[8月29日11:30.天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日はリサを迎えに、東京中央学園までやってきた。
始業式のある日は授業が無い為、生徒達は午前中で下校するはずであった。
しかし、恐らくは白井伝三郎が犯人であろう。
教育資料館として存在している旧校舎。
その一角の壁は特異菌でできており、その胞子を吸って感染した生徒達が怪奇現象の幻覚を見るという事態に陥った。
その為、急きょ、その治療薬を投与することとなった。
表向きはワクチン接種。
リサについては既に接種しているので、リサだけが対象外である。
その為、リサだけが正門から1人で出て来た。
リサ:「ただいま」
愛原:「おう、お疲れさん。それじゃ、行こうか」
リサ:「うん」
私はリサと一緒に、JR上野駅に向かった。
リサ:「これで、『学校の七不思議特集』も来年で終わり」
愛原:「来年?今年じゃないのか?」
リサ:「『七不思議の全て』の原因であるわたしが、来年までいるから」
愛原:「なるほど」
『放課後の女子トイレに現れる鬼(リサが老廃物と血液を吸い取る為、気に入った女子生徒を……)』『イジメをした女子だけが、必ず後で痛い目を見る(“トイレの花子さん”の教えをリサが忠実に守っている)』『学食のA定食(肉類)をリサが食べる前に売り切れにした者は不幸な目に遭う』『学食の日替わりカレー、特にビーフカレーやカツカレーをリサが食べる前に【以下略】』等々……。
リサ:「……あ」
愛原:「何だ?」
リサ:「『体育の時にブルマを穿かない女子は不幸な目に遭う』も付け加えておかないとね。愛原先生の為に……!」
愛原:「バレたら俺達、学校から追放されるからやめなさい!」
リサ:「遠慮しなくていいよ。先生の為だもの……!」
リサの瞳が金色にキラリと光る。
リサ:「……あ」
愛原:「こ、今度は何だ!?」
リサ:「それだと、『八不思議』になっちゃう。どれか1つ、削除しないと……」
愛原:「学食での怖い話、1つくらい削除してもいいんじゃない?」
リサ:「ヤダ!それだけはヤダ!!」
愛原:「オマエねぇ……」
[同日12:00.天候:晴 同地区 JR上野駅・低いホーム→高崎線3003M列車1号車内]
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の14番線の列車は、12時10分発、特急“草津”3号、長野原草津口行きです。この列車は、7両です。……〕
時間帯も良かったので、下りも特急に乗ることにした。
これは私の趣味も入っているので、自腹を切ることにする。
誰ですか?『どうせ、経費で落とすんだろ?』とか言ってる人!?
リサ:「早く乗って食べたーい」
で、下りは駅弁をねだられた。
しょうがないので、買ってやる。
私なんかは、立ち食いソバ屋でもいいのだが……。
〔まもなく14番線に、当駅始発、特急“草津”3号、長野原草津口行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この列車は、7両です。……〕
特急にしたのには、もう1つ理由がある。
普通列車のグリーン車だと、どうしても車両が中間の4号車と5号車になってしまう。
それだと、いちいち乗るのに善場主任に申告しなければならない。
リサが列車に乗る時、BSAAとの取り決めで、先頭車か最後尾となっているからだ。
しかし、特急なら自由席が最後尾にあるので、いちいち申告する必要も無いというわけだ。
無論、地方ローカル線の1両単行や2両編成の列車に乗る場合も、申告不要。
リサ:「来た来た」
尾久方向からゆっくりと、朝に乗ったのと同じ形式の車両が入線してきた。
確か、朝降りたのもこのホームだったか。
折り返して整備を受けて、また戻ってきたのか、それとも……。
リサ:「このまま、先生と2人で温泉旅行したいなぁ……」
リサが甘えるような声を出して、私に寄り掛かって来た。
愛原:「こらこら。そんなことしたら、善場主任に射殺されるよ」
