報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“魔女エレーナの日常” 「ワンスターホテルに到着」

2018-03-18 20:11:12 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月16日16:02.天候:晴 東京都江東区森下 地下鉄森下駅→ワンスターホテル]

〔2番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです〕

 鈴木:「なるほど。森下地区は、元々ドヤ街だったんだよね。そこから進化したホテルなのか」
 エレーナ:「まあ、そういうことだね」

 電車を降りて改札口の方に向かって歩く。

〔2番線、ドアが閉まります〕

 電車が発車して行くと、また風が巻き起こる。
 今度はエレーナ、スカートの裾を押さえた。

 鈴木:「さっき見せてくれたんだからいいじゃん」
 エレーナ:「アホか。さっき見た分もしっかり上乗せするからね!」

 地上に出るまで、エレーナはしっかりスカートを鉄壁なものにした。

 鈴木:「新大橋通りという大通りに面していて便利な所。それでいて一歩路地に入ることもあって、その分静か。なかなかいい立地条件だね」
 エレーナ:「それはどうも」

 同じくドヤ街だった山谷地区と違い、森下地区の方はまだ開発された感じがある。
 ワンスターホテルもその波に乗って、簡易宿所からビジネスホテルに昇格して成功したホテルである。

 エレーナ:「こっちだよー」
 鈴木:「部屋空いてるといいなぁ……」

 エレーナと鈴木は正面エントランスからロビーに入った。

 エレーナ:「ただいま帰りましたー」
 オーナー:「お帰りー。買い物どうだった……って、あれ?」
 エレーナ:「お客さん、1人ご案内〜」
 鈴木:「あの……シングル1つ空いてますか?」
 オーナー:「え?ああ、お泊りになるんですか?」
 鈴木:「は、はい。予約はしてないんですけど……」
 オーナー:「それならちょうどシングルBの部屋で、キャンセルが出たところです」
 鈴木:「功徳〜〜〜〜〜〜!!!ヽ(^。^)ノ」
 エレーナ:「沖修羅河童みたいなこと言わない」
 鈴木:「ずっと心の中で唱題して良かった!」
 エレーナ:「それ、悪魔の呪文?」
 鈴木:「三大秘宝の南無妙法蓮華経を悪魔の呪文とは何事だ!?」
 エレーナ:「いや、失礼」
 オーナー:「じゃあお手数ですが、こちらに御記入を……」
 鈴木:「はいはい」
 オーナー:「鈴木氏。うちのホテルは料金前払いだぞ?金あるのか?」
 鈴木:「あるからオタク狩りに遭ったんだよ」
 エレーナ:「それもそうか」
 オーナー:「ほほう、都内にお住まいですか。シングルBの一泊料金は……」
 鈴木:「元ドヤの割には意外に高いな」
 エレーナ:「そりゃ休前日の金曜日は高いよ」
 オーナー:「今度は事前予約で割引させて頂くプランなんかもございますので、どうぞご利用ください」
 鈴木:「フン……」

 鈴木は一泊分の料金を現金で払った。

 エレーナ:「うわ、本当に鈴木の分だけ空けたかのように満室だねぇ……」

 エレーナはヒョイと今日の宿泊者名簿を覗き込んだ。

 鈴木:「金払った途端、『鈴木氏』から『鈴木様』かよ。ビジネスに徹した魔法使いだな」
 オーナー:「こちらがルームキーになります。お部屋は5階の501号室です。エレーナ、案内して」
 エレーナ:「えー、アタシ今日は休みっスよ?」
 オーナー:「キミが連れて来たお客様だろ。ちゃんとお世話して差し上げるんだぞ」
 鈴木:「そうだとも。よろしく。うひひひひひ……」
 エレーナ:「変な期待するだけ無駄だぞ」
 オーナー:「それではごゆっくりどうぞ」
 鈴木:「よろしくお世話になりまーす」
 エレーナ:「はーあ……。(やっぱり不良ごと吹っ飛ばせば良かった)」

 エレーナは鈴木と一緒にエレベーターに乗り込んだ。
 こぢんまりとしたホテルで、5階は最上階である。

 鈴木:「こんなかわいい魔法使いさんと出会えて、たまたまホテルの部屋まで空いていて功徳〜〜〜〜〜〜!!」
 エレーナ:「それはそれはようござんした」
 鈴木:「稲生先輩の彼女さんより明るそうな人だし、こりゃ顕正会から移って良かったぞー!」
 エレーナ:「稲生氏とマリアンナを知ってるの?」
 鈴木:「! やっぱりキミは仲間だったのか!」
 エレーナ:「この際、白状するけどそうだよっ!」
 鈴木:「ますます福運が付いてきたぞー!」

 エレベーターが5階に着く。

 エレーナ:「部屋はこの突き当りだよ」

 エレーナはルームキーで部屋の鍵を開けた。

 鈴木:「おっ、意外に広い」
 エレーナ:「シングルAよりも高いからね。シングルAは本当にシングルベッドだけど、こっちはセミダブルベッドを使ってる」
 鈴木:「なるほど」
 エレーナ:「それじゃ、夕食は17時から1階のレストラン“マジックスター”で、魔法薬を薬膳として使った創作料理が楽しめるから」
 鈴木:「それもいいんだけど、俺はキミの魔法が見たい」
 エレーナ:「私の魔法?どんなのが見たい?」
 鈴木:「まずはマリアンナさんの仲間だという所を見せてもらおう。魔法陣の中に飛び込んで瞬間移動する所を見せてもらおうかな」
 エレーナ:「あー、ゴメン。それ私はできない。もっと別の魔法だったら使えるよ。さっきみたいに不良どもを吹っ飛ばしたヤツだとか、あなたの傷を回復させた回復魔法とか……」
 鈴木:「こんな所で爆発させられても困るし、別に今はどこもケガしてない。魔法陣を使った魔法が使えないのなら、キミのオリジナルを見せてくれ」
 エレーナ:「分かったよ。じゃあ、ホウキで空飛んでやる」
 鈴木:「おおっ!」
 エレーナ:「ホウキ持って来るから、屋上で待ってて」
 鈴木:「屋上?」
 エレーナ:「本当は立ち入り禁止なんだけど……」

 エレーナと鈴木は部屋の外に出た。
 エレーナが持っている鍵で、屋上への出入口のドアを開けた。

 エレーナ:「ホウキ持って来るから待ってて」
 鈴木:「おっと!そう言って逃げる気だろ?」
 エレーナ:「逃げないって。手付金もらった以上、約束は守るさ。もし私が逃げたら、オーナーに言って私をクビにさせればいい。私はこのホテルで、住み込みで働いてるんだから」
 鈴木:「よーし、分かった。5分以内に戻って来ないと、マリアンナさんのことをバラすぞ」
 エレーナ:「マリアンナの?どうして?」
 鈴木:「マリアンナさんは自分が魔法使いだということを頑なに拒否していた。だがキミという証人を得た以上、もう言い逃れできないぞ」
 エレーナ:「何だ、そんなことか。いいよ、あいつは魔法使いだ。自分の秘密を保持できない自分自身が悪いんだ。それをたまたま見たあなたは悪くない。それに、私は自分の正体を必要以上には隠さない」
 鈴木:「ビジネスに徹するとそうなるのか?」
 エレーナ:「多分ね。だから、私の魔法を見たら、ちゃんと見物料出せよ?」
 鈴木:「分かったよ」

 エレーナはエレベーターに乗り込んだ。

 鈴木:(見た目の可愛さはマリアンナさんとどっこいどっこいだけど、変に他人と壁を作るマリアンナさんと違って、あのコはサバサバしてていいぁ……)
コメント
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