[12月2日07:54.天候:晴 東京都江東区森下 都営地下鉄森下駅大江戸線ホーム→大江戸線603A電車先頭車内]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は『1番』のことを聞く為、再び高野君の所へ面会に行く所だ。
今度はルートを変えてみることにした。
前回は都営新宿線で岩本町駅まで行ってみたが、隣の森下駅まで歩いてみて、そこから都営大江戸線に乗り換えることにした。
こちらは空いているのではないかと見越してのことだ。
〔まもなく3番線に、両国、春日経由、都庁前行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕
ホームで電車を待つ乗客の数は多かった。
やはり朝ラッシュだから当たり前か。
しかし、やってきた電車の混み具合は、都営新宿線より空いていた。
何より、意外とこの駅で下車がある。
〔森下、森下。都営新宿線は、お乗り換えです〕
私達は先頭車に乗り込んだ。
さすがに座れるまでには行かなかったが、吊り革に掴まれるくらいの混雑程度であった。
吊り革どころか、乗り込むこと自体、一苦労の都営新宿線と比べればマシである。
〔「3番線から都庁前行き、まもなく発車致します。ドアが閉まります」〕
車外スピーカーから短い発車メロディが鳴って、それからドアが閉まる。
都営大江戸線はワンマン運転を行っている。
電車が走り出すと、結構走行音は大きかった。
〔次は両国(江戸東京博物館前)、両国(江戸東京博物館前)。お出口は、右側です〕
新型コロナ対策の為に窓を開けているのと、トンネル断面が都営新宿線よりも小さい為に音が反響しやすい。
また、軌間が標準軌である為、スピードを出して走行できるということもあって、尚更走行音が大きいというのもあるだろう。
もっと言えばカーブが多いので、その度に車輪の軋み音も響くというのもある。
愛原:「意外と空いてる。これなら痴漢も出ないだろうし、リサも安心して高校に行けるだろうな」
高橋:「新宿の方に行く電車なのに、どうしてなんスかね?
愛原:「都営新宿線や総武線と違って、千葉県から来ない上に、東京都の端っこや神奈川県に行ったりしない、東京都心で完結する路線だからかもしれないな」
その割には山手線や丸ノ内線は混んでるって?
さあ、何でかな……。
新宿駅以外、ターミナル駅を通らないからだろうな。
[同日08:01.天候:不明 東京都台東区上野 都営地下鉄上野御徒町駅→東京メトロ日比谷線仲御徒町駅]
電車は上野御徒町駅に着いた。
ここが下車駅である。
ここからJR上野駅は徒歩圏内である。
東京中央学園上野高校は上野駅の近隣に位置しており、十分徒歩圏内と言えるだろう。
つまり、菊川から森下駅まで歩き、上野御徒町駅から上野高校まで歩けば、利用する路線は1つで良いということになる。
これは使えると思った。
リサに提案してみよう。
〔上野御徒町、上野御徒町。銀座線、日比谷線、JR線はお乗り換えです〕
乗り換え路線が複数あるだけに、この駅での乗降客は多い。
ここからでも日比谷線に乗り換えられる……というか、こっちの方がいちいち地上に出なくて良いから、こっちのルートの方がいいのかもしれない。
東京拘置所の最寄り駅である小菅駅は、基本的には日比谷線と相互乗り入れする電車しか停車しないので、日比谷線で向かうのは普通である。
愛原:「うん……そうだな」
高橋:「何スか?」
愛原:「一応、定期は菊川~上野まで買ってあげよう。雨が降ってたりすると、大変だからな」
高橋:「何の話ですか?」
愛原:「リサが高校に通う時に買ってあげる定期だよ。今度は地下鉄通学になるからな」
高橋:「ああ……」
愛原:「その前に高校用のブレザー買ってあげないとダメか。スカートは共通だけど、リサも大きくなったしなぁ……」
高橋:「アジャスターがギリだって言ってましたし、買ってやった方がいいと思いますよ。ていうかそれより、今はアネゴのことです」
愛原:「おっとと!そうだった!」
[同日09:30.天候:晴 東京都葛飾区小菅 東京拘置所]
今度は何のトラブルも無く、拘置所に到着することができた。
よし、帰りも大江戸線経由にしよう。
……いや、帰りは新宿線でもいいか?
