報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「東京へ戻る」 2

2022-12-06 20:07:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月29日15:32.天候:曇→雷雨 東京都千代田区外神田 JR秋葉原駅]

 電車に乗っている間、私は善場主任とLINEでやり取りした。
 私がリサのTwitterについて質問したところ、『リサの監視の為にやらせています』とのことだった。
 匿名では使えないFacebookを使わせるという案もあったようだが、そこまでする必要は無い為、Twitterにしたとのこと。
 どうせリサのことだから、いかにもなアカウント名にするだろうと予測したそうだが、ガチ当たりであった。

〔あきはばら~、秋葉原~。ご乗車、ありがとうございます。次は、神田に、停車します〕

 秋葉原駅に到着し、私達は電車を降りた。

 リサ:「何か湿った臭いがするのと、遠くで雷が聞こえて来る」
 愛原:「凄いな。こんな喧騒な場所なのに、聞こえるのか?」
 リサ:「何となく」

 オリジナルのリサ・トレヴァーが、警察の特殊部隊を先回りしたりして翻弄したわけだ。
 その亜種でさえ、これなのだから。

 愛原:「ゲリラ豪雨が近づいているみたいだな。急ごう」
 リサ:「りょ」

 私達はコンコースに向かう階段を急いで降りた。
 乗り換え先の都営地下鉄新宿線の岩本町駅に行くには、昭和通り口から出る必要がある。
 その為には、またエスカレーターを昇って下りなくてはならない。
 まあ、そこは慌てずに行く。
 とはいうものの、昭和通りと秋葉原駅南通りの交差点の信号待ちが案外長い。

 リサ:「おっ、曇って来た!」
 愛原:「急ぐぞ!」

 早歩きで岩本町駅を目指す。

[同日15:45.天候:雷雨 千代田区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅→都営新宿線1482K電車最後尾車内]

 和泉橋を渡り、信号機の無い横断歩道を渡り始めた辺りで大粒の雨が降り出して来た。

 愛原:「急げっ!」

 どうにかずぶ濡れになる前に、岩本町駅に飛び込むことができた。

 リサ:「ギリギリセーフだったね」
 愛原:「そうかもな」

 私はハンカチを取り出して、額についた雨と汗を拭った。
 リサの制服にも、若干雨粒が当たっていた。
 こういうブラウスって、濡れたりすると、透けることがあるだろう?
 リサは暑いからと、ブラウスの下にキャミソールは着ていない。
 ので、透けブラする可能性がある。
 だが、今のブラウスはよくできているのか、或いは学校制服用の特注品だからなのか、透けることはなかった。

 愛原:「まあ、少し濡れた感はあるが」
 リサ:「これくらい、どうってことないよ」
 愛原:「それもそうだ。早く行こう」
 リサ:「うん」

 駅の入口付近は雨宿りする人々で混雑してきた。
 私達はそんな人々を尻目に、階段を下りた。
 岩本町駅のホームも、かなり深い所にある。
 改札口でさえ、地下何階と下にあって、そこから更に長い階段やエスカレーターでホームに向かうのである。

 愛原:「今頃地上は、天然のシャワーか……」
 リサ:「うるさい雷付きのね」
 愛原:「リサも耳がいいから、うるさそうだな」
 リサ:「そうだよ。ただでさえこっちも雷がうるさくて怖いんだから、侵入されちゃ困るんだよ」
 愛原:「何の話だ?」
 リサ:「ホラー映画の話。雷が鳴る天気の悪い日に限って侵入する人間、あれ何なの?」
 愛原:「いや、別に天気の悪い日を狙って肝試ししているわけじゃないと思うよ」

 リサはホラー側のモノの視点で見るようである。
 まあ、リサ自身がそうだからか。

〔まもなく4番線に、各駅停車、本八幡行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください。急行の通過待ちは、ありません〕

 下りホームに行くと、ちょうど電車がやってくるところだった。
 新宿方向から轟音と強風を纏いながら入線してきた電車は、乗り入れて来た京王電車だった。
 既にその車体が濡れていたことから、ゲリラ豪雨と共に京王線内を走って来たのだろう。

