報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「KR団の置き土産」

2018-03-07 19:44:46 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月13日09:30.天候:晴 静岡県富士宮市下条]

 敷島達は駅前からタクシーで吉塚広美の家に向かった。
 車が富士宮市内に入り、標高を上げる度に雪が目につくようになってくる。
 先週の大豪雪の際は、あちこちの地区が孤立した状態になったとのこと。

 敷島:「大丈夫だろうなぁ〜?雪に阻まれて行けないなんてことは……」
 運転手:「それは大丈夫ですよ。あれからもう雪は降っていませんから」
 敷島:「それもそうか」

 そして車は上条地区にある大石寺の三門前を通過する。

 

 敷島:「あれ?プレハブだ。何か建てるのかな?」
 運転手:「今、三門の大掛かりな修復作業が行われているんですよ」
 敷島:「そうなのか。ま、三門と言えばお寺の正門。それが見すぼらしいんじゃ、参拝客も寄り付かないってか」
 アリス:「どれだけ多額の寄付があったのかしらね」
 敷島:「そんな野暮な事は、新聞辺りに任せときゃいいんだよ」

 三門前の国道を西へ進むタクシー。
 その先にある住宅街へ入った。

 運転手:「この辺が下条地区ですよ」
 敷島:「あ、うん。えーと……確か……。ああ、佐野さんだ!」

 道路から敷島達に手を振る1人の中年女性がいた。

 敷島:「どうもどうも!こんな時間からすいません!」

 敷島は佐野という女性の前にタクシーを止めてもらった。
 佐野は吉塚の娘で、結婚した為に名字が変わっている。

 佐野:「いいえ。東京から御苦労様です。これが家の玄関の鍵です」
 敷島:「どうもすいません。なるべく早く終わらせますので……」
 佐野:「いえ、いいんですよ。どうせ私達、これからお寺の方に行きますので」
 敷島:「ああ、さっき通った……えーと……」
 佐野:「大石寺です」
 敷島:「ああ、そうそう。そのタイセキジ」
 佐野:「私達も一日留守にしますので、鍵はそこの郵便受けの中にでも入れておいてください」
 敷島:「因みに今、家の中はどうなってますか?」
 佐野:「殆ど手つかずです。御仏壇や御本尊様だけはお移ししましたが……」

 この家は殆ど吉塚が1人で住んでいた。
 見た目は普通の一軒家で、敷島や平賀が訪問した時、内装も一応そうではあったのだが、佐野の話では昔から怪しい実験ばっかりやっていたという。

 佐野:「家の奥が母の研究室になっていました。そこは一切手つかずです」
 敷島:「何か、高級な財産とかがあるかもしれないのに?」
 佐野:「恐らく無いと思います。母の所には、時々黒スーツの男の人達が何人かよく訪問していて、怖かったので……」
 敷島:「KR団の連中か」
 佐野:「表向きには妙観講の人達ということにしておいたそうですが、母は妙観講員じゃありませんし……」
 敷島:「妙観光?地元の旅行会社か何かですか?何かさっき、清観光というバス会社とすれ違ったな……」
 佐野:「あ、いえ、違います」
 シンディ:「社長、今検索してみたところ、あの大石寺を総本山とする日蓮正宗の中で、一番大きい信徒組織の名前のようです」
 敷島:「ふーん……。檀家さんの集まりか。まあ、いいや。他に家の中で、変わった所とかありますか?……あ、いえ。疑うつもりは無いんですが、入った途端、レーザビームが飛んで来たり、セキュリティロボットが襲って来たりという経験を何度かしたものでしてね……」
 佐野:「そんな話は聞きませんでしたね。ただ、御仏壇を動かした後、その後ろに……」
 敷島:「ん?」
 佐野:「壁の穴をコンクリートで埋めた跡があるんです。それが何なのかまでは分かりませんでしたが……」
 敷島:「そうですか。分かりました。それではお邪魔致します」

 敷島達は家の中に入った。

[同日09:45.天候:晴 静岡県富士宮市下条 吉塚家1F]

 見た目は普通の木造2階建て。
 しかし雨戸が閉まっている為、屋内はとても薄暗かった。
 それを見越して一応、ライトは持って来ている。

 敷島:「ちっ、ヒドい臭いだ」
 アリス:「本当に長い間空き家だったのね」
 シンディ:「社長達が掛け軸を持って行った後、何度か出入りしただけだと仰ってましたものね」

 シンディは右目をライトとして光らせていた。

 敷島:「いや、シンディ。お前は点灯させなくていい」
 シンディ:「は?ですが……」
 敷島:「バッテリーの節約をしておけ。ここは空き家で、ライフラインは全部止まってる」
 シンディ:「かしこまりした」

