報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「一夜明けて……」

2022-12-04 20:05:08 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月29日06:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 某ビジネスホテル]

 私達は善場主任の部下が運転する車で、ホテルまで送ってもらった。
 何と、ホテルの部屋はツインであった。
 何でも、リサが寝坊して学校に遅刻しては困るので、あえてそうしたのだという。
 リサに迫られないか心配したが、リサも疲れているのか、先にシャワーを浴びただけで、さっさと寝てしまった。
 ……それはそれで、何か寂しい部分もあるが。
 で、私もシャワーを浴びて、ようやく就寝したのが、1時頃だった。
 だから、睡眠時間は4~5時間といったところ。
 警備会社時代、泊まり勤務をやっていた頃の仮眠時間のようだ。

 愛原:「リサ、起きろ。朝だぞ」

 私が起き上がって、リサのベッドに声を掛けたが、眠そうに寝返りをするだけで、起きようとしない。
 確かにこれなら、起こし役が必要そうだ。

 愛原:「リサ、起きろ」

 私はリサの肩を揺さぶった。

 リサ:「ううーん……」

 一瞬、変化して襲ってきやしないかと思ったが、第1形態に戻っていたものの、そんなことは無かった。

 リサ:「おはよー……。もう朝?」
 愛原:「もう朝だよ。早く起きろ。電車に乗り遅れるぞ」
 リサ:「はぁーい……」

 リサに合わせていると、本当に電車に乗り遅れそうだったので、私が先にバスルームに行って、洗顔をさせてもらうことにした。

 愛原:「リサも急げ」
 リサ:「ふぁい……」

 リサは第0形態に変化しがてら大きな欠伸をしたが、変化しきれていない牙が覗いた。
 私がしばらくバスルームで髭剃りや歯磨きをした後で部屋に戻ると、ちょうどリサが着替えてる時だった。
 夏服のブラウスは既に着用しており、ショーツの上から緑色のブルマを穿くところだった。

 愛原:「うわっ、リサ!」
 リサ:「なぁに、先生?わたしの着替え、見たいの?最初から着替え直す?w」
 愛原:「いいから、オマエも歯磨きとかしろ!」
 リサ:「はぁーい」

 リサはブルマだけ穿くと、バスルームに向かった。

 愛原:「スカート!スカート忘れてる!」
 リサ:「濡れるから、後で穿くだけだよ~」

 別の意味で心臓に悪い。

[同日07:07.天候:晴 同区 JR大宮駅→高崎線4004M列車7号車内]

〔おはようございます。本日も、JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の6番線の列車は、7時7分発、特急“スワローあかぎ”4号、上野行きです。この列車は、7両です。……〕

 私達は善場主任から、特急列車のキップをもらっていた。
 これでリサを学校に連れて行けということだ。
 確かにこれなら、余裕で学校に着く。
 朝食は駅構内の売店で買ったサンドイッチにした。
 リサは駅弁を欲しがったが、旅行に行くわけではないので、もっと軽い物にするように言った。
 リサは渋々、カツサンドを選んだ。
 これとて朝からボリュームがあるように思えるのだが、私は私でミックスサンドにした。
 後はリサはオレンジジュースで、私はボトル缶コーヒー。
 既に朝のラッシュが始まっている大宮駅で、電車を待つ。

〔まもなく7番線に、特急“スワローあかぎ”4号、上野行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この列車は、7両です。……〕

 朝ラッシュで混雑するのは、何も車内の乗客だけではない。
 大宮から南は高崎線と宇都宮線が合流する、渋滞発生区間なのである。
 大宮駅には宇都宮線の電車が、たった数分先を走行する。
 つまり、各駅間を縫って走るわけである。
 なので、特急と言えども、そんなに最高速度で走れるわけではない。

 

 高崎からの特急列車(651系1000番台)がやってくる。
 他の普通列車が15両、電車線を走る京浜東北線でさえも10両なのだから、短い方である。
 それでも、満席ではないのは、上野止まりだからだろう。
 せめて常磐線のように、品川まで行けば、附属の4両編成を連結した11両編成でも賑わうかもしれない。
 かつては常磐線の“スーパーひたち”として、そこを最高速度130キロで爆走した車両なのだから……。

 

 最後尾の普通車に乗り込み、指定されている席に座る。
 進行方向右側の席だった。
 そこに隣り合って座る。
 日の差す進行方向左側の席に座る乗客の殆どは、これまた懐かしい横引カーテンを引いていたが、右側の乗客も一部もカーテンを引いて仮眠を取っていた。
 なので、車内は驚くほど静かである。
 リサや私は鞄を網棚に置いて、テーブルを出し、そこに朝食と飲み物を置いた。

