報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「色々な話」

2022-12-30 20:34:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月15日10:00.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は善場主任と打ち合わせに、新橋のデイライト事務所に来ている。
 高橋は助手として留守番してもらっている。

 善場:「東京中央学園は、大変なことになったようですね」
 愛原:「ええ。今度は生徒会長が、屋上から飛び下りて亡くなりました」
 善場:「もっとも、リサの寄生虫のせいで、死体の処理が大変ですけどね。御遺族に遺体をお渡しすることもできず、それもまた痛ましい限りです」
 愛原:「リサには、もう少し寄生虫を使うのを自重しろと言っておきます」
 善場:「ええ。そうしてください」
 愛原:「リサには、何か処分は無いのですか?」
 善場:「今のところ、寄生虫の事に関しては、BSAAからも何も言って来ないので、こちらとしても禁止のしようが無いのです。一応、リサの制御が利いているようですし、そのリサも暴走していませんし……」

 それでいいのだろうか?

 善場:「それに、少しはどこかで『力』を使うのを黙認してやらないと、却って暴走の危険がありますので」
 愛原:「うーむ……。そういうものですか」
 善場:「そういうものです。そもそも、今回の事件は、リサの寄生虫のせいだという証拠がありませんので」

 生徒会長がGウィルスとTウィルスに感染していたことは分かったが、その原因はハッキリしていない。
 ただ、リサが認めた為、その2つのウィルスに感染していた寄生虫に寄生されたのが原因だとされている。
 しかし、それが直接の死亡原因ではない為、リサには何のお咎め無いのだ(リサの寄生虫使用が原因だと後に判明するのだが、この時はまだ私達は知る由も無かった)。

 善場:「何しろ遺書が見つかっていないので、原因が分からないのです。きっかけとしては、大勢の生徒・教職員が見ている前で便失禁したことを気に病んでのことだと見られていますが……」

 宿主が死んだので、寄生虫も死滅している。
 その為、その寄生虫が原因なのかは不明である。
 生徒会長は1週間便秘に悩んでいて、強い下剤を何度も飲んでいたというから、それが原因で失禁してしまったのだとされている。

 愛原:「どうしても、リサの影がちらつくのですが?」
 善場:「そうですね。しかし、確固たる証拠がありません。本当はあったのに、それを全てあのコが消したのだとしたら、恐ろしい完全犯罪者ですよ。恐らく、BSAAに認知・登録されているBOWの中では、一番の知能犯かもしれません」
 愛原:「うへー……」
 善場:「それでもリサは、愛原所長を慕っています。そうしているうちは、暴走の危険がありません」
 愛原:「まあ、確かに……」
 善場:「それより、どうして日本に特異菌が持ち込まれたのかの理由が分かって来ましたので、お知らせします」
 愛原:「おおっ!」
 善場:「東京中央学園の怪奇現象が多発したのは、1990年代です。その頃に、特異菌が白井伝三郎によって持ち込まれたものと推察されます」
 愛原:「外国からですよね?」
 善場:「もちろんです。どうやら、ルーマニアから直接仕入れたのではなく、アメリカのアンブレラ本社から仕入れたものだと分かりました」
 愛原:「それはどうして分かったんですか?」
 善場:「日本アンブレラの社長、五十嵐皓貴の息子で副社長だった被告がついに自供したのです」
 愛原:「おおっ!」
 善場:「アメリカのラクーンシティには、アンブレラの研究施設がありました」
 愛原:「有名ですね!」
 善場:「白井伝三郎がそこにいたという記録をようやく得たのです」
 愛原:「何ですと!?あの、ゾンビパラダイスだったラクーンシティからどうやって?」
 善場:「バイオハザードが起きる前に、しれっと脱出していたようですね。都合、2回です」
 愛原:「2回!?」
 善場:「1994年に1回と、バイオハザードの起きる1998年に1回行っています」
 愛原:「あそこは空港とかがありましたっけ?」
 善場:「無いです。あそこはハイウェイが1本とヘリポートしかありません」
 愛原:「霧生市みたいですね」
 善場:「そのハイウェイをグレイハウンドバスが運行していたので、一般の旅行客に扮して、それで町を出入りしていたとのことです」
 愛原:「へえ……!」

 
(町がゾンビで溢れる直前、ニューヨークに向かってラクーンシティを出発するグレイハウンドバス。このバスに、白井が乗っていたという)

 善場:「そして2回目は、ついに町がゾンビだらけになり、町が封鎖される直前に出発したグレイハウンドバスがいたのですが、それに乗っていたとのことです」
 愛原:「荷物として、特異菌を持っていた?」
 善場:「そうですね」
 愛原:「いっつも危ない運び方をする製薬会社だ」

 よくバスの中でバイオハザードが起きなかったものだ。

 善場:「そうしてまんまと日本に特異菌を持ち込むことに成功した白井は、新校舎の科学室ではなく、旧校舎を利用したようです」
 愛原:「なるほどなぁ……。善場主任、やはりリサを東京中央学園に入れたのは……」
 善場:「ええ。リサを学内に潜入させて、白井のことを調査する足掛かりを作る為です。そういった意味では、愛原所長もリサもよくやってくれたと思います。なのでリサが証拠を出さない限りは、リサのことを追及するつもりはありません」
 愛原:「警察が何か掴むかもしれませんよ?」
 善場:「その時はその時です。警察は自殺か他殺かを調べているわけですし、自殺と分かったら、今度はその原因について捜査するだけです」
 愛原:「なるほど……」

[同日11:09.天候:晴 同地区 東京メトロ銀座駅→銀座線1015電車1号車内]

〔まもなく2番線に、浅草行きが到着します。黄色い点字ブロックの内側まで、お下がりください〕

 善場主任との話が終わった私は、リサの学校に顔を出してみることにした。
 上野に行くのに、JRではなく、地下鉄を利用してみた。
 先ほどの話の中にラクーンシティが出て来ており、そこには地下鉄も走っていたからというのが理由である。
 まあ、しょうもない理由だ。
 開業当時の銀座線の電車をモチーフにしたという、黄色の電車がやってくる。

〔足元に、ご注意ください。新橋、新橋。浅草行きです〕

 新橋駅にはまだホームドアが無い。
 私は電車に乗り込むと、空いている座席に腰かけた。
 すぐに発車メロディが鳴り響く。

〔2番線は、発車致します。閉まるドアに、ご注意ください。駆け込み乗車は、おやめください〕

 ピンポンピンポンとドアチャイムが鳴り、電車のドアが閉まる。
 最後尾に乗っているので、車掌の発車合図のブザーが聞こえてくると、電車が走り出した。
 銀座線ではツーマン運転だが、ラクーンシティの地下鉄(市営ではなく、カイトブロス鉄道という私鉄)はATO運転のワンマン、霧生市の霧生電鉄は非ATOのワンマンであった(2両編成運転時のみ)。

〔東京メトロ銀座線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は、神田、上野方面、浅草行きです。次は銀座、銀座です。乗り換えのご案内です。丸ノ内線、日比谷線はお乗り換えください〕

 私は高橋に、事務所に戻らず、リサの学校に行って様子を見て来る旨のLINEを送った。
 高橋からはすぐに既読が付いて、『了解しました』という返信が来た。
 リサには言っておいたが、本当に死者に鞭打つ言動などをしていないかどうか、確認してこようと思った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“愛原リサの日常” 「勝利の代償」 2

2022-12-30 15:42:47 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月14日09:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 この日は臨時の休校日となった。
 飛び降り自殺者が出たということで、学校側が対応に追われているからである。
 愛原もまたPTA会長代行ということで、学校に行っており、事務所には高橋が残された。
 学校が休みになったことで、リサも事務所にいるが、他にも桜谷が画材道具を持って訪ねて来た。

 桜谷:「しばらく絵の続きが描けなかったので、何とか今日もお願いします」
 リサ:「分かってる。愛原先生には許可を取った」
 桜谷:「ありがとうございます!」
 高橋:「ったくよー。ここはアトリエじゃねぇってんだ」
 リサ:「愛原先生には許可を取ってある。今日は来客の予定は無いから、そっちの応接室を使っていいって」
 高橋:「……ちっ、先生の御命令ならしょうがねぇ」
 リサ:「そういうこと」
 桜谷:「リサ様、早速準備をお願いします」
 リサ:「分かった。衣装は持って来ている」
 桜谷:「私も着替えます」
 高橋:「来客の予定は無いが、善場のねーちゃんがひょっこり来るかもしれねーぞ?」
 リサ:「その時はすぐ退ける」

 リサと桜谷は、応接室に入って行った。

 リサ:「ちょっと、ソファとテーブルを退かそうか」
 桜谷:「はい」
 リサ:「よいしょっと」

 リサ、カウチソファをひょいと持ち上げた。

 桜谷:「さ、さすがは魔王様……」
 リサ:「これくらい、軽い軽い。オリジナルの大先輩なんか、手枷付きの状態で、石像を叩き壊すくらいだから」
 桜谷:「さ、さすがです……」

