報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「地下研究所」

2015-08-11 19:22:59 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月7日17:15.天候:曇 十条達夫の家 敷島孝夫、エミリー、アルエット]

 十条家の庭で不審なマンホールを発見した敷島達。
 Pという白いペイントがしてある以外は、ただのマンホールなのだが……。
 家の外壁に朽ちた分電盤があるのが気になった。
 開けてみると、ヒューズが飛んでいた。
「どこかにヒューズが無いかな?家の中にあるかもしれん。探してみよう」
 するとアルエットが、
「研究室の中にあるかもしれません。わたしの整備をした時に、確かヒューズがあったような気がします」
「おっ、よし。行ってみよう。ついでに工具も持って来た方がいいな」

 というわけでアルエットの先導で研究室に行き、そこでヒューズを見つけた。
 再び外の分電盤に行き、ヒューズと配線を繋ぎ直す。
「よし。スイッチを入れてみるぞ」
 古めかしい旧式のレバーをガチャンと下に下ろした。
 すると、
「!?」
 ズズズ……とPのマンホールが回った。
 エミリーがマンホールを開けた。
「ロックが・掛かって・いたのが・解除・された・ようです」
 とのこと。
 下に降りる梯子があった。
「暗そうだな。ライトが必要だ」
「御心配・いりません。私と・アルエットで・先導・します」
「おっ、そうか。よろしく頼むぞ」
 エミリーが先に梯子を下り始めた。
 エミリーは両目をライトのように光らせて、下を照らす。
 その次にアルエット。
 アルエットもまた両目をライトのように光らせた。
 最後に敷島が続く。

 下に降りると、外の蒸し暑さが嘘みたいに涼しい。
 素掘りの洞窟のようになっていた。
「スイッチが・あります」
 梯子を降り切ってすぐの所に、スイッチがあった。
 押すと、電球の照明が点灯した。
 これで、エミリー達の目によるライトは必要なくなった。
「絶対、何かあるぞ、これ」
「はい」
「アルエットのメモリーに、ここから先のデータはあるか?」
「いえ、ありません」
「そうか」
 照明が点いたり、空調が入って涼しいのは、電力を復旧させたからだと分かった。
 洞窟の奥には電子ロックの掛かった両開きの鉄扉があったが、それは解除されていた。
「よし。中に入ってみるぞ」
 中に入る。
 外とは打って変わって、今度はコンクリート造りの空間になっていた。
 ここもスイッチで照明が点く。
「!」
 更に先へ進むと、バージョンが転がっていた。
 形状からして、旧式の3.0であろう。
 尚、アリスが5.0を開発・製造しているが、未だ試作の段階であるため、4.0が現行モデルとされる。
 その為、それの前世代モデルである3.0は旧型とされる。
 特徴は4.0より動きが遅く、基本的に喋れない。
 燃料のLPガスタンクが、いかにもな感じで背中に背負っている形態であるということだ。
「電源が・切れて・います。バッテリーも・切れて・います。現段階では・再起動・することは・ないでしょう」
「何だ、そうか。いきなり動き出して襲われたらたまらんからな」
 敷島はホッとした。
 3.0が倒れている所は、廊下の丁字路付近。
 どちらもドアが見える。
 右に曲がらず、真っ直ぐ行こうとしたが、鍵が掛かっていた。
「こじ開け・ますか?」
「いや、その前にもう1つのドアを開けてみよう。そこも開かなかったらしょうがない」
「はい」
 3.0を跨いで、別のドアへ向かう。
 すると、そこは開いた。
「ここは……用具室みたいだな」
 色々な部品や工具が並んでいる。
 そこに都合良くバージョン・シリーズ用のバッテリーパックがあった。
 チェッカーで調べてみると、まだ若干バッテリーが残っているようだった。
 そして、新しいガスボンベ。
 他に調べてみると、机の上に書類が残されていた。

『研究員各位 3月15日はセキュリティ・ロボットの定期点検に入りますので、代わりにバージョン機を配置します。欠点は凶暴性が散見される為、IDが無いと即座に発砲してくる恐れがあることです。ID忘れ、紛失には十分注意してください』
『4月1日より、警備強化の為、バージョン機が通常配置となりました。鍵の受け取りには十分注意してください』

