報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「悪夢からの目覚め」 4

2022-12-10 20:08:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月3日08:00.天候:晴 東京都港区新橋 相鉄フレッサイン新橋日比谷口・客室]

 枕元にセットしたアラームが鳴り響き、リサは目を覚ました。

 リサ:「うーん……」

 手を伸ばして、アラームを止める。

 リサ:「ふわ……」

 昨夜は愛原を迎えに行けるということで、なかなか寝付けなかった。
 それでもいつしか、眠りに落ちたようだ。
 リサは大きな欠伸をして、牙を覗かせながらバスルームに向かった。
 昨日は早速、桜谷の絵のモデルになる為の衣装合わせをやってみた。
 ブルマは“ドキュンサーガ”の魔王様に合わせて、紺色の物を用意した。
 上は学校の体操服のものだったが、その上から演劇部が使用していた黒いマントを羽織ることにした。
 それだけだと手持無沙汰なので、演劇で使用したゴツい杖も持つことにした。
 そしたら何故か、写真部からも撮影を求められるほどで、美術部との間で小競り合いが起きた。
 更には、新聞部まで……。
 とにかく、美術部の方が先約なので、そちらを先にすることにした。

 リサ:(わたしはBOW的にリサ・トレヴァーであって、魔王ではないんだけどなぁ……)

 リサは顔を洗って、歯を磨きながらそう思った。

 

 せっかくだからと、服は私服ではなく、制服を着てみる。
 その下には、昨日穿いた紺色ブルマを穿くことにした。
 モスグリーンのスカートに、紺色のブルマはややミスマッチだろうか。

 リサ:「よし」

 朝の身支度を終えると、リサは朝食を食べに2階の大戸屋に向かった。

[同日09:25.天候:晴 同区内 JR新橋駅→京浜東北線816B電車10号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の6番線の電車は、9時25分発、各駅停車、南浦和行きです。当駅を出ますと、次は、有楽町に停車します〕

 朝食後、ホテルをチェックアウトしたリサは、キャリーバッグを持って新橋駅に向かった。
 愛原の迎えに行くのはいいが、善場達は先に病院に行っている為、病院までは電車とバスで自力で来るように言われた。
 もっとも、ルート選定まではしてくれたが。

 リサ:(京浜東北線の、大宮行きか南浦和行きに乗る……)

 京浜東北線快速運転中は、全ての電車が通過する新橋駅であるが、この時間帯はまだ各駅停車での運転である。

〔まもなく6番線に、各駅停車、南浦和行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕

 ホテル側に1番近いホームである。
 ホームからは、駅前広場が見える。
 よく、マスコミが中継や、サラリーマンにインタビューを行う場所だ。
 そして、電車がやってくる。
 平日よりも空いていた。

〔しんばし~、新橋~。ご乗車、ありがとうございます。次は、有楽町に、停車します〕

 電車に乗り込み、空いているブルーの座席に腰かける。
 山手線とは違う曲の、アップテンポの発車メロディが流れた。

〔6番線の京浜東北線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 電車が走り出す前から、換気の為に開けられた窓より風が吹き込んで来る。
 実は台風が接近していて、既に風が強まっているのだ。
 晴れているのは午前中でも、午後には曇り、夜からは雨が降り出して、明日は大荒れの天気になるという。
 その前に退院できて良かったと思う。
 電車は、高架線の上を走り出した。

〔次は有楽町、有楽町。お出口は、右側です。地下鉄有楽町線と、地下鉄日比谷線はお乗り換えです〕

 リサはスマホを見た。
 今日は愛原のLINEが来ている。
 昨日はLINEを送ったが、全く帰って来なかった。
 何でも、一昨日と昨日は頭痛や吐き気、嘔吐の症状が酷く、リサのLINEを返せる状態ではなかったというのだ。
 幸いそのような症状は、昨夜のうちに改善したという。
 それで予定通り、今朝の回診や検査を終えて、異常が無ければ退院とのことだ。
 しばらくは頭に針(医療用ステープラー)を刺したままなので、それを外しにまた通院しなければならないとのことだ。