 制作スペースを確保した後、2人は体操服とブルマに着替える。
 桜谷は学校指定の緑ブルマであるが、リサは紺色のブルマであった。
 リサの愛読マンガ“ドキュンサーガ”の魔王の衣装をモチーフにしているものだが、魔王らしくするということで、リサの場合は上に黒マントを羽織り、右手にはゴツい意匠の付いた杖を持っている。
 桜谷は体操服の上から、エプロンを着用した。

 リサ:「だいぶ描けてるんじゃない?」
 桜谷:「そうですね。おかげさまで、今月中には描き終われそうです」
 リサ:「わたしの血入り絵具と、寄生虫をすり潰して抽出した体液を混ぜた絵具を使えば、最優秀賞間違いナシだよ」
 桜谷:「さ、さすがは魔王様……。け、血気術か何かですか?」
 リサ:「そうとも言う!……あんまり力を使い過ぎると、鬼斬りセンパイに斬られるから程々にしておこう」
 桜谷:「あの栗原先輩、そんなに凄い方なんですか。確かに、左足が義足ながら、女子剣道部の中では1番強いという噂ですが……」
 リサ:「西日本の方では、わたしの同族をぶった斬ったって話だよ」
 桜谷:「そんなに!?」
 リサ:「まあ、わたしに言わせれば、そいつらが弱かっただけだと思うけどね」
 桜谷:「その、魔王様と同族の話なのですが……」
 リサ:「ん?」
 桜谷:「聖クラリス学院のことは御存知ですよね?」
 リサ:「ああ、あの女子校。あそこも、わたしの同族が支配しようとしたらしいんだけど、失敗したね。ざまぁみろ」
 桜谷:「そのやり方なんですが……」
 リサ:「ん?」
 桜谷:「生徒会長ではないですが、魔王様の同族の不興を買ったコが、うん○をお漏らしさせられたそうです」
 リサ:「ほお……?寄生虫を使役できるのは、わたしだけのはずだけど?」
 桜谷:「どうやったのかは知りませんが、相当のイジメっ子だったようです」
 リサ:「ん、だろうね。わたしに限らず、日本版リサ・トレヴァー全員がSだから」

 嗜虐性に富んだ生物兵器同士、仲良くできるのは上辺だけ。
 ちょっとでもそのバランスが崩れようものなら、流血の惨を見る事、必至である。

 リサ:「……準備できた。同じポーズでいい?」
 桜谷:「もちろんです。よろしくお願いします」
 リサ:「可愛く描いてくれてる?」
 桜谷:「魔王様らしく、凛々しく描かせて頂いております」
 リサ:「凛々しく……。まあ、“ドキュンサーガ”の魔王様のように描いてくれればいいや」
 桜谷:「お任せください」

[同日15:00.天候:雷雨 同事務所]

 愛原:「ふぅーっ!参った参った!まさか、このタイミングでゲリラ豪雨とは……」

 愛原が事務所に帰所してくる。

 高橋:「お帰りなさい、先生。まさか、駅からずっと走って?言ってくれれば俺、迎えに行きましたのに……」
 愛原:「いや、秋葉原駅からタクシーに乗ったから、それはいいよ。秋葉原駅から岩本町駅に行こうとした時、さすがに降りそうだったから、タクシーにした。事務所の前で降りたから、そんなに濡れてない」
 高橋:「そうでしたか」
 愛原:「リサはどうした?」
 高橋:「そっちで絵のモデルやってます」
 愛原:「そうか……」

 愛原は応接室のドアをノックした。

 リサ:「はーい!」
 愛原:「俺だ。ちょっと今、いいか?」
 リサ:「先生!……今行く!」

 リサはすぐに応接室から出た。
 さすがに黒マントは脱いで、杖も室内に置いている。

 愛原:「制作の邪魔だったかな?」
 桜谷:「いいえ。ちょうど、休憩を挟もうとしていたところでしたので」
 愛原:「そうか。話があるから、ちょっと来てくれないかな」
 リサ:「分かった」
 桜谷:「分かりました」

 体操服にブルマ姿の少女2人は、応接室から出た。
 そして、応接室とは別の打ち合わせコーナーに向かった。

 愛原:「まず、明日は普通に学校が始まる」
 桜谷:「そうですか」
 愛原:「当然ながら、臨時の全体朝礼が行われることになっていて、そこで校長先生などから説明がある。その後で、黙祷などを捧げることになるだろう」