〔4番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。いわもとちょう、岩本町〕

 私達は最後尾の車両に乗り込み、空いているローズピンクの座席に腰かけた。

〔4番線、ドアが閉まります〕

 そして、ホームドアと電車のドアが閉まる。
 ドアチャイムは都営地下鉄の車両とは、異なるタイプとなっている。
 前者が首都圏を走るJR東日本の通勤電車と同じで、後者はJR東海の在来線普通列車と同じ。
 ドアが閉まると、車掌が発車合図のブザーを押す。
 すると、エアーの抜ける音がして、電車が走り出した。
 都営新宿線の車掌は、電車が走り出しても、しばらくは乗務員室の扉を開けたまま、身を乗り出すようにしてホームを監視する。
 それから体を引っ込めて、乗務員室の扉を閉めるといったことをしている。

〔次は馬喰横山、馬喰横山。都営浅草線、JR総武快速線はお乗り換えです。お出口は、左側です〕

 リサ:「ねぇ、先生」
 愛原:「何だ?」
 リサ:「この電車、ゲリラ豪雨と一緒に走ってるんでしょ?」
 愛原:「速度的には、雲の方が速いだろ。ただ、ゲリラ豪雨の範囲が広いというだけで」
 リサ:「だったらさ、菊川で降りてもゲリラ豪雨のまんまじゃない?」
 愛原:「あ……」

 詰んだ?

[同日17:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 というわけで、菊川駅で雨宿りすること【お察しください】。

 リサ:「先生、夕食どうする?買い出し、行けなかったね……」
 愛原:「今日だけは外食にするものとする!」
 リサ:「わーい。じゃあ、ジョナサン行こう」
 愛原:「ステーキ食べる気か?」
 リサ:「お兄ちゃん助ける為に、わたし、和式トイレで屈辱を思い出しながら……」
 愛原:「分かった分かった。じゃあ、今日はそこにしよう。明日はスーパーに買い物に行くぞ」
 リサ:「分かったよ。いつ、行く?」
 愛原:「あと1~2時間ほど待て。今は事務作業が忙しい」
 リサ:「はーい」
 愛原:「これ、コピー取って来て」
 リサ:「はーい」

 高橋がいない今、リサが助手代行。
 ていうか、リサも明日からは昼以降も学校なんだよな。
 明日から授業が始まるし。
 事務所に、私1人か……。
 いっそのこと、本当に事務所と住居を集約しても良いのではないか。
 私は本気で、そんなことを考えるようになってきた。
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“私立探偵 愛原学” 「東京へ戻る」

2022-12-06 15:42:38 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月29日14:13.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区天沼町 自治医科大学附属さいたま医療センター→自治医大医療センターバス停]

 病院内でのレストランにおいて、私達は小一時間ほど善場主任と話した。
 デイライトは高橋のことも疑っていたようだが、本物の高橋のことについては疑いは晴れたことも話した。
 デイライトは、高橋自身もどこかのスパイだと思っていたようである。
 それからレストランを出て、リサはトイレに行き、その後でまた暑い建物の外に出た。
 尚、善場主任は交替要員が来るまで、待機しているという。
 バス停には屋根があるが、病院帰りの利用者達は皆、日陰の下でバスを待っていた。
 やってきたバスは、同じバス会社の違う車種。
 本数は多いので、複数のバスで運行しているのだろう。
 私達はバスに乗り込むと、今度は1番後ろの席に座った。

 リサ:「先生、もっとこっち来て」

 リサが私に密着するように言って来る。

 愛原:「はいはい」

 2人席の時は狭いので、元々密着する形になるが……。
 バスはエンジンを掛けた。
 またもや、冷房の強い風が吹いて来る。

〔「大宮駅行き、発車致します」〕

 引き戸式のドアを閉めて、バスはロータリー内を発車した。

〔♪♪♪♪。次は自治医大医療センター入口、自治医大医療センター入口です〕

 リサ:「お兄ちゃん、命が助かって良かったね」
 愛原:「ああ。まあ、パールのことだ。殺す気までは無かったんだろう」

 警察は他にも、パールに余罪が無いかどうか追及しているようだ。
 監禁の他にも暴行くらいは加わるか?
 それとも、ナイフとか持っているから、銃刀法違反か。
 いずれにせよ、前科があるから、またもや実刑を食らうことになるだろう。
 札付きの極悪メイドだ。