「何だこれ?」
 年が書いていないので、今から何年前のことなのか分からない。
 だが、ウィリーが多数の研究員を従えていた時代のようだから、最低でも10年以上前の話であることは想像できた。
 で、分かったことは、
「あの・3.0は、セキュリティを・担当していた・ようです」
「鍵の受け取りってどういうことだ?」
「敷島・社長。あの・3.0を・再起動して・事情を・聞きましょう」
「ええっ?」
「大丈夫・です。私に・お任せ・ください」
「わ、わかった」
 敷島はバッテリーパックとガスボンベを持って、部屋の外に出た。
 バージョン3.0のバッテリーバックとガスボンベを交換する。
 やり方は、幾度と無いこいつらとの戦闘のおかげで、何となく分かっていた。

 そして、バージョン3.0の両目が赤く光り、再起動に成功したことを物語る。
 起き上がると、右手をショットガンに変形させて天井に発砲した。
「うわっ、やっぱり!」
 今度は敷島達に銃口を向ける。
 だが、予め右手をマグナムに変形させていたエミリーが、3.0の銃口に向かって発砲。
 3.0はあらぬ方向に銃を発砲させた。
 更に倒れた衝撃で銃が変形してしまい、発砲できなくなる。
「そこまで・だ!そこに・なおれ!」
 エミリーが両目をギラリと光らせ、バージョン3.0の頭部に銃を向けた。
「キュルキュルキュル……ピピーピ、ピー……」
「!」
 バージョン3.0はエミリーの姿を認識すると、慌てたように『正座』した。
 そして、伏せ拝をするかのように何度もお辞儀をする。
「お前の・鍵を・寄越せ」
 エミリーが命令すると、バージョン3.0は口の部分から1本の鍵を出し、エミリーに差し出した。
「さすがエミリーだな」
 かつてはシンディと同様、バージョン達を使役する立場にあったエミリー。
 いかにも傲慢な女王様といった妹と違い、エミリーはエミリーで“女帝”と崇められていたようだ。

 これで早速、鍵の掛かったドアを開ける。
 用具室のプリントによれば、この先に研究室があるようだ。
「気をつけて・ください。中にも・バージョンが・いる・恐れが・あります。制御・されて・いない・恐れが・あります」
「その時はエミリーの一喝で、そいつみたいにおとなしくなりそうなものだが……」
 一部の4.0みたいに、最近製造された為にマルチタイプのことを知らない個体や、あえてマルチタイプへの畏怖を外されたタイプだと厄介だ。
 少なくとも3.0においては、そのようなことはないが……。

 奥には何が待ち受けているか?
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“新アンドロイドマスター” 「十条家を探索」

2015-08-11 10:43:51 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月7日16:00.天候:雷雨 神奈川県相模原市緑区(旧・津久井郡藤野町) 十条達夫の家 敷島孝夫、1号機のエミリー、8号機のアルエット]

 十条家の電力を復旧させた敷島達は、その足で、警察から返却された達夫の遺品が保管されているという仏間に向かった。
 相変わらず外はゲリラ豪雨が降ったままだ。
 時折雨足が弱くなり、一瞬晴れ間も覗いたりして、やっと晴れたかと思ったら、またいきなり暗くなって雷ドカーン、雨ザァザァの繰り返しだ。
 さっき乗ってきた車のラジオから流れて来た天気予報によると、それが暗くなるまで続くという。

