報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「帰省2日目」 4

2018-09-06 10:13:16 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月27日11:30.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区新都心 ロイヤルホスト]

 先に昼食から取ることにした稲生とマリア。

 マリア:「やはり、夜からゲリラ豪雨が降るみたい」
 稲生:「夜ですか。夕方じゃなくて?」
 マリア:「いや、夜だね」

 マリアはテーブルの上に置いた水晶球で占ってみた。

 稲生:「うーむ……そうですか」
 マリア:「もっとも、私も修行中の身。どこまで当たるか分からないよ?師匠みたいに、時間単位で当てられたらいいんだけど……」
 稲生:「先生の占いは当たり過ぎて逆に怖いですからねぇ……。取りあえず、日が暮れる前に帰るのが無難ってことですかね」
 マリア:「そういうことになるかな」
 稲生:「それじゃ、取りあえず今日のところは映画でも観て、少しコクーンの中でも歩いてから帰りましょうか」
 マリア:「そうしよう」

[同日13:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区吉敷町 MOVIXさいたま]

 昼食を終えて、早速映画を観に来た魔道師2人。
 まだ、シアター入場には時間がある。
 チケットだけ先に購入すると、稲生はポップコーンなどを買いに行った。

 店員:「それではこちら、ハーフ&ハーフのダブルコンボとコーラMサイズ2つになります」
 稲生:「どうもー」

 稲生はポップコーンやコーラを手にすると、マリアの所へ戻ろうとした。
 そこへ、これから観る作品の予告編が流れて来る。

 稲生:(お、これから観る“劇場版アンドロイドマスター”の予告編だ。いや、でもこれは観ないようにしよう。前情報無しで観るのが作り手への礼儀だと、僕は思う……)

 だが、そんな稲生の思いとは裏腹に……。

 マリア:「勇太、見て!私、予告編でテンション上がっちゃって、先にパンフ買っちゃ……」
 稲生:「この外道ッ!!」
 マリア:「ヒィッ!?」

 マリアがパンフを大きく開くながらやってきたので、稲生はマリアの手の上からバンッとパンフを閉じた。
 当然、びっくりするマリア。

 マリア:「え……なに?今、外道って……」

 稲生は息を整えると言った。

 稲生:「あ……ああ……違いますよ。『外道』とは仏教用語で、仏教徒以外を指す言葉ですから。マリアさん、元クリスチャンだし。ほら、僕は日蓮正宗信徒なもんで、『内道』ね。そういう意味ですから……」
 マリア:「いや、明らかにそんな穏やかなニュアンスじゃなかったぞ!?」
 稲生:「だってマリアさん、パンフなんてネタバレの宝庫じゃないですか!いいんですか!?よく鑑賞前に見るよね!?って、買うよね!?」
 マリア:「あー、私は別にネタバレ平気だから。むしろ、推理小説をラストから読む方だから」
 稲生:「マジですか……」
 マリア:「だって、しょうがないだろ。さっきも私、占ったけど、魔道師って未来を先読みする存在だぞ?ネタバレくらい、どうってこと無くなるさ」
 稲生:「う……それもそうか」
 マリア:「まあ、勇太のそういう所、嫌いじゃないよ」
 稲生:「えっ……?」
 マリア:「勇太は仏教徒で良かったね」
 稲生:「そうですか?」
 マリア:「私は普通の人間だった頃、旧約聖書を主に経典とするカトリック教会で洗礼を受けたわけだけど……」

 ということは洗礼名もあったはずだが、稲生は知らない。
 魔女のミドルネームは契約した悪魔の名前を付ける、デビルネームを付けることになっているからだ。

 マリア:「パンフどころの騒ぎじゃなく、ガンガン未来を予言しているネタバレの本だから」
 稲生:「死海文書なんか、未来予知し過ぎて、もはやアニメのネタレベルですもんね。それなら、過去の事ばっかり書いている日蓮大聖人御書の方がいいですね。『御供養ありがとう』とか『いい加減、そろそろ久遠寺に来い』とか」

 そんなことをしているうちにシアター入場の時間となり、稲生達は中へと入った。
 もちろん、それですぐに始まるわけではない。

 稲生:「そういえばマリアさんと映画来るの、久しぶりですね」
 マリア:「そうだな。それで思い出したんだけど、さっきのパンフのやり取り……」
 稲生:「はい?」
 マリア:「多分この作品を見てくれてる読者は、『またネタの流用?』とか思ってるぞ?」
 稲生:「マリアさん、ネタバレはしょうがないですけど、メタ発言はやめてくださいね」
 マリア:「それとさっきの外道とか内道とかの話……」
 稲生:「はい」
 マリア:「ブッダの伝記物はロードムービーとかの類になるのに、イエス・キリストの伝記物はどうしてもスプラッターになるな」
 稲生:「磔の刑を食らう時点で、どうしてもクライマックスはそうなりますよね」
 マリア:「日蓮大聖人とかは映画にならないの?」
 稲生:「何か昔、あったみたいですけどねぇ……。(萬屋錦之助が日蓮大聖人の役をやったヤツ……)あとは、戸田会長が主役の映画を創価学会が昔作ったって聞いたことがあります」

 “人間革命”の実写映画版。
 但し、宗門との蜜月期間に作られた為、宗門をとてもよく持ち上げる描写が多々あり、到底『日顕宗』呼ばわりする今の学会内で上映できるはずもなく、かといって宗門側も今さら破門団体の映画を宗内で公開できるはずもなく、蚊帳の外の顕正会がそんなデータを持ってるはずもなく、完全にお蔵入りとなっている。

 マリア:「あ、そうだ。家庭用プロジェクターって知ってる?ちょっと興味あるんだけど」
 稲生:「ああ、知ってますよ。1万円ちょこっとで映画館みたいな臨場感が味わえるってヤツでしょう?でも、それこそ魔道師の幻覚魔法で何とかなりません?」
 マリア:「でもそれ、大抵ホラーしか観れないから」
 稲生:「イリーナ先生にすっごく頼んだら、ハリポタ1本くらい再生してくれないかなぁ……?」

 と、ここで上映開始のベルが鳴る。
 もちろん、最初はCMというか、映画泥棒の話が出てくるのだが。
 この辺はポップコーンでやり過ごす魔道師達だった。

〔「広布の戦士!ケンショーレンジャぁぁぁぁぁっ!!」チュドーン!〕

 稲生:「プハッ!?」
 マリア:「ブッ!」

 ……やり過ごせるほど、世の中甘くなかった!

〔「スクリーンの前の皆!俺は修羅の戦士、ケンショーブルーだぜっ!あぁっ!?まさかテメェらは、この映画を盗撮しようってんじゃねーだろーな!?あぁっ!?」「いいですかー?映画泥棒は、正に本門戒壇の大御本尊に仇なす行為と同じことなんですね。ソッカー首領のダイ・サークを見て御覧なさい。映画泥棒をするだけでは飽き足らず、自分で映画まで作ってしまった。これは御本尊様を偽造することと同じ行為なんですね」「クフフフフフフ……。映画の盗撮はいけませんよ。私は女性のスカートの中だけしか撮りません。ええ」「ぇそれではですね、ぇそろそろ時間も無くなってきましたので、ぇそろそろ上映開始と、ぇいきましょ」〕

 稲生:「何これ?」
 マリア:「確かにこれは注目するなぁ……」

 尚、ケンショーレンジャーの出番は10分ほど続いたという。

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