報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「東京中央学園上野高校」 4

2018-12-04 10:20:35 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月3日11:00.天候:晴 東京中央学園上野高校1F科学準備室倉庫]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はとあるクライアントの依頼で、リサの通う中学校の同じ学校法人が運営している高校にやってきた。
 協力者としてリサの親友、斉藤絵恋の親父さんである斉藤秀樹さんが同行している。
 彼は日本でも指折りの製薬企業の経営者であり、かつては日本アンブレラの活動に協力していた。
 日本アンブレラはアメリカ本体のそれと違い、光の部分(カムフラージュとしての真面目な製薬企業の一面)を担っていた。
 だから斉藤さんの会社(全日本製薬。愛称『ゼンニチ』)が何か違法なことをしていたわけではない。
 当時は中小企業だったゼンニチ製薬が、たまたまアンブレラという大企業と取引をしていただけに過ぎない。

 日本アンブレラから科学教師として派遣されていた者がいた。
 今は転職してここにはいない。
 その転職先も『第2のアンブレラ』と呼ばれるトライセル社というのだから、どれだけマッドサイエンティストなのやら。
 宗教で言えばオウム信者が顕正会に移籍するようなものだ。
 そんな彼が秘密の研究室として使用していたのは、科学準備室の倉庫。
 勝手に改造して研究室に使用していたという所までは掴んだ。
 あとはその証拠を押さえてクライアントに提出するだけなのだが、中はものの見事にスッカラカン。
 どうやらこの学校を退職する時に、根こそぎ片付けたらしいな。

 高橋:「先生、このスイッチ、何ですかね?」

 高橋が入口近くのスイッチをヘッドランプで照らした。
 手には相変わらずマグナム44を持っている。

 愛原:「ヘタに触るな。侵入者用のトラップがまだ作動するかもしれんぞ」
 斉藤:「とはいえ、位置的に電気のスイッチっぽいですけどね」
 愛原:「あ、それもそうですね」

 倉庫内は窓が無い為に真っ暗だ。
 私と高橋の持っているライトだけが頼りだ。
 因みに私のはハンディライトであるが。

 愛原:「高橋、スイッチ入れてくれ」
 高橋:「はいっ!」

 高橋はスイッチを入れたが、うんともすんとも言わない。
 電源が落ちているのか。
 まあ、これからリニューアル工事が始まるのだから、科学室界隈は電源が落とされていても不思議は無いか。

 斉藤:「愛原さん!」

 その時、斉藤社長が私に声を掛けた。
 私が声のする方にライトを向けると、もう1つのドアの前に立つ社長の姿があった。

 愛原:「斉藤さん、それは……」
 斉藤:「ドアがもう1つあるなんて聞いてないぞ」

 しかし造りからして、準備室から入る方のドアと同じだ。
 後から付けられたわけではないだろう。

 愛原:「よし、開けてみましょう」
 高橋:「先生!もしかしたら、化け物が潜んでるかもしれません。ここは1つ、武器を持っている俺が!」
 愛原:「そ、そうか?じゃあ、お願いしようかな」

 何だか私もそんな気がする。

 愛原:「斉藤さん、危険ですから下がっててください」
 斉藤:「わ、分かりました」

 高橋は試しにドアをドンドン叩いてみた。
 これで向こうからドンドン叩いて来たらガチだな。
 だが、高橋が何度叩いても向こうから叩き返してくることは無かった。
 誰もいないのか?
 いや、開けてみたら、たまたま意識が無かったというだけで、入った瞬間襲って来るというパターンもあるからな。

 高橋:「では、開けてみます」
 愛原:「油断するなよ」

 高橋はドアノブを掴み、そしてグッと回してみた。
 が!

 高橋:「っ!……っ!」

 しかし、ドアが開かなかった。
 鍵が掛かっているのだ。

 愛原:「こっちは鍵が掛かっているのか!」
 高橋:「キーピックで開けてみます!」

 高橋はキーピックを荷物の中から取り出した。

 高橋:「てか、鍵穴が無い!」
 愛原:「何だって!?」

 私はドアを照らしてみた。
 確かに鍵穴が無いが、よく見ると……。

 愛原:「これ、電気錠じゃね!?」
 高橋:「電気錠!?」

 電気でロックするタイプ。
 いわゆる、電子ロックというヤツだ。

 愛原:「どこかで開錠操作をしないと開かないぞ?」
 高橋:「マジっすか!」

 警備室かな?
 でも、こんな秘密の研究室みたいな所、警備室も知っているのか……。

 斉藤:「愛原さん、この分電盤みたいなのは何でしょう?」

 ドアから5メートルほど離れた壁に、くすんだ白いボックスがあった。
 確かに分電盤っぽい。

 愛原:「これだ!」

 私はボックスを開けてみた。
 確かに中にはブレーカーがあった。

 高橋:「よし。やってみます」

 高橋はゴム手袋をはめて、ガチャンとブレーカーのレバーを下げた。
 家のヒューズだと上にカチッと上げるのに、こういう大きなレバータイプは下に下げるんだな。

 愛原:「!?」

 すると、倉庫内の照明が点いた。
 これが大元の電源だったか。
 そして、さっきのドアもカチッという音がしてロックが解除された。

 愛原:「よし、今だ!」

 私達はもう1つのドアを開けた。
 その先は……。

 愛原:「おおーっ!」

 地下に下りる階段があった。

 高橋:「何だかガチっぽくなってきましたね」
 愛原:「そうだな」
 高橋:「俺が先導します。付いてきてください」
 愛原:「ああ、分かった」

 高橋は銃を構えた。
 無機質なコンクリート壁には照明が灯っておらず、私達は再びライトの明かりを頼りに進んだ。
 恐らく地下1階と思しき所に着いた時、廊下が分かれ道となっていた。
 正面には意匠の違う鉄扉がある。

 高橋:「よし。あそこから見てみましょう」
 愛原:「ああ、分かった」

 その鉄扉には鍵が掛かっていたが、それは内鍵だった。
 高橋は内鍵を開けて、ドアを開けた。

 高橋:「あ?何だここ?」

 真っ暗な廊下に対し、開けた先は照明が灯っている。
 いや、灯っているというか、蛍光灯が等間隔に設置されていて、まるでどこかのトンネルのよう……ん?トンネル!?
 と、右から眩い光と轟音と強風が迫って来た。

 愛原:「高橋!戻れ!ここ地下鉄のトンネルだ!」
 高橋:「ええーっ!?」

 高橋が通路に戻ると、電車が間一髪で通過した。
 通過していった電車のリアを見ると、東武鉄道の車両で行き先が『東武動物公園』になっていたことから、東京メトロ日比谷線と思われる。

 愛原:「大丈夫か、高橋!?」
 高橋:「は、はい!」
 愛原:「とんだデストラップだったなー……」
 斉藤:「どうします?ここはもう引き返した方が……」
 愛原:「せっかく来たんですから、今度はもう1つの通路を見てみましょう」

 私はそう言って、先ほどの通路を引き返した。

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