[12月28日20時40分 天候:晴 東京都豊島区南池袋 首都高速5号池袋線上り・南池袋PA]
南池袋パーキングエリアは、片側上り線にしか設置されていない。
これはかつて、料金所があった頃の名残だ。
料金所が廃止され、その跡地にパーキングエリアが作られたものである。
その為、あまり広いパーキングエリアではない。
中に入ると、最初に普通車の駐車スペースがあった。
15台駐車できるというが、その殆どが埋まっている。
高橋「ん?ここか?」
黒塗りのハイエースから善場主任が降りて来た。
そして、その隣に駐車していたライトバンが出て行く。
どうやら、そこに止めろということらしい。
ライトバンはデイライト関係者の車だったのか。
高橋はハザードランプを点けて、ハイエースの隣に駐車した。
そして、私はスライドドアを開けた。
善場「お疲れ様です。愛原所長」
愛原「お疲れさまです」
善場「御足労ありがとうございます。話がありますので、あの現場にいた方のみ、こちらの車にお移りください」
愛原「まさか、どこかへ移動するるのですか?」
善場「いえ、外でお話はできませんので、中で話をするだけです」
愛原「そうですか……」
あの現場にいたのは私とリサ、高橋だ。
絵恋「私達は向こうの休憩所にいます」
パール「そうしましょう」
現場にいなかった絵恋とパールは対象外なので、ハイエースには乗れない。
このまま車の中で待機しても良いのだが、降りて待つことにした。
駐車スペース後ろの歩道を通って、休憩所へと向かっていった。
私達はハイエースの中へ。
外は寒かったが、車の中は暖房が効いていて暖かい。
また、スモークガラスだけでなく、カーテンも全部閉まっていた。
助手席や運転席後ろのカーテンも閉められている。
スライドドアが閉まってから、善場主任は私達に向き直って言った。
善場「改めまして、お疲れさまです。昼間に愛原所長方が見舞われた被害について、この度はお話ししたいと思います」
愛原「お願いします」
善場「まず、リサが戦った男の『鬼』について、現場周辺の防犯カメラから解析しました」
愛原「早いですね」
善場「民間所有のカメラだと手続きが面倒なのですが、警察が所有しているカメラなら話は別です」
愛原「なるほど。交差点などに設置されているカメラのことですね?」
善場「そうです。リサが追い掛けたのは、この男で間違いないですね?」
善場主任は1枚の画像を見せた。
リサ「そう!こいつ!」
リサもまあロリ顔だが、この男の『鬼』とやらも、思ったよりもガキっぽく見えた。
私はつい、高橋みたいなヤツを想像していたのだが……。
確かに、人間にしてみれば中高生に見えてしまう。
鬼としての年齢は、リサと同じくらいということか。
だから、イケメンではあるが、韓流スターというよりはジャニーズに近いかもしれない。
で、確かにリサが言ってたように、色黒であった。
画像がそこまで鮮明ではないのだが、多分赤銅色だろう。
変化前のリサのように、前頭部の上に1本角が生えていた。
両耳が長くて尖り、牙が生えていて、両手の爪が長くて鋭い所はリサと同じ。
愛原「こいつも、普段は人間に化けて暮らしているのだろうか?」
善場「それは現在調査中ですが、その可能性は大きいです」
愛原「リサから逃げる時に、たまたま通り掛かったトラックの屋根に便乗して逃げたんですよね?」
善場「そうです。この画像は、その時に撮影されたものです」
愛原「そうでしたか。ということは、このトラックについても分かりましたか?」
善場「はい。栃木県の運送会社のものでした。都内へ配送に向かっていたようです」
愛原「すると、この男は都内まで乗って行ったと?」
善場「いえ、違います。このトラックは首都高埼玉大宮線を走行し、美女木ジャンクションから、外環道に入っています」
愛原「それから?」
善場「外環道の東方面ですね。それから川口ジャンクションにて、今度は首都高川口線に入っています」
愛原「で、この男がトラックを降りたのは……?」
善場「川口パーキングエリアです。トラックは、そこで休憩を取っています」
愛原「川口かぁ……。微妙だな……」
善場「しかも川口パーキングエリアは、隣接する公園“イイナパーク”を介して一般道に出ることが可能です。もちろん、車の出入りはできませんが……」
恐らく鬼の男は、そこでトラックを飛び降り、“イイナパーク”を通って逃走したのではないかと善場主任は見ている。
この場合、男は埼玉県内に留まっているのか、都内へ向かったのかは不明だ。
また、この近くには埼玉高速鉄道の新井宿駅もあり、人間に化けられるのなら、そこから地下鉄に乗って移動も可能だ。
それもまた、予測不能さを呼んでいる。
下り電車に乗れば終点が浦和美園、つまりさいたま市に戻ることができるし、上り電車に乗れば、東京メトロ南北線と相互乗り入れしていることもあり、そのまま都内へ向かうことも可能だからである。
