報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「かつて『仙台の奥座敷』と呼ばれた場所で」 3

2024-02-05 21:07:12 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月25日18時00分 天候:雪 宮城県仙台市青葉区作並元木 鷹泉閣岩松旅館・客室→夕食会場]

 いやあ、若いって凄いねぇ。
 2時間ブッ続けてプールで遊べる体力を持っているんだ。
 私はクタクタだよ。

 愛原母「リサちゃん、水着はちゃんと乾かしておくのよ?いくら真冬でも、濡れたままだと臭いが残ったり、カビが生えたりするからね?」
 リサ「はーい!」

 リサは水着を入れているバッグの中から、虎柄のビキニを取り出した。

 母「学!あなたもよ!ちゃんと水着は乾かしておきなさい。そこでグダッてないで!」
 愛原学「へーい……」

 私は疲れた体に鞭打って起き上がろうとした。

 リサ「先生!わたしが先生の水着も乾かしといてあげる!」
 学「そ、そうか?悪いな」
 母「あらあ?リサちゃん、偉いわねぇ」
 リサ「当然だっちゃ!うちはダーリンの妻だっちゃ!」

 リサは自分の虎柄ビキニのブラを自分の胸の前に持って来て言った。

 母「あ、ああ……。それもそうだったわね……」
 父「学ぅ!ちゃんと責任取るんだぞ!」
 学「父さん!」

 リサは自分の水着と私の水着をハンガーに掛けて、暖房の風に当たる場所に掛けた。

 リサ「それよりお腹空きました!」
 母「そうね。もうこんな時間」
 父「雪も降って来たな。こりゃ雪見酒だ」
 母「夕食会場へ行きましょう。確か、バイキングだったわね」
 学「そう」
 リサ「バイキング!?」

 それを聞いたリサ、居ても立ってもいられなくなったようだ。

 リサ「行きましょう!今すぐに!」
 学「さすがはリサだな」

 私は別の部屋にいる高橋の部屋に内線電話を掛け、夕食に誘った。

 学「お前達も浴衣に着替えたか?」
 高橋「こういう所じゃ、こういうのに着替えてナンボだっていう先生の教えです」
 学「え?俺、そんなこと言ったっけ?」
 高橋「言いましたよ」
 学「そ、そうか」

 すっかり忘れてしまった。
 エレベーターに乗り込み、夕食会場に向かう。

 リサ「お肉の焼ける、いい匂い」

 リサは早速、肉の匂いを嗅ぎ付けたようである。
 夕食会場に着くと、席に案内される。

 学「よし、早速取ってこよう!」
 リサ「おー!」
 父「飯もいいが、酒はどこかな?」
 母「全く。……今夜だけは、私も付き合うわよ」
 父「おおっ!」

 案の定、リサは肉料理を中心に持って来た。
 牛肉のステーキとか、牛タンとか……。

 リサ「いただきまーす!」

 特に焼けた鉄板の上で、客が自分で焼くタイプの物だが、リサは焼ける前、殆ど半生の状態で口に運んだ。
 人間であれば、あまり好ましくない食べ方だ。

 リサ「先生、肉は生っぽい方が美味しいよ?……ほら。この血の滴る感じがとても美味しそう……!」

 リサは牙を覗かせてニヤッと笑った。

 学「俺は人間だから、ミディアムレアで食べさせてもらうよ」

 確かにウェルダンにすれば食中毒の心配は殆ど無いが、その分、肉汁は無くなり、軟らかさも失われてしまう。
 私もそれは味気無いと思う。
 そもそも歳を取ってきて、歯に自信が無くなってきたとなると、やはり硬い物はちょっとと思う。
 そうなると、やっぱりミディアムレアがちょうど良いのではないかなと思う。
 肉の内側に赤身は残るものの、熱は通っているので、それに弱い食中毒菌は死滅するか、弱らせることができるという。

 リサ「そーお?」
 学「お前も、人間に戻れば分かるさ」
 リサ「ふーん……」
 父「お?2人は肉か?若いっていいな!」

 戻って来た両親は、刺身などの魚料理が多かった。

 学「いや、俺も寿司は取ってるよ」
 父「そうか?ところで、酒は飲み放題じゃないんだなー?」
 学「それまで飲み放題にすると、父さんが飲み過ぎるからダメだって、母さんからNGもらったんで」
 父「そんなぁ!」
 母「ダメです!ただでさえ、病院の先生から自粛するように言われてるのに!」
 学「それじゃダメだ」
 父「大学病院の先生、厳しいんだよ~!」
 学「町医者じゃ埒が明かなかったからって、大学病院を紹介されたんだよね?」
 父「そこに通ったおかげで、酒が解禁されるほどに良くなったんだ」
 母「で、調子に乗り過ぎて、また飲み過ぎて、再び制限よ。バッカじゃないの」
 父「学ぅぅぅ!」
 学「いや、俺に言われても困る」
 リサ「そうなんですよ。先生、うちでも結構飲むんで」
 母「リサちゃん。しっかり、学のお酒の監視はするのよ!?」
 リサ「任せてください!」
 学「リサぁ!」
 リサ「さてっ、お代わり行ってこよ!」

 リサは再び料理が並んでいる場所に向かって行った。

[同日20時00分 天候:雪 同旅館・客室→大浴場]

 父「の、飲み過ぎたー!」
 母「だから行ったじゃない!もうっ!」
 学「ハハハ……」

 さ、さすがの私もここまでグロッキーになったりはしないぞ!
 部屋に戻ると、畳敷きの部分に布団が2組敷かれていた。

 リサ「先生、布団くっつけていい?!」
 学「おいおい!」
 母「ホホ……くっつけてはいいけど、同衾はまだダメよ?」
 リサ「えー……」
 母「ちゃんと、成人してからにしなさい」
 リサ「むー……」
 母「返事はどうしたの?」
 リサ「は、はい……!」

 凄い、うちの母さん!
 学校では魔王扱いされてるリサをいなしている!
 というか、成人年齢18歳に引き下げられたから、17歳のリサはあと1年なんだけどな。
 リサの誕生日は10月1日だから……。

 学「母さん、俺達、まだ風呂入ってないから、入ってきていいかな?」
 母「もちろん、行ってきなさい。私はもう入ったし、お父さん看てないとだから」
 学「そうだねぇ……」
 母「鍵、持ってってよ?」
 学「分かったよ」

 父さんは既にベッドに横になって、鼾をかいている。
 母さんは部屋のテレビを点けたが、それでも父さんは起きそうにない。

 母「あ、そうだ、リサちゃん」
 リサ「はい?」
 母「髪が少し伸びたでしょ?その長さだと、お湯に髪が浸かるから、上げた方がいいわ。ちょっといい?」
 リサ「はい」

 母さんはリサの髪を上げてお団子みたいにした。
 何だか、時代劇に出て来る町娘のようだ。
 女の鬼でそんな髪型しているのは恐らくいないと思われるので、逆に普通のおかっぱ頭よりかは、より人間に近い雰囲気に見えた。
 そうなると、リサがもっと可愛く見えるから不思議だ。

 母「これなら、お風呂に入っても、髪が浸かることはないから」
 リサ「おー!ありがとうございます!先生、行こう!」
 学「あ、ああ……」

 私は高橋達を誘うと、大浴場に向かった。

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