報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「悪夢からの目覚め」

2022-12-09 20:31:32 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月1日06:30.天候:曇 東京都港区新橋 相鉄フレッサイン新橋日比谷口本館・客室→別館1F・LAD's DE WINE]

 リサは昨日と同じ時間に起きると、すぐに身支度を整えた。
 制服スカートの下には、緑色のブルマを穿く。
 体操着と同様、着回しできるように2着持っているのだが、1着はメーカーが違った。
 いくら学校指定の衣料品店とはいえ、ブルマも大量生産しているわけではないから、同じサイズのブルマが何着もあるわけではなかった。
 そこでリサ、同じような色合いのブルマを通販で購入していた。

 

 実際に購入してみると、学校指定の物よりも濃い緑色であったが、こういうのは何回か洗濯すると色落ちするものである。
 また、光の加減で色合いが違って見えることもある。
 一応、その程度の誤差で済ませることができた。
 かつては衣料品店だけでなく、購買部でも購入できたわけだから、そういう所で買えるようになれば良いとリサは思った。
 制服に着替え、学校へ行く準備をする。
 手には、朝食券を持って。

 リサ:(今日は善場さんと夕食したレストランに行ってみよう)

 路地を挟んだ隣にある、同じホテルの別館。
 そこの1階には、イタリアンレストランがある。
 そこでもモーニングはやっており、ホテルで販売している朝食券を購入すれば利用できた。
 本館の大戸屋と比べると、客層も少し違う。
 こちらは、女性客の方が多かった。

 リサ:(善場さんみたいな人、いっぱいいるなぁ……)

 3つのモーニングメニューの中から選べるが、リサはソーセージとスクランブルエッグのセットにした。
 飲み物はもちろん、オレンジジュース。
 パンとサラダ、スープも食べ放題とのことだった。

 リサ:「むふー!」

 とはいえ、女性が多いということもあり、大戸屋と比べればボリュームはやや少なめ。
 その為、リサはアツアツのソーセージとスクランブルエッグをすぐに平らげた。

 リサ:「ご馳走様でした!」

 そして、急ぎ足で新橋駅に向かう。

 店員:「今日は何か、パンとサラダとスープの消費量がやたら多いような……?」

[9月1日07:50.天候:曇 同地区内 JR新橋駅→東海道線1532E列車15号車内]

 昨日と同じ列車の先頭車に乗り込む。
 今日は乗り込んだドアのすぐ横の2人席がまるっと空いたので、そこに座った。

〔次は東京、東京。お出口は、右側です〕

 東海道線には旧型のE231系と、新型のE233系が共通運用されている。
 編成車両数は決まっているものの(例えば、この1532E列車は15両編成と決まっている)、毎日同じ車両が充当されるわけではない。
 だから、昨日リサの乗った附属の5両編成はE231系だったが、今日はE233系といった感じの変わり方が毎日起こるのである。
 もちろん、そんなことは鉄ヲタ以外は気にしないだろう。
 リサだって、せいぜい今日の方が座席が柔らかいという認識でしかなかった。
 それよりも、今日の予定の方が気になった。

 リサ:(今日は避難訓練か。晴れだったら校庭に避難して、雨だったら体育館に避難する)

 もちろん今日が防災の日であり、基本的には関東大震災が発生した時刻に合わせて行われる。
 だが、今では学校ごとに時間を定めていることが多い。
 一応、東京中央学園でも昼に合わせているが、昼休み前の授業中に(形式上は)抜き打ちで行われることになっている。
 それから校庭なり体育館なりに避難して、あとは校長などから訓辞を受けた後、そのまま解散して昼休みというのが通例だ。
 で、今年の場合は……。

 リサ:(体育の授業中だ)

 リサのクラスでは、体育の授業が行われることになっていた。
 本来はプールの時間なのだが、さすがに水着のままでは避難できないということで(もしも本番ならどうするんだ?)、この日は普通の体育の授業が行われることになっていた。
 校庭であれば避難する必要など無いのだが、猛暑日は熱中症対策の為、体育館またはプールでの授業を行うことになっていた。
 ……ので、リサ達のクラスは体育館で授業を受けることになり、つまりは体操服姿のまま校庭に避難することになるのである。
 とはいうものの……。

 リサ:(あ、でも、雨が降ったら体育館か……)

 体育館のように空調が効いている場所であり、そもそもそこで授業中であるのなら、避難の手間が無くて便利である。
 もっとも、晴れたら晴れたで、そのまま校庭に出れば良いだけなので、教室からの避難よりは楽である。