[同日10:00.天候:曇 埼玉県川口市並木 JR西川口駅→国際興業バス川51系統車内]

〔「お客様にお知らせ致します。翌日は台風接近に伴い、電車のダイヤが乱れる恐れがございます。お出かけの際は、最新の運行情報にご注意ください。まもなく西川口、西川口。お出口は、右側です」〕

 風は強いが、荒川は通常の速度で渡った。
 特にまだ、速度規制が出るほどの強さではないのだろう。

〔にしかわぐち~、西川口~。ご乗車、ありがとうございます。次は、蕨に、停車します〕

 リサは教えられた通りの駅で、電車を降りた。
 ヒュウッと強い風が、リサのおかっぱ頭を撫でる。
 スカートの裾も靡くが、捲れ上がるほどの強さではない。
 エスカレーターを昇って、改札口を出る。
 そして、西口に向かった。

 リサ:(バスはどこから出るんだろう……?)

 本来は重たいキャリーバッグだが、そこは特級BOW(生物兵器)。
 普通の通学鞄を持つような感覚で、ヒョイと持ち上げ、階段を下りる。
 そんなに広くないロータリーに、1台のバスが止まっていた。
 駅の入口に背を向けて止まっている。
 リアウィンドウにある、オレンジ色のLEDの行き先表示を見ると、『川51 川口駅西口』と書かれていた。

 リサ:(あのバスだ)

 すると、バスがエンジンを掛けた。
 もうすぐ発車するのだ。
 リサ、ダッシュで乗り込む。
 バスはオーソドックスなワンステップバスで、あまり乗客は乗っていなかった。

 リサ:(そうだ。埼玉のバスは、乗る時にもPasmoを当てるんだった)

 リサはスカートのポケットから定期入れを取り出し、それを読取機に当てた。

〔「原町経由、川口駅西口、発車致します」〕

 リサを最後の乗客に、バスは引き戸式の中扉を閉めて発車した。
 リサは空いている1人席に座った。

〔♪♪♪♪。毎度、国際興業バスをご利用頂きまして、ありがとうございます。このバスは西川口五丁目、原町経由、川口駅西口行きです。途中お降りの方は、お手近のブザーでお知らせ願います。次は西川口三丁目、西川口三丁目。……〕

 リサ:(あれ?このバスで行くと、すぐに着いちゃうんだ……)

 フロントガラス上の運賃表示器を見る。
 今はフルカラーLEDで、運賃表や次停留所案内だけでなく、経由地についても表示される。
 それを見ると、乗車時間は大したこと無さそうだった。

 リサ:(わたしの足なら、歩いて行っても大丈夫だったんじゃないかな?)

 それとも、監視の為にあえてバスに乗せたのだろうか。
 監視といってもリサを尾行するわけではなく、GPSや遠方から監視しているようであり、もしもリサが暴走するようなことがあれば、ライフルで狙撃するようになっているようである。
 もちろんそれだけでリサは殺せないが、足止めにはなるだろう。
 バスは駅前ロータリーを出ると、西川口駅前通りを進んだ。
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“愛原リサの日常” 「悪夢からの目覚め」 3

2022-12-10 14:53:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月1日16:00.天候:晴 東京都台東区上野 JR上野駅→エキュート上野“BOOK COMPASS”]

 リサは放課後、上野凛と栗原蓮華にも、愛原が意識を取り戻したことを伝えた。
 しかし、退院はまだであることも伝えた。

 小島:「まあ、頭のことだから、しょうがないよねぇ……」
 淀橋:「それはそうだ」

 帰り際、JRで帰宅する『魔王軍』メンバーは、リサと一緒にJR上野駅構内に入る。
 改札内にあるエキュートに向かうと、そこにある書店に向かった。
 駅構内にある書店にしては、規模が大きい。

 リサ:「体操服着てて、しかし、いかにも『魔王』って感じの雰囲気か……」
 小島:「そんな都合のいい設定、無いでしょうよ」
 淀橋:「桜谷、美術部員としては優秀なんだろうけど、感性がね……」