〔「この電車は高崎線の特急“スワローあかぎ”4号、上野行きです。ご乗車には乗車券、定期券の他、指定席特急券または座席未指定券が必要です。また、4号車はグリーン車です。大宮を出ますと、次は浦和に止まります。まもなく、発車致します」〕

 ホームから発車メロディが微かに聞こえて来る。
 リサはカツサンドを美味そうに頬張った。

〔6番線の高崎線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 これまた今時珍しい、ドアエンジンを『プシュー』と響かせて、片開式のドアが閉まった。
 JR化後、東日本としては初の新造車両ということであるが、現在からは見れば、アナログな所も多々残っている。
 発車する時も、多少ガタガタ揺れる所とかもそうだ。

〔「大宮からご乗車のお客様、お待たせ致しました。おはようございます。ご乗車ありがとうございます。高崎線、特急“スワローあかぎ”4号、上野行きです。停車駅は浦和、赤羽、終点上野の順です。電車は、7両編成での運転です。全車両指定席で、自由席特急券でのご利用はできません。また、4号車はグリーン車です。【中略】次は浦和、浦和です」〕

 確かに電車は、常磐線時代の時速130キロなど出すこともなく、そもそも100キロも出していないような気がする。
 上野着は7時37分だという。
 この所要時間、実は同じ区間を走行する普通列車の所要時間と殆ど変わらない。
 特急とは名ばかりの、特別料金徴収快速だと思えば良い。
 もちろん、車両も特急用の車両なのではあるが……。
 その代わり、特急料金は安く、同区間を走る普通列車のグリーン車並みである。
 普通列車のグリーン車は自由席で、そもそも座れるかどうかさえ分からないのに、こちらは指定席なので、確実に座れるというメリットはあるが。
 特急とは名ばかりの列車で、私達は都内へ向かう。
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“私立探偵 愛原学” 「斉藤家の地下、そして……」

2022-12-04 13:47:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月28日22:30.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区上落合 斉藤家地下室]

 斉藤家の地下には、プールとフィットネスルームがある。
 ここに斉藤家が住んでいた時、リサはそこのプールとフィットネスルームで、絵恋さんと一緒によく遊んだ。
 事件場所はこの辺りなのか?
 特に、怪しい所は無いが……。

 善場:「ここです」
 愛原:「ここ?」

 そこは地下室のトイレ。
 鉄扉になっている。
 それを開けると、あったのは何故か和式トイレ。

 

 リサ:「! 前に使った時、ここは洋式トイレだったよ!?」

 リサが驚いた様子で言った。

 善場:「ええ。覚えておいででしょうか?この家には、他にも似たような仕掛けのトイレがあったことを……」
 愛原:「! 1階のトイレ!」

 あれも何故か洋式と和式が入れ替わるトイレであった。
 それが、この地下室のトイレもか?

 善場:「そうですね。でも、このトイレはもっと違う仕掛けになっているようです」
 愛原:「と、仰いますと?」
 善場:「この鍵は先日手に入れたものです」
 愛原:「あ、はい。そうですね」
 善場:「この鍵は、ここのトイレの切り替えスイッチの鍵だということが分かりました」
 愛原:「そうなんですか」

 試しに主任がスイッチボックスの所に行った。
 そこには切り替えスイッチが3つあった。
 今は『和』の所になっている。
 それを鍵を差して『洋』の方に回すと、トイレの構造が変わって洋式になる。
 ところが、何も書かれていない方向へ鍵を回すと、再び和式トイレになるだけなのだ。
 もう1度回してみても、何も変化が起こらない。
 ……いや!

 愛原:「何か浮かび上がってます!」

 和式便器に跨って、しゃがんだ所の壁に何か文字が浮かび上がる。

 愛原:「『リサ・トレヴァーの排泄後、新たな扉が開かれる』?こんなこと書くから、他方から『パチンカス中二病』とか言われるんだよ!」
 善場:「何の話ですか?こんな時に、メタ発言はやめてください。というわけでリサ、実際にこのトイレを使ってください」
 リサ:「和式、ヤだなぁ……」

