報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「成田空港からの帰り」

2022-04-24 14:31:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月27日08:53.天候:曇 千葉県成田市三里塚御料牧場 成田空港駅京成線ホーム→京成本線9A10電車先頭車内]

 斉藤母娘を見送った私達は、帰りは京成線に乗ることにした。
 駅の所在地そのものはJR成田空港駅と同じだが、鉄道会社が違えば、当然改札口もホームも違う。
 そもそも線路の幅が違うので、2つの鉄道会社が同じホームに発着すること自体あり得ない。

〔♪♪♪♪ まもなく2番線に、折り返し、京成本線経由、特急、上野行きが8両編成で到着します。黄色い線の内側に、お下がりください〕

 英語放送が流れた後、トンネルの向こうから電車がやってきた。
 特急といってもリクライニングシートの並んだ有料特急ではなく、ロングシートの通勤電車である。
 なので、特急料金も掛からない。

〔「ご乗車ありがとうございました。成田空港、成田空港、終点です。お忘れ物の無いよう、お降りください。2番線は折り返し、9時8分発、京成本線経由、特急、上野行きとなります」〕

 ここまでの乗客達が降りて来る。
 電車は特に真新しい感じはせず、恐らくは旧型の部類に入るのだろう。

 

 乗客のいなくなった電車の座席に腰かける。
 まだ、発車まで時間があった。

 愛原:「ちょっと善場主任に電話してくる」
 高橋:「了解っス。席取ってます」

 私がスマホ片手にホームに降り、善場主任に電話を掛けた。

 愛原:「もしもし。善場主任ですか?愛原です」
 善場:「愛原所長、お疲れ様です。飛行機は無事に離陸しましたか?」
 愛原:「はい。無事に離陸しました」
 善場:「そうですか。1つ確認したいのですが、今回飛行機に乗ったのは斉藤絵恋さんとその母親だけですよね?」
 愛原:「そうですよ。それが、どうかしましたか?」
 善場:「他には誰も一緒に乗っていませんね?」
 愛原:「そのはずですよ。どうしてですか?」
 善場:「……いえ、何でもないです。お疲れ様でした。気を付けてお帰り下さい」
 愛原:「ありがとうございます。因みに帰りは、京成線と都営新宿線で帰ります」
 善場:「分かりました。お気をつけてお帰り下さい。明日は面会ですね?」
 愛原:「はい。よろしくお願いします」
 善場:「分かりました」

 面会とは、上野姉妹と母親の上野利恵の面会のことである。
 藤野の研究施設に収容されている上野利恵の所に、上京してくる娘の上野姉妹が面会することになっており、私達がそれに付き添うことになっている。

〔「ご案内致します。この電車は9時8分発、京成本線経由、特急、上野行きです。停車駅は空港第2ビル、成田、公津の杜、宗吾参道、酒々井、大佐倉、佐倉、勝田台、八千代台、津田沼、船橋、八幡、高砂、青砥、日暮里、終点上野の順に止まります。途中の佐倉で快速、西馬込行きに。八幡で普通、上野行きにお乗り換えできます。発車まで、しばらくお待ちください」〕

 電話を終えて車内に戻ると、私は高橋とリサの間に座った。
 リサが寄り掛かるように引っ付いてくる。

 愛原:「明日は上野姉妹が上京してくるから、その迎えだな」
 高橋:「車なら用意しますよ」
 愛原:「ああ、頼む」
 リサ:「サイトーから返信が来ない……」
 愛原:「飛行機の中だからな、しょうがない」

 機内モードでLINEって使えるんだっけ?
 使ったことないから分からんな。

[同日09:08.天候:不明 京成本線9A10電車・先頭車内]

〔「お待たせ致しました。9時8分発、京成本線経由、特急、上野行き、発車致します」〕

 発車の時間が迫る頃には、座席は半分ほどが埋まるようになった。
 今は成田スカイアクセス線もあり、東京都心に出るにはそちらの方が早い為、だいぶ本線経由の乗客は減った感じである。

〔♪♪♪♪。まもなく2番線から、京成本線経由、特急、上野行きが発車致します〕

 英語放送の後で、普通の発車ベルが地下ホームに鳴り響く。
 特に駆け込み乗車も無く、ドアは再開閉することなく、すんなりと閉まった。
 運転室から発車合図のブザーが聞こえたかと思うと、ガチャッとハンドルを操作する音が。
 そして、エアーの抜ける音がして、スーッと電車が走り出して行く。
 今時流行りのVVVFインバータは搭載していないのか、そういった類の音が聞こえてくることはない。

〔京成電鉄をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は京成本線経由、特急、京成上野行きです。次は空港第2ビル(成田第2・第3ターミナル)、空港第2ビル(成田第2・第3ターミナル)です。お出口は、右側です〕

 放送は自動放送だった。
 英語放送を流す為だろう。
 昔は車掌が日本語の肉声放送をして、英語放送だけ自動ということもしていたそうだ。
 さすがに国際空港アクセス列車で、英語放送無しは無理があるだろう(かといって、中国語や朝鮮語はやり過ぎだと思う)。

 リサ:「通勤電車じゃ、Wi-Fiが無いから節約しないと……」
 愛原:「もうパケット通信、制限掛かってんのか?」
 リサ:「もうすぐでマックスになる」
 愛原:「高校生のプランじゃ、ギガ数は少ないよな」
 高橋:「やり過ぎんなってことだよ」

 駅構内ではWi-Fiが飛んでいるので、それが使えるのだが、電車内となると、なかなか無い。

 リサ:「おっ、リンからLINE」
 愛原:「ほお、そうか」
 リサ:「明日、よろしくだって」
 愛原:「分かった。高橋、帰ったらレンタカーの予約よろしく」
 高橋:「分かりました。車種はいつものでいいっスか?」
 愛原:「それでいいよ」
 高橋:「うス。じゃ、今から予約します」

 高橋は自分のスマホを取り出した。

 愛原:「あ、そうか。ネットで予約できるのか」
 高橋:「そうです」

 便利な時代になったものだ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「別離」 | トップ | “私立探偵 愛原学” 「機上... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事