報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「高橋正義の退院」 2

2022-12-19 20:12:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月9日15:17.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

〔まもなく東京、東京。お出口は、右側です。新幹線、山手線、京浜東北線、中央線、横須賀線、総武快速線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです〕

 私と高橋を乗せた中距離電車は、定刻通りに上野東京ラインの線路を走行していた。

 愛原:「……よし。リサからのLINEは完了」

 リサは今日も美術部で、絵のモデルをやるという。
 17時の下校時刻までいるから、家に帰るのではなく、直接現地まで来るように指示しておいた。

 高橋:「あいつ、絵のモデルなんてやってるんスか」
 愛原:「そう。タイトルは、まんま『魔王様の肖像画』だって」
 高橋:「プッw、シュール過ぎますね!」
 愛原:「まあな」

 列車は東海道本線のホームである10番線に到着した。

〔「ご乗車ありがとうございました。東京、東京です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。10番線の列車は、東海道線、普通列車の平塚行きです。……」〕

 私達はホームに降り立った。

 高橋:「この電車も懐かしいですけど、東京駅も懐かしいですよ」
 愛原:「はは、そうか。それじゃあ、タクシー乗り場へ行こうか」
 高橋:「うっス!」

 エスカレーターでコンコースへ下りる。
 そして、八重洲方面への改札口から出て、タクシー乗り場に向かった。

 愛原:「他にリサが手掛けているプロジェクト。『東京中央学園ブルマ復活計画』だってさ」
 高橋:「何やってんスか、あいつ?」
 愛原:「ま、まあ、俺の為らしいな……」

 さすがに、『酔っ払った勢いで命令してしまった』とは言えない……。

 高橋:「まーた先生のエロ動画を勝手に観たんスね。しょうがねぇヤツです」
 愛原:「ま、まあな」
 高橋:「確かあれ、どこかの朝日新聞が面白おかしく騒ぎ立てたせいで廃止になったって聞きましたけど?」
 愛原:「ま、まあ、そうだな。東京中央学園って、変な所で保守的な学園なんだよ。ブルマもそうだったんだけど、結局他の学校が皆廃止にしてしまったから、うちも……的な感じだったらしい。だからリサ達の活動に、学園側は何のコメントもしていないし、それの反対派に対しても、特にコメントはしていない」
 高橋:「つまり、生徒同士で勝手にやってくれって感じっスか」
 愛原:「まあ、そうだな」

 尚、そろそろPTAにも飛び火しそうな勢いだが、今のところ、まだPTAにも動きはない。
 何せ会長は不在、その代行役の私が男で、副会長も男である。
 母親陣がPTA役員をやりたがらないばかりか、こういう時にばっかり役員を父親陣に押し付けられるような形になっていることが裏目に出ているようだ。
 他の学校は知らんが、東京中央学園はこんな感じ。
 但し、中等部は父親の役員の割合が低めなので、こちらは大きな騒ぎにならないかもしれない。
 リサ自身がもう高等部にいるのだし、リサの息が掛かっている中等部生徒は数えるほどしかいないからだ。

 愛原:「さあ、早いとこタクシーに乗ろう」

 八重洲中央口付近にあるタクシー乗り場に向かう。
 ここのタクシー乗り場も、一大ターミナル駅のそれにしては狭いことで不評である。
 状況によっては長蛇の列ができていることがあるが、今回はそんなことはなかった。
 ハッチを開けてもらい、大きなバッグはそこに乗せる。
 そして、私達はリアシートに座った。

 愛原:「墨田区菊川1丁目【中略】までお願いします」
 運転手:「はい、ありがとうございます」

 タクシーは高速バスを交わすようにして、ロータリーを出発した。

 高橋:「リサの運動が成功したら、どうするんですか?」
 愛原:「どうなるんだろうねぇ……」

 リサが卒業したら、また元の『事実上の廃止』になっているような気がする。
 まあ、それはそれでいいのではないだろうか。

 高橋:「肖像画はどんな感じで描いてるんスか?」
 愛原:「これがまた、体操服とブルマなんだよ」
 高橋:「ええっ?それのどこが魔王ですか?」
 愛原:「だからなのか、その上から黒マントを羽織って、禍々しいデザインのゴツい杖持って、それらしくするらしい」
 高橋:「もう、どこからツッコんでいいのやら分かりませんね」
 愛原:「まあな」
 高橋:「だっだら、まだオリジナルのリサ・トレヴァーの恰好すれば良かったんですよ」
 愛原:「いや、それだと、それはそれで魔王感が無くなる。まあ、中ボス感はあるけどな」
 高橋:「あ、そうか……」
 愛原:「ま、あとは美術部のコが、どういうタッチで描くかだよ」
 高橋:「あとは編集でってところっスか?」
 愛原:「編集とか言うなw」

[同日15:45.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 タクシーがマンション裏手の駐車場前に到着する。

