報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「いま、再びの仙台へ」 2

2015-08-26 19:23:13 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月29日08:00.JR仙台駅→地下鉄仙台駅 敷島孝夫、3号機のシンディ、8号機のアルエット、井辺翔太、MEGAbyte]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、仙台です。仙石線、仙山線、常磐線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。仙台の次は、古川に止まります〕

 列車は速度を落とし、仙台市の市街地を走行していた。

〔「仙台でお降りのお客様、ご乗車ありがとうございました。11番線到着、お出口は右側です。仙台からは各駅に止まります。……」〕

「荷物、忘れるなよ」
「はーい」
 デッキの荷物置き場に置いてある物を取りに行くシンディとアルエット。
 因みにMEGAbyteがライブで着る衣装などに関しては、既に運送会社に委託している。
 ポイント通過で少し列車が大きく揺れると、更に速度を落として仙台駅の下り副線ホームに入線した。

〔「おはようございます。ご乗車ありがとうございました。仙台〜、仙台です。お忘れ物の無いよう、お降りください。11番線に到着の電車は8時2分発の“やまびこ”41号、盛岡行きです。終点、盛岡までの各駅に止まります」〕

 ここで降りる乗客は多数。
 敷島達も荷物を手にホームに降りる。
「シンディさんの荷物が1番大きいですね」
 と、井辺。
「シンディが1番の力持ちだし、何しろ今回のイベントはシンディ達がメインになるんだからな。尚更、持ち物は多いよ」
「色々な部品ですか?」
「えーと、グレネードランチャーが1基とAUGマシンガンが1丁、それとM3ショットガンが……」
「ちょっと待ってください、社長。陸上自衛隊の基地祭りじゃないんですよ?」
「冗談だよ。バッテリーパックやオイルとかもあるよ。車と共用できるヤツは現地調達でいいと思うけど」
「そうでしたか」
「エンジンオイルやラジエーターくらいガソリンスタンドで手に入る」
「そうですね」
 因みに先ほど、車内でオイルを経口摂取していたLily。
 ペットボトルに移し替え、ストローで飲んでいた。
 ラジエーターが減った場合、水で代用することがある。
 そのLilyだが、前髪を押さえる為の赤いカチューシャを着けている。
 最近着けたもので、MEGAbyteを旗揚げしてから却って人気の落ちたことを気にしていた彼女に井辺が買い与えたもの。
 但し、プライベートでは着けるが、公式イラスト……もとい、宣材写真とは違うので、ライブの時には基本外す。

 改札口を出た後、敷島達は地下鉄の駅へ移動した。
 その間、平賀に仙台駅には到着した旨伝えようかと思ったが、既にシンディがエミリーと交信していて、
「ちょうど今、科学館に着いたってよ」
 とのことだ。
「平賀先生も熱心だなー。マルチタイプの研究には、意外と消極的だったのに」
 世間一般に受け入れられるのは、マルチタイプではなくメイドロイドだという提唱だったのだが、気が変わったのだろうか。
「アルができたから、やろうと思えばできるかもと思ったかな?」

[同日08:17.地下鉄仙台駅→地下鉄車内 上記メンバー]

「何気に新幹線から遠い」
「まあ、鉄道会社が違いますから」
 敷島のボヤきに、冷静にツッコむ井辺。
「意外とそこの壁壊せば、仙石線が走ってたりしてな」
「九段下駅じゃないんですから……」

〔2番線に、泉中央行き電車が到着します。……〕

「九段下駅の壁撤去工事、エミリー使えば速かったのにな……」
「駅ごと無くなってしまう恐れがありますから……」
「ん、そうか?」
「姉さん、サクッとやっちゃうからね」
「はは、そうか」
「アタシはザックリやるけど」
「九段下の壁撤去工事、お前は東西線の壁も壊しそうだ」
「ええ、そうね」

 電車がやってくる。
 4両編成という、地下鉄にしては短い編成だ。

〔仙台、仙台。JR線は、お乗り換えです〕

「ロボットの感じがする」
 アルエットは運転室の方を見て言った。
「運転士がボタンだけで操作する自動運転(ATO)だからな。“ロックマン・エグゼ”みたいに暴走したら止めてくれよ」

