報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「東京中央学園上野高校」 3

2018-12-02 19:17:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月3日10:30.天候:晴 東京中央学園上野高校1F科学準備室]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はリサの中学校で球技大会が行われ、その会場となっている高校へやってきた。
 保護者の応援ということで、堂々と入ることができた。
 もちろん、リサの応援というのは表向き。
 実際はこの学校に長らくアンブレラの回し者として赴任していた科学教師の足跡を追うこと。
 ところがここに思わぬ協力者が現れた。
 リサの初めての人間の親友である斉藤絵恋、その父親である斉藤秀樹氏である。
 氏は国内でも指折りの大製薬企業の経営陣に在籍し、しかもこの学園の卒業生であるという。
 長らくこの高校の科学教師として赴任していたアンブレラの回し者であるが、斉藤社長が惜しくも卒業してから僅か1〜2年後に赴任してきた為、直接の面識は無いという。
 しかしながら90年代半ばには新聞部がその科学教師の秘密を掴み、真相に迫ろうとしたことがあった。
 だが、『学校の七不思議の特集』にかこつけたその取材で、新聞部員2名と特集の協力者5名が行方不明。
 それ以外にも科学室関係で行方不明になった生徒はおり、アンブレラの実験体にされたのではないかという疑惑が持ち上がった。
 しかしいざ行ってみると、科学室はリニューアル工事を行っていた。
 入ってみると備品の撤去や仮囲いなどがしてあるだけであり、本格的な作業は週明けからになると思われた。

 斉藤秀樹:「ここが準備室です」

 斉藤社長はここの卒業生なだけあって、学校の構造には詳しい。
 難無く科学準備室まで来ることができた。
 中は備品が撤去されている為、がらんどうである。
 だがそれでも染みついた薬品の臭いは取れておらず、それが鼻にツンと来た。

 愛原:「……倉庫の入口は!?」

 私は室内を見回した。
 話によると、そのアンブレラの回し者は科学準備室の奥にある倉庫を秘密研究室として使用していたらしい。
 薬品棚や備品棚が撤去されているので、隠されていることは無いはずだ。
 しかし、倉庫の扉らしき物は見当たらなかった。

 高橋:「おい、オッサン!どうなってんだよ!?」
 斉藤:「どうもこうも……確か、ここに入口があったはず……!」

 斉藤社長はドアがあったとされる壁に駆け寄った。
 だが……。

 愛原:「ちょっと待った。何かこの辺だけ壁の色、違くない?」

 ベージュ色に塗られたコンクリートの壁。
 だが、斉藤社長が駆け寄った所だけ若干色が明るい。

 高橋:「扉を上から塗り込めたんですよ、きっと!」
 愛原:「マジか!」

 いくら周りの壁より新しいとはいえ、最近そうした形跡は無い。
 恐らく回し者がこの学校を離れる際に、証拠隠滅の為に塗り込んだかもしれない。
 となると、中は手付かずか!?

 高橋:「この壁、ぶっ壊しましょう!」
 愛原:「そんなこと勝手にできるわけないだろう!」
 斉藤:「いや、大丈夫でしょう。リニューアル工事は壁の補修も行うはずですから、1度壁を壊して新たな壁を造るくらいはするはずです」
 愛原:「いいんですか、社長!?」
 斉藤:「もし何でしたら、後で私が校長先生に話を付けておきます」
 愛原:「……斉藤社長、あなたの目的は一体……?」
 斉藤:「ここの現役生時代に、気になってしょうがなかった謎を解きたいだけですよ。もしも白井先生の噂が本当で、アンブレラの回し者なのだとしたら、それに協力してしまった我が社としても贖罪をしなければなりませんからね」
 高橋:「会社を畳めばいいだろうが」

 高橋は軽く言った。
 個人商店じゃあるまいし、経営状態の良い会社を簡単に潰せるわけないだろう。
 高橋は資材置き場からチェーンソーを持って来た。

 高橋:「こいつを使いましょう」

 高橋はチェーンソーのエンジンを掛けた。

 愛原:「マジか!」

 どこかの“バイオハザード”に、チェーンソーを使って壁を破壊してくるクリーチャーとかいなかったかなぁ……?

 高橋:「うらぁーっ!」

 高橋はガガガと壁に切り込みを入れた。
 見る見るうちに壁に亀裂が走り、ついにその壁が崩れた。

 斉藤:「やっぱりだ!やっぱりここに扉があったんだ!」

 周りのコンクリート壁には似つかわしくない鉄扉が現れた。
 だが、外側からは閂がしてあり、しかもグルグル巻きにチェーンが巻いてあって、大きな南京錠が付けられていた。

 斉藤:「これですよ!私が見たのは!」
 愛原:「鍵が無いですよ!」
 高橋:「お任せを」

 高橋はチェーンソーで閂ごと壊そうとした。

 愛原:「おい、大丈夫か!?」

 いくら錆びついているとはいえ、相手は金属だ。
 当然ながら火花が飛び散る。
 閂が真っ二つになるのと同時に、チェーンソーの刃も折れてしまった。

 愛原:「どうするんだ!?」
 斉藤:「業者には私から新品の物を弁償すると言っておきます」
 愛原:「さすがですね、社長」
 斉藤:「早速行きましょう」
 愛原:「はい」

 高橋に扉を開けてもらった。
 ギギギと錆びた鉄扉ならではの音が響く。
 当然ながら中は真っ暗だった。
 こんなこともあろうかと、私達はライトを持って来ている。

 斉藤:「さすがですね、愛原さん?」
 愛原:「探偵の7つ道具の1つです」
 高橋:「俺が先導します。先生は付いてきてください」

 高橋はヘッドランプを付けて、右手にはマグナムを……って、おい!

 愛原:「何でオマエ、そんなもん持って来てるんだよ!?」
 高橋:「アンブレラ絡みの仕事となれば当然です」
 愛原:「んなわけないだろ!しゃ、社長、これはその……あの……」
 斉藤:「私は何も見ていませんよ?真っ暗で何も見えませんな」

 どうやら斉藤社長は黙っててくれるようだ。
 助かった。

 愛原:「ちっ、ヒドい臭いだ。てか、何にも無い!」

 しっかり運び出された後だったか……。

 高橋:「先生、何ですかね、この臭いは……?」
 斉藤:「恐らくホルマリンと培養液の何かの臭いが混じったものでしょう。うちの研究所でも、似たような臭いを放つ部屋があります。もちろん、基本的には立入禁止です」
 愛原:「そうなんですか」
 斉藤:「しかし普通は確かに窓の無い部屋で実験などを行いますが、換気とかもしっかり行うようにしてあるはずなんですがね……」

 見たところ、臭いを放つ原因となっているようなものは何も見当たらない。
 壁に染み付いたりしているのだろう。
 この部屋が閉鎖されて10年以上も経つというのに、まだまだ消えないようだ。
 しかし……。

 愛原:「この空間で何らかの実験が行われたのは事実のようですね?」
 斉藤:「それは間違い無いと思われます」

 この倉庫に元々あったと思われる椅子とか机とか、戸棚とかはそのまま残されていた。
 だが、それらを調べてみても何にも残されていなかった。

 愛原:「収穫無しか……」

 私が残念そうに呟いた時だった。

 高橋:「先生!」

 高橋が何かを見つけたようだ。
 それは何だったと思う?

 1:一冊のノート
 2:もう1つの扉
 3:白骨死体
 4:アンプルや注射器
 5:何かのスイッチ

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