リサ:「えー?善場さんは関係無いんじゃなーい?」
〔「業務連絡。14(とおよん)番、準備できましたら、ドア扱い願います」〕
車掌が乗り込み、駅員の合図でドアが開いた。
〔「どうぞ、ご乗車ください」〕
ドアが開いて、私達は列車に乗り込んだ。
愛原:「ここにするか」
リサ:「あっ、今度は席を選んでいいんだ」
愛原:「自由席だからね」
往路は全車指定席だったので、どうしても指定席特急券でないとダメだった。
もっとも、善場主任としては、その方がリサを監視しやすかったのだろう。
しかし復路の列車は自由席がある為、今回はそこに乗り込む。
自由席なので、特急料金も安い。
〔「ご案内致します。この列車は12時10分発、高崎線、吾妻線直通の特急“草津”3号、長野原草津口行きです。グリーン車は4号車、自由席は1号車と2号車です。停車駅は赤羽、浦和、大宮、熊谷、高崎、新前橋、渋川、中之条、終点長野原草津口の順に止まります。……」〕
昔と比べると停車駅も減って、特急列車らしくなった。
昔は快速“アーバン”号並みに停車駅があったものだ。
リサはテーブルを出すと、早速駅弁の蓋を開けた。
御多分に漏れず、肉類が中心の弁当だ。
私はいつもの通りの幕の内弁当を開く。
愛原:「……と、その前に善場主任に連絡しとかないとな」
私はスマホを開くと、LINEで特急“草津”3号に乗り、それで大宮まで向かう旨を伝えた。
返信はすぐに帰って来たが……。
愛原:「おい、リサ。オマエの思考、読まれてるみたいだぞ?w」
私はスマホの画面をリサに見せた。
そこには、『リサには、愛原所長を草津温泉に連れて行かないように伝えておいてください』と、書かれていた。
リサ:「ちっ……!さすがは『0番』」
愛原:「先輩には逆らえないな?」
リサ:「ぶー……」
愛原:「分かったら、下車駅は大宮だ。いいな?」
リサ:「はぁーい……」
月曜日のせいか、そんなに乗客はいなかった。
ただ、前の車両の方に歩いて行く乗客は多かったから、恐らく本当に草津温泉などに行く客は、指定席やグリーン車を取っているだけなのかもしれない。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日はリサを迎えに、東京中央学園までやってきた。
始業式のある日は授業が無い為、生徒達は午前中で下校するはずであった。
しかし、恐らくは白井伝三郎が犯人であろう。
教育資料館として存在している旧校舎。
その一角の壁は特異菌でできており、その胞子を吸って感染した生徒達が怪奇現象の幻覚を見るという事態に陥った。
その為、急きょ、その治療薬を投与することとなった。
表向きはワクチン接種。
リサについては既に接種しているので、リサだけが対象外である。
その為、リサだけが正門から1人で出て来た。
リサ:「ただいま」
愛原:「おう、お疲れさん。それじゃ、行こうか」
リサ:「うん」
私はリサと一緒に、JR上野駅に向かった。
リサ:「これで、『学校の七不思議特集』も来年で終わり」
愛原:「来年?今年じゃないのか?」
リサ:「『七不思議の全て』の原因であるわたしが、来年までいるから」
愛原:「なるほど」
『放課後の女子トイレに現れる鬼(リサが老廃物と血液を吸い取る為、気に入った女子生徒を……)』『イジメをした女子だけが、必ず後で痛い目を見る(“トイレの花子さん”の教えをリサが忠実に守っている)』『学食のA定食(肉類)をリサが食べる前に売り切れにした者は不幸な目に遭う』『学食の日替わりカレー、特にビーフカレーやカツカレーをリサが食べる前に【以下略】』等々……。
リサ:「……あ」
愛原:「何だ?」
リサ:「『体育の時にブルマを穿かない女子は不幸な目に遭う』も付け加えておかないとね。愛原先生の為に……!」
愛原:「バレたら俺達、学校から追放されるからやめなさい!」
リサ:「遠慮しなくていいよ。先生の為だもの……!」
リサの瞳が金色にキラリと光る。
リサ:「……あ」
愛原:「こ、今度は何だ!?」
リサ:「それだと、『八不思議』になっちゃう。どれか1つ、削除しないと……」
