報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“魔女エレーナの日常” 「レストラン マジックスター」

2018-03-20 19:24:15 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月16日18:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル1Fレストラン“マジックスター”]

 ホテルのロビーと繋がっている木製のドアを開ける。
 片開きの1枚ドアの表面には、蛇を模した黒い不気味な飾りが付いており、いかにも魔女がこの奥にいることを伺わせる。
 だが……。

 キャサリン:「いらっしゃいませー」

 入ってみると、そこはジャズバーのような雰囲気のレストランがあった。
 実際、店内BGMもジャズが掛かっている。

 キャサリン:「お1人様ですか?」
 鈴木:「ええ」
 キャサリン:「こちらへどうぞ」

 と、キャサリンは鈴木をカウンター席へ案内した。

 キャサリン:「ホテル宿泊の方ですね。宿泊客の方は料金10%引きになります」
 鈴木:「なるほど。そういうサービスがあるのか。はい、ルームキー」
 キャサリン:「ありがとうございます。ご注文は?」
 鈴木:「ここって、『魔法薬を薬膳とした創作料理』が食べられるんだよね?」
 キャサリン:「そうですよ」
 鈴木:「何かお勧めの料理はありますか?」
 キャサリン:「本日のお勧めは『3種のハーブをふんだんに使用したポテまたはブイヤベース』です」
 鈴木:「……何か普通そうな……」
 キャサリン:「その3種のハーブに、秘密が隠されているのですよ」
 鈴木:「どんな?」
 キャサリン:「ふふ、秘密ですよ。お客様の健康状態に合わせて、ハーブの調合を変えているのです」
 鈴木:「すると、この料理を注文しようとする俺の体調にも合わせてくれるわけだ。でも、俺は別に、どこも体の具合は悪くないしなぁ……。作者みたいに、潰瘍性大腸炎ってわけでもないしな」
 キャサリン:「お客様、お体の方は大丈夫でも、心の方が疲れておりません?」
 鈴木:「なに?」
 キャサリン:「ハーブには体だけでなく、心も癒してくれる効果があるんですよ」
 鈴木:「心か。確かに顕正会のせいで、俺の心はズタボロだ。それが嫌になって、法華講員の口車に乗せられて宗門に行ってみたものの、何にもいいことありゃしねぇ……」
 キャサリン:「お悩み事で心がお疲れですね。お任せください」

 キャサリンは笑みを浮かべて厨房に向かった。

 鈴木:「見た感じ、ちょっとムーディー☆アポ山……じゃなかった。ちょっとムーディーな雰囲気のジャズレストランって感じだなー。とても、魔女が経営しているとは……」

 鈴木は辺りを見回した。
 と、そこへ今度は外から新規客が入って来る。
 店長のキャサリンは厨房に入っているが、接客はどうするのか?

 カラス:「カァー、カァー!」

 天井には止まり木代わりの梁が通しており、そこにカラスが止まっていたのだ。
 それがバサバサと飛んで来て、

 カラス:「いらっしゃいませ。2名様ですカァー?そちらのテーブル席へどうぞ。御新規2名様、ご案内ですカァー!」
 鈴木:「……!!」( ゚ ρ ゚ )

 鈴木の眼鏡がずり落ちる。
 カラスが飛んで来て接客することもそうだが、まずそのカラスが喋れる上、新規客もリピーターなのか、何も驚かないことだった。

 カラス:「お冷やのお代わり、どうですカァー?」
 鈴木:「うわっ!?……お願いしていいのか?」
 カラス:「少々お待ちください」

 カラスは鈴木のグラスを嘴に咥えると、バサバサとカウンターの向こうに飛んで行った。
 そして……。

 女性スタッフ:「お冷や、お待たせしましたー」
 鈴木:「!!!」

 奥から出て来たのは人間の姿をした女性スタッフだった。
 だが肌は浅黒い。

 客:「すいませーん!」
 女性スタッフ:「はい、ただいまー」

 鈴木が呆然としていると、女性スタッフは先ほどの新規客の所へ注文を取りに行った。

 鈴木:「あの……え?え?ええ?」

 混乱していると女性スタッフはまた奥へ向かって行き……。

 カラス:「カァー!カァー!ちょっと佐々木さん!何度も遅刻するなって言ってるカァー!」
 別のカラス:「サーセン。ハトのヤツらがあまりにもウザかったんで、息の根を止め……あ、いや、静かにさせようと……」

 またカラスの姿に戻って、ちょうど『出勤』してきた別のカラスの遅刻を注意していた。
 人間の言葉を喋っていなければ、普通にカラスが店内に侵入して何かコミュニケーションしているくらいにしか見えない。

 キャサリン:「お待たせしました。『3種のハーブをふんだんに使ったブイヤベース』でーす」

 しばらくすると、キャサリンが厨房から出て来た。

 鈴木:「あ、あの、すいません。何でここにカラスがいるんですか?」
 キャサリン:「私の使い魔達です。今はお店を手伝ってもらってるんですよ。魔女の使い魔でカラスはデフォでしょ?」

 キャサリンはさも当然のように言った。

 鈴木:「えっと……」
 キャサリン:「もちろん、初めてのお客様は驚かれます。でも、普通のカラスと違っていい子達ですよ」
 鈴木:(そういう問題かな……)

 因みにカラスの中には、客の話し相手になってる者もいる。

 男性客:「この前、クルミを割ろうとしていたカラスがいたんだ。そしたらそこへ強風が吹いて来て、クルミが飛んで行ってしまったんだ。俺が先に見つけて、ハンマーでクルミを割ってやったんだ。そしたらそのカラス、嬉しそうに食べてさぁ……」
 カラス:「いいことをしましたですカァー」
 男性客:「次の日、さも当然のように新しいクルミをくわえて俺の家でカラスが待っていたんだ。……さすがに、『真夜中、美少女に化けて御礼に来る』というのは期待し過ぎたみたいだ」
 カラス:「普通のカラスはそんなもんですカァ〜。わっちなら、正にお客さんの通りにしたんですカァー」

 鈴木が出された料理を食べると……。

 鈴木:「美味い!それに、何だか心が落ち着くようだ……」
 キャサリン:「お口に合いましたようで何よりです。どうぞ、ごゆっくり」

 鈴木は久しぶりに美味い料理にありついた感じがして、それを全部平らげてしまった。

 キャサリン:「ありがとうございます」

 レジで会計をする。
 宿泊客はチェックアウトの際でも支払いができるのだが、鈴木はあえてレジで先に払うことにした。
 もちろん、宿泊客特権で割引を受ける。

 鈴木:「ごちそうさま。……あの、ここのホテルの従業員で、ホウキに乗る人はいますか?」
 キャサリン:「エレーナですか?今日は休みですから、どこかへ出掛けてるかもしれませんね。1度出掛けると、いつ帰ってくるか分かりませんから」
 鈴木:「そうですか……」

 鈴木はレストランを出てホテルに戻った。

 鈴木:「ん?」

 ロビーには今日の夕刊があった。
 それだけでなく、宿泊客は希望すれば朝刊と夕刊を無料で手に入れることができる。

 鈴木:「すいません、夕刊もらいます」
 オーナー:「どうぞどうぞ」

 普段は新聞を読まない鈴木だったが、この時は何故か夕刊に目を通したくなった。
 ロビーからそれを一部取る。

 鈴木:「あの、エレーナ……さんはいますか?」
 オーナー:「エレーナですか?いえ、夕方に外出してまだ戻って来てませんね。何かご用ですか?」
 鈴木:「いえ……」

 鈴木はエレベーターに乗り込むと、自分の部屋に戻った。
コメント (7)
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“魔女エレーナの日常” 「元顕の害毒は後からジワリジワリとやってくる」

2018-03-20 10:22:14 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月16日17:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 エレーナ:「どうだ?これで私が魔法使いだって分かっただろ?」

 エレーナはホウキに跨って浮遊しただけではなく、実際にホテル上空を旋回してみたりした。

 鈴木:「な、何てこった……!本当に魔法使いはいたんだ……!」
 エレーナ:「そういうわけだから、早いとこ報酬払って……」
 鈴木:「俺も使えるようになるかな!?」
 エレーナ:「は?」
 鈴木:「魔法の力で、俺を騙していたケンショーをブッ潰すんだ!」
 エレーナ:「いや、あのね、魔法を使うにはそれなりの素質が必要なの。あいにくだけど、あなたにはそんな素質は全く見当たらない」
 鈴木:「やってみないと分かんないじゃないか!」
 エレーナ:「いや、分かるって。私みたいに魔法使えるヤツってのは、大体相手が素質があるかどうかは“匂い”で分かるものなんだ。霊感と置き換えてもいい。うちの門内で1人、日本人の男がいるけど、あれは凄い才能だよ」
 鈴木:「日本人の男……!?」
 エレーナ:「珍しいパターンだけどね。それより、魔法見せてあげたんだから、早いとこ報酬を……」
 鈴木:「それは誰なんだ!?日本人の男って誰なんだ!?」
 エレーナ:「それはあなたも知ってる人間だと思うよ?何せ、あなたと同じ宗派のようだからね」
 鈴木:「……!」
 エレーナ:「日蓮正宗って、あんまり大きい宗派ではないんでしょ?だったら、本気で捜せば見つかるかもよ?」
 鈴木:「俺のアメブロで『指名手配』してやる!」
 エレーナ:(こいつアメブロガーかよ。怖ェな)

 鈴木はエレーナに残りの金を渡した。

 エレーナ:「おおっ、毎度あり〜!あとはゆっくりしてていいから!」

 エレーナはそう言って、ホウキに跨るとどこかへ飛び去って行った。

 鈴木:「さすがにホウキに乗る時は、オーバーパンツはくんだ……」

 鈴木はそう呟いて、部屋に戻った。

 鈴木:「そうだ!こうしちゃいられない!」

 部屋に戻った後で、すぐに鈴木はある人物の所へ電話を掛けた。

 藤谷:「おー、鈴木君か。どうした?折伏の相手でも見つかったのか?」
 鈴木:「それどころじゃないんです!俺、本当に魔法を見たんですよ!」
 藤谷:「はあ?オメー、まだそんなこと言ってるのか」
 鈴木:「本当なんです!実際その魔女に会って、直接見せてもらったんですよ!」
 藤谷:「どこで?誰に?」
 鈴木:「今、森下のワンスターホテルって所にいます!ここのスタッフの人です!」
 藤谷:「あー……。ついにお前も、そこを嗅ぎ付けたか」
 鈴木:「嗅ぎ付けたというより、ちょっとアキバでピンチになっていた所をその魔女さんに助けてもらったんですよ」
 藤谷:「そうか。これで満足しただろ?もうマリアンナさんを追い掛けるのはやめろ」
 鈴木:「思い出した!班長、もしかしてワンスターホテルのスタッフの人とマリアンナさんは仲間らしいですが、同じ仲間に日本人の男がいるそうなんです!それって稲生先輩だったりしませんか!?」
 藤谷:「何をバカなことを言ってるんだ」
 鈴木:「あの魔女さんが教えてくれました!俺と同じ、日蓮正宗の者らしいです!」
 藤谷:「おいおい、まさか今からそいつを捜そうってんじゃないだろうな!?」
 鈴木:「もちろんです」
 藤谷:「おいおい、法華講員だけで全世界に何十万人といるんだぞ?どうやって捜すんだ?」
 鈴木:「何十万……。そうですか。全世界合わせても何十万人ですか」
 藤谷:「そうだよ。何かあるのか?」
 鈴木:「いえ。捜すのは簡単ですよ。班長が教えてくれればいいんです」
 藤谷:「何だと?」
 鈴木:「だって班長、別に否定しなかったじゃないですか。班長は宗門の中に魔法使いがいることを知ってるんだ。そして、しかも知り合いだったりするんだ。そうでしょう?」
 藤谷:「鈴木ッ!」
 鈴木:「元・顕正会謀略部隊ナメないでくださいよ。こう見えても俺は、顕正会にとって害となった者は支隊長であっても排除していたヤツですよ?もっとも、俺の組員が女と一緒に宗門へ行ってしまったことは誤算でしたが……」
 藤谷:「稲生君の言っていた、宿坊のあの人達か。キミが関わっていたとはなぁ……。よし。じゃあ、こうしよう。キミが排除したという支隊長さんを救うのも、俺ら日蓮正宗法華講員の使命だ。キミ、そいつをお寺に連れて来てくれないか?そいつを折伏できたら、重大なことを教えてやる」
 鈴木:「……あいにくさま、それは無理というものですね」
 藤谷:「そうか。それは残念だ」
 鈴木:「何せ、あの世までは行けないものでね」
 藤谷:「なに!?」
 鈴木:「あいつ、多分あの世に行ってますよ?とある法律違反やらかしてケーサツに捕まったんですが、その間に除名食らいやがりましてね(※)。最終的には不起訴処分となってシャバに出てきたものの、まあ不幸のどん底に落ちやがりましたので、悲観して盗んだバイクで暴走したんですよ。で、真夜中の港にやってきたら、ちょうどヤクザの闇取引を目撃してしまったもんで、そのままヤクザに捕まってあとは行方不明ですよ。ヤクザの秘密を見てしまったヤツが後でどうなるかは、【お察しください】」
 藤谷:「お前はどうしてそんな深くまで知ってるんだ?」
 鈴木:「なぁに、ヤクザの秘密事項を知っても生き延びる術はあるものでね」
 藤谷:「それ自体が魔法じゃねーのか、おい」

 ※ここまではポテンヒットさん原作“ガンバレ!特盛くん”に描かれている。

 鈴木:「さすがの俺も、ヤクザに知り合いはいないもんでね」
 藤谷:「アキバ系オタクが、そんなのに知り合いがいたら怖いよ」
 鈴木:「でも班長、やっぱり何かご存知なんですね?」
 藤谷:「あー、そうだよ。時機が来たら教えてやるから、とにかくもう魔法使いを追うのやめろ。知り合いになるくらいならまだしも、怒らせるとヤクザより怖い人達だぞ?」
 鈴木:「時機が来たら教える。まるで、浅井会長みたいなことを仰りますね」
 藤谷:「うるせぇよ。とにかく、余計なことを嗅ぎ回るな。だいたい、どうして魔法使いにそんなに興味があるんだ?」
 鈴木:「魔法の力で顕正会をブッ潰すんですよ」
 藤谷:「そんなことをしなくても、顕正会は潰れるぞ?」
 鈴木:「それはいつですか!?俺は自然消滅するまで待っていられませんよ!」
 藤谷:「いや、ちょっと落ち着けよ」
 鈴木:「とにかく、俺でも魔法が使える方法を聞き出して、直接潰す方法を身に付けるんだ!」

 鈴木は興奮気味にまくしたてると、電話を切った。

 鈴木:「! そうだ。確かこのホテルのレストラン、魔法薬を薬膳とした創作料理とか言ってたな……。よし」

 鈴木は上着を羽織ると部屋を出た。
 そして、エレベーターに向かった。
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