報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「帰省初日の夜」 2

2022-07-18 11:45:18 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月10日20:00.天候:晴 埼玉県川口市前川 イオンモール川口前川3F]

 1Fのレストランで食事を終えた稲生達だったが、そのまま帰らず、買い物をすることにした。

 勇太:「ゴルフで疲れてるのに、大丈夫?」
 宗一郎:「普通なら先に帰らせてもらうところだが、今回は少し付き合わせてもらうよ。何しろ今回の買い物は、一見の価値がある」
 勇太:「一見どころじゃないよ」
 宗一郎:「だろうな」

 稲生親子がこんな会話をする理由は、ちゃんとあった。
 稲生家の面々が来ているのは、モール内にある呉服店。
 そこで佳子は、マリアに浴衣を買ってあげようというのだ。

 佳子:「緑系がいいの?」
 マリア:「契約悪魔の関係で、緑色の物を身に着けていないといけないんです」

 今のマリアは白いシャツに下はデニムという、おおよそ魔女とはかけ離れた姿をしているが、それでもカチューシャは緑色の物を着けている。

 勇太:「マリアくらいだと似合うんだよ。これがイリーナ先生くらいになると……ちょっとねぇ……」
 宗一郎:「『かわいい子は何を着ても似合う』とはいうが、イリーナ先生みたいにお美しい方だと、逆に着れるものが限定されるか」
 勇太:「そういうことになるね」

 ローブを着ているから分からないが、イリーナもローブの下はイブニングドレスのような姿である。
 つまり、案外露出は高い。

 店員:「よくお似合いですわ!」
 佳子:「本当ねぇ!」
 宗一郎:「本当だねぇ」
 勇太:「……!」(←一瞬、AVの『浴衣もの』を思い出して打ち消す勇太。健康な男子である)
 マリア:(これは……!)

 マリアは試着室の姿見を見て思った。

 マリア:(これじゃ、勇太のPCに入ってたポルノ女優と変わらんな……)

 勇太のPCの中に、ミア・マルコヴァのポルノ動画が入っているのを見て、マリアは勇太を屋敷から追い出しそうになったことがある。
 日本のAV会社とタイアップしたのか、浴衣を着て【ぴー】するシーンがしっかりと収められていた。
 その為、勇太のノートPCは、Windowsシリーズが変わる前に買い替えを余儀無くされるのである(ブチギレたマリアに壊される為)。

 佳子:「どう?マリアちゃん」
 マリア:「Well...いいと思います」
 佳子:「それじゃ、これにします」
 店員:「ありがとうございます。それでは、一度お着替えをお願いします」

 再び試着室のカーテンが閉まって、マリアは浴衣を脱いだ。

 マリア:「!」

 その時、鏡に現れたもう1人の自分。
 それはこの浴衣を着ているが、あられもない姿になって、勇太と立ちバ【ぴー】しているシーンだった。

 マリア:「ベタ過ぎる未来を予知してしまった……」orz
 勇太:「マリア、大丈夫?」
 マリア:「うん……大丈夫」

 マリアは急いで浴衣を脱いだ。
 このまま着ていると、自分もムラムラしてしまいそうな気がしたからだ。

 マリア:「お待たせしました」

 マリアは私服に着替えると、試着室を出た。

 勇太:「どうしたの、マリア?顔と耳が赤いよ?」
 マリア:「何でもない……」
 宗一郎:「今頃酔いが回って来たかね?」
 マリア:「そうかもしれません」

 夕食の時にワインを何杯か飲んだマリア。
 ワインやウィスキーくらいでは悪酔いしないマリアだったが、アルコール度数が半端ではないテキーラやウォッカはともかく、同じアルコール度数の日本酒や焼酎は少量でもすぐに悪酔いするのだった。
 尚、泡盛や紹興酒は不明。