愛原「駅の防犯カメラを見せてもらうしかないでしょうね。地下鉄の駅なら、防犯カメラもあるでしょうから」
善場「私達は警察ではないので、あまり積極的に動くことができないのです」
愛原「えっ?でも、この画像は……」
善場「うちの職員に、浦和西警察署に勤務していたことのある者がおり、そのツテで何とかできました。しかし、川口市内などを管轄する警察署にはツテが無いのです」
愛原「そこは国家機関として……」
善場「この鬼の男が、バイオテロと関係があることを証明できれば、その権限を使うことができます。しかし現在は、ただの放火殺人未遂の疑いのある者というだけです。今は埼玉県警の管轄です。私達がそう簡単に首を突っ込める状態ではないのです」
愛原「分かりました。それはしょうがないですね。とはいえ、このままでいいと思えません。リサが今こうして復讐に燃えているのと同様、それは向こうも同じでしょう。鬼というのは、執念深いですから」
善場「リサ、その男と戦っている時、男は何か言ってましたか?」
リサ「特に重大なことは言ってなかった。ただ……」
善場「ただ?」
リサ「『俺以外にも鬼がいたのか!』って、驚いてた」
愛原「んん?」
リサ「『しかも女だ!』って」
愛原「それはつまり……」
高橋「本物の鬼ってことっスか?」
善場「まさか。例えば源頼光の伝説で有名な酒呑童子や茨木童子でさえ、伝説では鬼ですが、その実は人間の山賊であったわけです。実在はしないはずですよ。リサの場合は、たまたま体内のGウィルスや特異菌が、鬼の姿を形成してしまった、偶然の産物です」
愛原「ということは、その男も、Gウィルスや特異菌を体内に有した者ということですか?」
善場「あ、有り得ないです。そんなのが国内に入ってきたら、すぐに分かります」
高橋「こいつ、外国人か?……いや、日本人だよなぁ……」
善場「とにかく、埼玉県警には私共も捜査協力という形で、何とか情報提供を求めるようにします」
愛原「私達はどうすれば?」
善場「リサ、その男に自分のことを話した?」
リサ「そんなことするわけがない。『お前は誰だ?』とかは聞かれたけど、『アンタなんかに教えるか!』って爪で引っ掻いてやった」
リサの方が押していたが、鬼の男は火を噴いて、リサを火だるまにした。
その隙に逃げたというわけだ。
愛原「じゃあ、俺達が都内に住んでいるかどうかは知らないってわけだ。助かった」
願わくば、埼玉県内を永遠に探し回っててもらいたいものだ。
南池袋パーキングエリアは、片側上り線にしか設置されていない。
これはかつて、料金所があった頃の名残だ。
料金所が廃止され、その跡地にパーキングエリアが作られたものである。
その為、あまり広いパーキングエリアではない。
中に入ると、最初に普通車の駐車スペースがあった。
15台駐車できるというが、その殆どが埋まっている。
高橋「ん?ここか?」
黒塗りのハイエースから善場主任が降りて来た。
そして、その隣に駐車していたライトバンが出て行く。
どうやら、そこに止めろということらしい。
ライトバンはデイライト関係者の車だったのか。
高橋はハザードランプを点けて、ハイエースの隣に駐車した。
そして、私はスライドドアを開けた。
善場「お疲れ様です。愛原所長」
愛原「お疲れさまです」
善場「御足労ありがとうございます。話がありますので、あの現場にいた方のみ、こちらの車にお移りください」
愛原「まさか、どこかへ移動するるのですか?」
善場「いえ、外でお話はできませんので、中で話をするだけです」
愛原「そうですか……」
あの現場にいたのは私とリサ、高橋だ。
絵恋「私達は向こうの休憩所にいます」
パール「そうしましょう」
現場にいなかった絵恋とパールは対象外なので、ハイエースには乗れない。
このまま車の中で待機しても良いのだが、降りて待つことにした。
駐車スペース後ろの歩道を通って、休憩所へと向かっていった。
私達はハイエースの中へ。
外は寒かったが、車の中は暖房が効いていて暖かい。
また、スモークガラスだけでなく、カーテンも全部閉まっていた。
助手席や運転席後ろのカーテンも閉められている。
スライドドアが閉まってから、善場主任は私達に向き直って言った。
善場「改めまして、お疲れさまです。昼間に愛原所長方が見舞われた被害について、この度はお話ししたいと思います」
愛原「お願いします」
善場「まず、リサが戦った男の『鬼』について、現場周辺の防犯カメラから解析しました」
愛原「早いですね」
善場「民間所有のカメラだと手続きが面倒なのですが、警察が所有しているカメラなら話は別です」
愛原「なるほど。交差点などに設置されているカメラのことですね?」
善場「そうです。リサが追い掛けたのは、この男で間違いないですね?」
善場主任は1枚の画像を見せた。
リサ「そう!こいつ!」
リサもまあロリ顔だが、この男の『鬼』とやらも、思ったよりもガキっぽく見えた。
私はつい、高橋みたいなヤツを想像していたのだが……。
確かに、人間にしてみれば中高生に見えてしまう。
鬼としての年齢は、リサと同じくらいということか。
だから、イケメンではあるが、韓流スターというよりはジャニーズに近いかもしれない。
で、確かにリサが言ってたように、色黒であった。
画像がそこまで鮮明ではないのだが、多分赤銅色だろう。
変化前のリサのように、前頭部の上に1本角が生えていた。
両耳が長くて尖り、牙が生えていて、両手の爪が長くて鋭い所はリサと同じ。
愛原「こいつも、普段は人間に化けて暮らしているのだろうか?」
善場「それは現在調査中ですが、その可能性は大きいです」
愛原「リサから逃げる時に、たまたま通り掛かったトラックの屋根に便乗して逃げたんですよね?」
善場「そうです。この画像は、その時に撮影されたものです」
愛原「そうでしたか。ということは、このトラックについても分かりましたか?」
善場「はい。栃木県の運送会社のものでした。都内へ配送に向かっていたようです」
愛原「すると、この男は都内まで乗って行ったと?」
善場「いえ、違います。このトラックは首都高埼玉大宮線を走行し、美女木ジャンクションから、外環道に入っています」
愛原「それから?」
善場「外環道の東方面ですね。それから川口ジャンクションにて、今度は首都高川口線に入っています」
愛原「で、この男がトラックを降りたのは……?」
善場「川口パーキングエリアです。トラックは、そこで休憩を取っています」
愛原「川口かぁ……。微妙だな……」
善場「しかも川口パーキングエリアは、隣接する公園“イイナパーク”を介して一般道に出ることが可能です。もちろん、車の出入りはできませんが……」
恐らく鬼の男は、そこでトラックを飛び降り、“イイナパーク”を通って逃走したのではないかと善場主任は見ている。
この場合、男は埼玉県内に留まっているのか、都内へ向かったのかは不明だ。
また、この近くには埼玉高速鉄道の新井宿駅もあり、人間に化けられるのなら、そこから地下鉄に乗って移動も可能だ。
それもまた、予測不能さを呼んでいる。
下り電車に乗れば終点が浦和美園、つまりさいたま市に戻ることができるし、上り電車に乗れば、東京メトロ南北線と相互乗り入れしていることもあり、そのまま都内へ向かうことも可能だからである。
愛原「駅の防犯カメラを見せてもらうしかないでしょうね。地下鉄の駅なら、防犯カメラもあるでしょうから」
善場「私達は警察ではないので、あまり積極的に動くことができないのです」
愛原「えっ?でも、この画像は……」
善場「うちの職員に、浦和西警察署に勤務していたことのある者がおり、そのツテで何とかできました。しかし、川口市内などを管轄する警察署にはツテが無いのです」
愛原「そこは国家機関として……」
善場「この鬼の男が、バイオテロと関係があることを証明できれば、その権限を使うことができます。しかし現在は、ただの放火殺人未遂の疑いのある者というだけです。今は埼玉県警の管轄です。私達がそう簡単に首を突っ込める状態ではないのです」
愛原「分かりました。それはしょうがないですね。とはいえ、このままでいいと思えません。リサが今こうして復讐に燃えているのと同様、それは向こうも同じでしょう。鬼というのは、執念深いですから」
善場「リサ、その男と戦っている時、男は何か言ってましたか?」
リサ「特に重大なことは言ってなかった。ただ……」
善場「ただ?」
リサ「『俺以外にも鬼がいたのか!』って、驚いてた」
愛原「んん?」
リサ「『しかも女だ!』って」
愛原「それはつまり……」
高橋「本物の鬼ってことっスか?」
善場「まさか。例えば源頼光の伝説で有名な酒呑童子や茨木童子でさえ、伝説では鬼ですが、その実は人間の山賊であったわけです。実在はしないはずですよ。リサの場合は、たまたま体内のGウィルスや特異菌が、鬼の姿を形成してしまった、偶然の産物です」
愛原「ということは、その男も、Gウィルスや特異菌を体内に有した者ということですか?」
善場「あ、有り得ないです。そんなのが国内に入ってきたら、すぐに分かります」
高橋「こいつ、外国人か?……いや、日本人だよなぁ……」
善場「とにかく、埼玉県警には私共も捜査協力という形で、何とか情報提供を求めるようにします」
愛原「私達はどうすれば?」
善場「リサ、その男に自分のことを話した?」
リサ「そんなことするわけがない。『お前は誰だ?』とかは聞かれたけど、『アンタなんかに教えるか!』って爪で引っ掻いてやった」
リサの方が押していたが、鬼の男は火を噴いて、リサを火だるまにした。
その隙に逃げたというわけだ。
愛原「じゃあ、俺達が都内に住んでいるかどうかは知らないってわけだ。助かった」
願わくば、埼玉県内を永遠に探し回っててもらいたいものだ。
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