報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「深夜帯の帰宅」

2022-05-31 20:20:17 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月5日21:23.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、大宮です。上越新幹線、北陸新幹線、高崎線、宇都宮線、京浜東北線、埼京線、川越線、東武アーバンパークラインとニューシャトルはお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。大宮の次は、上野に止まります〕

 郡山以南から先、列車は“やまびこ”号最高速度の時速275キロで走行した。
 その為か、暫定ダイヤの上では定刻通りに運転できた。
 自由席はゴールデンウィーク期間中ということもあってか、満席状態である。
 仙台始発の列車に乗って良かったと、勇太は改めて思った。
 これがイリーナと一緒だと、グリーン車に乗れるのだが。

〔「まもなく大宮、大宮です。14番線に到着致します。お出口は、左側です。東北地方雨の為、本日、車内での傘の忘れ物が多く発生しております。大宮でお降りのお客様、お忘れ物の無いよう、ご注意ください。大宮からのお乗り換えをご案内致します。上越新幹線下り……」〕

 東北地方では雨に降られたが、関東に入るとウソみたいに晴れていた。
 車窓からは月が見えるくらいだ。
 車窓から『カニトップ』の看板が見えてくる頃、下車の準備をすると良い。
 勇太もそうした。

 勇太:「降りようか」
 マリア:「うん」

 人形達は分かっているように、バッグの中へと入って行く。
 そして、列車は新幹線上り本線ホームに入線した。

〔ドアが開きます〕

 閉扉の時はガチャンと賑やかに閉まるのに対し、開扉の時はゆっくり開く。

〔「ご乗車ありがとうございました。大宮ぁ、大宮です。車内にお忘れ物の無いよう、お降りください。14番線の電車は、“やまびこ”“つばさ”190号、東京行きです。次は、上野に止まります」〕

 列車を降りる。
 案外、あまり大宮駅で降りる乗客はいなかった。
 なので、自由席はまだまだ乗客が多い。
 2人がエスカレーターを下りている間、ホームからは発車ベルが鳴り響いた。
 今や大宮駅で唯一の発車ベルが流れるのが新幹線ホームである。

 駅員:「前から乗車券が出てきまーす!乗車券のお取り忘れにご注意くださーい!」

 だいぶチケットレスが進んだと思われるが、多客期はまだ紙のキップで乗る客が多いのだろう。
 普段は大糸線以外、Suicaで乗る勇太とマリアもそうだった。
 もちろん、この2人は取り忘れることはない。
 在来線コンコースに移ると、今度は京浜東北線ホームに向かう。
 西側にある新幹線乗り場から、東側の京浜東北線乗り場に行くのは大変だ。

 勇太:「因みに、ここにも本屋がある」

 改札内コンコース上にも、書店がある。
 改札内コンコースには書店が3つあるが、そのうち南側コンコースの京浜東北線乗り場近くの店舗が最も規模が大きい。

 マリア:「閉まってる」
 勇太:「日曜・祝日は閉店時間が早いみたいだね」

 試しにマリアが水晶玉で占うと、ここにもマリアが気になる本が置いてあることが分かった。

 マリア:「なるほど。こういう所にもある時はあるのか」
 勇太:「明日、また来てみる?」
 マリア:「いや、また今度でいい」
 勇太:「そう」

〔まもなく2番線に、当駅止まりの電車が到着致します。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。次は、さいたま新都心に止まります〕

 階段を下りると、次の電車が入線してくるところだった。

 勇太:「ちょうどいい。これに乗ろう」

 パァァァンと電子警笛を鳴らして、電車が入線してきた。

〔「終点、大宮、終点、大宮です。ご乗車ありがとうございました。2番線は21時42分発、各駅停車の大船行きです」〕

 到着した電車の先頭車、1号車に乗り込む。
 平日よりは空いている時間なのは間違いない。

〔この電車は京浜東北線、各駅停車、大船行きです〕
〔This is the Keihin-Tohoku line train for Ofna.〕

 勇太:「21時42分か。これに乗ったって、母さんに連絡しておこう」
 マリア:「さすがに遅いって言われるか?」
 勇太:「終電だったり、そもそも終電ですらなかったりしたら言われるだろうね。でもまあ、これは終電じゃないし」

 京浜東北線の南端部である大船に行く、最終電車というわけではない。
 大船行きは、この後もまだ何本かある(そもそも大船に行く乗客は、基本京浜東北線には乗らない)。
 ここでもマリアは、ブルーの座席に腰かけると、またあの本を広げた。
 発車時間前に母親の佳子から返信があったが、その内容が……。

 佳子:「それじゃ、22時過ぎるわね。気を付けて帰って来て。マリアちゃん、高校生に見えるからお巡りさんに職質されないように」

 という内容だった。
 それを見た勇太は、マリアを見た。
 ローブは着ているが、その下が制服ファッションな所なのを見て……。

 勇太:(そろそろこの恰好、やめてもらった方がいいかな……)

 確かに時間帯によっては職質されやすいし、飲食店などでアルコールを注文しにくいというデメリットはあるが、魔女狩りの目は誤魔化しやすい(魔女狩りも、まさか魔女がJKの制服を着ているとは思わない為)。

[同日21:58.天候:晴 埼玉県蕨市 JR蕨駅→同県川口市 稲生家]

〔まもなく蕨、蕨。お出口は、右側です〕
〔The next station is warabi.JK41.The doors on the right side will open.〕

 

 勇太達はようやく実家の最寄り駅に到着した。

〔わらび、蕨。ご乗車、ありがとうございます〕

 この辺りでは、電車は1号車寄りほど混んでいる。
 1つ手前の南浦和駅では、南側にしか階段・エスカレーターが無いからである。
 実際、空いている時間帯なのにも関わらず、先頭車は満席になるほど乗客が多かった。
 そして出て行く電車を見ると、後ろの車両は空いていた。

 勇太:「危ないから、表通りを通って帰ろう」

 試しに駅前の交番の前を通ってみたが、特にマリアが警察官から職質されるようなことはなかった。
 もっとも、警察官は別の訪問者の応対(道案内か落とし物)をしていたからというのもあるだろうが。

 勇太:「うん。こっちは晴れてていいね」
 マリア:「だけど、少し湿っぽい」
 勇太:「まあ、確かに。5月くらいから雨が多くなる年なのかな」
 マリア:「日本の雨期はジメジメしていて、そこだけは苦手だね。夏は屋敷にいた方がいいかも」
 勇太:「そりゃそうだ。今はまだ涼しいから、マシな方だね」

 あとは、明日のことを話しながら家に帰った。
 明日は平日だが、魔道士達は今週末までここにいる予定である。

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