 仏間に入ると、達夫の遺品がそこに無造作に積み重ねられていた。
 達夫の遺族といっても、天涯孤独だった彼は、殆ど面識の無い遠い親戚まで行かないと血縁者がいない有り様で、その遺族も殆ど面識の無い達夫の遺産を相続するのを躊躇ったようである。
「博士!博士がいる!」
 遺品の中には最近、アルエットと撮ったばかりの写真もあった。
「持って行けるものは全部持って行こう。サツにとっては有用な品じゃなくても、俺達に取っては有用なんだからな」
「はい」
「しっかし、やっぱり達夫の爺さんは他にも何か研究していたのか?何か、難しい本が一杯だ。平賀先生の所もそうだったかな?」
「ドクター平賀も・よく・本を・お読み・です」
「そうか」
 敷島が拾い上げたのは、『平成新版 日蓮大聖人御書 大石寺』と書かれた国語辞典並みの厚さの本。
 他にも『折伏必携』なんかもあった。
「何の資料だろ?」
 他にも『迷走する顕正会を斬る』というタイトルの本もあった。
「これが、ロボット研究の何に役に立つってんだ?」
 色々調査していくうちに、
「達夫の爺さん、ただ単に信心深かっただけじゃないみたいだな」
 というのが分かった。
「それにしても、仏壇のど真ん中にあるのが仏像ではなく、掛け軸とは……変わった宗教だ」
「わたしの左足に……」
「ん?」
 アルエットは左足の脛をパカッと開けた。
 今はそこに何も入っていない。
「博士が、あの仏壇の“御本尊”をわたしに託しました」
「ああ、あれか。いや、まさかバージョン連中が持ち去っていたとはなぁ……」
 バスでその集団に突っ込み、爆発・炎上させた敷島。
 普通に考えれば、そいつらの持っていた御本尊もあの爆発・炎上に巻き込まれたと見て間違いないだろう。
「他に無いのか?バッテリーなんか正規以外にサブと予備もあるんだぞ」
「ロイドでは・ありませんよ?敷島・社長」
 普段、感情を表に出すことがないエミリーも、さすがに突っ込んだ。
「ちょっと、仏壇を探してみよう。エミリー、仏壇を引っ張り出してくれ」
「かしこまりました」
 エミリーが仏壇の置かれている窪みに手を入れ、それを引き出す。
 で、ヒョイと持ち上げると畳の上に置いた。
 あっちこっち損傷している仏壇。
 この家自体がそうだが、レイチェル達が襲撃に来た際に、ここも相当荒らされたようだ。
「うー、くそっ!やっぱり何も無いか?」
 敷島が仏壇の内部を調べている間、エミリーは何かに気づいた。
「!」
 それは仏壇が置かれていた窪み。
 仏間なのだから、それがスッポリ入るような窪みがあるのは当然だ。
 エミリーはその奥に、不自然なヒビが入っているのに気づいた。
 右目を緑色に光らせ、スキャンする。
 金属反応があった。
 それも、鉄骨とかの建材類ではない。
「敷島・社長。不審な・金属反応が・あります」
「なにっ?」
「あの奥に・不自然な・壁の・ひび割れ・です」
「レイチェル達が襲撃しに来た際にできたか、それとも古い家だから、老朽化で入ったかのどっちかじゃ?」
「ひび割れ・自体は・そうかも・しれません。ですが・その奥に・不審な・金属反応が・あります。調査・しますか?」
「うーん……。何か、このままいても詰みそうな気がする。壁を壊す部分は録画しないでおいてくれよ」
「かしこまりました」
 ロイド達は常に録画状態になっている。
 人間が見たり聞いたりしたことがそのまま記憶として残るのと同じようにする為だが、人間は都合の良し悪しは別として忘れるのに対し、ロイド達はもちろん『記録』しているのでそのようなことはない。
 エミリーが窪みに上半身を入れ、壁を素手で(といっても手袋ははめているが)壁を破壊すると、その奥にあったのは……。
「うわっ、何だこれ!?」
 敷島はエミリーの目を通して、映った画像を手持ちのタブレットで見ている。
 エミリーの目に映ったのは、祭壇の跡だった。
 そしてエミリーが反応したのは、聖母マリア像。
 倒れているが。
「そういやウィリーも、一応はクリスチャンだったらしいな。だから、アリスもそうだったんだ。祭壇があった部屋を、そのまま仏間に改築したのか。しかし……祭壇ぐらい撤去しろよなぁ……」
 エミリーが埃まみれになりながらも、そのマリア像を引っ張り出してきた。
「達夫の爺さんの遺品だけ手に入れるつもりが、ウィリーの遺品まで手に入れてしまうとは……。アリスとシンディへの土産で持って行くか?」
 エミリーが更に調べて行くと、このマリア像、ただの銅像ではなかった。
「底が・開きます」
 ひっくり返してみると、足の裏に蓋が付いていた。
 開けてみると、メモのようなものが入っていた。
 アメリカ人の書いたメモだから、当然英文がびっしりだ。
「……エミリー、日本語に翻訳してくれ」
「少々・お待ち・ください。解読・します」
 で、
「解読が・終わり・ました。『ピップエレキバン、忘れるな』です」
「買い物メモかよ!そんなもんマリア像の中に入れとくなや!行こう行こう!謎解きアクション期待して損した!エミリー、ここにある達夫の爺さんの遺品、ごっそり頂いて行くぞ。車まで運んでくれ。幸い、こんなことしているうちに、また雨も小康状態になったみたいだ」
「かしこまりました」