 シンディは右目のライトを消した。
 シンディのライトが1番明るかったので、屋内が少し暗くなる。
 それでもシンディには暗視機能が付いているので、ライトを点けなくてもよく見えるのだが。
 で、両目が赤くボウッと光っているのは暗視機能を使っているから。
 それが傍目に見ても不気味なので改善が求められていたが、何も対策されることなく今に至る。

 アリス:「どこから行くの?」
 敷島:「まずは研究室だな。何しろKR団の元幹部が使っていた家だ。特に研究室には家族でさえも入れなかったらしいから、どんなセキュリティシステムが残っているか分からん。……けどまあ、この通り今は停電してかるからな。如何にしばらくは内蔵バッテリーで稼働するとはいえ、あれからもう2年くらいは経ってるのか?だからもう、それすら稼働していないはずだ」

 敷島達は研究室に向かった。
 木造の家には似つかわしくない頑丈な鉄の扉が待ち構えていた。
 明らかに普通の鍵では開かない構造になっていることは見て分かったが、電子ロックであったことは分かった。
 で、今はそれを施解錠する電気は供給されていない。
 どうしたら良いか?

 敷島:「普通の鍵で開くってことだろ」
 アリス:「確かに」

 敷島は佐野からもらった鍵束の1つで、研究室のドアを開けた。

 アリス:「おお〜!何か色々ある!」
 敷島:「KR団の連中も、本当はここから色々と持ち出したかっただろうに、その前に潰れちまったんだろう。或いは、色々あるように見せかけて、実は何の価値も無いものばっかりとかな」
 アリス:「シンディ!ちょっとの間だけライト点けて!」
 シンディ:「かしこまりました」

 シンディは再び右目のライトを点灯させた。

 敷島:「USBメモリーとかもあるな」
 アリス:「色々と持って行きましょう」

 因みにここにある物で、敷島達にとって有用だと思われる物についての持ち出しは既に許可を得ている。

 アリス:「ケーサツにバレたら、横取りされるかもね」
 敷島:「鷲田警視達か?まだKR団の捜査とかしてるのかなぁ……?」

 取りあえず、1階の捜査は順調であった。
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“戦う社長の物語” 「いま、再びの富士宮へ」

2018-03-07 10:15:13 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月13日07:26.天候:晴 JR東京駅・東海道新幹線ホーム]

 在来線電車にも引けを取らぬ高頻度で発着する新幹線。
 そんな速達列車の合間を縫って、各駅停車の“こだま”号の発車時刻が迫る。

〔「レピーター点灯です」〕

 ホームに発車メロディが鳴り響く。
 JR東日本新幹線ならまだ電子電鈴だが、東海道新幹線ホームは、かつて“のぞみ”号で使われていた車内チャイムを使用している。

〔16番線、“こだま”635号、名古屋行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。お見送りのお客様は、安全柵の内側までお下がりください〕
〔「16番線から7時26分発、“こだま”635号、名古屋行き発車致します。……ITVよーし!乗降、終了!……16番線、ドア閉まります!」〕

 ブー!(客終合図)

 JR東日本新幹線と違い、随分慌ただしく出発するのは、それだけ高頻度で発着するからだろう。
 入線時刻に余裕があるのはホームに余裕があるからだろうが、発車に関しては東日本側よりも賑やかだ。

 アリス:「あー、美味しかった。ごちそうさま!」
 シンディ:「では空き箱を片付けて参ります」
 敷島:「オマエな、早食いはいいけど、景色を楽しみながら駅弁を食うというのがな……」
 アリス:「そもそもアメリカやヨーロッパで、駅弁という感覚が無いから」

 車内販売はあっても、駅弁が無いのは欧米の鉄道(その代わり食堂車がある)。

〔♪♪(車内チャイム。“いい日旅立ち・西へ”)♪♪。今日も、新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“こだま”号、名古屋行きです。終点、名古屋までの各駅に停車致します。次は、品川です〕

 敷島:「家でも食べるのはアリスの方が速い。普通、逆だろ?」
 アリス:「いいじゃない、どっちでも」

 日本人が早食いで欧米人が遅食いというのは、敷島家では通用しない。

 アリス:「このドクター吉塚だけど、じー様の日記にも書いてあったよ」
 敷島:「で、何て?」
 アリス:「『如何にロボット開発に携わる者とはいえ、随分とストイック過ぎる女だ。現に、今日で私の食事の誘いを5度も断ったのだ。ファキン・ジャップ!』……だって」
 敷島:「……ドクター・ウィリーって、そんな人間味のあるヤツだったっけ???」
 アリス:「反日家だったけど、それってドクター南里のせいじゃなくて、このドクター吉塚のせいかもね」
 敷島:「じゃあ、あとは悪口のオンパレードか。いいよ、もう」
 アリス:「あ、でも、ドクター吉塚の作る物に関しては褒めてたよ」
 敷島:「何だって?」
 アリス:「『彼女の作るフェアリーロボ、MOE-409は正に妖精そのものである。このままウォルト・ディズニーカンパニーに売り込めるのではないか。リアル・ティンカーベルとして!』」
 敷島:「……この爺さん、実際にフロリダのディズニーワールドに行ったんだろうなぁ……」
 アリス:「アタシも行きたかったなぁ……」
 敷島:「東京ディズニーランドで我慢しろよ。てか、行っただろ」
 アリス:「うん……」