 愛原:「はい、お世話さま~」

 私はここでも領収証を切ってもらった。
 私が料金を払っている間、高橋が先に降りて、後ろから荷物を降ろしている。

 高橋:「おお~っ!懐かしい!」
 愛原:「そうだろうな」

 高橋は本当に感動しているようだった。

 高橋:「先生、早く入りましょう!俺達の愛の巣へ!」
 愛原:「何が愛の巣だ!w」

 私達はマンションの中に入った。
 そして定員一桁の小さなエレベーターに乗り込む。

 愛原:「いや、実はさ、オマエが入院して、俺もケガしてみた時、ふと思ったんだ」
 高橋:「何スか?」
 愛原:「俺と高橋、そしてリサの3人だけの事務所だろ?」
 高橋:「え?リサも入れるんスか?」
 愛原:「嫌な顔するなよ。あれでも、結構役に立ってるんだぞ」
 高橋:「はあ……。それで、その3人だけの事務所が何なんスか?」

 エレベーターを降りて、部屋に向かう。

 愛原:「いや、何だかマンションと事務所を分ける必要ってあるのかなって」
 高橋:「と、仰いますと?」
 愛原:「この際、住居と事務所を統合してもいいんじゃないかって思ったんだ」
 高橋:「それじゃまるで、以前の王子にあった時の事務所みたいっスね」
 愛原:「まあな。ちょうど、あんな感じの物件があるといいんだがな……」
 高橋:「俺が不動産サイトで、探してみますよ」
 愛原:「まあ、また後でな」

 部屋に入る。

 高橋:「懐かスぃ~っ!!」

 高橋、嬉しさのあまり、テンションがマックスになる。

 高橋:「……けど、何か散らかってません?」
 愛原:「悪い。改めて、高橋の家事能力の高さに脱帽する次第であります」
 高橋:「ま、退院したからには、俺にお任せください」
 愛原:「悪いな」

 これで、もう心配は無くなった。
 あとは、リサの事だけだ。
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“私立探偵 愛原学” 「高橋正義の退院」

2022-12-19 16:10:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月9日08:00.天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校→JR上野駅]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は私の頭のケガの抜糸の日である。
 その後で、退院する高橋を迎えに行くつもりである。
 都営新宿線の満員電車はキツいので、電車が混んでいる区間にあっては、タクシーを使うことにした。
 ついでにリサも乗せてあげる。

 リサ:「先生、見てて。必ず、ブルマを復活させてみせるから」
 愛原:「あんまり、無理するなよ?」
 リサ:「大丈夫。後で泣きを見るのは、生徒会の方だから」

 リサはマスク越しにニヤリと笑った。
 聞くと、校内はブルマ復活賛成派と反対派に二分しているという。
 やはりというか、女子生徒の過半数以上が反対派に回り、リサなどの『魔王軍』と男子生徒の殆どが賛成派に回っているという状況だそうだ。
 全く、男ってヤツぁ……。

 リサ:「反対派がポスター貼って回っているけど、賛成派も貼って回っているし、かなり面白いよ」
 愛原:「あ、ああ……そう」

 今では男子生徒までもが、リサを『魔王様』と担ぎ上げる始末だそうだ。
 そして、学園前でリサを降ろす。
 その後で、上野駅に向かった。
 まあ、やっぱり折衷案として、現状維持なんじゃないのかね。
 体育の時の女子の恰好は、『ブルマでも短パンでもジャージでも、何でもいい』ってことにしておけば……。
 反対派が無理に校則でブルマ廃止を明記するのもどうかと思うし、賛成派が校則にブルマ着用を明記するのも……まあ、男としてはアリだと思うが。
 ああ、いや、コホン……。

 運転手:「お客さん、上野駅に着きましたよ?」
 愛原:「おおっとと!……えーと、支払いはカードで」
 運転手:「はい、ありがとうございます」

 私はタクシーを降りて、上野駅に向かった。

[同日11:00.天候:晴 埼玉県川口市西川口 済生会川口総合病院]

 医師:「ちょっと痛いですよ」
 愛原:「うっ……!」

 私は頭に刺しているホッチキスの針を抜いてもらった。
 語るのも痛い話だが、私の傷口は糸で縫っているのではなく、医療用のホッチキスでバチンバチンと留めているのだ。

 医師:「うん。愛原さんの傷、順調に塞がっています。あとはこのまま自然に塞がるでしょう。この後も引き続き、定期的な洗髪で傷口を清潔にしておいてください」
 愛原:「分かりました。散髪は、しても大丈夫ですか?」
 医師:「大丈夫ですよ」
 愛原:「ありがとうございました」

 取りあえずは、これで一安心。
 もっとも、まだゴシゴシは洗えない(さすがに傷口に、触れば痛い)から、シャンプー無しの所で切ってもらうしか無いな。
 この真夏の時期、やはり髪は短くしておきたい。
 いくらハードボイルド系探偵といっても、松田優作氏の如く、あのような髪形はちょっと暑いのだよ。