 愛原:「ん?待てよ……」
 リサ:「なに?」
 愛原:「いや、確かに高橋は救出できた。しかし、退院しないことには……」
 リサ:「……ああ!しばらく2人暮らしだね?
 愛原:「それもそうなんだが……」

 家事を俺とリサ、2人でやらないといけないということだ。

 愛原:「リサ、帰ったら取りあえず、夕食の買い出しだ」
 リサ:「分かった。お兄ちゃん、スーパーのカード、どこにしまってるか、わたし知ってるよ」
 愛原:「そ、そうか。それは助かる」

 そ、そうだ。
 スーパーにも何がしかのカードがあるだろうから、それを持って行った方がいいんだ。
 こういうことも忘れているほど、私は高橋に家事を依存してしまっていた。
 反省しなくては……。
 いつまでも、外食や出前ばかりではアレだからな……。

 リサ:「先生、夕食で思い出したけど……」
 愛原:「何だ?」
 リサ:「この前、吉野家で当てた牛角のクーポンはいつ使うの?」
 愛原:「高橋の快気祝いに使うさ。それまでに退院できるといいがな」
 リサ:「やった!」

[同日14:30.天候:晴 さいたま市大宮区 大宮駅東口バス停→JR大宮駅]

 バスは途中、道路混雑に巻き込まれ、多少遅れて大宮駅東口に到着した。
 降車場は駅ロータリー内ではなく、その外側。
 大宮中央通りの高島屋の前である。

 愛原:「大人2人で」
 運転手:「はい、どうぞ」

 ここでも、バス代は2人分払っておいた。

 リサ:「ありがとう」
 愛原:「いやいや。まあ、電車は自分のPasmoで乗ってもらうけどな」
 リサ:「分かった」

 この時間帯だと、リサと同じ、制服姿の中高生の姿も多く見られる。
 それぞれが地元の中高らしく、リサと同じ制服を着ている者は誰もいなかった。
 夏服は、スクールカラーである緑色(モスグリーン)のスカートを穿く。
 リサも膝小僧が見えるくらいの丈の長さであるが、太ももまで見えるくらい短くしている子はあまり見受けられなかった。

 リサ:「何線に乗る?」
 愛原:「秋葉原乗換だろ?楽に京浜東北線で行こう。……お、最後の快速に乗れるみたいだ」

 上野東京ラインが秋葉原にも止まるのならそうするところで、実際に検討までされたらしいが、さすがにホームを設置する用地が確保できないという理由で断念したそうな。

[同日14:49.天候:晴 JR大宮駅・京浜東北線ホーム→京浜東北線1407B電車10号車内]

 

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。1番線に停車中の電車は、14時49分発、快速、大船行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕

 

 今日最後の快速電車の最後尾に乗り込む。
 こっちの車両はガラガラで、私とリサはドア横の座席に隣り合って座った。
 リサはスマホを出して、友人達とLINEをやっているようだ。

〔この電車は京浜東北線、快速、大船行きです〕

 恐らく、世界中どこを見ても、人間の友人とLINEやっているBOWはここにいるリサ1人だけだろう。

〔「お待たせ致しました。14時49分発、京浜東北線、快速、大船行き、まもなく発車致します」〕

 次の折り返し電車が1番線にやってくると、信号が開通したのか、車掌がホームに降りて、発車メロディのボタンを押した。
 静かな感じの発車メロディがホームに流れる。
 さいたま市の市歌が原曲だという。

〔1番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 電車は何回かドア再開閉を繰り返すと、ようやく発車した。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は京浜東北線、快速、大船行きです。停車駅は田端までの各駅と、上野、秋葉原、神田、東京、浜松町、浜松町からの各駅です。次はさいたま新都心、さいたま新都心。お出口は、右側です〕

 私はふと、リサのスマホを見てみた。
 そしたらリサ、LINEではなく、Twitterをやっていた。
 アカウント名は『リサ・トレヴァー』で、アイコンが、正にあのオリジナルのリサ・トレヴァーである。

 愛原:「お前、Twitterやってるのか?」
 リサ:「うん」

 フォロワーを見ると……。

 愛原:「BSAA関係者ばっかりじゃん。てか、高野君がいる!?」
 リサ:「“青いアンブレラ”もいるよ」

 これもリサの監視の為だと、リサにTwitterを許可しているのだろう。
 確かにTwitterもやろうと思えばユーザーの特定ができるので、監視者側としては逆に使わせた方がいいのかもしれない。

 愛原:「え、エイダ・ウォン……。本人かな?」
 リサ:「さあ?」

 何か他にも、タイラントとかネメシスがフォロワーになっているのだが大丈夫か?

