報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「戦いの後」

2016-06-01 10:26:54 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月16日06:00.天候:晴 アメリカ合衆国アーカンソー州某所・DC Inc.アーカンソー研究所]

 敷島達の戦いの後、今度は地元の警察隊がやってきて、所内の捜索を開始した。
 そこでジャニスやルディに射殺されたと思われる研究員など、関係者の遺体を回収。
 また、屋上においてはアルバート・ブラックロード常務の遺体を回収した。
 アルバート・F・スノーウェル所長も、警察に逮捕された。
 シンディの目から撮影された映像と、屋上に設置されている監視カメラの映像から、アルバート所長が自身のコピーロボットを使って、常務を射殺したことが証拠となった。
「たかだか会社から独立する程度で、ここまで騒ぎを起こすことも無かったんじゃないのかい?」
 敷島は連行される直前のアルバート所長に言った。
 アリスが通訳する。
「……未だ世界の人々はマルチタイプの優秀さが分かっていない。演出を派手にやる必要があった。あなたのメイドロイドと同じ使い方では、世間は受け入れない」
「目立ったのはうちのエミリーとシンディで、ジャニスとルディは完全に悪役じゃないか。そんなんで……」
 するとアルバートはニヤリと笑った。
「“マルチタイプを世界一使いこなす男”が、ジャニスとルディをどのように扱ってくれるかの実験をしたかった。やはり、常務の言う通りだ。『所詮はそんなものか』」
「……デイライト・コーポレーション・アメリカは1度、業務停止処分食らった方がいいんじゃないのか?」
 敷島は頭痛のようなものを感じて言った。
「それが結論だ」
 アルバートは更に笑みを浮かべて大きく頷いた。
 そして、警察のヘリコプターに乗せられ、州警察の本部があるリトルロックへと飛び去って行った。
「多分、業務停止処分食らうでしょうね」
 アリスは腕組みをして深刻そうな顔をした。
「日本法人は、いっそのこと独立しちゃったら?日本法人は良識的なんだがなぁ……」
「いや、こっちも本当はそうだと思うよ。ただ、一部の役員とその部下が暴走しただけ」
「それを『自浄能力が無い』って言うんだよ」
「博士、社長……」
 シンディがゆっくり近づいて来た。
「おっ、シンディ。大丈夫だったか?」
「クエントが、ルディの燃料電池から、私に電気を回してくれたんです。今は、何とか30%ちょっとあります」
「そうか。後でちゃんと充電するからな」
「それより、姉さんは……」
「損傷が激しいから、平賀先生が鳥柴さんに頼んで、デイライト本社からヘリを1機飛ばしてもらった。ダラス支社も壊滅状態だから、クエントのツテでテキサス州のヒューストン工場まで搬送している。後で俺達も行こう」
 と、その時だった。
「ちょ、ちょっとそこの!日本のエージェント達!」
「ん?」
 警察隊の幹部が慌てて走って来た。
「ちょっと手伝って欲しいんだが!」
「何かあったの?」
 アリスが聞いた。
「地下階を捜査していたら、水没エリアに、変なマーメイドみたいなロボットが襲って来て大変なんだ!何とかしてくれよ!」
「水没エリアの変なマーメイドって、マーティのことか……」
「まだ稼働してたのね、あいつ」
「シンディ、できるか?」
「ええ。行ってきます。だいぶ弾を撃ち尽くしたので、弾薬をください」
「あの警察トラックの中に、マグナム弾でもマシンガン弾でもライフル弾でも何でもある。好きなだけ持って行ってくれ」
 警察隊幹部は、正面エントランス横に止まっている警察のトラックを指さした。
「弾薬を補充したら、すぐに来てくれ。こっちだ」
「! シンディ。ちょっと、その前に……」
 敷島は何か悪巧みを思いついたようだ。
 そして、シンディにそっと耳打ち。
「ええーっ?」
「どうせこの研究所は潰されるだろうし、デイライトさんも業務停止処分食らう運命だ。それを理由にギャランティ値引きされる思いするなら、こっちも先手を打つ」
「……どうなっても知らないよー」

 シンディは見事、マーティの『捕獲』に成功した。
 何の制御もされていない状態であったために暴走していたが、事件が起きる前までは大水槽内で研究員達に愛嬌を振り撒いていたらしい。
 今の暴走状態では、全く想像がつかないが。
「放してぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
「うるさい!おとなしくしないと、『活け造り』にしちゃうよ!?」

 敷島:「あー、マーティに『観念したら豪勢に船盛にしておく』と伝えておいてくれ」
 アリス:「何よ、Funamoriって?……って、なに!?マーティを持って帰るの!?」
 敷島:「沖縄の美ら海水族館に10億円で売り付けてみる」
 アリス:「ムリムリ!!」

 潰れ掛かった会社から資産をネコババする火事場泥棒の敷島だった。

[同日15:00.アーカンソー州リトルロックシティ・市街地の某ホテル]

 取りあえず敷島とアリスは、デイライトが用意してくれたホテルに入って休むことにした。
 アリスは寝る間も惜しんで、シンディの修理を行った。
 恐らく今頃、平賀も同じことをしているだろう。
 鳥柴と連絡を取って、翌日、ニューヨークにあるデイライト本社に行くことになった。
 色々と重役が話をしたいらしい。
 尚、
{「マーティはお詫びとして差し上げるとのことです」}
「マジで!?本当にいいの!?タダで!?『1億ドル寄越せ』って言われるかと思った」
 輸送費くらいは自己負担かと思ったが、そもそも日本から連れて来たロイド達の往復輸送費はデイライト負担であるため、そこに抱き合わせすれば良いので、大して変わらないという。
{「ヒューストンから会社の飛行機を飛ばすことになりました。それでまず私と平賀教授が乗って、敷島社長とアリス主任のリトルロックへ向かいます。そこで合流してください。リトルロックのナショナル空港です。キースが迎えに行きますから」}
「分かりました」
 そしてリトルロックから、ニューヨークへ向かうらしい。
 尚、クエントはヘリでの特攻の際にケガを負った為、今は病院で療養中である。
 因みに敷島達は、部屋を2つ取ってもらった。
 1つは敷島とアリスの部屋で、もう1つはリンとレン用に取ってもらった。

 幸いにもリンとレンはバッテリーを破壊されていただけで、それ以外の損傷はほとんど無かった。
 もしかしたら、リンとレンを遠くに運ぶつもりだったのかもしれない。
 それこそ、外国とか。
 実際、敷島がマーティを運ぶ際にバッテリーを抜いている。
 マーティはさすがにまだデイライト社の所有なので、平賀達と同じくヒューストン工場に搬送されていった。
 ボーカロイドのバッテリーはマルチタイプとは規格が違う上、同じ規格のバッテリーが別の工場にある為、それ待ちである。

 いずれにせよ、後始末も大変だということだ。

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1 コメント

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つぶやき (雲羽百三)
2016-06-01 15:00:49
先週は通院、今日は会社の健康診断だ。
休みを潰して都内の診療所に行かなければならない煩わしさをボヤく社員は多いが、渡しには良い乗り鉄・乗りバスの機会だ。
特に都内の路線バスは、結構マニアックなルートを通ることが多い。
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