[8月7日13:19.天候:晴 JR川越駅 敷島孝夫、エミリー、アルエット]
大宮駅を出た埼京線電車は川越線に入り、日進駅までは住宅街を通る。
進行方向左手には鉄道博物館が見えるが、ニューシャトルの経営を圧迫する恐れがある為、そこに新駅を作る予定は無い。
日進駅を出ると、一転して単線区間の牧歌的な風景を走る。
田園風景も広がる中、10両編成の長大通勤電車がそこを走る不自然なミスマッチな光景が繰り広げられる。
青梅線のパチンコガンダム駅みたいに何かしらの新駅が建設されてもおかしくないような感じだが、今のところ新設されたのは西大宮駅だけである。
しかしかつて、グーグルマップがパチンコガンダム駅やスターバックス駅を表示したのと同じようにいずれは変わった駅名の新駅が建設されるかもしれない。
根拠は無いが、そんな風景が漂うのだ。
尚、第二次大戦前まで運行していた西武鉄道大宮線は、この川越線に客を取られて廃止になった。
民業圧迫の例である。
西武鉄道が走っていないのに、何ゆえ大宮に西武バスが走っているのかというと、そのルーツはそこまで遡るのである(西武大宮線が西武バス路線に転換された為。そのバス路線も、川越グリーンパークを境に分断された)。
〔「まもなく終点、川越、川越です。3番線に入ります。お出口は、左側です。川越から先、武蔵高萩、高麗川方面ご利用のお客様、各駅停車の八王子行きは、向かい側4番線から13時34分の発車です。八王子行きは、短い4両編成での運転です。ご利用のお客様は、ホーム中ほどにお進みください。東武鉄道東上線は、改札口を出てのお乗り換えです。……」〕
「ここで乗り換えだな……。てか、4両かよ」
「そのよう・です」
電車がポイントを渡って、ゆっくりとホームに入線した。
高速でホームに進入する東武東上線とは、対照的である。
〔かわごえ〜、川越〜。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕
また夏の太陽が照り付けるホームに降り立つ3人。
人間は汗をかいて体温調整するが、汗をかかないロイド達はどうするのかというと、旧型のエミリーやシンディは口から排熱する。
人間の呼吸を模しているのだが、どうも溜め息を吐いているようにしか見えない。
新型のアルエットは鼻と口を使い、もっと更に人間の呼吸に近い排熱をしている。
「おっ、もう電車がいるぞ」
折り返し入線したばかりのせいか、4両編成の車内はまだガラガラだ。
しかし、ドアは閉まっている。
それでも車内には、数人の乗客が疎らに座っている。
「ああ、なるほど」
川越から西は半自動ドアになっていて、ボタンを押して乗り降りするのだった。
ポロロロン♪(音階:ド、ミ、ソ、ド↑)
バッ、ガラガラガラ……。
「……仙石線だな」
しかし、車内は冷房が効いていた。
「はーーーーーー……」
「……エミリー、水飲んでおこうか」
「……只今の・外気温・36……」
「いや、いい。数字を聞いたら、余計暑くなる」
敷島はもう1度電車を降りると、ホームの自販機で飲み物を買った。
「ほら、アルエットも」
敷島は缶コーヒーだが、ロイド達には水だ。
「口から蒸気吹いたりしませんか?」
と、アルエット。
「いや、大丈夫だろ」
ブシューッ!(←エミリー、両耳から蒸気噴き出す)
「ああっ!?」
「……大丈夫・です。不具合は・出て・いません」
「周りもびっくりしてるから何とかしろ!」
アルエットは飲んでも何ともなかった。
因みに、暑い時に水を体内に入れると蒸気を噴き出すことがあるというのは旧型機の仕様で、新型ではそのようなことがない。
つまり、敷島のマニュアル確認が不十分だっただけだ。
[同日13:34.JR川越線1161H電車内 敷島、エミリー、アルエット]
発車時刻が迫ると、さすがに4両編成の電車も賑わいを見せるようになる。
もっとも、まだラッシュの時間ではないので、それもたかが知れているが。
〔「お待たせ致しました。13時34分発、川越線、八高線直通、各駅停車の八王子行き、まもなく発車致します」〕
都内でも聴ける発車メロディの後、電車は一部のドアを閉めて発車した。
〔「お待たせ致しました。今日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。13時34分発、八高線直通、各駅停車の八王子行きです。途中、高麗川には13時51分、終点八王子には14時42分に到着致します。【中略】次は東飯能、東飯能です。西武鉄道池袋線は、お乗り換えです」〕
単線区間に入り、駅間距離も長くなる。
その中で敷島が気にしているのは、
「エミリーが“人形裁判”で、シンディが“千年幻想郷”、アルエットが“竹取飛翔”か?」
「イエス。敷島・社長」
「レイチェルは?“上海紅茶館”だろ?」
「“明日ハレの日、ケの昨日”……という・データも・あります」
「いやー、“上海紅茶館”の電気信号で良かったと思うんだけどなぁ……」
「正しかった・と・思います。だから・レイチェルは・涙を・流したんだと・思います」
「うーん……。だといいんだが……」
[同日同時刻 DCJ埼玉研究所 アリス・シキシマ&3号機のシンディ]
上半身、特に頭部は大方の修理が完了している為、シンディはいつもの口調でアリスと話していた。
「レイチェル、泣いてたんですよ。泣いて、『私が悪かった』って」
「そう……」
「よく分からないんですけど、井辺プロデューサーにも謝っておいてってことでした」
「プロデューサー井辺が?んん?」
「何でもプロデューサーがアメリカ旅行中に知り合って、レイチェルの活動に加担させたんですって」
「What’s!?」
「プロデューサーにやらせたのは、旅行者として一緒に行動させることで怪しまれないようにしただけであって、直接プロデューサーに爆弾仕掛けさせたりとかはしなかったみたいですけどね」
「何だ……。でも、下手すりゃインターポールから事情聞かれるかなぁ……?」
「恐らくは……。日本人男性と一緒に行動することは、却ってある程度目立ちはしますが、それでも日本人を連れて歩いている女がテロリストとは思えないと思わせるのが目的だったそうです」
「うちのダンナみたいに、一歩間違えりゃテロリストの日本人もいるけどね」
笑うアリス。
「他には?」
「……ドクター達夫に銃弾を撃ち込んだのは間違いありませんが、頭を撃ち抜いたのはレイチェルではないです。つまり、ドクター達夫にケガをさせたのはレイチェルでも、殺したのはレイチェルではないです」
「What?じゃあ何?一緒にいたバージョン?」
「いえ、違います」
シンディはレイチェルから聞いた話をアリスにしているわけだが、最後に語られた真相を聞いて、アリスは唖然とした。
十条達夫の頭を撃ち抜いたのは誰だ?
ヒントは光線銃。
大宮駅を出た埼京線電車は川越線に入り、日進駅までは住宅街を通る。
進行方向左手には鉄道博物館が見えるが、
日進駅を出ると、一転して単線区間の牧歌的な風景を走る。
田園風景も広がる中、10両編成の長大通勤電車がそこを走る
根拠は無いが、そんな風景が漂うのだ。
尚、第二次大戦前まで運行していた西武鉄道大宮線は、この川越線に客を取られて廃止になった。
民業圧迫の例である。
西武鉄道が走っていないのに、何ゆえ大宮に西武バスが走っているのかというと、そのルーツはそこまで遡るのである(西武大宮線が西武バス路線に転換された為。そのバス路線も、川越グリーンパークを境に分断された)。
〔「まもなく終点、川越、川越です。3番線に入ります。お出口は、左側です。川越から先、武蔵高萩、高麗川方面ご利用のお客様、各駅停車の八王子行きは、向かい側4番線から13時34分の発車です。八王子行きは、短い4両編成での運転です。ご利用のお客様は、ホーム中ほどにお進みください。東武鉄道東上線は、改札口を出てのお乗り換えです。……」〕
「ここで乗り換えだな……。てか、4両かよ」
「そのよう・です」
電車がポイントを渡って、ゆっくりとホームに入線した。
高速でホームに進入する東武東上線とは、対照的である。
〔かわごえ〜、川越〜。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕
また夏の太陽が照り付けるホームに降り立つ3人。
人間は汗をかいて体温調整するが、汗をかかないロイド達はどうするのかというと、旧型のエミリーやシンディは口から排熱する。
人間の呼吸を模しているのだが、どうも溜め息を吐いているようにしか見えない。
新型のアルエットは鼻と口を使い、もっと更に人間の呼吸に近い排熱をしている。
「おっ、もう電車がいるぞ」