 取りあえず、魔王が登場するマンガやラノベなどを見て、良さそうなイメージのを探してみる。
 あとは演劇部に行けば、良さげな衣装とかもあるだろうからだ。

 淀橋:「そう、都合良くは……」
 リサ:「あった!」
 小島:「ウソでしょ!?」

 それは、マンガコーナーにあった。
 つまり、マンガである。

 

 リサ:「これこれ!魔王様、体操服にブルマ!」
 淀橋:「“ドキュンサーガ”……?初めて聞く作品だね」
 小島:「まさか、本当に体操服にブルマを穿いてる魔王様がいるなんて……」
 リサ:「これだ!これをイメージしよう!」
 淀橋:「角付きのカチューシャとか、都合良くあるかね?」
 リサ:「必要無い。角なら、ここにある」

 リサは自分の額を指さした。
 今は第0形態なので、角は生えていない。

 小島:「角だけ器用に生やせるの!?」
 淀橋:「あとは、上に何を着るかだね。今、ネットで調べてみたけど、この魔王様は本当にガチで強いらしいよ」
 リサ:「このマンガ、買って勉強する!」
 小島:「マジか。さすが、こっちの『魔王様』は勉強熱心だね」
 リサ:「むふー!」
 淀橋:「上は黒マントでも羽織ったら?確か去年、演劇部でそういうのやってたから、あるでしょ?」
 小島:「それ、いいね!」

[同日16:21.天候:晴 JR上野駅→山手線1511G電車11号車内]

 

 『魔王』の勉強の為に、“ドキュンサーガ”1巻から4巻まで購入したリサは、1人で電車を待っていた。
 淀橋と小島の2人は、逆方向の電車だからである。

〔まもなく3番線に、東京、品川方面行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕

 帰りは昨日と同じ、山手線。
 上野東京ラインにしないのは、そこまで早く帰りたいわけではないからである。
 また、この時間帯の山手線や京浜東北線は空いているので。

〔「3番線、ご注意ください。山手線、秋葉原、東京、品川、目黒方面行きが参ります」〕

 最新型のE235系という電車がやってくる。

 

 BSAAとの取り決め通り、最後尾の車両に乗り込んだ。
 座席は先代のE231系と比べると、柔らかくなっている。
 余裕時分の為に長く停車していると、隣のホームに京浜東北線がやってきた。
 どうやら品川までは、同時発車・同時到着で行くらしい。
 ホームに、発車ベルが鳴り響く。
 上野駅の電車線ホームは、メロディではなく、ベルである。

〔3番線の山手線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 最新型になっても、ドアチャイムの音色は変わらない。
 ホームドアも閉まって、隣の京浜東北線とほぼ同時に走り出した。

〔この電車は、山手線外回り、東京、品川方面行きです。次は御徒町、御徒町。お出口は、左側です。都営地下鉄大江戸線は、お乗り換えです〕

 地下鉄の乗換案内は、都営大江戸線しかされない。
 実際は至近距離に、日比谷線の仲御徒町駅と銀座線の上野広小路駅があるのだが、いずれも上野駅で乗り換えた方が便利だからである。

 リサ:「ん?」

 その時、リサのスマホが震えた。
 電車に乗るので、着信音は消して、バイブだけにしてある。
 見ると、善場からのLINEだった。
 確認してみると……。

 善場:「学校から連絡があったと思いますが、愛原所長の意識が戻りました。ですが、まだ体調が思わしくないこともあり、今週一杯は入院するとのことです。詳しいことは今夜、夕食の時にでもお話しします」

 とのことだった。

 リサ:「むふー!」

 リサは鼻息を荒くして、善場のLINEを食い入るように読んだ。

[同日18:00.天候:晴 東京都港区新橋 Lad's de wine 新橋店]

 リサは待ち合わせの場所である、ホテル本館3Fのロビーに向かった。
 すると、そこにはポーカーフェイスながら、微笑を浮かべる善場の姿があった。

 善場:「こんばんは。この前行ったレストランでいい?ステーキ食べていいから」
 リサ:「おー!」

 善場とリサは、同じホテルの別館にあるイタリアンレストランに向かった。
 今朝、リサが朝食を取ったレストランである。
 ディナーでは、ステーキも出ている。
 席に座って、注文してから……。

 善場:「まず、もう聞いていると思うけど、愛原所長の意識が戻りました。とはいえ、まだ体調が思わしくないので、今週一杯は入院するとのことです」
 リサ:「そうかぁ……」
 善場:「頭を打たれたのだから、当然だと思いますけどね。あいにく病院は面会禁止なので、お見舞いとかは行けません」
 リサ:「うーん……」
 善場:「ただ、退院の時のお迎えはいいでしょう。予定通りであれば、今週の土曜日ということになりますから、学校も休みでしょう?」
 リサ:「うん!」
 善場:「そのタイミングで、このホテルもチェックアウトして向かいましょう」
 リサ:「おー!」

 リサは大喜びで、運ばれて来たステーキにむしゃぶりついたのだった。
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“愛原リサの日常” 「悪夢からの目覚め」 2

2022-12-10 11:42:01 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月1日12:15.天候:雷雨 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校・体育館]

 校長:「……えー、というわけで、本日はあいにくと雨が降って参りましたので、えー、本日は臨時に体育館に避難して頂いたわけですけれども、晴れていればね、本来なら校庭に避難することになっていたわけでありますが……」

 大雨が体育館の屋根を打ち付け、時折外から聞こえて来る雷鳴が物凄く気になるリサ達だった。

 教頭:「それでは時間も頃合いですので、解散にし、昼休みと致します。5限目以降の授業は、通常通り行われる予定です」

 こうして解散となり、リサ達は更衣室に向かう。

 淀橋:「早く着替えて、お昼にしよう。魔王様、学食行くでしょ?」
 リサ:「もち」

 ぞろぞろと更衣室に向かうリサのクラス。

 栗原蓮華:「あいつら、本当にブルマ穿いてるんだ……」

 蓮華は唖然としていたし、凛は……。

 上野凛:「あれが新しい『魔王軍』のコスチュームか……」

 と。
 尚、リサ以下『四天王』達からの服装点検(スカートめくられて、本当にブルマを穿いているかのチェック)の際、陸上部のレーシングブルマを上から穿いていたので、リンチに遭わずに済んだ。

[同日12:45.天候:曇 同高校・学食]

 体操服から制服に着替えたリサ達。
 しかし、ブルマは下に穿いている。
 校庭での授業と違い、ブルマは汗を吸ったりはするが、土や砂で汚れることはない。

 リサ:「今日はポークソテーか。御飯と味噌汁おかわり自由なのがいいね」
 淀橋:「さすがは魔王様」
 リサ:「それにしても、新しい四天王候補1人、早く見つけないと数字が合わない」
 小島:「メンバーの中から探す?」
 リサ:「うーん……。血は美味しいコ達ばかりなんだけど、『四天王』としてはなぁ……」
 淀橋:「どういうコがいいの?」
 リサ:「ヨンヒみたいなの。バックにBSAAがいるタイプ」
 小島:「いや、無理だって、それ」
 淀橋:「強さだけなら、女子柔道部とか剣道部とかにいるけどね……」
 リサ:「剣道部はダメ。鬼斬り先輩がいる」
 小島:「あ、そうか……」
 淀橋:「となると……同じ武道館を使う剣道部、柔道部、空手部はアウトってことになるね」
 リサ:「ん。陸上部にはリンがいるし、文化部にはヨドバシとコジマがいる。人数合わせ的に、運動部のコがいい」
 淀橋:「人数合わせ……」
 小島:「だったら、女子レスリング部は?」
 リサ:「え、あそこの人達、怖いよ?」
 小島:「『魔王様』の手に掛かれば大丈夫だよ。ねぇ?」
 リサ:「……どうも、イメージに合わない」

