた。
「師匠!師匠!マリアンナです!応答願います!」
(呼び掛けが、無線機みたい……)
 と、ユタは思った。
「師匠!応答してください!」
 しかし、応答は無かった。
「電源入ってますか?」
「ケータイじゃない!」
「す、すいません……。何か、無線みたいな呼び掛けだったからぁ……」

 その後、航空会社から行方不明者リストが発表されたが、そこにイリーナの名前があったことで、更に自体は悪化した。

[4月5日09:00.同場所 ユタ、マリア、エレーナ・マーロン]

〔「……引き続き、対策本部前から中継でお送りします。……」〕

 同じくテレビのあるリビングルームで夜を明かした2人。
 結局、機体は全く発見できなかったという。
 いきなりレーダーから消えて、それっきりとのこと。
 レーダーから消え去った付近を捜索したが、墜落の跡は全く見られなかったらしい。
 本当に、忽然と消えてしまったのである。
 ロシア上空で、まるで魔法を使ったかのように消えたことから、もしかしてイリーナが何かしたのかと思ったが、マリアにもユタにも全く見当が付かなかった。
 例えば機内でハイジャックが起きたにせよ、それでイリーナが飛行機ごと消す理由にはならないはずだ。
 エンジントラブルで墜落が免れなくなったとしても、イリーナはこういう時、自分1人だけ脱出するタイプなので、飛行機ごと消えることもあり得ない。
 実は昨日からイリーナと旧知の魔道師が何名か状況確認の電話を掛けてきたのだが、当然こちらは何も答えることはできなかった。
「マリアさん、何か食べましょう」
「……食べたくない」
「昨日からも、殆ど寝てないじゃないですか。今頃、大師匠様のお耳にも入っているはず。イリーナ先生と旧知の魔道師先生方も動いて下さるみたいですし、きっと大丈夫ですよ」
「…………」
 と、その時、玄関の呼び鈴が鳴らされた。
「あっ、もしかしたら先生がひょっこり帰ってきたりして」
「……そんな感じはしないが……」

「お届けものでーす!」
 やってきたのはエレーナだった。
 マリアのよりはオレンジに近い金色でウェーブの掛かった髪を背中まで伸ばし、白いブラウスに黒いベストとスカートをはいている。
 とんがり帽子ではないものの、黒い帽子を手にしているところは、ホウキに跨った魔女を思い浮かばせた。
「まだ、“魔女の宅急便”やってるのかい?」
 ユタはびっくりした様子だった。
「これはイリーナ師から預かっただけよ。私もポーリン先生について、イギリスに行ってたからね」
「あっ、そうなんだ」
 エレーナが持ってきたのは、1つの小箱。
 開けると1本の古い鍵と、手紙が出て来た。

 

 手紙によると、
「……あの師匠が切羽詰ってる!?」
「えっ?」
「あの、のほほんとしたイリーナ師が?」
 手紙によると、マリアはもうすぐ25歳の誕生日を迎えるという。
 大いなる敵がマリアを狙っていて、その時まで身を隠せというものだった。
「これは一体……?」
「まあ、確かに……色々因縁はあるけどね」
 エレーナは首を傾げた。
「何が?」
「魔法使いも因果なものでね、そういう数字に取り憑かれることもあるのよ。例えば、“魔女の宅急便”みたいに13歳になったら……とかさ。大抵はどういうわけだか奇数が多い。25歳というのは初めて聞いたね。15歳の間違いじゃないの?」
「いや、25歳って書いてあるし、確かに私の誕生日は近い」
「んん?」
 ユタは首を傾げた。
「エレーナは25歳になった時、何かあった?」
 その調子でユタが聞くと、
「えーとね……って、コラッ!ここじゃ、1番年下だぞっ!!」
「嘘だぁ。僕よりは上でしょ?」
「とにかく、師匠に何かあったのは間違いない。この鍵は魔界の、師匠が拠点にしている所の鍵だ。要はここに行けってことだろう」
「なるほど。行ってみましょう」
「私は25歳が何なのか調べておくよ。いずれ私も通る道かもしれないしね」
「もう通ってるだろ」
 マリアがニヤッと笑った。
「うっさい!オマエの彼氏寝取るぞ!!」
「ははは……(笑)……えっ!?」

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