 リサ:「先生もフォローしてよ」
 愛原:「い、いや、俺はそもそもTwitterやってないし……」

 因みに高橋も、フォロワーになっているようだった。

 愛原:「で、今は何を呟いてるんだ?」
 リサ:「『大宮駅から京浜東北線の快速の1番後ろに乗りました』って。そしたら、BSAAの人達が『いいね』と『確認済み』とか『報告ご苦労』とか、リプしてくれる」
 愛原:「BSAAの皆さん……」

 リサを射殺したい人達のはずなのだが、一緒にTwitterで遊ぶとは……。
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“私立探偵 愛原学” 「再び埼玉へ」 2

2022-12-06 09:32:49 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月29日12:34.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]

〔♪♪♪♪。「まもなく大宮、大宮です。お出口は、左側です。大宮から東北、上越、北陸新幹線、宇都宮線、高崎線普通列車、埼京線、川越線、東武アーバンパークラインとニューシャトルはお乗り換えです。大宮の次は、熊谷に止まります。通過駅へお越しのお客様は……」〕

 今時珍しい、自動放送無しの特急列車である。

 愛原:「ここで乗り換えだ」
 リサ:「ん」

 電車が減速し、高崎線下り本線ホームに入線する。
 これが夕方の“スワローあかぎ”だと、副線の7番線に入線するが、昼間の“草津”は本線に入るようだ。

 愛原:「ゴミは捨てておこう」

 駅弁の空き箱などは、デッキのゴミ箱に捨てておく。
 そして電車が停車し、ドアチャイムは無く、ドアエンジンの『プシュー』という音でドアが開いた。

〔「大宮、大宮です。ご乗車ありがとうございます。8番線の電車は、特急“草津”3号、長野原草津口行きです。次は、熊谷に止まります」〕

 私達は冷房の利いた車内から、うだるような暑さのホームへと降りた。

 愛原:「今日も暑いな」
 リサ:「そうだね」
 愛原:「オマエ、暑いの平気か?」
 リサ:「うん。暑いのも寒いのも平気」
 愛原:「さすがはBOWだ」
 リサ:「ん。わたしはただの鬼じゃない」
 愛原:「そうだな。昼間の太陽の下でも、ガンガン活動できる鬼だ」

 エスカレーターを昇って、多くの利用客で賑わうコンコースに上がる。
 それから改札口を出て、東口に向かった。

[同日12:48.天候:晴 同区内 大宮駅東口バス停→国際興業バス大11系統車内]

 大宮駅東口を発着する国際興業バスは、基本的に駅前ロータリーの外側、大宮中央通り沿いから発車している。
 しかし、私達がこれから乗る大11系統だけはロータリー内から発車する。
 これは病院へのアクセスの為らしい。
 やってきたバスは、都営バスでも見られるごく普通の大型ノンステップバス。
 但し、埼玉では後ろのドアから乗る。
 乗り込んだ後で、後ろの2人席に座った。
 エンジンが掛かると、クーラーの吹き出し口から、強い風が吹いてきた。

 リサ:「涼し~」
 愛原:「暑いの、平気じゃなかったのか?」
 リサ:「涼しい方がいいに決まってるよ」
 愛原:「はは、そうか」

 そして、ドアチャイムと共に、引き戸式の中扉が閉まる。

〔ドアが閉まります。ご注意ください〕
〔「発車します。ご注意ください」〕

 バスは途中のタクシー乗り場を発着するタクシーを交わしながら、ロータリー内を進んだ。

〔♪♪♪♪。毎度、国際興業バスをご利用頂きまして、ありがとうございます。このバスは、自治医大医療センター行きです。途中お降りのお客様は、お近くのブザーでお知らせ願います。次は大宮大門町、大宮大門町でございます〕

 愛原:「大学病院に連れて行かれたということは、高橋の奴、色々と調べられてるな」
 リサ:「そうなの?」
 愛原:「大学病院という所は、研究施設でもあるからね」
 リサ:「う……研究……」
 愛原:「俺達が行けるのは、病院の部分だけであって、研究施設のような所には行かないよ」
 リサ:「そうなんだ。このまま、わたしも研究施設に……なんてことはないよね?」
 愛原:「ないない。そういうことが目的なら、電車やバスでのんびり行かせるわけないだろ。それに、リサより先に善場主任がそうなってるさ。何せ、善場主任は昨夜からいるんだからね」
 リサ:「それもそうか」

 表向きは人間に戻れたことになっている善場主任だが、脅威的な回復力や身体能力は残っている。
 それが為、今でも観察や監視対象となっているのだとか。

[同日13:00.天候:晴 さいたま市大宮区天沼町 自治医科大学附属さいたま医療センター]

 大宮駅から殆ど一本道のような感じへ東へ進むと、高橋の入院している病院が見えて来た。
 他の行き先のバスは、1つ手前の『自治医大医療センター入口』で降りなければならないが、大11系統だと正面ロータリーまで乗り入れてくれる。
 実際、バスはロータリー入ってすぐの所にあるバス停に停車した。

 愛原:「なるほど。ここか」

 バスを降りる時……。

 愛原:「大人2人で」
 運転手:「はい、大人2人ですね。どうぞ」

 リサの分の運賃も払っておいた。

 リサ:「いいの?ありがとう」
 愛原:「連れて行ったのは俺だからな」

 病院の正面エントランスに入ると、消毒と検温がある。
 ……しまった!リサは元々体温が高いんだった!
 大丈夫かな……。

 係員:「36度ちょうどですね。どうぞ」

 私は普通の平熱だったが……。

 係員:「36度9分ですね。どうぞ」

 何とか大丈夫だった。

 善場:「愛原所長、お疲れ様です」

 ロビーには善場主任が待っていた。

 愛原:「主任、お疲れさまです」
 善場:「高橋助手の病状について、お知らせ致しますので、向こうで……」

 善場主任に促され、私達は1階にあるレストランへ入った。

 リサ:「食後のデザート~」

 リサはそこでオレンジジュースとケーキを注文した。
 私と主任はアイスコーヒー。

 愛原:「少しは遠慮しろよ」
 善場:「構いませんよ。昨夜にあっては、リサも協力者ですから」
 愛原:「は、はあ……。それで、高橋の方は……?」
 善場:「かなり衰弱しておりまして、まだ意識が戻っていない状態です。今のところ、ICU(集中治療室)にて治療中です。あの時、中から応答できたのが奇跡的なほどだそうで……」

 もう殆ど精神力だけで、最後の力を振り絞ったのかもしれない。

 愛原:「命の心配は無いのですね?」
 善場:「それは大丈夫です。取りあえず、意識だけ回復すれば、あとは……歳も若いですから」
 愛原:「なるほど。……パールの方はどうなんでしょう?」
 善場:「警察が取り調べをしていますが、あそこにいたメイド全員で高橋助手の監禁をしていたようです。パールは、はぐらかすばかりで、ロクに聴取に応じないとのことです」
 愛原:「とんでもない奴だ。他のメイドは?」
 善場:「互いに責任を擦り付け合っている状態ですね」

 女の友情の脆さよ!

 愛原:「斉藤元社長の指示とかはないのでしょうか?」
 善場:「私もそうだと思いますし、警察もそのように疑っているようです。しかし、メイド達は口を割りません」

 互いに責任を擦りつけ合うのだから、そのうち誰かが口を割ると信じよう。

 愛原:「八丈島の時のあいつの動きも、かなり怪しかったからなぁ……。あの時だったのか……」
 善場:「そういえば、あの時もメイド達の動きが怪しかったですね」
 愛原:「確かに……」

 特に、パールだ。
 多分、パールが主犯だろうな。

 愛原:「主任はこれからも、高橋の監視を?」
 善場:「いえ、さすがに引き継ぎます」
 愛原:「ですよね」

 たまに、リサよりも中身化け物的な部分を見せることがある善場主任だが、さすがに昨晩からの監視はキツいようである。
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