[同日14:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区天沼町 自治医科大学附属さいたま医療センター]

 高橋:「先生!御迷惑をお掛け致しました!」
 愛原:「いや、無事で良かったよ」

 本物の高橋とは、1年ぶりくらいの再会か?
 今では殆ど元通りだ。

 高橋:「サツの事情聴取がウザかったです」
 愛原:「そりゃそうだろ。俺でさえ、業務上過失致傷の被害者として事情聴取を受けた。オマエの場合、それ以上だろ」

 高橋の場合は略取誘拐、逮捕、監禁罪の被害者か。
 パールも再び、刑務所へ逆戻りだ。
 もっとも、パールが1人でやったとは思えない。
 必ず指示者がいるはずだが、何故かパールはこの辺りを黙秘している。
 喋って、その指示者のせいにすれば、パールの刑罰もいくらかは軽い物になるだろうに……。

 高橋:「先生も事故に遭われたそうで……」
 愛原:「俺の場合はただの事故だよ。もう今日の午前中、抜糸したから」
 高橋:「そうてすか。それにしても、頭の傷跡が痛々しいです」
 愛原:「まあな」

 しょうがないので、しばらくは帽子で頭を隠すしかないだろう。

[同日14:30.天候:晴 さいたま市大宮区 JR大宮駅→宇都宮線1583E列車5号車内]

 さすがに今回は善場主任の迎えは無く、帰りはタクシーに乗ることにした。
 高橋の荷物が大きく、バスで帰るのは大変なので、大宮駅まではタクシーに乗ることにした。

 愛原:「パールは逮捕されて、まだ取り調べを受けてるよ」
 高橋:「俺は、まだ覚えてないんですよ。突然、目の前が暗くなって……」
 愛原:「知ってる。オマエを浚ったのは、他のメイドさん達らしいな。もっとも、『パールに指示された』とか言ってるけども」
 高橋:「確かに、あの場にパールはいなかったっぽいですね……」
 愛原:「だって、パールも捜索者側だったもんな」
 高橋:「あの女……!」
 愛原:「そのパールも、誰かに指示されただろうに、何も喋らないんだと」
 高橋:「あいつも、変なヤツですからねぇ……」
 愛原:「取りあえず、今日はオマエの退院祝いと行こうや」
 高橋:「ありがとうございます」

 そして、タクシーが大宮駅東口に到着する。

 愛原:「領収証お願いします」
 運転手:「はい」

 料金を払い、トランクを開けてもらって、そこから高橋の荷物を出した。
 ボストンバッグであったが、持ってみると、やはり重い。
 リサに手伝ってもらった方が良かったかな?と、今さら思う。
 とにかく、エスカレーターで駅構内に入った。

 高橋:「リサのヤツ、どうでした?」
 愛原:「オマエのことを心配していたよ。いい『妹分』じゃないか」
 高橋:「化け物に心配されるほど、落ちぶれちゃいませんよ」
 愛原:「いやいや。さすがに1年間も監禁されて、偽者とすり替わられるようでは、そうもなるって」
 高橋:「さ、サーセン」

 改札口に入り、エスカレーターで宇都宮線ホームに降りる。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の3番線の列車は、14時43分発、上野東京ライン、東海道線直通、普通、平塚行きです。この列車は、15両です。グリーン車が付いております。……〕

 私はグリーン券を2枚購入していた。
 この時間帯のグリーン車なら空いているだろう。
 これで東京駅まで行き、またタクシーに乗れば安全に帰ると思う。

〔まもなく3番線に、上野東京ライン、東海道線直通、普通、平塚行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この列車は、15両です。グリーン車が付いております。……〕

 3番線という副線ホームに到着するのは、隣の本線ホームである4番線に、後から快速列車が来るからである。
 その快速に乗らないのは、何も普通列車より混んでいるからではなく、そもそもそれは湘南新宿ラインである為、東京駅に行かないからである。
 駅員の肉声放送でも、しきりにそれを伝えていた。

〔「ご乗車ありがとうございました。大宮ぁ、大宮です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。3番線の電車は、上野東京ライン回りの東海道線、平塚行きです。この後4番線には、湘南新宿ライン回りの横須賀線、快速、逗子行きが参ります。お乗り間違えの無いよう、ご注意ください」〕

 湘南新宿ラインは混んでいるが、上野東京ラインはそれほどでもない。
 それでも、2階建てグリーン車の2階席はそこそこ乗っているようだが、平屋席や1階席はそうでもなかった。
 階段の昇り降りの無い平屋席で、ちょうど2人分空いている席があったので、そこにした。
 大きなボストンバッグは、高橋がヒョイと荷棚に上げた。

 愛原:「さすがだな。もう元気になったかな?」
 高橋:「まだ鈍っている感じはしますが、さすがに具合の方は良くなりましたよ」
 愛原:「そうか」

 私達はリクライニングシートに座ると、列車の発車を待った。
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