折り返し入線したばかりのせいか、4両編成の車内はまだガラガラだ。
しかし、ドアは閉まっている。
それでも車内には、数人の乗客が疎らに座っている。
「ああ、なるほど」
川越から西は半自動ドアになっていて、ボタンを押して乗り降りするのだった。
ポロロロン♪(音階:ド、ミ、ソ、ド↑)
バッ、ガラガラガラ……。
「……仙石線だな」
しかし、車内は冷房が効いていた。
「はーーーーーー……」
「……エミリー、水飲んでおこうか」
「……只今の・外気温・36……」
「いや、いい。数字を聞いたら、余計暑くなる」
敷島はもう1度電車を降りると、ホームの自販機で飲み物を買った。
「ほら、アルエットも」
敷島は缶コーヒーだが、ロイド達には水だ。
「口から蒸気吹いたりしませんか?」
と、アルエット。
「いや、大丈夫だろ」
ブシューッ!(←エミリー、両耳から蒸気噴き出す)
「ああっ!?」
「……大丈夫・です。不具合は・出て・いません」
「周りもびっくりしてるから何とかしろ!」
アルエットは飲んでも何ともなかった。
因みに、暑い時に水を体内に入れると蒸気を噴き出すことがあるというのは旧型機の仕様で、新型ではそのようなことがない。
つまり、敷島のマニュアル確認が不十分だっただけだ。
[同日13:34.JR川越線1161H電車内 敷島、エミリー、アルエット]
発車時刻が迫ると、さすがに4両編成の電車も賑わいを見せるようになる。
もっとも、まだラッシュの時間ではないので、それもたかが知れているが。
〔「お待たせ致しました。13時34分発、川越線、八高線直通、各駅停車の八王子行き、まもなく発車致します」〕
都内でも聴ける発車メロディの後、電車は一部のドアを閉めて発車した。
〔「お待たせ致しました。今日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。13時34分発、八高線直通、各駅停車の八王子行きです。途中、高麗川には13時51分、終点八王子には14時42分に到着致します。【中略】次は東飯能、東飯能です。西武鉄道池袋線は、お乗り換えです」〕
単線区間に入り、駅間距離も長くなる。
その中で敷島が気にしているのは、
「エミリーが“人形裁判”で、シンディが“千年幻想郷”、アルエットが“竹取飛翔”か?」
「イエス。敷島・社長」
「レイチェルは?“上海紅茶館”だろ?」
「“明日ハレの日、ケの昨日”……という・データも・あります」
「いやー、“上海紅茶館”の電気信号で良かったと思うんだけどなぁ……」
「正しかった・と・思います。だから・レイチェルは・涙を・流したんだと・思います」
「うーん……。だといいんだが……」
[同日同時刻 DCJ埼玉研究所 アリス・シキシマ&3号機のシンディ]
上半身、特に頭部は大方の修理が完了している為、シンディはいつもの口調でアリスと話していた。
「レイチェル、泣いてたんですよ。泣いて、『私が悪かった』って」
「そう……」
「よく分からないんですけど、井辺プロデューサーにも謝っておいてってことでした」
「プロデューサー井辺が?んん?」
「何でもプロデューサーがアメリカ旅行中に知り合って、レイチェルの活動に加担させたんですって」
「What’s!?」
「プロデューサーにやらせたのは、旅行者として一緒に行動させることで怪しまれないようにしただけであって、直接プロデューサーに爆弾仕掛けさせたりとかはしなかったみたいですけどね」
「何だ……。でも、下手すりゃインターポールから事情聞かれるかなぁ……?」
「恐らくは……。日本人男性と一緒に行動することは、却ってある程度目立ちはしますが、それでも日本人を連れて歩いている女がテロリストとは思えないと思わせるのが目的だったそうです」
「うちのダンナみたいに、一歩間違えりゃテロリストの日本人もいるけどね」
笑うアリス。
「他には?」
「……ドクター達夫に銃弾を撃ち込んだのは間違いありませんが、頭を撃ち抜いたのはレイチェルではないです。つまり、ドクター達夫にケガをさせたのはレイチェルでも、殺したのはレイチェルではないです」
「What?じゃあ何?一緒にいたバージョン?」
「いえ、違います」
シンディはレイチェルから聞いた話をアリスにしているわけだが、最後に語られた真相を聞いて、アリスは唖然とした。
十条達夫の頭を撃ち抜いたのは誰だ?
ヒントは光線銃。