報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「再び埼玉へ」

2022-12-05 21:23:23 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月29日11:30.天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はリサを迎えに、東京中央学園までやってきた。
 始業式のある日は授業が無い為、生徒達は午前中で下校するはずであった。
 しかし、恐らくは白井伝三郎が犯人であろう。
 教育資料館として存在している旧校舎。
 その一角の壁は特異菌でできており、その胞子を吸って感染した生徒達が怪奇現象の幻覚を見るという事態に陥った。
 その為、急きょ、その治療薬を投与することとなった。
 表向きはワクチン接種。
 リサについては既に接種しているので、リサだけが対象外である。
 その為、リサだけが正門から1人で出て来た。

 リサ:「ただいま」
 愛原:「おう、お疲れさん。それじゃ、行こうか」
 リサ:「うん」

 私はリサと一緒に、JR上野駅に向かった。

 リサ:「これで、『学校の七不思議特集』も来年で終わり」
 愛原:「来年?今年じゃないのか?」
 リサ:「『七不思議の全て』の原因であるわたしが、来年までいるから」
 愛原:「なるほど」

 『放課後の女子トイレに現れる鬼(リサが老廃物と血液を吸い取る為、気に入った女子生徒を……)』『イジメをした女子だけが、必ず後で痛い目を見る(“トイレの花子さん”の教えをリサが忠実に守っている)』『学食のA定食(肉類)をリサが食べる前に売り切れにした者は不幸な目に遭う』『学食の日替わりカレー、特にビーフカレーやカツカレーをリサが食べる前に【以下略】』等々……。

 リサ:「……あ」
 愛原:「何だ?」
 リサ:「『体育の時にブルマを穿かない女子は不幸な目に遭う』も付け加えておかないとね。愛原先生の為に……!」
 愛原:「バレたら俺達、学校から追放されるからやめなさい!」
 リサ:「遠慮しなくていいよ。先生の為だもの……!」

 リサの瞳が金色にキラリと光る。

 リサ:「……あ」
 愛原:「こ、今度は何だ!?」
 リサ:「それだと、『八不思議』になっちゃう。どれか1つ、削除しないと……」
 愛原:「学食での怖い話、1つくらい削除してもいいんじゃない?」
 リサ:「ヤダ!それだけはヤダ!!」
 愛原:「オマエねぇ……」

[同日12:00.天候:晴 同地区 JR上野駅・低いホーム→高崎線3003M列車1号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の14番線の列車は、12時10分発、特急“草津”3号、長野原草津口行きです。この列車は、7両です。……〕

 時間帯も良かったので、下りも特急に乗ることにした。
 これは私の趣味も入っているので、自腹を切ることにする。
 誰ですか?『どうせ、経費で落とすんだろ?』とか言ってる人!?

 リサ:「早く乗って食べたーい」

 で、下りは駅弁をねだられた。
 しょうがないので、買ってやる。
 私なんかは、立ち食いソバ屋でもいいのだが……。

〔まもなく14番線に、当駅始発、特急“草津”3号、長野原草津口行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この列車は、7両です。……〕

 特急にしたのには、もう1つ理由がある。
 普通列車のグリーン車だと、どうしても車両が中間の4号車と5号車になってしまう。
 それだと、いちいち乗るのに善場主任に申告しなければならない。
 リサが列車に乗る時、BSAAとの取り決めで、先頭車か最後尾となっているからだ。
 しかし、特急なら自由席が最後尾にあるので、いちいち申告する必要も無いというわけだ。
 無論、地方ローカル線の1両単行や2両編成の列車に乗る場合も、申告不要。

 リサ:「来た来た」

 尾久方向からゆっくりと、朝に乗ったのと同じ形式の車両が入線してきた。
 確か、朝降りたのもこのホームだったか。
 折り返して整備を受けて、また戻ってきたのか、それとも……。

 リサ:「このまま、先生と2人で温泉旅行したいなぁ……」

 リサが甘えるような声を出して、私に寄り掛かって来た。

 愛原:「こらこら。そんなことしたら、善場主任に射殺されるよ」
 リサ:「えー?善場さんは関係無いんじゃなーい?」

〔「業務連絡。14(とおよん)番、準備できましたら、ドア扱い願います」〕

 車掌が乗り込み、駅員の合図でドアが開いた。

〔「どうぞ、ご乗車ください」〕

 ドアが開いて、私達は列車に乗り込んだ。

 