 宗一郎:「それじゃ、そろそろ引き上げるとしよう。勇太、タクシーを呼んどいてくれ」
 勇太:「分かった」

 勇太は先に1階に降りると、タクシー会社へのホットラインが設置されている場所に向かった。
 そこから、宗一郎の手持ちのタクシーチケットが使えるタクシー会社へ電話した。

 勇太:「10分くらいで来るって」
 宗一郎:「そうか。トイレ休憩を挟む余地はあるな。ちょっと行って来る」
 マリア:「私も行きます」

 宗一郎とマリアがトイレに向かう。

 佳子:「明日はどこか行くの?」
 勇太:「いや、特には……。強いて言えば、銀行とコンビニと駅くらいかな。全部、近所で完結w」
 佳子:「そうなの。母さん、明日は夕方まで出掛けるから」
 勇太:「そうなの?」
 佳子:「出掛ける時は、ちゃんと戸締りするのよ?」
 勇太:「分かったよ」

 それからタクシーが着て、稲生家の面々はタクシーに乗り込んだ。
 宗一郎が助手席で、あとの面々はリアシートに座る。
 タクシーは前に止まっているバスを追い抜いて、イオンモールを出発した。

[同日22:00.天候:晴 同市内 稲生家]

 マリアは稲生家にいる時は、1階の風呂は使わず、3階のシャワールームを使う。
 これは稲生家がさいたま市にあった時から、そうしていた。
 そもそも広い家とはいえ、浴室とは別にシャワールームがある理由は、さいたま市時代は切実な理由であった。
 これを語るだけで何話分を使わないといけないので、省略させて頂く。
 今の家にシャワールームがあるのは、その時の名残だ。
 今はマリアが使うので、ゲストルーム用に設置しているというのが理由である。

 マリア:(イブキがいた頃の名残か……)

 シャワーブースから出て、バスタオルで体を拭く。
 それから夜着に着替えてる間、稲生家のシャワールームの謂れについて思い出していた。
 今では勇太の契約上の使い魔とされている妖狐の威吹邪甲。
 かつては勇太の盟友で、さいたま市時代の稲生家に長期に亘って逗留していた。
 その頃の勇太の魔力(霊力)はとても不安定なもので、威吹もそれを狙って勇太と盟友の契りを結んだようなものであるが、もちろんそれは他の妖怪達も同じであった。
 威吹がブロックしていたが、それでもそのブロックの隙を突いて襲撃してくる者もいた。
 詳しい経緯については省くが、その影響で、一時期稲生家の風呂が使えなくなった時がある。
 ただの故障とか損壊ではなく、『霊障』によるものである。
 その為、苦肉の策としてシャワールームを増設せざるを得なくなったという経緯がある。
 その名残が、今でも続いているのだ。
 もちろん、今では風呂は普通に使える。
 霊障など全く無い。

 マリア:(風呂に入れなくしたヤツの言い分が、『威吹に恨みがあるから』じゃ、あいつも居心地悪かっただろう……)

 白いTシャツと緑色のショートパンツに着替えると、マリアはゲストルームに戻った。
 すると、テーブルに置いた水晶玉がボウッと光った。

 マリア:「はいはい、マリアンナです」
 イリーナ:「マリア、今は屋敷の外にいる?」
 マリア:「はい。今は勇太の家です」
 イリーナ:「すると、まだワンスターホテルには行っていないわけね」
 マリア:「はい」
 イリーナ:「私もまだ魔界に行けてない。“魔の者”の妨害は無いけれど、いかんせん情勢がね」
 マリア:「“魔の者”は、私に集中しているようです。未だに私の子宮を狙っているのでしょうか?」
 イリーナ:「それは分からないわ。かつてあなたを狙っていた名残で、今でも狙っているだけかもしれないしね」
 マリア:「何だそりゃ……」
 イリーナ:「とにかく、ワンスターホテルに着くまでは油断しないように」
 マリア:「分かってます」

 今のところは、イリーナにも異常は無いようである。

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