 リサは首を傾げた。
 と、そこへ、『魔王軍』のメンバーがやってきた。
 もちろん、リサから『老廃物吸収』『血液吸収』『寄生虫植付』の3点セットを受けた女子生徒である。

 メンバー:「あの、ちょっといいですか……」
 淀橋:「なに?」
 リサ:「オマエは確か、美術部で1年生の……」
 桜谷:「桜谷です。リサ先輩にお願いしたいのですが……」
 リサ:「何?」
 桜谷:「今度、美術部で人物画を描くことになりまして……。『魔王様の肖像画』を描きたいと思いまして……その……よろしいですか?」
 淀橋:「それって、ヌード!?」
 小島:「まあ、この時期だからヌードになっても寒くはないと思うけど……」
 桜谷:「いえ、ヌードではありません。私のイメージでは、先輩には体操服とブルマを穿いて頂き……うーん……もう少し、『魔王』って感じの恰好になれば……」
 小島:「いや、体操服の時点で『魔王』とはかけ離れてるでしょ?」
 リサ:「いいよ。何だか面白そうだし」
 桜谷:「ありがとうございます!」
 淀橋:「大丈夫なの?絵のモデルって、ずっとジッとしてないといけないんでしょ?」
 桜谷:「イマジネーションが立てられれば、微動だにしてはダメなんてことはないですよ?」
 リサ:「愛原先生の意識が戻れば、協力する」
 桜谷:「ありがとうございます」

〔「……音楽の途中ですが、ここで生徒のお呼び出しを申し上げます」〕

 昼休みの最中、放送部では校内に音楽を流したり、ラジオDJみたいなことをしている。

〔「2年5組の愛原リサさん、2年5組の愛原リサさん。職員室まで、お越しください。担任の坂上先生が、お呼びです」〕

 リサ:「ん!?」
 小島:「え?ついに、『魔王軍』解散の危機!?」
 リサ:「それは困る!」

 リサにとっては、定期的に人間の『老廃物』『血液』の摂取ができて、尚且つ『寄生虫植付』が黙認されているというのに。

 淀橋:「もしくは、『ブルマ禁止令』が出たりしてね?」
 リサ:「……校則違反ではないはずだけど?」
 小島:「あ、リサのは私が片付けておくわ。早く職員室に行かないと」
 リサ:「分かった。ありがとう」

 リサは片付けを小島達に任せ、自分は職員室に走った。

[同日13:15.天候:晴 同高校1F職員室]

 リサ:「失礼します」

 職員室に行き、リサは担任の坂上の所に向かった。

 リサ:「先生、愛原です。もうすぐ5限目、始まっちゃいますよ?」
 坂上:「心配するな。どうせ5限目は、俺の授業だろ?」
 リサ:「あ、そうか。次の時間、現国……」
 坂上:「それより、朗報だぞ。今しがた、デイライトさんから電話があって、保護者の愛原さんが意識を取り戻されたそうだ」
 リサ:「! おーっ!!」

 リサは喜びのあまり、数メートルジャンプし、天井の梁に掴まった。

 坂上:「こらこら!はしゃぎ過ぎるな!!」

 リサは1回転しながら、床に着地。

 体操部顧問:「うーむ……。うちの女子体操部に欲しい……」
 坂上:「あいにくと、愛原リサは部活動への入部が認められてませんので」
 リサ:「それで先生!病院に行って、迎えに行けばいいんだね!?」
 坂上:「いや、残念ながら病院は面会禁止だから」
 リサ:「あー……そうか……」
 坂上:「それに、頭を打たれたわけだから、後遺症とかが出て来る恐れがある。そういった検査もしなければならないから、もう今日中に退院できるというわけではないんだ」
 リサ:「あー……」
 坂上:「というわけで、もう数日はホテル暮らしになるだろうとのことだ」
 リサ:「そうですか……」

 現実は甘くなかった。
 と、ここで予鈴が鳴る。

 坂上:「というわけで、教室に戻れ。俺も後から行くから」
 リサ:「はーい……」

 とはいうものの、愛原の意識が回復したのは、大きな前進ではある。
 リサはそう思いながら、教室に戻った。
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