報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「青い目の人形」 蕨~大宮

2021-07-08 16:08:52 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月28日06:56.天候:曇 埼玉県蕨市 JR蕨駅→京浜東北線570C電車10号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の2番線の電車は、6時59分発、各駅停車、大宮行きです。次は、南浦和に止まります〕

 宮城県北部にある稲生の親戚宅に向かう為、実家を出た稲生。
 マリアはその後ろをついてくる。

 稲生:「いつもの癖で改札口をSuicaで通過してしまう所だったけど、もうこの駅からキップだからね」

 乗車券は蕨駅からくりこま高原駅まで、新幹線特急券は大宮駅からくりこま高原駅まで。
 それぞれ区間が違うので、1枚に纏められて発券されることはなく、1枚ずつ発券されていた。

 マリア:「うん……」

〔まもなく2番線に、各駅停車、大宮行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。次は、南浦和に止まります〕

 稲生:「どうしたの?あまり元気無いね」
 マリア:「昨夜見た夢なんだけどね、『マリアンナ』って、私に似てるの」
 稲生:「へえ、そうなんだ!」
 マリア:「まるで、私をモデルにして作ったみたい」
 稲生:「そうなんだ。それなら、ますます会いたくなってくるなぁ!」

 稲生はテンションが上がるが、何故かマリアはテンションが下がる。

〔わらび、蕨。ご乗車、ありがとうございます。次は、南浦和に止まります〕

 電車がやってきて、ホームドアと車両のドアが開く。
 都内へ向かう方はとても賑わっていたが、逆方向は空いている。
 先頭車に乗り込むと、ブルーの座席に座った。

〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 蕨駅2番線の発車メロディーは、“Jupiter”。
 特に平原綾香氏とは、関係の無い駅なのだが。
 駆け込み乗車も無かったが、電車はすぐにドアを閉めて発車した。

〔次は、南浦和です〕
〔The next station is Minami-Urawa.JK42.〕

 マリア:「私は少し怖い」
 稲生:「どういうこと?」
 マリア:「私が人形遣いだからそう思うのかもしれないけど、あまり本人に似すぎる人形というのは、逆に危険だから」
 稲生:「危険?危険とは?」
 マリア:「……考え過ぎかな」
 稲生:「?」
 マリア:「そういう勇太は?何だか嬉しそうだけど?」
 稲生:「僕も夢を見てね。マリアによく似た小さい女の子が出て来たんだ」
 マリア:「よく似た?」
 稲生:「あれはきっと、僕とマリアの間のできた娘だよ。マリアに似て可愛かったなぁ……」
 マリア:「! そうか……」
 稲生:「ん、どうしたの?」
 マリア:「やっぱり女の子か……」
 稲生:「男の子がいいの?」
 マリア:「いや、そういうことじゃなくて。『魔女が魔女を産む』って言葉があるんだ。だから、女の子なんだなって」
 稲生:「初めて聞いたね、その言葉」
 マリア:「子供を産まない魔女には関係無いからね。私も大師匠様の本を読んでて、やっと見つけたくらいだから」
 稲生:「大師匠様の言葉なんだ」
 マリア:「そういう勇太の所は?勇太の所の宗教では、何て書いてあるんだ?」
 稲生:「法統相続のこと?まあ、『妻子ある者は、その妻子にも教化しなさい』って感じかな」
 マリア:「うん、絶対ヤダ」
 稲生:「言うと思った」

 なので独身者には法統相続の義務は無いし、法統相続の為に無理に結婚することはないということだ。
 んっ?さん、ありがとうございます。
 恐らく、顕正会の『一家広布』という概念は法統相続から来ているのだろう。

 稲生:(少し元気になったかな……)

[同日07:12.天候:曇 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、大宮、大宮です。1番線に入ります。お出口は、左側に変わります。ホーム進入の際、電車が大きく揺れる場合がございます。お立ちのお客様は、吊り革、手すりにお掴まりください。また、電車とホームの間が広く空いている所がございます。お降りの際は足元に、ご注意ください。ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、大宮です」〕

 相変わらず空はどんよりと曇っている。
 クソが付くほど暑いわけではないのだが、湿気は多く、吹く風も湿気を多分に含んで、吹く度に体に纏わりついて離れない。
 今日はそんな気候だった。
 電車はそのような中、北の終点駅に到着した。

〔大宮、大宮。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 因みに電車とホームの間が広く空いている所というのは、8号車から10号車辺り。
 ここが少しカーブしている為。

 稲生:「なるほどねぇ……」

 階段を登ってコンコースに上がる。
 1番北寄りの階段は登った所に仮囲いがある為、少し通路が狭くなっている。
 そこに朝ラッシュの乗客達が通ろうとすると、渋滞が発生しやすい。

 稲生:(何か違和感がある……)

 その違和感の出所を探してみると、コンコース上にはコロナ禍ながら団体旅行を決行する人々がいた。
 中距離電車ホームに向かうことから、そのホームに団体列車でも止まっているのだろうか。
 鉄ヲタとしてちょっと見に行きたい衝動に駆られたが……。

 マリア:「!!!」

 マリアばビクッと体を震わせて、着ていたローブのフードを一気に深く被った。

 稲生:「マリア?!」

 稲生はマリアの行動にびっくりした後、その団体を見た。

 稲生:「あれは……?!」

 その団体は、どうやらキリスト教関係者らしかった。
 一部の者は旗を持っていて、その旗には『神の御許に』と書かれていた。
 もちろん、キリスト教団の全てが魔女狩りを肯定しているわけではないし、逆に今現在は殆どが否定しているだろう。
 しかし中には、ダンテ一門のような魔道士達の存在を知っている一部の教団が魔女狩りを行っているのもまた事実であり、どの教団がそうなのかが分からない為、結局魔道士側としては全ての教団を警戒せざるを得ないのである(例えその教団は直接行ってはいなくても、友好団体に魔女狩りを行っている所があり、そこと懇意にしている場合、リークされる恐れがある)。

 稲生:「本当は僕も狩られる側なんだろうけど、同時に狩る(破折する)側でもあるんだよなぁ……」
 マリア:「そんな中途半端な立ち位置、勇太だけだよ」

 マリアは俯きながら稲生の後ろに隠れ、そう言った。

 稲生:「そりゃそうだ。……よし、行ったな。マリア、今のうちに行こう」

 キリスト教団が臨時ホームのある7番線ホームに下りて行った。
 それを見計らい、勇太達も通り過ぎる。
 階段の上からチラッとホームを見ると、185系らしき車両が停車していた。

 稲生:「定期運用から外れた185系でどこかに向かうのか。鉄ヲタとしては羨ましい」
 マリア:「まさか、行き先同じじゃないよね?」
 稲生:「それは無い。185系は直流専用電車だから、最北でも黒磯駅までしか行けないよ。高崎線だったら……水上くらいまでかな。いずれにせよ、宮城県まで行くことは無いから大丈夫」

 と、稲生は大きく頷きながら言った。

 マリア:「それならいいけど……」
 稲生:「急いで新幹線乗り場に行こう。さすがにそこにはいないでしょ」
 マリア:「うん」

 2人の魔道士と魔女は、足早に新幹線改札口へ向かった。

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1 コメント

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つぶやき (雲羽百三)
2021-07-08 20:13:53
 見合い相手が5歳年上のバツイチ子持ち、元・上祐追っかけギャルだった件について。

 オウム真理教がバカ騒ぎしていたのが、私が中学生の時。
 上祐追っかけギャルは当時の20代女性が多かったらしいが、一部に10代のJK・JDもいたもよう。
 そのJKだったか。

 娘さんは可愛かったんだがな、残念だ。
 
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