報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「アリスを追う者」

2018-03-12 19:15:04 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月13日15:45.視点:アリス敷島 以下略]

 アリスが駆け込んだ先には、別の実験場があった。

 アリス:「これはっ……!?」

 黒いロボットのプロトタイプと思われるものが、そこに鎮座していた。

 アリス:「まさか、動いたりは……しないよね?」

 机の上に散乱した書類。
 どうやら、慌てて引っ掻き回したようであった。
 さっきの特殊部隊員の仲間らしき者が、ここを荒らし回って行ったのだろう。

 アリス:「黒いロボットの重要な手掛かりは……と」

 アリスは鎮座する黒いロボットのプロトタイプの視線を感じながら、室内を探し始めた。

 アリス:「Huh!?」

 机の下に、ある物を見つけた。
 それはバッジ。

 アリス:「これは……!」

 デイライト・コーポレーションのDCを半分ずつ斜めに重ねたデザインのバッジだった。
 そこにIを逆斜めにし、交差させることで、どこのDCなのか分かるようになっている。
 アリスが持っているのはDCJ(デイライト・コーポレーション・ジャパン。日本デイライト社またはデイライト日本支部とも)のバッジ。
 だから、DCの文字を囲むようにしてJがあしらわれたデザインになっている。
 それがIになっているということは、これはデイライト・コーポレーション・インターナショナルのバッジということになる。

 アリス:「アメリカ本部のバッジだわ!?何でこんな所に!?」

 すると、黒いロボットの電源が入ったのか、そこからモーターの音が聞こえた。

 アリス:「What?」

 そして、モーターの音を唸らせて椅子から立ち上がる。

 アリス:「Jesus!(マジか!)」

 急いで隣の部屋に移動すると、ドアの向こうからマシンガンの音が聞こえて来た。
 先ほどのプロトタイプは、ちゃんと銃器を装備しているらしい。

 アリス:「さっきの白骨死体は、あれにやられたのかな……!?」

 それから廊下を進んで行き、コントロールセンターと書かれた部屋に入った。
 どうやらここで、施設の監視をしているらしい。

 アリス:「まだ監視モニタが生きてる!もしかしたら、ここでタカオやシンディの場所が分かるかもね」

 アリスはキーボードを叩きながら、次々と画面を切り替えていった。

 アリス:「あれ……?全然映ってない?……どういうこと?この施設に、あの2人はいないってこと???」

 他にも監視映像が録画されているので、これも再生してみた。
 どうやら本当に数年前、この施設にKR団の工作員が侵入したらしい。

 アリス:「え……!?」

 先ほどのKR団員の白骨死体。
 あれをやったのは黒いロボットか何かだと思っていた。
 だが、実際にやったのは……。

 アリス:「7号機のレイチェル!?何で!?」

 敷島エージェンシー入社前、アメリカ旅行をしていた井辺を誑かしてKR団のテロ活動の手伝いをさせたレイチェルが映っていた。
 KR団だと思っていたのだが、KR団の特殊部隊員をKR団で活動していたレイチェルが殺している。

 アリス:「意味が分かんないわ!一体、どういうことなの!?」

 次に映像が変わった。
 今度は……。

 アリス:「エミリー?」

 エミリーが映っていた。
 しかし、背景は無い。
 正座して目を閉じ、まるで何か精神集中をしているかのようだ。

 アリス:「ん?……いや、違う。よく見ると、あれエミリーじゃない」

 いつもの衣装ではなく、先ほどのレイチェルが着ていたような、もっとメタリックなプラグスーツを着ていたし、しかも腕にペイントされている号数が『0』になっていた。
 そして小さく、『PROTOTYPE』とも。

 アリス:「マルチタイプのプロトタイプ!?でも、あれは確か北海道でエミリーが……」

 ますます意味の分からぬ映像に、アリスの頭が混乱し始めた。
 と、そこへ扉がこじ開けられる音がした。

 アリス:「!?」

 ドアの方を見ると、先ほどの黒いロボットがアリスを追ってここまでやってきた。

 黒いロボット:「…………」

 今までの量産型とは違い、どちらかというとバージョンシリーズに近い雰囲気を放っている。
 無言でそいつは、アリスに銃口を向けた。
 先ほど聞こえたマシンガンではなさそうだったが。

 アリス:「あんた……一体、何者よ?」
 黒いロボット:「……Rock on.」

 黒いロボットはアリスに照準を合わせた。
 アリスの質問に答えることなく……。

 アリス:「……!」

 銃声の音と同時に、アリスは床に転がった。
 モニタに銃弾が当たり、穴の開いたモニタは画面が消えて煙が噴き出した。

 アリス:「Rデコイが効くかどうか……」

 アリスは入口を塞いでいる黒いロボットが、次の銃弾を放って来る前にRデコイを出そうとした。
 だが、なかなかバッグの中から出て来ない。

 アリス:「Shit!あと1個入ってるはずのなのに……!」

 探索で手に入れた資料などを無造作に入れていたからだろう。
 だが、黒いロボットは次の銃弾を撃ってくることは無かった。
 もう弾切れなのだろうか?

 アリス:「……?ああっ!」

 恐る恐るロボットの方を見ると、どういうわけだか頭部が消し飛んでいた。

 アリス:「なに!?自爆でもしたの!?」

 アリスがロボットに近づくのと、右手を銃に変形させていたフルフェイスのロボットがやってきたのは同時だった。

 アリス:「Noooooo!」

 そのフルフェイスの者は、右手を狙撃用のライフルに変形させていた。
 どうやら、これで廊下の向こうからこの黒いロボットの頭部を撃ち抜いたらしい。
 狙撃用のライフルだと分かったのは、かつてシンディが公安委員会からの通達によって取り外すことになったそれとよく似ていたからだ。

 フルフェイス:「アリス……?アリス……何と言いますか?」
 アリス:「Huh!?」
 フルフェイス:「回答無き場合は、敵と見なします」

 ジャキッと銃口を向けて来る。

 アリス:「その前に自分の正体を明かしなさいよ!?」

 アリスが口答えをすると、フルフェイスのヘルメットを被ったロボットはチャチャッと銃のリロードを行った。

 アリス:「分かった!分かったから!アタシはアリス!アリス・シキシマ!敷島孝夫の妻で、DCJ直営の科学館の研究室で働いてるわ!」
 フルフェイス:「アリス敷島……敷島孝夫……DCJ!」

 更にアリスは自分の社員証を出した。

 アリス:「スキャニングの機能は持ってる?これでスキャンすれば、アタシがDCJの社員だってことが分かるわ。もっとも、あなたがDCJに敵対するロボットだってんなら、アタシも蜂の巣だろうけどね」

 ロボットはアリスの社員証を読み取った。
 そして、ヘルメットを外した。
 その下にあった顔は……。

 アリス:「あ、あなたは……!?」

 次回へ続く!
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“戦う社長の物語” 「戦うアリスの物語」 2

2018-03-12 10:18:59 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月13日15:15.天候:不明 場所:静岡県富士宮市内の地下研究所 視点:アリス敷島]

 背後から銃弾が飛んできたことで振り向いたアリスを待ち受けていた者。
 その正体をアリスに判別することはできなかった。
 いや、恐らくはロボットなのだろう。
 右手をマルチタイプのように銃器に変形させていて、それで発砲したようだ。
 一瞬、人間のように見えたのはその動きがロボットにしても滑らかで、先ほどの発砲はワザと外したかのように見えたからだ。
 ロボットでそんな粋なことをする者はいない。
 先ほどの死体とは違う武装をしていてフルフェイスのヘルメットを被っている為、顔は全く分からなかった。

 アリス:「……!」

 ジリジリとロボットが近づいてくる。
 アリスもまた後ろに下がった。

 黒いロボット:「ザビーッ!」
 アリス:「しまった!向こうから!」

 反対方向から黒いロボットが集団で現れた。
 その数は5〜6体ほど。

 アリス:「!?」

 ガチャガチャという音がしてアリスに発砲した者は、右手をマシンガンに変形させた。

 アリス:「ちょ……!おま……!」

 タタタタタタタタタタ!(マシンガンを発砲する音)

 アリス:「やっぱり!」

 フルフェイスの者はアリスごと黒いロボットに向けて、マシンガンを発砲した。

 アリス:「ちょっとどきなさい、アンタ達!」

 アリスは黒いロボットの集団の間をすり抜けて、向こうに走った。
 黒いロボット達はアリスを追おうとするが、マシンガンに蜂の巣にされてそれどころではなかった。

 フルフェイス:「アリス……?アリス……」

 次にアリスが駆け込んだ部屋は、植物園のような所。

 アリス:「ふぅ……ここまで来れば……!」

 アリスは辺りを見回した。

 アリス:「随分とオーガニックな場所に出たものね……」

 だが、少し進むと悪臭が漂ってきた。

 アリス:「うっぷ……!何これ……!?アンモニアと硫黄の臭い……?」

 その正体は……。

 アリス:「ラフレシア!?ラフレシアだわ!」

 東南アジア島しょ部とマレー半島に分布するという、巨大花ラフレシアがそこに咲いていた。
 悪臭がしたのは、それもそのはず。
 花のくせにその臭いは、まるで汲み取り式トイレのようだと形容されるほどだからだ。
 尚、食人花だという都市伝説があるが、もちろんそれはただの都市伝説。
 本当に人間を食う植物ではない。

 アリス:「花を咲かせるのに2年ほど掛かると言われてるのに、実際に花が咲くのは3日間だけというから、ある意味貴重だわ」

 アリスはポケットからスマホを出して写真を撮ろうとした。
 時間はこれで計測できるのだが、電波状態に関しては完全に圏外だった。
 だから敷島やシンディと連絡が取れないのである。

 黒いロボット:「ザビビビィ!」
 アリス:「こ、こんな所にまで!?」

 天井のダクトから黒いロボットが飛び降りて来た。
 ダクトの中を体を折り畳んで突き進むことができる。
 こんなことはバージョンシリーズにはできないことだ。
 アリスはショットガンを持った。
 黒いロボットはラフレシアの花の中に飛び降りる。
 普通ならその花は踏み潰されるはずだが……。

 黒いロボット:「ザビ!?ザビ!ザビビビ!!」
 アリス:「What!?」

 するとそのラフレシアは更に大きな口を開いて、黒いロボットを呑み込み始めた。
 黒いロボットは抵抗したが、どんどんどんどん花の中に呑み込まれて行く。
 まるで破砕機の中に放り込まれたかのようにバキバキという音を立てて、黒いロボットはラフレシアに食べられてしまった。

 ラフレシア:「……ゲップ」
 アリス:「……Delicious?(美味しかった?)」
 ラフレシア:「…………」
 アリス:「と、とんでもないわ!これ、ラフレシアの形をした破砕機じゃないの!?」

 さすがにアリス自身、中に入ってみようなどとは思わなかった。
 そして、この場から離れることにしたのである。

 アリス:(ここ、ただの植物園じゃない!植物の形をした機械の実験場か何かだわ!)

 今アリスが歩いているのは通路だ。
 多分この通路を歩いている分には、一応安全なのだろう。
 ここは人間が通ることを想定しているからだ。
 一旦、通路から離れると……。

 アリス:「う……!こ、これ、もしかして……!」

 直径数メートルの蜘蛛の巣があった。
 しかもその糸の太さも尋常では無く、鉛筆やボールペンほどの太さがあった。

 黒いロボット:「ザビィーッ!」

 アリスを見つけた黒いロボットがまたダクトから飛び下りて来たのだが、通路の外に張られた蜘蛛の巣に引っ掛かった。
 それに反応した蜘蛛がやってきた。

 アリス:「デカっ!?……もしかして、これが井辺プロデューサーの言ってた『萌が引っ掛かってた蜘蛛の巣』だったのかしら?」

 蜘蛛の大きさも自然界には無いほどデカく、お掃除ロボット“ルンバ”ほどの大きさがあった。
 そして獲物である黒いロボットに向かって行き……。

 黒いロボット:「ザビーッ!」

 迷わずに引っ掛かっている部分に食らい付いた。
 黒いロボットは引っ掛かっていない部分の体で抵抗したが、蜘蛛の巣の特徴の1つ、そんなことをすればするほど絡んだ。
 ついに体中を食いちぎられ、黒いロボットは稼働を停止させたのである。

 アリス:「やっぱりここは植物と虫型ロボットの実験場なんだわ」

 井辺の目撃談と同じ型と思われる蜘蛛ロボットがいたことで、アリスはここがやはりKR団の施設であることを実感した。

 アリス:「組織自体は完全に潰れたというのに、まだ施設は稼働しているなんて……!」

 アリスが困惑していると、先ほど自分が入って来たドアが開けられた。

 アリス:「!」

 そこから入って来たのは、先ほど発砲したフルフェイスの者だった。
 ここまで追って来たのだ。

 アリス:「くっ!」

 アリスは急いで、次のドアの先に飛び込んだのだった。

 アリス:(何よ、あれ!まるでマルチタイプじゃない!)

 アリスは右手を銃器に変形させている姿を見て、正にそうしているシンディやエミリーの姿を思い浮かべた。
 もちろん、右手を銃器に変形させるという発想は既にバージョンシリーズの時点で確立している。
 ただ、あまりにもあの動きがマルチタイプのように滑らかなのでそう思っただけだ。
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