高野:「先生、おはようございます。また来てくださいましたね」
愛原:「はは、おはよう」
どうしても、こういう刑事施設に収監されている者というと、囚人服とかを着ているイメージなのだが、高野君は普通の私服だ。
未決囚は基本的に私服だからである。
何しろ初公判がまだ先なので、しばらくはここでの生活が続くだろう。
高野:「差し入れありがとうございます。これでまた暇つぶしが出来そうです」
愛原:「そうか」
高橋:「ムショとかだと、やることがあるからいいけど、拘置所じゃやること無ェしな。雑居房なら、適当な話し相手見つけて話すっていう手もあるんだけどな」
高野:「全くだね」
私は高野君に本などを差し入れた。
また、拘置所内で購入することもできるが、それには現金が必要である。
これも差し入れしておいた。
高野:「それで、今日聞きたい事は何ですか?」
愛原:「『1番』が現れたよ。但し、直接姿は現していない。……というかこの前来た時、痴漢に遭った女の子がそれっぽかったらしい」
高野:「そうでしたか」
愛原:「キミは『1番』のことについて、どれだけ知っているか教えてくれないか?」
高野:「日本アンブレラが開発したリサ・トレヴァーの完全版の1つ。霧生市のバイオハザードの時、他のリサ・トレヴァー達と共に研究施設から脱走した個体」
愛原:「それが今、都内にいるみたいなんだけど、何か知ってるかい?」
高野:「『2番』と同様、寂しがりやの部分があると思います。『2番』のリサちゃんが愛原先生を慕っているのは、何も命を救われたからだけではなく、愛原先生に追い出されて、居場所を失うことを最も恐れているからです。『1番』も同じだと思われます」
愛原:「しかし『1番』は同じ学校の生徒を駒扱いして、何人も殺してしまった。せっかくの居場所を自分で潰そうとするかね?」
高野:「それは直接本人に聞きませんと。とにかく、私が知っているのはここまでです」
愛原:「分かった。もし更に私に教えたくなったら、手紙を書いてくれな?」
高野:「分かりました」
この時点では、高野君からは重要なことは聞き出せなかった。
でも、まだ他に何か知っていそうな感じだ。
時期が来たら、話してくれるかもしれない。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は『1番』のことを聞く為、再び高野君の所へ面会に行く所だ。
今度はルートを変えてみることにした。
前回は都営新宿線で岩本町駅まで行ってみたが、隣の森下駅まで歩いてみて、そこから都営大江戸線に乗り換えることにした。
こちらは空いているのではないかと見越してのことだ。
〔まもなく3番線に、両国、春日経由、都庁前行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕
ホームで電車を待つ乗客の数は多かった。
やはり朝ラッシュだから当たり前か。
しかし、やってきた電車の混み具合は、都営新宿線より空いていた。
何より、意外とこの駅で下車がある。
〔森下、森下。都営新宿線は、お乗り換えです〕
私達は先頭車に乗り込んだ。
さすがに座れるまでには行かなかったが、吊り革に掴まれるくらいの混雑程度であった。
吊り革どころか、乗り込むこと自体、一苦労の都営新宿線と比べればマシである。
〔「3番線から都庁前行き、まもなく発車致します。ドアが閉まります」〕
車外スピーカーから短い発車メロディが鳴って、それからドアが閉まる。
都営大江戸線はワンマン運転を行っている。
電車が走り出すと、結構走行音は大きかった。
〔次は両国(江戸東京博物館前)、両国(江戸東京博物館前)。お出口は、右側です〕
新型コロナ対策の為に窓を開けているのと、トンネル断面が都営新宿線よりも小さい為に音が反響しやすい。
また、軌間が標準軌である為、スピードを出して走行できるということもあって、尚更走行音が大きいというのもあるだろう。
もっと言えばカーブが多いので、その度に車輪の軋み音も響くというのもある。
愛原:「意外と空いてる。これなら痴漢も出ないだろうし、リサも安心して高校に行けるだろうな」
高橋:「新宿の方に行く電車なのに、どうしてなんスかね?
愛原:「都営新宿線や総武線と違って、千葉県から来ない上に、東京都の端っこや神奈川県に行ったりしない、東京都心で完結する路線だからかもしれないな」
その割には山手線や丸ノ内線は混んでるって?