 そう言って、愛原はリサをチラッと見た。

 愛原:「日本版リサ・トレヴァーの習性で、『“武士の情け”などクソ食らえ』『敵と見做した者は、例え死者となっても鞭をガッツリ打て』という日本人の美学に反した物を持っているのは知っている。恐らくリサ、オマエもそうなんだろう?」
 リサ:「そうだね。『敵には容赦無く』『完膚なきまでに叩き潰す』『武士の情け”なんて必要ない』『敵が死んだら鞭打つどころか、墓石を蹴り倒しても構わない』くらいの勢いだけど?」

 万が一、死者が怨霊として化けて出て来て祟られた時のことなど全く考えない“鬼”そのものであった。

 愛原:「そ、そうか」

 その為、リサは霧生市で初めて愛原と会った時、最初から敵とは見做していなかったのではないかと思われる。
 そしてそんな愛原も、リサを化け物だとは思わなかった。
 それが引いては、今のような関係に発展したわけである。

 愛原:「一度敵と見做した者に黙祷とは苦痛だと思うけど、これも日本の学校だ。そこに通っている以上は、オマエも一緒に黙祷しなければならない。いいか?」
 リサ:「……愛原先生の命令なら従う」
 愛原:「そうだ。俺の命令だ」
 高橋:「リサ。先生の御命令は絶対だぞ?」
 リサ:「分かってるよ」
 桜谷:「それで、その……。会長の告別式とかは、どうなるんですか?」

 桜谷が遠慮がちに挙手しながら質問した。

 愛原:「まだ、警察の司法解剖の最中だから。それが終わってからだな。ただ……リサ、その会長に、だいぶGウィルスを送り込みやがったか?」
 リサ:「えっ?えっと……それは……」

 すると高橋、手持ちのライトニング・ホークをリサのこめかみに突き付けた。
 悲鳴を上げる桜谷。

 高橋:「やったのかよ?先生の尋問に答えなきゃ、引き金を引くぞ?」
 リサ:「ただの脅し。わたしはそんなもので死なない。……まあ、さすがに痛いけど」
 高橋:「だったら答えろや!!」
 愛原:「まあまあ、高橋。リサはともかく、桜谷さんが怖がってるだろうが」
 高橋:「は、はあ……」
 愛原:「銃を下ろせ」
 高橋:「は、はい」
 愛原:「それで、どうなんだ?」
 リサ:「わたしの寄生虫を送り込んだ。先生も知ってると思うけど、わたしの寄生虫はGウィルスとTウィルスに感染している」
 愛原:「やっぱりなぁ……」
 高橋:「やっぱりって何なんスか?」
 愛原:「リサの寄生虫は宿主が死ぬと、自動的に死滅するようにはなっているんだけど、GウィルスやTウィルスまでは消えない」
 高橋:「それってつまり……」
 愛原:「死んだ会長は、その2つのウィルスに感染しているということだよ。今、BSAAが解剖先の病院に向かって、遺体を回収しに行くところだ」
 高橋:「大ごとっスねぇ。どっかの誰かさんのせいで?」

 高橋はわざとらしく、リサをチラ見した。

 愛原:「あれでは告別式どころの騒ぎじゃないだろう?」
 桜谷:「あの、結局どういうことなんですか?告別式とかは……」
 愛原:「桜谷さんは、コロナ禍第1波辺りの騒ぎは覚えてるだろう?」
 桜谷:「え、ええ。マスクが思いっ切り不足したり、トイレットペーパーが不足したりしましたね」
 愛原:「まあ、そうなんだが、今はそこじゃない。あの時期に亡くなった、志村けんのことは知ってるだろう?」
 桜谷:「そうですね」
 愛原:「志村けんはコロナに感染して死んだことになってる。だが、遺族は遺体と対面できなかったそうだ」
 高橋:「有名な話ですね」
 愛原:「コロナ感染死に限らず、伝染病などで死んだ人間は、遺体と会わせられないそうだ。もちろん、伝染病の内容にもよるだろうが」
 桜谷:「今回の場合は……」
 愛原:「BSAAとWHOの見解では、生物兵器ウィルスに感染して死んだ人間は、速やかに火葬することが望ましいとしている。当然、日本政府もそうしている。霧生市でゾンビ化した市民に対し、遺族は2度と対面できなかったそうだ。そういうことだよ」
 桜谷:「すると告別式は無し……」
 愛原:「お別れ会はするだろうな」

 それだけ恐ろしいウィルスを、リサは保有しているのである。
 リサ自身が生物兵器(BOW)と呼ばれる所以である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする