[9月9日17:00.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園]
https://www.youtube.com/watch?v=BayW7aXI0zI
下校のメロディが校内に鳴り響く。
リサ率いる『魔王軍』の手に堕ちた放送部が、魔王リサを称えるメロディを下校のメロディに流す。
リサは美術準備室で制服に着替えた。
但し、上はブラウスではなく、ポロシャツである。
東京中央学園では、盛夏服として、半袖のブラウス(男子はワイシャツ)の他、ポロシャツも指定されていた。
もちろん、ポロシャツにも校章のワッペンが縫い付けてある。
桜谷:「魔王様、今日はポロシャツなんですね」
リサ:「これから、愛原先生達と焼肉を食べに行くから。ブラウスよりポロシャツの方が洗濯しやすいんで、今日はこれ」
桜谷:「焼肉ですか。それはどうしてですか?」
リサ:「今日、お兄ちゃんが退院した日なの。そのお祝いで、先生が吉野家で手に入れたクーポンを使って、安く食べ放題できるから」
桜谷:「そういうことだったんですね。魔王軍のメンバーとして、お祝いメッセージを入れておきましょうか?」
リサ:「要らない。お兄ちゃんは、そういうの望まない人だから」
桜谷:「そうですか。でも、教えてあげた方がいいですよ」
リサ:「どうして?」
桜谷:「あの……リサ様のお兄様、高橋さん……でしたっけ?」
リサ:「うん」
桜谷:「凄いイケメンじゃないですか。だから、ファンが多いんですよ」
リサ:「ああ。代替修学旅行に行ってから、ずっとそうだった」
桜谷:「高橋さんのファン層は、『魔王軍』も生徒会も関係無いですからね」
リサ:「ん?」
桜谷:「は?」
リサ:「サクラヤ、いま何て言った?」
桜谷:「ですから、高橋さんのファンになっている人に、『魔王軍』も生徒会も関係無いと……」
リサ:「それってつまり、生徒会にもお兄ちゃんのファンはいるってこと?」
リサはギラリと瞳を金色を光らせた。
桜谷:「は、はい」
リサ:「使える!……お兄ちゃんには、後で怒られるかもしれないけど」
桜谷:「で、でも、今回のブルマ復活運動としてはどうでしょう……?」
リサ:「どういうこと?」
桜谷:「生徒会で高橋さんのファンの方って……男子役員ばっかりなんですけど……」
リサ:「……お兄ちゃんと同じゲイ、またはバイってことか……!」
桜谷:「そうなんです」
リサ:「使えなさそうだ。没」
桜谷:「は、はい」
2人は、とある女子トイレの前を通った。
リサ:「! サクラヤ、隠れて!」
桜谷:「えっ!?」
リサは女子トイレの中に誰かの気配を感じ、桜谷と一緒に柱の影に隠れた。
と、その直後、そこから2人の女子生徒が現れた。
どちらも、生徒会役員だった。
女子生徒A:「ねぇ、出た?」
女子生徒B:「ううん。ダメ。全然出ない」
女子生徒A:「……だよね。ねぇ、何かおかしくない?今週に入ってからだよ?こんなこと……皆……」
女子生徒B:「会長もそうだって言ってたよね」
女子生徒A:「う、うん。帰りに、薬買って飲んでみる?」
女子生徒B:「う、うん。そうしよ……」
2人の生徒会役員は、顔色を悪そうにしながら、昇降口の方に歩いて行った。
桜谷:「あの人達、どうしたんだろう?具合悪いのかな……」
リサ:「ふふ……」
リサは不気味な笑みを浮かべた。
そして、近くにあった生徒会の貼った『ブルマ復活反対』のポスターに手を伸ばすと、それを引き剥がし、ビリビリに破りながら呟いた。
リサ:「計画通り……!」
そして、薄暗い廊下で、今度は瞳を赤く鈍く光らせたのだった。
因みに隣には、『魔王軍』が写真部や美術部に依頼して作ったポスターが貼られている。
『四天王』の中では白ギャル系のビジュアルを持つ淀橋が、体操服にブルマを穿いて、ブルマの方が足が長く見えて動きやすいというようなことをPRしていた。
[同日17:30.天候:晴 同地区内 JR上野駅→山手線1611G電車11号車内]
リサと桜谷は、JR上野駅に入った。
リサはともかく、桜谷までJRを利用するのは、日比谷線が人身事故で止まってしまったからである。
振替輸送が行われているので、桜谷は秋葉原駅までリサと一緒に山手線に乗ることにした。