さあ、何でかな……。
新宿駅以外、ターミナル駅を通らないからだろうな。
[同日08:01.天候:不明 東京都台東区上野 都営地下鉄上野御徒町駅→東京メトロ日比谷線仲御徒町駅]
電車は上野御徒町駅に着いた。
ここが下車駅である。
ここからJR上野駅は徒歩圏内である。
東京中央学園上野高校は上野駅の近隣に位置しており、十分徒歩圏内と言えるだろう。
つまり、菊川から森下駅まで歩き、上野御徒町駅から上野高校まで歩けば、利用する路線は1つで良いということになる。
これは使えると思った。
リサに提案してみよう。
〔上野御徒町、上野御徒町。銀座線、日比谷線、JR線はお乗り換えです〕
乗り換え路線が複数あるだけに、この駅での乗降客は多い。
ここからでも日比谷線に乗り換えられる……というか、こっちの方がいちいち地上に出なくて良いから、こっちのルートの方がいいのかもしれない。
東京拘置所の最寄り駅である小菅駅は、基本的には日比谷線と相互乗り入れする電車しか停車しないので、日比谷線で向かうのは普通である。
愛原:「うん……そうだな」
高橋:「何スか?」
愛原:「一応、定期は菊川~上野まで買ってあげよう。雨が降ってたりすると、大変だからな」
高橋:「何の話ですか?」
愛原:「リサが高校に通う時に買ってあげる定期だよ。今度は地下鉄通学になるからな」
高橋:「ああ……」
愛原:「その前に高校用のブレザー買ってあげないとダメか。スカートは共通だけど、リサも大きくなったしなぁ……」
高橋:「アジャスターがギリだって言ってましたし、買ってやった方がいいと思いますよ。ていうかそれより、今はアネゴのことです」
愛原:「おっとと!そうだった!」
[同日09:30.天候:晴 東京都葛飾区小菅 東京拘置所]
今度は何のトラブルも無く、拘置所に到着することができた。
よし、帰りも大江戸線経由にしよう。
……いや、帰りは新宿線でもいいか?
高野:「先生、おはようございます。また来てくださいましたね」
愛原:「はは、おはよう」
どうしても、こういう刑事施設に収監されている者というと、囚人服とかを着ているイメージなのだが、高野君は普通の私服だ。
未決囚は基本的に私服だからである。
何しろ初公判がまだ先なので、しばらくはここでの生活が続くだろう。
高野:「差し入れありがとうございます。これでまた暇つぶしが出来そうです」
愛原:「そうか」
高橋:「ムショとかだと、やることがあるからいいけど、拘置所じゃやること無ェしな。雑居房なら、適当な話し相手見つけて話すっていう手もあるんだけどな」
高野:「全くだね」
私は高野君に本などを差し入れた。
また、拘置所内で購入することもできるが、それには現金が必要である。
これも差し入れしておいた。
高野:「それで、今日聞きたい事は何ですか?」
愛原:「『1番』が現れたよ。但し、直接姿は現していない。……というかこの前来た時、痴漢に遭った女の子がそれっぽかったらしい」
高野:「そうでしたか」
愛原:「キミは『1番』のことについて、どれだけ知っているか教えてくれないか?」
高野:「日本アンブレラが開発したリサ・トレヴァーの完全版の1つ。霧生市のバイオハザードの時、他のリサ・トレヴァー達と共に研究施設から脱走した個体」
愛原:「それが今、都内にいるみたいなんだけど、何か知ってるかい?」
高野:「『2番』と同様、寂しがりやの部分があると思います。『2番』のリサちゃんが愛原先生を慕っているのは、何も命を救われたからだけではなく、愛原先生に追い出されて、居場所を失うことを最も恐れているからです。『1番』も同じだと思われます」
愛原:「しかし『1番』は同じ学校の生徒を駒扱いして、何人も殺してしまった。せっかくの居場所を自分で潰そうとするかね?」
高野:「それは直接本人に聞きませんと。とにかく、私が知っているのはここまでです」
愛原:「分かった。もし更に私に教えたくなったら、手紙を書いてくれな?」
高野:「分かりました」
この時点では、高野君からは重要なことは聞き出せなかった。
でも、まだ他に何か知っていそうな感じだ。
時期が来たら、話してくれるかもしれない。
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