 愛原:「ここにするか」
 リサ:「あっ、今度は席を選んでいいんだ」
 愛原:「自由席だからね」

 往路は全車指定席だったので、どうしても指定席特急券でないとダメだった。
 もっとも、善場主任としては、その方がリサを監視しやすかったのだろう。
 しかし復路の列車は自由席がある為、今回はそこに乗り込む。
 自由席なので、特急料金も安い。

〔「ご案内致します。この列車は12時10分発、高崎線、吾妻線直通の特急“草津”3号、長野原草津口行きです。グリーン車は4号車、自由席は1号車と2号車です。停車駅は赤羽、浦和、大宮、熊谷、高崎、新前橋、渋川、中之条、終点長野原草津口の順に止まります。……」〕

 昔と比べると停車駅も減って、特急列車らしくなった。
 昔は快速“アーバン”号並みに停車駅があったものだ。
 リサはテーブルを出すと、早速駅弁の蓋を開けた。
 御多分に漏れず、肉類が中心の弁当だ。
 私はいつもの通りの幕の内弁当を開く。

 愛原:「……と、その前に善場主任に連絡しとかないとな」

 私はスマホを開くと、LINEで特急“草津”3号に乗り、それで大宮まで向かう旨を伝えた。
 返信はすぐに帰って来たが……。

 愛原:「おい、リサ。オマエの思考、読まれてるみたいだぞ?w」

 私はスマホの画面をリサに見せた。
 そこには、『リサには、愛原所長を草津温泉に連れて行かないように伝えておいてください』と、書かれていた。

 リサ:「ちっ……!さすがは『0番』」
 愛原:「先輩には逆らえないな?」
 リサ:「ぶー……」
 愛原:「分かったら、下車駅は大宮だ。いいな?」
 リサ:「はぁーい……」

 月曜日のせいか、そんなに乗客はいなかった。
 ただ、前の車両の方に歩いて行く乗客は多かったから、恐らく本当に草津温泉などに行く客は、指定席やグリーン車を取っているだけなのかもしれない。
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“愛原リサの日常” 「夏休み明け初日の登校」

2022-12-05 09:06:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月29日07:38.天候:晴 東京都台東区上野 JR上野駅→東京中央学園上野高校]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。「ご乗車お疲れさまでした。まもなく終点、上野、上野です。低いホームの14番線に到着致します。お出口は、左側です。上野からのお乗り換えをご案内致します。上野東京ライン……【以下略】」〕

 リサ達を乗せた特急列車は、尾久駅は比較的高速度で通過したものの、日暮里駅辺りから低速度で走行していた。
 そして、高いホームへ行く線路とは別の、低いホームへ向かう方の線路を走行し、列車は高度を下げる。
 薄暗いホームの入口を通過した後は、低速度を保ったまま、車止めのあるホームへと進入する。
 ついに列車は、車止めの手前で停車した。

〔うえの、上野。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 ドアが開くと、乗客が一斉に降り出す。
 リサ達も降りて、進行方向先にある中央改札口へと向かう。
 その途中で車両の方向幕が『回送』へと変わった。

〔「14番線の列車は、回送となります。ご乗車にはなれませんので、ご注意ください」〕

 愛原:「こういうので通勤できれば、楽だろうな……」
 リサ:「でも、遠い所から通うのも大変だよね」
 愛原:「まあな。……うん、それも考え物だな」

 乗客の大半は、高いホームへ移動して行った。
 恐らくこれから、上野東京ラインか京浜東北線、山手線に乗り換えて、更に南へと向かうのだろう。
 リサ達は中央改札口を出ると、駅の外に出た。
 しばらく歩くと、東京中央学園上野高校の正門が見える。

 リサ:「それじゃ、ここまででいいから」
 愛原:「分かった。何時ぐらいに終わる?」
 リサ:「11時くらい?」
 愛原:「分かった。それじゃ、11時半くらいに迎えに行くよ」
 リサ:「迎えに来てくれるの?」
 愛原:「高橋の病院に行くんだよ。俺達が行く頃には、何か分かるかもしれないだろ?」
 リサ:「ん、確かに」

 リサは愛原と別れると、学校の正門を潜った。

 リサ:「おはようございます」
 体育教師:「おう、おはよう!」
 リサ:「……今日はスーツなんですね?」
 体育教師:「ん?そりゃあ、始業式だからな。式のある日くらい、スーツを着るさ」

 いつもはジャージ姿の体育教師も、始業式などの日はスーツである。
 元々、授業も無いからだろう。

 リサ:「ワクチン接種……」

 もちろん、コロナでもなければ、インフルエンザでもない。
 旧校舎に発生した特異菌の治療薬だ。
 一連の学園内で発生した怪奇現象の正体は、全て特異菌による幻覚だったことが判明した。

 リサ:「そう考えると、何だかつまらない」
 小島:「リサぁ、おはよう」
 淀橋:「よっ、魔王様!」
 リサ:「2人とも、おはよう。……皆、日に焼けた?」
 淀橋:「そりゃあね」
 小島:「何だかお恥ずかしい」
 リサ:「そうか……」
 淀橋:「魔王様は焼けないね?」
 リサ:「まあ、わたしは……」

 日焼けも火傷の一種である。
 BOWたるリサは、傷を受けてもすぐに回復してしまう。
 つまり、日焼けしてもすぐに肌が再生するので、また元の色に戻ってしまうのである。

 リサ:「それより、あれ穿いて来た?」
 小島:「う、うん……」
 淀橋:「ねぇ、ガチの話なの?」
 リサ:「うん。ガチバナ。はい、服装チェック」

 リサはチラッとスカートをまくった。

 小島:「うぅ……本当に穿くことになるなんて……」
 淀橋:「陸上部員でもないのに……」

 小島と淀橋も、リサの指示通り、スカートの下には緑色のブルマを穿いていた。
 かつて東京中央学園で採用されていた、女子用の体操着である。
 今では事実上、廃止されている。
 事実上の廃止というだけで、廃止が明記されているわけではなく、かといって着用が禁止されたわけでもない。
 あくまでも、服装の規定に関する校則の中で、体操着の項目に『ブルマ』が削除されただけである。
 私学の中では比較的保守的な考えを持つ東京中央学園は、時代の流れに仕方なく従ったという形のようだ。
 制服で女子用のスラックスを採用している学校もある中で、東京中央学園では、まだ検討段階に入っているに過ぎない。

 体育教師:「ほら、そこ!早く教室に入れ!」

 スーツ姿でも、ホイッスルは手放していない体育教師が、ホイッスルを吹きながらリサ達に注意してきた。

 淀橋:「ヤベ、怒られた」
 リサ:「早く行こう」

 リサ達は校舎内に入った。

[同日08:30.天候:晴 東京中央学園上野高校・新校舎2F教室]

 坂上:「皆さん、おはようございます!」
 倉田:「おはようございます」

 担任の坂上と副担任の倉田が教室に入って来る。

 坂上:「これから始業式が行われますが、終了後、ワクチン接種が行われます。それを受けてから、帰るようにしてください」

 表向きはワクチン接種ということになっているが、実際は特異菌の治療薬である。

 リサ:(ん?待てよ……)

 因みに、既に治療薬の接種を受けたリサは対象外である。

 リサ:(今まで学校で起きていた怪奇現象の数々が、特異菌による幻覚だったってことになるのなら……)

 少なくともお化けや妖怪、幽霊が出て来るような怪奇現象は、全てそれによるものとされるだろう。
 しかし、そうではなく、この学園に伝わる怖い話の中には、人間だけが織り成す怖い話なんてのもある。
 これは、特異菌による怪奇現象は関係無いだろう。
 生きている人間が狂って起こした殺人事件なんてのも、狂った人間が特異菌に感染していたのかもしれないが、それ自体は本当に起こった話だ。
 そうではなくて、今現在進行形で起きている怪奇現象の正体は……。

 リサ:(今ウワサされている怖い話の原因……全部わたしか!)

 リサ、BOWとして、『東京中央学園七不思議』の全てを支配するモノに昇格だ。
 おめでとう!

 坂上:「高校生活も折り返し地点に入ったことだし、ここからは更に気を引き締めて、進路についてもそろそろ決めて……」

 担任の坂上の話が、なかなか頭に入らないリサであった。
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