報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「Limit Break」

2015-08-01 21:50:33 | アンドロイドマスターシリーズ
[7月22日15:12.天候:雨 埼玉県さいたま市西区 デイライト・コーポ―レーション・ジャパン埼玉研究所 シンディ&レイチェル]

 シンディが外に飛び出ると、既に正面エントランス前はバージョン4.0達に覆い尽されていた。
 その中央にレイチェルがいた。
「レイチェル!アンタまた性懲りも無く……!」
「誰が懲りてるってぇ?研究所関係者の安全を保障して欲しかったら、ここにいるアルエットを引き渡しなさい!」
「誰に向かってクチきいてんだっ、コラァッ!!」
 シンディはアルエットに体当たり。
 途中で4.0達が立ちはだかるが、
「どけぇぇっ!!」
 いとも簡単に破壊した。
「今日は随分とやる気だねぇ?」
「ドクター達夫に銃弾撃ちこんだのは、オマエか!?」
「ええ、そうよ。だから何?素直にアルエットの居場所を教えて逃げれば良かったのに……。バカなジジィよ。まあ、国も年金1人分払わなくなって良かったんじゃない?」

 ビー!(シンディの頭脳の中でアラームが鳴る)
『Cereal number 2424188...Cindy(Cynthia),Limit Break.』
 ↑シンディを遠隔で監視するPCのモニタには、このような文字が表示された。

「キサマーッ!!」
「!!!」
 シンディの動きが通常の3倍近くになり、レイチェルの顔を殴り付けた。
「い、妹の顔を殴るなんて……。最低な姉さんね……」
「その更に妹の製作者を殺しといて何言ってんだっ、この!!」

[同日18:10.JR高崎線特急“スワローあかぎ”1号・7号車内 敷島孝夫&結月ゆかり]

〔♪♪♪♪。「まもなく赤羽、赤羽です。赤羽を出ますと、次は浦和に止まります」〕

 敷島は早々に弁当を平らげると、シンディを遠隔監視しているPCとリンクしているタブレットを取り出した。
「マジかよ。シンディのヤツ、『リミット・ブレイク』しやがってた!」
「リミット・ブレイクって何ですか?
「『ブチギレ』たってことさ。体に負担が出るくらい動きが早くなって、力も強くなる。それで倒せればいいんだがな……。現段階では……まだ勝負が決まってないのか……。参ったな。早いとこ勝ってもらわないと、ゆかりの修理ができん」
「わたし、どこも悪くないですよ?自己診断では……」
「自己診断ではな」
「?」
「研究所に着いて、まだ勝負が決まっていないようなら教えてやるよ。お前のどこが悪いのかを」
「……?」

[同日18:45.天候:曇 埼玉県さいたま市西区・公道上 敷島孝夫&結月ゆかり]

 大宮駅には無事に着いた敷島達。
 西口からタクシーに乗り換え、研究所に向かった。
 ところが、研究所に向かう公道が大渋滞を起こしており、それにハマった。
「お客さん、何でもその先のロボット研究所でテロがあって、それで道路が封鎖されているみたいですよ」
 運転手が狼狽した様子で言った。
「道路が通行止めになるほどの騒ぎか……。って、レイチェルが襲撃に来りゃそうなるか。しょうがない。ここからは歩いて……ん?」
 前方で爆発音がした。
「な、何ですか?」
 ゆかりが、自分の着ているパーカーのフードを被りながら言った。
「研究所はまだ先だよなぁ……?い、いや、待て……!う、運転手さん、ちょっとドア開けて!」
 敷島がタクシーから降りると、前方で爆発音があったのは……。
 で、しかもそれが近づいて来ている。
「わああああっ!」
「て、テロ・ロボットだ!逃げろ!!」
 前方の人々が車から飛び降りて逃げて来る。
 敷島は鞄の中からジャックのついた無線機のマイクを取り出し、ゆかりの左耳に差し込んだ。
「おい、コラ、KR団!何てことしやがるんだ!!」
「!?」
 ゆかりから直接、KR団に呼び掛けできる!?

〔「はっはっはっ!さすがは敷島孝夫君。幾度と無くロボット・テロを潜り抜けたのも頷ける」〕
 向こうからは聞き慣れた声がした。
「十条伝助の爺さんよ!こりゃ一体、どういうことだ!?」
〔「どういうことも何も、そういうことだよ。キミ達はワシの下僕(しもべ)達の手に掛かって、あえない最期を遂げるのじゃ。そう、仏敵・達夫のようにな」〕
「なにぃ?」
〔「全てはワシの計算通り、何も問題は無い。キミ達は埼玉の研究所で、引き続き舞踏会を楽しみたまえ、敷島君?」〕
「アルエットは渡さんぞ!」
〔「アルエット本体のことなど、既にどうでも良くなった。達夫がワシの目を欺く為、彼女の体に仕掛けたもの。それだけ頂くとしよう」〕
 段々とタブレットの警告音が大きくなっていく。
 テロ・ロボットが接近すると、アラームが鳴るようになっているのだ。
〔「高みからで失礼するが、キミがどのように活躍するか拝見させてもらうよ?」〕
「……いいだろう。見せてやる。見物料はアンタの首だ!」
〔「何とも下らん遺言であるが、健闘は祈らせてもらうよ?」〕

 敷島はゆかりの耳からマイクを引き抜くと、鞄の中にしまい、次にその中からある物を取り出した。
 そしてそれを道路脇の空地に投げる。

 ピコーン!ピコーン!ピコーン!

「あれは……!?」
「ロボット・デコイだ」
 ゆかりは大丈夫だが、人工知能の劣るバージョン4.0の集団はそれにおびき寄せられ、集まった。
 集まったところで爆発し、それに巻き込まれた4.0達が吹き飛ぶ。
 燃料タンクのガスボンベに引火して誘爆し、デコイの爆発に巻き込まれなかった個体も、爆発した仲間の爆発に巻き込まれるという自爆劇を披露した。
 あらかた片付いたところで、
「運ちゃん、タクシーを出してくれっ!……あれ?」
 だが、車列の人々は既に避難した後だった。
「……マジか!結局徒歩かよ!このクソ暑い中!」
 敷島が前の方に走って行くと、渋滞で立ち往生した路線バスを見つけた。
 タブレットを見ると、まだ前方にバージョン4.0の集団がたむろしているらしい。
「……ニヤリ」
 敷島は乗員・乗客共に避難して無人となったバスに乗り込んだ。
「ゆかり、乗れ!」
「は、はい!……あ、あの、社長?」
「質問なら後で受け付ける!しっかり掴まっていろ!」
「は、はいっ!」
 敷島はバスを発進させ、反対車線にハンドルを切った。
 さっきから反対車線からも車が来ないということは、やはり研究所の前辺りでもう封鎖されているということだ。

 アクセル全開で研究所に向かう。
 すると、研究所の正門から、わらわらと4.0が出て来るのが分かった。
「社長!いっぱい……いっぱいいます!」
 ノンステップバスの前扉の後ろの席に座ったゆかりが、前方の手すりに掴まりながら叫んだ。
「ちくしょう!もしかして、その辺の岩どけたら、4.0が出て来るんじゃないのか!?このまま突っ込むぞ!!」
「ええーっ!?」
 敷島はアクセルから足を放すことなく、正門から出て来た4.0に向かっていった。

 この戦い、勝つのはどっちだ!?
コメント (5)
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