報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「リサの作戦、着々と……」

2022-12-20 20:25:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月9日17:00.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園]

 https://www.youtube.com/watch?v=BayW7aXI0zI

 下校のメロディが校内に鳴り響く。
 リサ率いる『魔王軍』の手に堕ちた放送部が、魔王リサを称えるメロディを下校のメロディに流す。
 リサは美術準備室で制服に着替えた。
 但し、上はブラウスではなく、ポロシャツである。
 東京中央学園では、盛夏服として、半袖のブラウス(男子はワイシャツ)の他、ポロシャツも指定されていた。
 もちろん、ポロシャツにも校章のワッペンが縫い付けてある。

 桜谷:「魔王様、今日はポロシャツなんですね」
 リサ:「これから、愛原先生達と焼肉を食べに行くから。ブラウスよりポロシャツの方が洗濯しやすいんで、今日はこれ」
 桜谷:「焼肉ですか。それはどうしてですか?」
 リサ:「今日、お兄ちゃんが退院した日なの。そのお祝いで、先生が吉野家で手に入れたクーポンを使って、安く食べ放題できるから」
 桜谷:「そういうことだったんですね。魔王軍のメンバーとして、お祝いメッセージを入れておきましょうか?」
 リサ:「要らない。お兄ちゃんは、そういうの望まない人だから」
 桜谷:「そうですか。でも、教えてあげた方がいいですよ」
 リサ:「どうして?」
 桜谷:「あの……リサ様のお兄様、高橋さん……でしたっけ?」
 リサ:「うん」
 桜谷:「凄いイケメンじゃないですか。だから、ファンが多いんですよ」
 リサ:「ああ。代替修学旅行に行ってから、ずっとそうだった」
 桜谷:「高橋さんのファン層は、『魔王軍』も生徒会も関係無いですからね」
 リサ:「ん?」
 桜谷:「は?」
 リサ:「サクラヤ、いま何て言った?」
 桜谷:「ですから、高橋さんのファンになっている人に、『魔王軍』も生徒会も関係無いと……」
 リサ:「それってつまり、生徒会にもお兄ちゃんのファンはいるってこと?」

 リサはギラリと瞳を金色を光らせた。

 桜谷:「は、はい」
 リサ:「使える!……お兄ちゃんには、後で怒られるかもしれないけど」
 桜谷:「で、でも、今回のブルマ復活運動としてはどうでしょう……?」
 リサ:「どういうこと?」
 桜谷:「生徒会で高橋さんのファンの方って……男子役員ばっかりなんですけど……」
 リサ:「……お兄ちゃんと同じゲイ、またはバイってことか……!」
 桜谷:「そうなんです」
 リサ:「使えなさそうだ。没」
 桜谷:「は、はい」

 2人は、とある女子トイレの前を通った。

 リサ:「! サクラヤ、隠れて!」
 桜谷:「えっ!?」

 リサは女子トイレの中に誰かの気配を感じ、桜谷と一緒に柱の影に隠れた。
 と、その直後、そこから2人の女子生徒が現れた。
 どちらも、生徒会役員だった。

 女子生徒A:「ねぇ、出た?」
 女子生徒B:「ううん。ダメ。全然出ない」
 女子生徒A:「……だよね。ねぇ、何かおかしくない?今週に入ってからだよ?こんなこと……皆……」
 女子生徒B:「会長もそうだって言ってたよね」
 女子生徒A:「う、うん。帰りに、薬買って飲んでみる?」
 女子生徒B:「う、うん。そうしよ……」

 2人の生徒会役員は、顔色を悪そうにしながら、昇降口の方に歩いて行った。

 桜谷:「あの人達、どうしたんだろう?具合悪いのかな……」
 リサ:「ふふ……」

 リサは不気味な笑みを浮かべた。
 そして、近くにあった生徒会の貼った『ブルマ復活反対』のポスターに手を伸ばすと、それを引き剥がし、ビリビリに破りながら呟いた。

 リサ:「計画通り……!」

 そして、薄暗い廊下で、今度は瞳を赤く鈍く光らせたのだった。
 因みに隣には、『魔王軍』が写真部や美術部に依頼して作ったポスターが貼られている。
 『四天王』の中では白ギャル系のビジュアルを持つ淀橋が、体操服にブルマを穿いて、ブルマの方が足が長く見えて動きやすいというようなことをPRしていた。

[同日17:30.天候:晴 同地区内 JR上野駅→山手線1611G電車11号車内]

 リサと桜谷は、JR上野駅に入った。
 リサはともかく、桜谷までJRを利用するのは、日比谷線が人身事故で止まってしまったからである。
 振替輸送が行われているので、桜谷は秋葉原駅までリサと一緒に山手線に乗ることにした。
 山手線で恵比寿駅まで行くまでに復旧していれば、そこから日比谷線に乗り、まだダメなようなら渋谷まで乗って行って、そこから東横線に乗り換えるという計画だった。

〔まもなく3番線に、東京、品川方面行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕

 桜谷:「リサ様は、どこまで行かれるんですか?」
 リサ:「錦糸町。多分、駅ビルのテルミナで食べるんだと思う。錦糸町駅の改札口で待ち合わせ」
 桜谷:「それで、アキバまで乗る所は変わらないというわけですね」
 リサ:「そういうこと」

 夕方ラッシュの始まっている上野駅。
 やってきた山手線は、内回りと比べれば空いていた。

〔うえの~、上野~。ご乗車、ありがとうございます〕

 電車に乗り込んで、空いている座席に腰かける。
 すぐに発車ベルが鳴った。

〔3番線の山手線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 ホームドアと電車のドアが閉まる。
 駆け込み乗車があったが、何回か再開閉して、やっと閉まり切った。
 その為か、やや急発車気味で発車する。

〔この電車は山手線外回り、東京、品川方面行きです。次は御徒町、御徒町。お出口は、左側です。都営地下鉄大江戸線は、お乗り換えです〕

 桜谷:「魔王様」
 リサ:「なに?」
 桜谷:「魔王様の計画って何ですか?」
 リサ:「……今のところは、まだ言えない。言わなくても来週になれば分かるし、プラスして教える」
 桜谷:「さっきの……生徒会の人達、お腹の調子が悪かったみたいですけど、それと関係あるんですか?」
 リサ:「想像に任せるとしか言えない。まあ、あれはヒントだと思って」

 いくら『四天王』の1人に抜擢されたとはいえ、まだ1年生で『魔王軍』としても新人の桜谷に、リサの計画を計り知ることはできなかった。
 恐らく付き合いの長い淀橋や小島、そして『四天王』を引退したとはいえ、我那覇絵恋もリサの計画は予想できただろう。

 桜谷:「は、はあ……」
 リサ:「わたしを『魔王』として担ぎ上げてくれているけど、その力、あなたに見せてあげるよ。今後のわたしの『肖像画』の参考にして」
 桜谷:「は、はい。分かりました……」

 桜谷は、背筋が寒くなるのを堪えるのが精一杯だった。
コメント (1)
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