[同日17:00.十条達夫の家・玄関前 敷島、エミリー、アルエット]

 ハッチを開けて遺品を積み込むエミリー。
「結構ありますけど、どこへ運ぶんですか?」
 アルエットが聞いて来た。
「色々な研究資料があるだろ?これ自体は警察の捜査には必要無いみたいだったが、研究者にとってはいい資料になるんじゃないか?」
「なるほどー」
「取りあえずうちの事務所に運び込んで、改めて仕分けするさ。いくら許可があるからって、人んちの中じゃ、ゆっくり精査できないからね」
「そうですね」
 豪雨のせいなのか、中庭の方を見ると、マンホールから水が吹いていた。
 幸いそこから道路の方に流れるようになっているのか、庭自体は冠水していない。
「社長さん、あそこにバージョン4.0が!」
 マンホールの近くにバージョン4.0が1機だけ倒れていた。
「警察が全部押収したんじゃないのか?」
「どこかに・隠れていた・のかも・しれません。調べて・みますか?」
「一応な。有用なメモリーがあったら抜き取って、そいつは鷲田警視へお土産だ」

 エミリーは一応、右手をマグナム(コルトパイソンを改造したもの)に変形させてバージョン4.0に近づいた。
 スキャンしてみると、既に壊れた状態で、その原因が感電による可能性が高いと出た。
 今日もそうだが、ここ連日、この辺り一体はゲリラ豪雨に見舞われている。
 もしかしたら、隠れていて出て来たところ、落雷の直撃を受けたのかもしれない。
 マルチタイプでさえ落雷は非常に危険だ。
 ましてや、彼女らを恐れる(中には設定で恐れないようになっている個体もあるが)バージョン達はイチコロである。
 彼らの燃料であるLPガスが爆発しなかったのは、それが切れていたからだろう。
 まもなく燃料が切れるので出て来たところ、落雷に遭ったものと思われる。
 頭部を開けると黒焦げにはなっていたものの、メモリーチップは無事だった。
「敷島・社長、回収・できました」
「ご苦労さん。じゃあ、撤収しようか」
「はい」
 エミリーが車に戻ろうとした時だった。
「!?」
 この庭にあるマンホールは1つだけではなかった。
 車が置いてある場所からは家屋の陰になってて見えないが、バージョンが倒れている所まで行くと分かる。
 いや、何となくバージョンが何かを指すようにして倒れていたので、エミリーがチラッとその方向を見たからだ。
 そのマンホールには白いペンキで、『P』と書かれていた。
 視線を周囲に移すと、マンホールのすぐ横の家の外壁には、朽ちた分電盤がある。
「どうした、エミリー?早く来い」
「は、はい。あの、敷島・社長」
「どうした?」
「気になる・ものが」
「?」
 敷島もまたマンホールに近づいた。
「P?プロデューサーか?……なワケないか。うーん……」
 考え込む敷島。
 で、思いついたのが、
「P……ピップ。分電盤……エレキ盤なんちってw」
「…………」
「…………」
 シラけるロイド達。
「……すいません」
 さすがの敷島も赤面。
「いえ。でも・案外・そうかも・しれません」
「よし。ちょっと調べてみるか」

 この敷島達の行動が吉と出るか、凶と出るか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする