報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「鬼の棲む家」 2

2023-06-18 18:27:58 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月28日14時00分 天候:晴 埼玉県さいたま市中央区上落合 某戸建て住宅]

 愛原「本当に隔離部屋があるんですか?」
 松浦「それが、本当にあるんですよ。こちらです」

 それは夫婦の寝室に面したドアだった。
 開けると、また通路があって、奥にドアがある。

 愛原「ん?」

 もう1つのドアを開けると……。

 愛原「何だこれは?」

 見た目は8帖くらいのフローリングの洋室。
 シングルベッドが置いてあって、棚が2つ置かれている。
 引っ越す前は他にも物はあったのだろうが、今はそれだけの殺風景な部屋だ。
 しかも、窓が無い。
 なるほど。
 確かに、隔離部屋である。

 リサ「……この匂い……」

 リサがマスクの上から鼻を押さえている。
 そりゃそうだ。
 人間の私ですら、何となく気づいたのだ。
 見た目には痕跡など無いが、他の部屋とは明らかに何がしかの臭いがする。

 リサ「人間の血の匂いと、それを沢山食べた鬼の体臭が染み付いてる……この部屋……」
 愛原「どことなく、獣の臭いがすると思った。ここに鬼が棲んでいたんだな」
 リサ「恐らく。というか、間違いない」
 愛原「そっちのドアは何だ?」

 部屋の中には、もう1つドアがあった。
 それを開けると、トイレがあった。
 1階のトイレと同様、それは洋式だった。
 特に、変わりはない。

 高橋「このトイレ、この部屋から出入りできないっスね」
 愛原「そうだな。ということは、このトイレはこの部屋備え付けってことですか?」
 松浦「そういうことですね」

 トイレの横には洗面所もある。
 高橋がこんなことを言った。

 高橋「まるでムショの独居房みたいっスね」
 愛原「……あ」
 高橋「それでもムショの方は、まだ窓がありますからね。まあ、トイレは仕切りがあるだけっスけど」

 因みにトイレにも窓が無い。

 愛原「この部屋に出入りするには、2枚のドアを通り抜けなければならない。そして、部屋には一切窓が無い。正に、誰かを閉じ込めておくための部屋だな」
 高橋「もしかして、ここに“獲物”を閉じ込めていたんじゃないスかね?で、鬼が入って来て、“獲物”を食い殺す」
 愛原「なるほど。……松浦さん、この部屋は何に使われていたんですか?」
 松浦「それが、『子供部屋』なんです」
 愛原「子供部屋!?」
 松浦「はい」
 愛原「ゲストルームじゃなく?」
 松浦「はい。ゲストルームは、あくまでも1階のリビングの隣の部屋です」
 高橋「そういえば先生、下のゲストルームも窓がありませんでしたね?」
 愛原「そ、そうだな。ちょ、ちょっと一旦外に出よう。何だか気持ち悪い」
 高橋「そうですね」

 私達は一旦、『子供部屋』を出て、夫婦の寝室に戻った。

 愛原「ふう……」

 夫婦の寝室は臭いも殆ど無く、窓が多いということもあって、解放感があった。

 愛原「そっちの部屋とは偉い違いだな」
 高橋「そうっスね。結局その部屋、何なんでしょう?」
 愛原「そこがゲストルームなんだとしたら納得できるんだけど、ただ、それでも少しおかしいんだよな」
 高橋「え?」
 愛原「そこの『子供部屋』に入るのにも、夫婦の寝室を通らないとダメだろう?」
 高橋「そうですね」
 愛原「ということは、ゲストルームとしては使えないよ、やっぱり。となると、やっぱり『子供部屋』なんじゃないかと思う」
 高橋「何なんスかね?つまり、子供を閉じ込めていたってことっスか?」
 愛原「そう。そしてきっと、その子供が『鬼』だったんだと思う。そこの部屋に“獲物”を連れ込んで……って、ダメだな」
 高橋「ダメですか?」
 愛原「だったら、何でこんなメンド臭い導線になってるんだ?」

 私は再び階段まで戻った。

 愛原「こうやって2階に上がって、廊下をグルッと大回りして、夫婦の寝室に入ってから、ようやく子供部屋だで?“獲物”を連れ込むのに、こんなメンド臭いことするか?」
 高橋「確かに……」
 愛原「それに、子供部屋とかには窓が一切無いのに、廊下にはある。しかも、カーテンが付いていない。外から丸見えの状態で、“獲物”を連れ込んだりして、ややもしたら外から目撃されるかもしれないのに、そういうリスクを取るかね?だったら、階段を上って右に曲がり、その突き当りにドアを付ければいいだろう。まあ、両側の突き当りにも窓はあるけどね」
 高橋「そう考えるとこの家、案外窓多いっスね」
 愛原「そうなんだ。そうなんだよ。まるで、『外から見てください』と言わんばかりに……」
 リサ「『この家に鬼なんていませんよォ』ってことかな」
 愛原「心理トリックか……」

 血の臭いがしたのは、子供部屋と浴室と、家の外のマンホールだった。
 これが意味するものとは?

 リサ「あ、あとちょっと……人間の血の臭いがした所が……」
 愛原「なに?どこだ?」
 リサ「こっち来て」

 リサは階段を下りて1階に行き、それから車庫に向かった。

 リサ「ここから微かに臭いがしたの」

 それは車庫に備え付けられた物置。
 私はそれを開けた。
 恐らくタイヤとかもしまっていただろうから、そういった道具の臭いが微かに残っている。
 しかし、リサはその中から人間の血の臭いを嗅ぎ取ったようである。

 高橋「何でこんな所に?」
 愛原「いくら人食い鬼だからって、人肉や贓物を全部食べるわけではないだろう。仮に食べたとしても、骨までは食べないはずだ。それらを捨てに行く必要がある。だけど、いきなり車に積んで運び出すということができない場合、一時仮置きの場として、この物置の中に死体を入れてたんじゃないかな?」

 それに対して、リサはウンウンと頷いた。

 リサ「さすがにわたしも、骨まで食べたいとは思わない」

 とのこと。

 高橋「なるほど……。因みに、あの切れ目は何なんスかね?」
 愛原「切れ目?」

 物置の天井に、点検口の蓋のようなものがあった。

 愛原「あれは点検口の蓋じゃないのか?」
 高橋「何の為にですか?」
 愛原「何の為って……配管とか配線とかを点検する為の物だよ」
 高橋「そう、ですか」
 愛原「気になるなら、開けて確認してみるか?」

 私は車から持って来た脚立を立てた。
 まさか、ここで使うことになるとは。
 私は脚立に乗り、点検口を開けてみた。

 愛原「ん!?何だこりゃ!?」

 私は天井裏で、ある物を見つけた。

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