報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスター” 「のぞみヶ丘秋祭り」

2014-10-24 20:09:17 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月20日13:00.宮城県仙台市泉区のぞみヶ丘・公民館 敷島孝夫]

「いいですよ。今度の秋祭り、ライブ・イベントにうちの初音ミクを出させましょう」
 館内の会議室に集まるは、のぞみヶ丘商店会の役員達。
 メインイベントとして、アリス研究所のボーカロイドを出演させて欲しいというものだった。
 メジャー化しているボーカロイドに、一地域の秋祭りに参加させることができるのかと思った役員達だったが、敷島がスケジュールを調整することで合意した。
「ちょうどこの日の夕方、地元のラジオ局で、『東北秋祭りレポート』があるんですよ。それも、中継で。ここの秋祭りが取り上げられないか、ラジオ局に打診してみますね」
「おおっ!さすが敏腕プロデューサー!」
(あとはこれを機に、マルチタイプも……)

[同日15:00.同地区内 アリスの研究所 敷島孝夫&アリス・シキシマ]

「ええっ、エミリーとシンディを?」
「そうだ。彼女らを祭りのコンパニオンとして使う。これも旧ソ連の粛清ロボットだった頃への贖罪と、世間一般のイメージ払しょくの為だ」
「……と、言いつつ、アタシにはアンタが後ろ手で電卓叩いているようにしか見えないけど?」
「そ、そんなことはない!」
 そもそも日本では、エミリー達が旧ソ連時代に国内で反乱分子の粛清に当たっていたと言われてもピンと来ないのが現状だ。
 KGBの殺し屋とかだったら、映画とかにも出て来るので、何となく分かるが……その程度だろう。
 その出身者が大統領やってたりするものだから大変だ。
 いつ、エミリー達が政治に使われるか気が気でない。
「ボーカロイド達は完全に日本のオリジナルだから、いくら売れてもいいけど、マルチタイプは目立っちゃまずいんじゃないかしら」
「そうかなぁ?『日本国内限定で、平和的使用をする分には構わない』という条件があったぞ?」
「相手は政治家だから、どこまで守るか分からないわよ」
「まあ、そこは裏金で」
「ワイロは受け取った方だけじゃなく、送った方も逮捕の対象だからね」
「女子高生の援助交際は、持ち掛けられた男だけが逮捕されるのにねぇ……」
「What is Enjyo-kosai?」
「ウィキペディアで調べてみろ。とにかく、こういう地域の祭りに参加する分には問題無いだろうさ」

[10月26日16:00.のぞみヶ丘中央公園・野外ステージ 平賀奈津子]

 平賀奈津子は平賀太一の妻であり、れっきとした南里研究所の準研究員であった。
 鏡音リン・レンが製造された時、フィールド・ワークのみならず、プロデューサーとして地方巡業を率先して行っていたくらいである。
 結婚してからは第一線を退き、メイドロボットの七海に、設けた2児の子守りを頼みつつ、研究者としての仕事を地道に続けている。
 奈津子はマイクの調整がてら、公園内にいる地域住民に呼び掛けた。

〔「えー、のぞみヶ丘ニュータウンの皆さん、こんにちはー。私、アリス・ロボット研究所から参りましたロボット研究者です。今日は皆さんの為に、うちの看板ボーカロイド、初音ミクが一生懸命歌います。よろしくお願い致します!」〕

「さすが元プロデューサー、上手いな」
 敷島は公園の出入口で感心していた。
 研究者としてはまだ現役でも、プロデューサーとしては第一線を退いているという意味だ。
「お待たせー」
「おっ、来たか。……って!」
 祭りの為に着替えて来たアリス、エミリー、シンディ。
 何に着替えて来たのかというと、
「さささ、寒い……」
「バカか、お前!秋祭りに浴衣着てきて、何考えてんだ!?」
「だ、だって、日本のお祭りって皆これ着るんでしょ?」
「夏だけだよ!それ以外の季節に着れるか!……せいぜい、冬……正月とかに振袖着るくらいだよ。振袖ってのは、それよりもっと厚手で温かい着物のこと!」
 大ざっぱだが、ハズレてはいない。
「早く着替えてこい!風邪引くぞ!」
「私達は別に寒くないけど?」
「当たり前だ!……!」
 その時、敷島はピンと来るものがあった。
「待て!エミリーとシンディはそのままでいい!」

[同日17:00.同場所 敷島孝夫、平賀奈津子、アリス・シキシマ、初音ミク]

「ええっ、アリスってば浴衣着て来たんですか!?」
 そういう奈津子は、上下パンツスーツだ。
 子供を2人産んだ割には、あまり体型の崩れは無く、そのスーツも結婚前に着ていたものだという。
「そうなんです。とんだ日本に対する誤解だ」
 因みに奈津子の夫である太一は、仕事を理由にここには来ていない。
 マルチタイプの、それもシンディに関わることを避けてのことだろう。
 しばらくして、やっとアリスと初音ミクがやってきた。
 ミクはいつもの、公式通りのあの衣装だ。
 もっとも、会場に出入りする時は目立たぬように上にコートを羽織っている。
「たかおさん、充電はバッチリです」
 ミクはにっこり笑った。
「よーし。まずは前座として、エミリーとシンディを紹介する。そして、『マルチタイプ二重奏』を行う」
「大丈夫なんですか?」
「実験で安全だと確認された曲だけを使う。ちょうど実験に引っ掛かったものが多かった静かなクラシック曲は元々この祭りには合わないからね、アップテンポの盛り上がる物をやってもらうよ。そして最後は、その2人の生演奏と共にミクがライブの最後に相応しい持ち歌を披露する。それでいいな」
「はい、たかおさん!」
「イエス、敷島さん」
「了解、プロデューサー」

[同日18:00.同場所 敷島、奈津子、アリス、KAITO]

「お疲れ様です、プロデューサー」
 ひょっこりやってくるKAITO。
「あれ、どうしたんだ、お前?」
「今日は収録が思いの外、早く終わったので戻ってきちゃいました」
「何だ、そうか。んー……。バッテリー残量、あとどのくらいある?」
「54パーセントです」
「54パーか。微妙だな……」
「1曲くらいの飛び入りなら余裕ですよ、プロデューサー」
「考えておこう。実は彼女らのステージだけで、キツキツなんだ。本来は地元の人達のカラオケ大会だから。取りあえず、その辺でファンサービスでもしてきな。もしお前が出れるようだったら呼ぶ」
「分かりました。出店でも回ってます」
「ああ」
 出店はほんと、“ベタな縁日の法則”通りである。
 たこ焼きとか焼きそばとか綿あめの露店以外に、金魚すくいとか、射的やくじ引きもあった。
 無論ボーロカイドのKAITOは飲食系の露店は回れないので、それ以外の店を回っているところを敷島は確認した。
 あとはミク達のステージの方を気にしていたので、まさかイケメンボーカロイド・KAITOがやらかしてくれるとは……。

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2 コメント

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Unknown (ポテンヒット)
2014-10-25 08:54:55
今日はさいたまクリテリウムである。全国のチャリストが結集する変態祭りである。おまいはゼンゼン興味ねえだろうが、いちおうあとでレポートしようw
返信する
ポテンヒットさんへ (作者)
2014-10-25 10:21:09
 こんにちは。

 さいたまクリテリウム?
 確かに初めて聞きましたね。どこで行われるんですか?さいたまスーパーアリーナ?

 私よりも高速太郎さんが興味がおありと思われるので、是非レポートよろしくお願いします。
返信する

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