山手線で恵比寿駅まで行くまでに復旧していれば、そこから日比谷線に乗り、まだダメなようなら渋谷まで乗って行って、そこから東横線に乗り換えるという計画だった。
〔まもなく3番線に、東京、品川方面行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕
桜谷:「リサ様は、どこまで行かれるんですか?」
リサ:「錦糸町。多分、駅ビルのテルミナで食べるんだと思う。錦糸町駅の改札口で待ち合わせ」
桜谷:「それで、アキバまで乗る所は変わらないというわけですね」
リサ:「そういうこと」
夕方ラッシュの始まっている上野駅。
やってきた山手線は、内回りと比べれば空いていた。
〔うえの~、上野~。ご乗車、ありがとうございます〕
電車に乗り込んで、空いている座席に腰かける。
すぐに発車ベルが鳴った。
〔3番線の山手線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕
ホームドアと電車のドアが閉まる。
駆け込み乗車があったが、何回か再開閉して、やっと閉まり切った。
その為か、やや急発車気味で発車する。
〔この電車は山手線外回り、東京、品川方面行きです。次は御徒町、御徒町。お出口は、左側です。都営地下鉄大江戸線は、お乗り換えです〕
桜谷:「魔王様」
リサ:「なに?」
桜谷:「魔王様の計画って何ですか?」
リサ:「……今のところは、まだ言えない。言わなくても来週になれば分かるし、プラスして教える」
桜谷:「さっきの……生徒会の人達、お腹の調子が悪かったみたいですけど、それと関係あるんですか?」
リサ:「想像に任せるとしか言えない。まあ、あれはヒントだと思って」
いくら『四天王』の1人に抜擢されたとはいえ、まだ1年生で『魔王軍』としても新人の桜谷に、リサの計画を計り知ることはできなかった。
恐らく付き合いの長い淀橋や小島、そして『四天王』を引退したとはいえ、我那覇絵恋もリサの計画は予想できただろう。
桜谷:「は、はあ……」
リサ:「わたしを『魔王』として担ぎ上げてくれているけど、その力、あなたに見せてあげるよ。今後のわたしの『肖像画』の参考にして」
桜谷:「は、はい。分かりました……」
桜谷は、背筋が寒くなるのを堪えるのが精一杯だった。
https://www.youtube.com/watch?v=BayW7aXI0zI
下校のメロディが校内に鳴り響く。
リサ率いる『魔王軍』の手に堕ちた放送部が、魔王リサを称えるメロディを下校のメロディに流す。
リサは美術準備室で制服に着替えた。
但し、上はブラウスではなく、ポロシャツである。
東京中央学園では、盛夏服として、半袖のブラウス(男子はワイシャツ)の他、ポロシャツも指定されていた。
もちろん、ポロシャツにも校章のワッペンが縫い付けてある。
桜谷:「魔王様、今日はポロシャツなんですね」
リサ:「これから、愛原先生達と焼肉を食べに行くから。ブラウスよりポロシャツの方が洗濯しやすいんで、今日はこれ」
桜谷:「焼肉ですか。それはどうしてですか?」
リサ:「今日、お兄ちゃんが退院した日なの。そのお祝いで、先生が吉野家で手に入れたクーポンを使って、安く食べ放題できるから」
桜谷:「そういうことだったんですね。魔王軍のメンバーとして、お祝いメッセージを入れておきましょうか?」
リサ:「要らない。お兄ちゃんは、そういうの望まない人だから」
桜谷:「そうですか。でも、教えてあげた方がいいですよ」
リサ:「どうして?」
桜谷:「あの……リサ様のお兄様、高橋さん……でしたっけ?」
リサ:「うん」
桜谷:「凄いイケメンじゃないですか。だから、ファンが多いんですよ」
リサ:「ああ。代替修学旅行に行ってから、ずっとそうだった」
桜谷:「高橋さんのファン層は、『魔王軍』も生徒会も関係無いですからね」
リサ:「ん?」
桜谷:「は?」
リサ:「サクラヤ、いま何て言った?」
桜谷:「ですから、高橋さんのファンになっている人に、『魔王軍』も生徒会も関係無いと……」
リサ:「それってつまり、生徒会にもお兄ちゃんのファンはいるってこと?」
リサはギラリと瞳を金色を光らせた。
桜谷:「は、はい」
リサ:「使える!……お兄ちゃんには、後で怒られるかもしれないけど」
桜谷:「で、でも、今回のブルマ復活運動としてはどうでしょう……?」
リサ:「どういうこと?」
桜谷:「生徒会で高橋さんのファンの方って……男子役員ばっかりなんですけど……」
リサ:「……お兄ちゃんと同じゲイ、またはバイってことか……!」
桜谷:「そうなんです」
リサ:「使えなさそうだ。没」
桜谷:「は、はい」
2人は、とある女子トイレの前を通った。
リサ:「! サクラヤ、隠れて!」
桜谷:「えっ!?」
リサは女子トイレの中に誰かの気配を感じ、桜谷と一緒に柱の影に隠れた。
と、その直後、そこから2人の女子生徒が現れた。
どちらも、生徒会役員だった。
女子生徒A:「ねぇ、出た?」
女子生徒B:「ううん。ダメ。全然出ない」
女子生徒A:「……だよね。ねぇ、何かおかしくない?今週に入ってからだよ?こんなこと……皆……」
女子生徒B:「会長もそうだって言ってたよね」
女子生徒A:「う、うん。帰りに、薬買って飲んでみる?」
女子生徒B:「う、うん。そうしよ……」
2人の生徒会役員は、顔色を悪そうにしながら、昇降口の方に歩いて行った。
桜谷:「あの人達、どうしたんだろう?具合悪いのかな……」
リサ:「ふふ……」
リサは不気味な笑みを浮かべた。
そして、近くにあった生徒会の貼った『ブルマ復活反対』のポスターに手を伸ばすと、それを引き剥がし、ビリビリに破りながら呟いた。
リサ:「計画通り……!」
そして、薄暗い廊下で、今度は瞳を赤く鈍く光らせたのだった。
因みに隣には、『魔王軍』が写真部や美術部に依頼して作ったポスターが貼られている。
『四天王』の中では白ギャル系のビジュアルを持つ淀橋が、体操服にブルマを穿いて、ブルマの方が足が長く見えて動きやすいというようなことをPRしていた。
[同日17:30.天候:晴 同地区内 JR上野駅→山手線1611G電車11号車内]
リサと桜谷は、JR上野駅に入った。
リサはともかく、桜谷までJRを利用するのは、日比谷線が人身事故で止まってしまったからである。
振替輸送が行われているので、桜谷は秋葉原駅までリサと一緒に山手線に乗ることにした。
山手線で恵比寿駅まで行くまでに復旧していれば、そこから日比谷線に乗り、まだダメなようなら渋谷まで乗って行って、そこから東横線に乗り換えるという計画だった。
〔まもなく3番線に、東京、品川方面行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕
桜谷:「リサ様は、どこまで行かれるんですか?」
リサ:「錦糸町。多分、駅ビルのテルミナで食べるんだと思う。錦糸町駅の改札口で待ち合わせ」
桜谷:「それで、アキバまで乗る所は変わらないというわけですね」
リサ:「そういうこと」
夕方ラッシュの始まっている上野駅。
やってきた山手線は、内回りと比べれば空いていた。
〔うえの~、上野~。ご乗車、ありがとうございます〕
電車に乗り込んで、空いている座席に腰かける。
すぐに発車ベルが鳴った。
〔3番線の山手線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕
ホームドアと電車のドアが閉まる。
駆け込み乗車があったが、何回か再開閉して、やっと閉まり切った。
その為か、やや急発車気味で発車する。
〔この電車は山手線外回り、東京、品川方面行きです。次は御徒町、御徒町。お出口は、左側です。都営地下鉄大江戸線は、お乗り換えです〕
桜谷:「魔王様」
リサ:「なに?」
桜谷:「魔王様の計画って何ですか?」
リサ:「……今のところは、まだ言えない。言わなくても来週になれば分かるし、プラスして教える」
桜谷:「さっきの……生徒会の人達、お腹の調子が悪かったみたいですけど、それと関係あるんですか?」
リサ:「想像に任せるとしか言えない。まあ、あれはヒントだと思って」
いくら『四天王』の1人に抜擢されたとはいえ、まだ1年生で『魔王軍』としても新人の桜谷に、リサの計画を計り知ることはできなかった。
恐らく付き合いの長い淀橋や小島、そして『四天王』を引退したとはいえ、我那覇絵恋もリサの計画は予想できただろう。
桜谷:「は、はあ……」
リサ:「わたしを『魔王』として担ぎ上げてくれているけど、その力、あなたに見せてあげるよ。今後のわたしの『肖像画』の参考にして」
桜谷:「は、はい。分かりました……」
桜谷は、背筋が寒くなるのを堪えるのが精一杯だった。