〔2番線から、泉中央行き電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕

 ドアが閉まって電車が走り出す。

〔次は広瀬通、広瀬通です。一番町、中央通はこちらです〕
〔日蓮正宗、上方山・日浄寺へは北仙台でお降りください。駅から徒歩5分です〕

「そ、そう言えばシンディ……」
「なーに?」
 敷島が思い出したように口を開いた。
「お前、昔、南里所長を拉致して地下鉄の倉庫に閉じ込めたことがあるよな?」
「……ああ、そういえばあったわね」
「脱走した南里所長を追い掛けて、たまたまやってきた電車に体当たりしたよな?」
「それも知ってるのね」
「南里所長が言ってたよ」
「まあ、とんだテロ行為をしてしまったわね」
「そんなことがあったんですか」
「そうなんだよ。だからまあ、暴走したら止めてくれ。マルチタイプならそれができる。エミリーにあっては、電車に轢かれそうになった人を助ける為に電車に体当たりしたくらいだ」
 もっとも、シンディは本当に体当たりなのに対し、エミリーは両手で止めた形だ。
「わたしもしないとダメですか?」
 と、アルエット。
「お前はムリしなくていい」
 敷島はキッパリ言い放った。

[同日08:45.宮城県仙台市青葉区・仙台市科学館 上記メンバー、平賀太一、1号機のエミリー]

「いやー、やっと着いた」
「敷島さん、井辺さん、おはようございます!」
 まだオープンしていない科学館に来ると、既に設営準備を終えている平賀とエミリーがやってきた。
「今日からよろしくお願いします」
「こちらこそ。7月の通りにするということですが……」
「まあ、基本はそうですね。取りあえず、会場と控え室をご案内します」
「ああ、すいません」
「彼女達にはすぐに準備してもらいますが、私達は一息つきましょう」

 着替える場所はさすがに別室にしてもらった。
「お忙しい中、すいませんね」
「いえ、MEGAbyteにとってもいい経験にはなると思います」
 平賀の言葉に、井辺が答えた。
「間違い無く科学雑誌には載りますよ。今、マルチタイプは世界中から注目されてますから」
「そうなんですか」
「皮肉にも十条伝助博士のテロ活動と、弟の達夫博士が新しいタイプを造ったことが注目されているんです」
「そうなんですか。その伝助の爺さんも、そろそろお縄になる頃だと思いますが、逆に何もしかけてこないのも、それはそれで不気味ですね」
「そう簡単に捕まらないでしょうし、捕まったとしても、またキールが脱獄させるでしょう。自分にとって、ラスボスはキールのような気がします」
「なるほど……」
「実はイベントの方もそうなんですが、今回ここに敷島さんをお呼び立てしたのは、そのキールのことについてなんです」
「えっ?」
「警察は伝助博士を直接狙っていますが、自分はキールの方を落とすべきだと思うんですよ」
「へえ……。何か作戦がありそうですね」
「いや、作戦というほどのものではないです。奴もロイドである以上、完全に居場所を隠すことはできないであろうということですよ」
「面白い理論ですね。是非聞かせてください」
「分かりました。それは後ほど……」
「ん?」
「まずはイベントを開始しましょう。館長も、後で来ますよ」
「ああ、それもそうですね」
コメント (9)
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“新アンドロイドマスター” 「いま、再びの仙台へ」

2015-08-26 10:22:04 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月29日05:50.天候:曇 JR東京駅・東北新幹線ホーム 井辺翔太、3号機のシンディ、MEGAbyte]

〔21番線の電車は、6時4分発、“やまびこ”41号、盛岡行きです。この電車は……〕
〔「21番線、お待たせしました。まもなくドアが開きます。乗車口まで、お進みください。業務連絡、41Bカレチ、準備できましたらドア操作願います」〕

 大きなエアーの音と共にドアが開く。

〔「お待たせしました。どうぞご乗車ください」〕

 井辺達は車内に入った。
 “はやぶさ”に使用されるE5系ではなく、“はやて”デビューの際に登場して中国高速鉄道には勝手にパクられたE2系であり、中国高速鉄道で脱線事故が起きた際には「日本のせいアルよ!責任取るよろし!」と騒いだ車両である。オマエらのスピードの出し過ぎと運行管理体制の不備じゃんかよ。
「MEGAbyteの皆さんは3人席にどうぞ」
「はーい」(未夢)
「……あれ?充電コンセントが無い」(結月ゆかり)
「古い車両だし、それに私達、まだバッテリー沢山残ってるでしょ?」(Lily)

〔「皆様、おはようございます。この電車は6時4分発、東北新幹線“やまびこ”41号、盛岡行きでございます。停車駅は上野、大宮、宇都宮、郡山、福島、仙台、古川、くりこま高原、一ノ関、水沢江刺、北上、新花巻、終点盛岡の順に止まります。……」〕

「あとは大宮から社長とアルエットさんが乗ってきますので……」
「社長とプロデューサーはそっちの2人席に座っておきなよ」
 と、シンディ。
「え?」
「今回のイベントのことで、社長に色々聞きたいこととかあるんでしょ?」
「た、確かに……」
「アタシとアルが後ろにいるから、何かあったらすぐに動くよ」
「よろしくお願いします。では、私はお弁当を買ってきます」
「いいよ。弁当ならアタシが買ってくるよ。何がいい?」
「えー……それでは東京弁当とお茶を」
「了解」
 シンディがSuicaを手に列車から降りる。
「プロデューサーさん」
 そこへ、ゆかりが声を掛ける。
「わたし達のライブ、夕方からみたいですけど、その間は何をしていればいいんですか?」
「基本的にはイベントコンパニオンをやって頂きます。科学館におけるイベントは、あくまでマルチタイプの皆さんの展示がメインです。従いまして、あなた達はお客様をご案内する役をやって頂きます」
「なるほどー」
「私も展示される側だったのかなぁ……」
 と、未夢が複雑そうな顔をした。
 未夢は国産初のマルチタイプとして、つくばの大学の研究所で製造されたが、国際基準(といってもエミリーとシンディしかいないが)を満たせなかったため、廃棄処分になるところを、ガイノイドとしては高性能だということで、平賀のつてで敷島が引き取り、ボーカロイドに用途変更したという経緯がある。
「マルチタイプは、一大学の研究所では造れるものではないと平賀教授が仰っていたそうです」
 その平賀が一大学の研究所で造ったのは、専らメイドロボット(ロイド)である。
 それでさえ凄いことなのだが。
「厭らしい話ですが、お金の話をしますと、マルチタイプ……アルエットさんはまだ値段が付いていませんが……」
「アタシ達の約10倍の値が付いてるんでしょ?」
 Lilyが腕組みをして答えた。
「そうです。世界ではもう国際基準を満たしているマルチタイプを造れる人間が、本当に数えるほどしかいないので」
「でも、数えるくらいはいるんだ」
「まあ……」
 アルエットに値段が付いていないのは、そもそもアルエット自身、国際基準を満たしているかどうかさえ怪しいからだ。
 肝心の製造者が死亡してしまったため、その検査すら難しいのが実情である。

[同日06:04.東北新幹線“やまびこ”41号8号車内 上記メンバー]

 東北新幹線の始発列車は定刻通りに発車した。
 すぐに朝日が差し込んで来るかと思われたが、関東地方は今日1日曇であるため、それは無かった。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は東北新幹線“やまびこ”号、盛岡行きです。次は、上野に止まります。……〕

「ちょっと社長に連絡してくるよ。『新幹線乗った』ってね」 
 シンディが席を立った。
「ああ、どうも」
「プロデューサーは食べてて」
 そう言って、シンディはデッキに出た。
 デッキには荷物置き場があって、井辺達の大きな荷物がそこにあった。
 シンディがイベントで使用するフルートはそんなに大きくないし、エミリーは向こうで用意されたピアノを使うので、荷物にはならない。
 アルエットが持ち込むトランペットは大きいかもしれない。

[同日06:30.JR大宮駅・東北新幹線ホーム 敷島孝夫&8号機のアルエット]

「シンディ姉さんが来ます。あと……MEGAbyteの皆さんの反応も接近しています」
「おー、そうか。基本的な性能はエミリー達と同じだな」
 東京方面から眩いヘッドライトが近づいて来る。
「それにしても、指定席車が10号車じゃなくて8号車というのは、さすが平賀先生も考えたな」
「えっ?」
 列車がホームに止まって、ドアが開く。
「おー、皆、おはよう」
「おはようございます!」
 電車に乗り込んで、敷島は東京駅から乗って来た事務所のメンバーに手を振った。
「着いたらすぐに調整を始めるからな。それまでは寛いでて」
「はい!」
 大宮駅はすぐに発車する。
「社長、こちらへ」
 井辺が2人席の窓側に案内する。
「ああ。井辺君は朝、食べたの?」
「はい。先ほど、東京駅の駅弁を」
「奇遇だな。俺もさっき買ってきた」
「そうですか」
「俺がミクを連れて歩いていた時は、よくミクが弁当買ってきてくれたものだ。今は、トップアイドルにそんなことさせるわけにもいかないからな」
 そう言って、敷島は大宮駅の“大宮弁当”の蓋を開けた。
 その後ろに座っているアルエットが、隣に座る従姉のシンディに話し掛ける。
「……えっ、社長がそんなこと言ったの?」
「どういう意味なの?」
「さすが社長ね。それは、狙撃するなら先頭車が狙いやすいから。それを知ってて、中間車の指定席寄越した平賀博士もさすがだけどね。あの2人、アタシの攻撃を何度も掻い潜っただけのことはあるよ」
「お姉ちゃんの?」
「ああ、前のボディを使っていた頃ね」
 シンディは片目を瞑った。
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