 リサ:(よしよし)

[同日08:20.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校]

 リサ:「おはよー!」
 小島:「おはよう!」
 淀橋:「おはよう、魔王様」
 リサ:「ヨンヒが退場しちゃったから、四天王1人募集しなきゃ」

 四天王のうちの2人はここにいる上、もう1人は1年生の上野凛である。

 小島:「1年生の凛ってコ、学年違うから、なかなか会えないじゃない?」
 淀橋:「いや。案外、四天王の1人は、普段は表に出ないっていう設定も面白いよ?」
 リサ:「おっ、ヨドバシ!それ、面白い!採用!」
 淀橋:「あざーっす!」

 もっとも、凛だけは半鬼である為か、リサからの寄生虫を受けていない。
 半鬼である為、流れでそのまま『魔王軍』に加入し、何故か四天王の1人に指名されただけのことである。

 小島:「凛ってコ、本当に四天王でいいんですか?」
 リサ:「どういうことだ?」
 小島:「あのコだけ、ブルマを穿いてませんよ?」
 リサ:「なにっ!?」
 淀橋:「いや、あのコ、一応、陸上部でしょ?うちの女子陸上部のユニフォームって、下はレーシングブルマだから、それを穿くことで『許して』って言ってます」
 小島:「何かそれ、言い訳がましいねぇ」

 小島は眼鏡をかけ直して言った。
 元々は潰瘍性大腸炎が再燃していた為にガリガリに痩せていたが、リサの『老廃物吸収』『下血吸血』『寄生虫植付』により緩解し、食欲が戻ったことで体格が改善し、また元の明るい性格に戻っている。

 リサ:「うちの女子陸上部のユニフォームって、どんなヤツ?」
 淀橋:「青山学院大学の女子ユニフォームみたいな感じだね」
 小島:「いや、そう言われても分かんないって」

 小島がツッコんだ。

 リサ:「スクールカラーの緑色か?」
 淀橋:「そんな感じ。で、体育用のブルマと区別する為に、両脇に白いラインが1本入ってるの」
 リサ:「ほおほお。よし、リンに後で見せてもらおう」
 淀橋:「ユニフォームは、あくまで試合に出る時だけで、通常の部活動では普通のジャージだよ」
 リサ:「でも、持ってるんだろ?リンに後で見せてもらおう」
 小島:「じゃあ、LINE送っとくね」
 リサ:「サンキュ」

 こうして、朝のホームルームが始まった。
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“愛原リサの日常” 「リサ・トレヴァーの悪夢」 6

2022-12-09 12:03:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月31日17:10.天候:曇 東京都港区新橋 JR新橋駅→相鉄フレッサイン新橋日比谷口]

〔しんばし~、新橋~。ご乗車、ありがとうございます。次は、浜松町に、停車します〕

 下校は山手線を利用したリサ。
 帰宅ラッシュも始まりつつあり、ホームからは定時で帰れた通勤客が電車に乗り込む。
 列車線ホームと違い、アップテンポの発車メロディがホームに鳴り響く中、リサは1人電車を降り、ホテルのある日比谷口に向かう。

 リサ:(まだ、帰れない……)

 結局今日、愛原が意識を戻したという連絡は無かった。
 リサは沈んだ気持ち、尚且つ重い足取りで、宿泊先のホテルに戻った。
 ホテルに入り、部屋に戻る。
 すると室内が清掃されていたのか、ベッドもきれいに整えられていた。
 今日は体操服を着る体育は無かったが、水泳の授業はあったので、水着を今日は洗濯することにする。
 取りあえず水着は、ハンガーに掛けて、部屋に干しておく。

 リサ:「…………」

 リサはベッドに仰向けに倒れ込んだ。
 スカートが捲れて、緑色のブルマが丸見えになってしまうが、全く気にする様子は無い。
 体は疲れていないが、精神が疲れているような気がする。
 今日はこのまま眠ってしまおうか。
 リサが目を閉じた時だった。

 リサ:「!!!」

 ライティングデスクの上に置いた、自分のスマホが震えた。
 音が出ないよう、バイブにしていたのだった。
 リサは落ちかけた意識を引き戻し、ベッドから飛び起きた。
 手に取って画面を見ると、善場からだった。
 これはもしや!?