 リサは嫌な顔をした。

 善場:「本物の高橋助手を助ける為です。今、用を足せますか?」
 リサ:「オシッコくらいなら、出ると思うけど……」
 善場:「一応、大きい方もした方がいいかもしれませんね。下剤をどうぞ」
 リサ:「何で今、持ってるの!?」
 善場:「そういう台本だからです」
 リサ:「ワケわかんないよーっ!」
 愛原:「善場主任も、メタ発言されておられるような……」
 善場:「何ですか?」
 愛原:「い、いえ、何でもありません!リサ、高橋を助ける為だ!頑張ってくれ!」
 リサ:「うぅ……。先生の為なら……」

 リサは涙を呑んで、下剤を飲んだ。
 特級BOWリサ・トレヴァーたるリサに、普通の下剤が効くのかと思ったが……。

 リサ:「うぅ……。で、出そう……」

 効いたようだ。

 善場:「それでは外に出てますので、用が足し終わったら教えてください」
 リサ:「分かったから早くドア閉めて!」

 リサに強烈な便意が来たのか、ドアを閉める前に、もうスカートの下に手を突っ込んで、緑色のブルマとショーツを下ろそうとしていた。
 しばらくして、中から水を流す音がした。
 どうやら、無事に用を足し終えたようだ……と!
 中から、何か大きな音がした。

 リサ:「きゃああああっ!!」

 そして、リサの叫び声。

 愛原:「おい、リサ!大丈夫か!?何があった!?」

 私はドアを何度もノックしたが、リサからの応答は無い。

 愛原:「開けるぞ!?」

 鍵は掛けていないので、私がドアノブを回すと、すぐにドアが開いた。
 と!

 愛原:「な、何だこりゃ!?」

 トイレは無くなっていて、下に下りるコンクリート製の階段があった。
 リサはその途中に転がっていて、目を回していた。

 愛原:「リサ、大丈夫か?」

 人間だったらケガしていたかもしれないが、そこは特級BOW。
 どこにもケガは見受けられない。
 私が抱き起してやると、リサは目を覚ました。

 リサ:「うぅう……!ゼッタイ許さない……!!」

 リサは第1形態に戻り、瞳を赤く光らせ、牙を剥き出しにしていた。

 善場:「こんなことになるとは、思ってもみませんでした。後でお詫びします」

 リサの怒りの矛先は私や善場主任ではなく、この仕掛けを造った者達であるようだ。

 善場:「それより、行ってみましょう。この先に、恐らく高橋助手がいるはずです」
 愛原:「は、はい」

 コンクリート製の階段。
 そして、コンクリート製の壁。
 当然、自然にできた穴であるはずがなかった。
 ライトの明かりを頼りに階段を下りて行くと、突き当りに鉄扉があった。
 その扉をノックしてみる。

 善場:「NPO法人デイライト東京事務所の善場です。どなたかいらっしゃいますか?」

 しかし、中から応答は無い。
 私が激しくドアをノックした。

 愛原:「高橋!そこにいるんだろ!?返事をしてくれ!!」

 すると、向こう側から弱々しいノックの音がした。

 善場:「あなたは高橋正義さんですか?正解なら1回だけノックをしてください」

 すると、向こう側から1回だけノックをする音がした。
 先ほどよりも弱々しい。

 愛原:「善場主任、鍵が無いと開きませんよ!?」
 善場:「分かっています!すぐにレスキュー隊を!」

[同日23:30.天候:晴 斉藤家→さいたま市内のビジネスホテル]

 消防のレスキュー隊がやってきて、油圧カッター等の器具で、鉄扉をこじ開けた。
 すると、中にはほぼ全裸の状態で、衰弱しきった高橋が倒れていた。
 中はまるで、外国の独房のような感じであった。
 裸電球がぶら下がっており、簡易的なベッドとトイレがあるだけ。
 一体、食事はどこから入れていたのだろうと思うくらい。
 とにかく高橋は救出され、さいたま市内の病院に搬送された。
 搬送される際、同行するのは善場主任となった。
 私とリサは、善場主任の部下が運転する車で、市内のホテルに向かうことになった。

 リサ:「お兄ちゃん、大丈夫かな……」
 愛原:「分からん……」

 私達の呼び掛けには必死に応じていたが、救出される際には意識を失っていた。
 あくまで意識を失ったというだけで、心臓や呼吸も停止したというわけではない。
 だが、かなり衰弱しきっており、病院で治療を受けなければ危険な状態だという。

 愛原:「明日はリサ、学校に行くんだ。俺も学校まで、一緒に行ってやる」
 リサ:「分かった……」
 愛原:「学校が終わったら、また高橋の病院に行ってみよう。面会はコロナ禍で不可能かもしれないが、善場主任や医者から状況は聴けるだろう」
 リサ:「うん……」
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