愛原:「学食での怖い話、1つくらい削除してもいいんじゃない?」
リサ:「ヤダ!それだけはヤダ!!」
愛原:「オマエねぇ……」
[同日12:00.天候:晴 同地区 JR上野駅・低いホーム→高崎線3003M列車1号車内]
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の14番線の列車は、12時10分発、特急“草津”3号、長野原草津口行きです。この列車は、7両です。……〕
時間帯も良かったので、下りも特急に乗ることにした。
これは私の趣味も入っているので、自腹を切ることにする。
リサ:「早く乗って食べたーい」
で、下りは駅弁をねだられた。
しょうがないので、買ってやる。
私なんかは、立ち食いソバ屋でもいいのだが……。
〔まもなく14番線に、当駅始発、特急“草津”3号、長野原草津口行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この列車は、7両です。……〕
特急にしたのには、もう1つ理由がある。
普通列車のグリーン車だと、どうしても車両が中間の4号車と5号車になってしまう。
それだと、いちいち乗るのに善場主任に申告しなければならない。
リサが列車に乗る時、BSAAとの取り決めで、先頭車か最後尾となっているからだ。
しかし、特急なら自由席が最後尾にあるので、いちいち申告する必要も無いというわけだ。
無論、地方ローカル線の1両単行や2両編成の列車に乗る場合も、申告不要。
リサ:「来た来た」
尾久方向からゆっくりと、朝に乗ったのと同じ形式の車両が入線してきた。
確か、朝降りたのもこのホームだったか。
折り返して整備を受けて、また戻ってきたのか、それとも……。
リサ:「このまま、先生と2人で温泉旅行したいなぁ……」
リサが甘えるような声を出して、私に寄り掛かって来た。
愛原:「こらこら。そんなことしたら、善場主任に射殺されるよ」
リサ:「えー?善場さんは関係無いんじゃなーい?」
〔「業務連絡。14(とおよん)番、準備できましたら、ドア扱い願います」〕
車掌が乗り込み、駅員の合図でドアが開いた。
〔「どうぞ、ご乗車ください」〕
ドアが開いて、私達は列車に乗り込んだ。
愛原:「ここにするか」
リサ:「あっ、今度は席を選んでいいんだ」
愛原:「自由席だからね」
往路は全車指定席だったので、どうしても指定席特急券でないとダメだった。
もっとも、善場主任としては、その方がリサを監視しやすかったのだろう。
しかし復路の列車は自由席がある為、今回はそこに乗り込む。
自由席なので、特急料金も安い。
〔「ご案内致します。この列車は12時10分発、高崎線、吾妻線直通の特急“草津”3号、長野原草津口行きです。グリーン車は4号車、自由席は1号車と2号車です。停車駅は赤羽、浦和、大宮、熊谷、高崎、新前橋、渋川、中之条、終点長野原草津口の順に止まります。……」〕
昔と比べると停車駅も減って、特急列車らしくなった。
昔は快速“アーバン”号並みに停車駅があったものだ。
リサはテーブルを出すと、早速駅弁の蓋を開けた。
御多分に漏れず、肉類が中心の弁当だ。
私はいつもの通りの幕の内弁当を開く。
愛原:「……と、その前に善場主任に連絡しとかないとな」
私はスマホを開くと、LINEで特急“草津”3号に乗り、それで大宮まで向かう旨を伝えた。
返信はすぐに帰って来たが……。
愛原:「おい、リサ。オマエの思考、読まれてるみたいだぞ?w」
私はスマホの画面をリサに見せた。
そこには、『リサには、愛原所長を草津温泉に連れて行かないように伝えておいてください』と、書かれていた。
リサ:「ちっ……!さすがは『0番』」
愛原:「先輩には逆らえないな?」
リサ:「ぶー……」
愛原:「分かったら、下車駅は大宮だ。いいな?」
リサ:「はぁーい……」
月曜日のせいか、そんなに乗客はいなかった。
ただ、前の車両の方に歩いて行く乗客は多かったから、恐らく本当に草津温泉などに行く客は、指定席やグリーン車を取っているだけなのかもしれない。