 結婚前、実は敷島とアリスはディズニーランドに1度行っている。
 当ブログでも一部公表している(全部公表すると、ディズニー秘密警察の捜査を受け……おや?誰か来たようだ)。

 敷島:「今度はトニーを連れて……あっ、しまった」
 アリス:「なに?」
 敷島:「いやな、どうせKR団の元幹部の家を捜査するんだから、萌を連れてくれば良かったなぁって」
 アリス:「ああ!それもそうだったわね」

 妖精型のファンシーロボとして吉塚広美が設計・製造した萌。
 用途は潜入捜査用である。
 妖精の飛行能力、そして小さな体を利用して敵アジトに潜入させ、調査させる目的で作られた。

 アリス:「まあ、しょうがないよ。アタシも色々持って来たから、それで何とかしよ」
 敷島:「行っておくが、Rデコイは持って来てないよな?」
 アリス:「…………」
 敷島:「持って来てんのかい!」

 Rデコイとはアリスが開発した時限式爆弾のことで、爆発前に特殊な光と信号を放つ。
 するとそれにAI性能の低いロボット達が引き寄せられ、粗方集まったところで爆発し、大ダメージを与えるというもの。
 なのでAIの性能が高いマルチタイプやボーカロイドには効かないはずなのだが、鏡音リン・レンの好奇心は誘ってしまい、この2人は近づいてしまったという実験データが出ている。

 敷島:「黒いロボットには効くか、それ?」
 アリス:「その実験データも取ってみたいねぇ……」
 敷島:「そう、都合良くは現れんだろ」
 アリス:「そう言って隣にいるかもよ?」
 敷島:「隣!?」
 シンディ:「な、何ですか?」
 敷島:「隣にいるのはシンディだよ」
 アリス:「そう都合良くは行かないってことよ」
 シンディ:「黒いロボットが現れても、私がバラバラにして見せますのでご安心を」
 敷島:「エミリーはおっぱいをしこたま揉まれていたけど、お前は大丈夫か?」
 シンディ:「大丈夫です。下着泥棒はされましたが、私の場合はおっぱい一揉みにつき、腕一本です」
 敷島:「怖っ!」
 シンディ:「あ、もちろん、社長はタダでいいですからね」
 敷島:「怖いヤツ、連れて来ちゃったなぁ……」
 アリス:「何を今更言ってんの」

[同日08:34.天候:晴 JR新富士駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、新富士です。新富士の次は、静岡に止まります〕

 JR東日本新幹線だと車内の自動放送は男声だが、東海道新幹線は女声である。
 それぞれに声優が話しているのだが、アニメの方ではない(ナレーションくらいはやっているかも……)。

〔「新富士でお降りのお客様、ご乗車ありがとうございました。お出口は、左側です。ホーム進入の際、大きく揺れる場合がございます。お立ちのお客様は、お近くの手すりにお掴まりください。……」〕

 敷島:「新幹線だと速いな」
 アリス:「もう富士山が見えるわ」
 敷島:「そりゃそうだ。富士山の麓に町に行くんだからな」

 列車がホームに停車する。

〔「ご乗車ありがとうございました。新富士、新富士です。……」〕

 列車を降りて階段の方に向かって歩いて行くと、すぐに通過列車が轟音を立てて“こだま”を追い抜いて行った。
 通過列車はこれだけにとどまらない。
 “こだま”は通過線のある駅では必ず通過列車待ちをすると言っても過言ではない。
 それだけに停車時間は5分くらい取られているので、いかに“こだま”はのんびりしているかが分かる。
 その為か、JR東海のイメージソング“AMBITIOUS JAPAN!”では歌詞の中に“のぞみ”と“ひかり”は出てきても、“こだま”は出て来ない。

 敷島:「アリス、ちょっとトイレいいか?」
 アリス:「じゃ、アタシも行ってくる」
 敷島:「ああ。シンディはここで待っててくれ」
 シンディ:「かしこまりました」

 シンディはトイレの入口横に控えた。
 尚、このコンコースには大石寺の広告がある。
 作者が見た時は御影堂だったが、今は何になっているのだろうか?
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