 リサ:「も、もしもし!?」
 善場:「リサ?善場です」
 リサ:「先生の……先生の意識が戻ったんですね!?」
 善場:「あー……それは違います。愛原所長は、まだ意識不明のままです」
 リサ:「ええ……?」

 リサは一気に力が抜けた。

 リサ:「じゃあ、何の電話……?」
 善場:「意識が戻ったのは、高橋助手の方ですよ」
 リサ:「お兄ちゃんが?」

 リサは目を丸くした。

 善場:「もっとも、まだ衰弱状態なので、しばらく入院が必要とのことです。とにかく、意識は戻りましたので、それだけ報告します」
 リサ:「わ、分かりました……。お見舞いは……」
 善場:「あいにくと、あの医療センターは面会が禁止されております。リサが心配していたことだけは、伝えておきますよ」
 リサ:「う、うん……」
 善場:「この調子で、愛原所長も意識が戻ることを祈りましょうね」
 リサ:「はい……」

 リサは電話を切った。

 リサ:(そうかぁ……。お兄ちゃんだけでも、意識が戻って良かった……)

 愛原ではないので、天にも昇る心地というほどではないが、取りあえずはホッとした。
 とはいうものの……。

 リサ:(先生の身に何があったか知ったら、お兄ちゃんもびっくりするだろうなぁ……)

[同日18:00.天候:雷雨 同ホテル2F・大戸屋]

 リサはホテル2階の大戸屋で、夕食を取ることにした。
 外出禁止なのは夕食後である為、必ずしもここで夕食を取らなければならないわけではない。
 ただ、外はゲリラ豪雨が降ってきたので、今日はここで食べることにした。
 デイライトから支給されている夕食代では、ここを利用するのが無難である。
 それでもメニューによっては、予算オーバーになるものもある。

 リサ:(ま、いいか。おやつは鬼斬り先輩に奢ってもらったし)

 数十円の予算オーバーなら自分で出すとばかりに、豚肉ロースの炭火焼定食を注文する。
 昼は学食で唐揚げ定食を食べたので、夕食は豚肉と……。

 リサ:(それにしても先生、いつ目を覚ますんだろう……?)
 エブリン:「分かってるくせに」
 リサ:「!」

 すぐ隣の席で、エブリンの声がした。
 パッと振り向いたが、誰もいなかった。

 リサ:(いい加減にしろ……!)

[同日21:00.天候:晴 同ホテル・客室]

 夕食が終わって、コンビニとコインランドリーに行き、それから部屋に戻った。

 リサ:「何がイケメンお兄さんだよ……w」

 リサは取りあえず、高橋の意識が戻ったことを『魔王軍』内で拡散した。
 事務所に来たことがあったり、無くても中等部代替修学旅行に参加したことのある者は高橋を知っている。
 愛原の助手でイケメンだという認識であるようだ。

 リサ:「メンヘラ彼女に拉致監禁されたってことくらいは拡散しても大丈夫か……」

 拡散が終わると、急いで宿題を終わらせる。

 リサ:(こんなところか……)

 あとはテレビを観たり、Twitterやったり、LINEやったり……。

 『魔王軍』メンバー:「リサ様ぁ、今度ティックトックに投稿する動画で、爪を出してください」
 リサ:「出せるか!」

 そんなことを話す。

 リサ:(お風呂入ろう)

 それから、バスルームに行って、バスタブに湯を溜めて……。

 リサ:「何だかんだ言って、わたし、1人でできてるかも!」
 エブリン:「『こっち側』に来れば、そんな面倒臭いことしなくていいのにねぇ……」
 リサ:「またか!?」

 リサは右手の爪を鋭く長く伸ばした。

 エブリン:「いつまで『人間のフリ』してるの?早く化け物として、ウィルスばら撒きなよ?あなただったら、この東京をゾンビパラダイスにできるでしょ?魔王様?」
 リサ:「できると思うけどしない!愛原先生に嫌われる!愛原先生と一緒にいられなくなる!」

 リサはエブリンに向かって、鋭い爪を振るうが、空を切るだけで消えた。

 リサ:(やっぱり幻覚か……)

 リサはさっさと風呂に入ると、寝ることにした。

 リサ:(明日の準備してないや!)

 別の種類の入浴剤を入れたバスタブに浸かっていて、それを思い出したリサだった。

 リサ:(さすがにそれをしてからでないと、愛原先生に怒られる……)

 そこまで考えて、既に自分が愛原に躾けられていることを知った。

 リサ:「『人間』になれなかったオマエとは違うんだよ、エブリン」

 風呂から上がる時、鏡にまたエブリンの姿を確認したリサは、そう言い放った。
 エブリンは無表情のまま、何も言い返して来なかった。
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