[8月7日17:15.天候:曇 十条達夫の家 敷島孝夫、エミリー、アルエット]
十条家の庭で不審なマンホールを発見した敷島達。
Pという白いペイントがしてある以外は、ただのマンホールなのだが……。
家の外壁に朽ちた分電盤があるのが気になった。
開けてみると、ヒューズが飛んでいた。
「どこかにヒューズが無いかな?家の中にあるかもしれん。探してみよう」
するとアルエットが、
「研究室の中にあるかもしれません。わたしの整備をした時に、確かヒューズがあったような気がします」
「おっ、よし。行ってみよう。ついでに工具も持って来た方がいいな」
というわけでアルエットの先導で研究室に行き、そこでヒューズを見つけた。
再び外の分電盤に行き、ヒューズと配線を繋ぎ直す。
「よし。スイッチを入れてみるぞ」
古めかしい旧式のレバーをガチャンと下に下ろした。
すると、
「!?」
ズズズ……とPのマンホールが回った。
エミリーがマンホールを開けた。
「ロックが・掛かって・いたのが・解除・された・ようです」
とのこと。
下に降りる梯子があった。
「暗そうだな。ライトが必要だ」
「御心配・いりません。私と・アルエットで・先導・します」
「おっ、そうか。よろしく頼むぞ」
エミリーが先に梯子を下り始めた。
エミリーは両目をライトのように光らせて、下を照らす。
その次にアルエット。
アルエットもまた両目をライトのように光らせた。
最後に敷島が続く。
下に降りると、外の蒸し暑さが嘘みたいに涼しい。
素掘りの洞窟のようになっていた。
「スイッチが・あります」
梯子を降り切ってすぐの所に、スイッチがあった。
押すと、電球の照明が点灯した。
これで、エミリー達の目によるライトは必要なくなった。
「絶対、何かあるぞ、これ」
「はい」
「アルエットのメモリーに、ここから先のデータはあるか?」
「いえ、ありません」
「そうか」
照明が点いたり、空調が入って涼しいのは、電力を復旧させたからだと分かった。
洞窟の奥には電子ロックの掛かった両開きの鉄扉があったが、それは解除されていた。
「よし。中に入ってみるぞ」
中に入る。
外とは打って変わって、今度はコンクリート造りの空間になっていた。
ここもスイッチで照明が点く。
「!」
更に先へ進むと、バージョンが転がっていた。
形状からして、旧式の3.0であろう。
尚、アリスが5.0を開発・製造しているが、未だ試作の段階であるため、4.0が現行モデルとされる。
その為、それの前世代モデルである3.0は旧型とされる。
特徴は4.0より動きが遅く、基本的に喋れない。
燃料のLPガスタンクが、いかにもな感じで背中に背負っている形態であるということだ。
「電源が・切れて・います。バッテリーも・切れて・います。現段階では・再起動・することは・ないでしょう」
「何だ、そうか。いきなり動き出して襲われたらたまらんからな」
敷島はホッとした。
3.0が倒れている所は、廊下の丁字路付近。
どちらもドアが見える。
右に曲がらず、真っ直ぐ行こうとしたが、鍵が掛かっていた。
「こじ開け・ますか?」
「いや、その前にもう1つのドアを開けてみよう。そこも開かなかったらしょうがない」
「はい」
3.0を跨いで、別のドアへ向かう。
すると、そこは開いた。
「ここは……用具室みたいだな」
色々な部品や工具が並んでいる。
そこに都合良くバージョン・シリーズ用のバッテリーパックがあった。
チェッカーで調べてみると、まだ若干バッテリーが残っているようだった。
そして、新しいガスボンベ。
他に調べてみると、机の上に書類が残されていた。
『研究員各位 3月15日はセキュリティ・ロボットの定期点検に入りますので、代わりにバージョン機を配置します。欠点は凶暴性が散見される為、IDが無いと即座に発砲してくる恐れがあることです。ID忘れ、紛失には十分注意してください』
『4月1日より、警備強化の為、バージョン機が通常配置となりました。鍵の受け取りには十分注意してください』
「何だこれ?」
年が書いていないので、今から何年前のことなのか分からない。
だが、ウィリーが多数の研究員を従えていた時代のようだから、最低でも10年以上前の話であることは想像できた。
で、分かったことは、
「あの・3.0は、セキュリティを・担当していた・ようです」
「鍵の受け取りってどういうことだ?」
「敷島・社長。あの・3.0を・再起動して・事情を・聞きましょう」
「ええっ?」
「大丈夫・です。私に・お任せ・ください」
「わ、わかった」
敷島はバッテリーパックとガスボンベを持って、部屋の外に出た。
バージョン3.0のバッテリーバックとガスボンベを交換する。
やり方は、幾度と無いこいつらとの戦闘のおかげで、何となく分かっていた。
そして、バージョン3.0の両目が赤く光り、再起動に成功したことを物語る。
起き上がると、右手をショットガンに変形させて天井に発砲した。
「うわっ、やっぱり!」
今度は敷島達に銃口を向ける。
だが、予め右手をマグナムに変形させていたエミリーが、3.0の銃口に向かって発砲。
3.0はあらぬ方向に銃を発砲させた。
更に倒れた衝撃で銃が変形してしまい、発砲できなくなる。
「そこまで・だ!そこに・なおれ!」
エミリーが両目をギラリと光らせ、バージョン3.0の頭部に銃を向けた。
「キュルキュルキュル……ピピーピ、ピー……」
「!」
バージョン3.0はエミリーの姿を認識すると、慌てたように『正座』した。
そして、伏せ拝をするかのように何度もお辞儀をする。
「お前の・鍵を・寄越せ」
エミリーが命令すると、バージョン3.0は口の部分から1本の鍵を出し、エミリーに差し出した。
「さすがエミリーだな」
かつてはシンディと同様、バージョン達を使役する立場にあったエミリー。
いかにも傲慢な女王様といった妹と違い、エミリーはエミリーで“女帝”と崇められていたようだ。
これで早速、鍵の掛かったドアを開ける。
用具室のプリントによれば、この先に研究室があるようだ。
「気をつけて・ください。中にも・バージョンが・いる・恐れが・あります。制御・されて・いない・恐れが・あります」
「その時はエミリーの一喝で、そいつみたいにおとなしくなりそうなものだが……」
一部の4.0みたいに、最近製造された為にマルチタイプのことを知らない個体や、あえてマルチタイプへの畏怖を外されたタイプだと厄介だ。
少なくとも3.0においては、そのようなことはないが……。
奥には何が待ち受けているか?
十条家の庭で不審なマンホールを発見した敷島達。
Pという白いペイントがしてある以外は、ただのマンホールなのだが……。
家の外壁に朽ちた分電盤があるのが気になった。
開けてみると、ヒューズが飛んでいた。
「どこかにヒューズが無いかな?家の中にあるかもしれん。探してみよう」
するとアルエットが、
「研究室の中にあるかもしれません。わたしの整備をした時に、確かヒューズがあったような気がします」
「おっ、よし。行ってみよう。ついでに工具も持って来た方がいいな」
というわけでアルエットの先導で研究室に行き、そこでヒューズを見つけた。
再び外の分電盤に行き、ヒューズと配線を繋ぎ直す。
「よし。スイッチを入れてみるぞ」
古めかしい旧式のレバーをガチャンと下に下ろした。
すると、
「!?」
ズズズ……とPのマンホールが回った。
エミリーがマンホールを開けた。
「ロックが・掛かって・いたのが・解除・された・ようです」
とのこと。
下に降りる梯子があった。
「暗そうだな。ライトが必要だ」
「御心配・いりません。私と・アルエットで・先導・します」
「おっ、そうか。よろしく頼むぞ」
エミリーが先に梯子を下り始めた。
エミリーは両目をライトのように光らせて、下を照らす。
その次にアルエット。
アルエットもまた両目をライトのように光らせた。
最後に敷島が続く。
下に降りると、外の蒸し暑さが嘘みたいに涼しい。
素掘りの洞窟のようになっていた。
「スイッチが・あります」
梯子を降り切ってすぐの所に、スイッチがあった。
押すと、電球の照明が点灯した。
これで、エミリー達の目によるライトは必要なくなった。
「絶対、何かあるぞ、これ」
「はい」
「アルエットのメモリーに、ここから先のデータはあるか?」
「いえ、ありません」
「そうか」
照明が点いたり、空調が入って涼しいのは、電力を復旧させたからだと分かった。
洞窟の奥には電子ロックの掛かった両開きの鉄扉があったが、それは解除されていた。
「よし。中に入ってみるぞ」
中に入る。
外とは打って変わって、今度はコンクリート造りの空間になっていた。
ここもスイッチで照明が点く。
「!」
更に先へ進むと、バージョンが転がっていた。
形状からして、旧式の3.0であろう。
尚、アリスが5.0を開発・製造しているが、未だ試作の段階であるため、4.0が現行モデルとされる。
その為、それの前世代モデルである3.0は旧型とされる。
特徴は4.0より動きが遅く、基本的に喋れない。
燃料のLPガスタンクが、いかにもな感じで背中に背負っている形態であるということだ。
「電源が・切れて・います。バッテリーも・切れて・います。現段階では・再起動・することは・ないでしょう」
「何だ、そうか。いきなり動き出して襲われたらたまらんからな」
敷島はホッとした。
3.0が倒れている所は、廊下の丁字路付近。
どちらもドアが見える。
右に曲がらず、真っ直ぐ行こうとしたが、鍵が掛かっていた。
「こじ開け・ますか?」
「いや、その前にもう1つのドアを開けてみよう。そこも開かなかったらしょうがない」
「はい」
3.0を跨いで、別のドアへ向かう。
すると、そこは開いた。
「ここは……用具室みたいだな」
色々な部品や工具が並んでいる。
そこに都合良くバージョン・シリーズ用のバッテリーパックがあった。
チェッカーで調べてみると、まだ若干バッテリーが残っているようだった。
そして、新しいガスボンベ。
他に調べてみると、机の上に書類が残されていた。
『研究員各位 3月15日はセキュリティ・ロボットの定期点検に入りますので、代わりにバージョン機を配置します。欠点は凶暴性が散見される為、IDが無いと即座に発砲してくる恐れがあることです。ID忘れ、紛失には十分注意してください』
『4月1日より、警備強化の為、バージョン機が通常配置となりました。鍵の受け取りには十分注意してください』
「何だこれ?」
年が書いていないので、今から何年前のことなのか分からない。
だが、ウィリーが多数の研究員を従えていた時代のようだから、最低でも10年以上前の話であることは想像できた。
で、分かったことは、
「あの・3.0は、セキュリティを・担当していた・ようです」
「鍵の受け取りってどういうことだ?」
「敷島・社長。あの・3.0を・再起動して・事情を・聞きましょう」
「ええっ?」
「大丈夫・です。私に・お任せ・ください」
「わ、わかった」
敷島はバッテリーパックとガスボンベを持って、部屋の外に出た。
バージョン3.0のバッテリーバックとガスボンベを交換する。
やり方は、幾度と無いこいつらとの戦闘のおかげで、何となく分かっていた。
そして、バージョン3.0の両目が赤く光り、再起動に成功したことを物語る。
起き上がると、右手をショットガンに変形させて天井に発砲した。
「うわっ、やっぱり!」
今度は敷島達に銃口を向ける。
だが、予め右手をマグナムに変形させていたエミリーが、3.0の銃口に向かって発砲。
3.0はあらぬ方向に銃を発砲させた。
更に倒れた衝撃で銃が変形してしまい、発砲できなくなる。
「そこまで・だ!そこに・なおれ!」
エミリーが両目をギラリと光らせ、バージョン3.0の頭部に銃を向けた。
「キュルキュルキュル……ピピーピ、ピー……」
「!」
バージョン3.0はエミリーの姿を認識すると、慌てたように『正座』した。
そして、伏せ拝をするかのように何度もお辞儀をする。
「お前の・鍵を・寄越せ」
エミリーが命令すると、バージョン3.0は口の部分から1本の鍵を出し、エミリーに差し出した。
「さすがエミリーだな」
かつてはシンディと同様、バージョン達を使役する立場にあったエミリー。
いかにも傲慢な女王様といった妹と違い、エミリーはエミリーで“女帝”と崇められていたようだ。
これで早速、鍵の掛かったドアを開ける。
用具室のプリントによれば、この先に研究室があるようだ。
「気をつけて・ください。中にも・バージョンが・いる・恐れが・あります。制御・されて・いない・恐れが・あります」
「その時はエミリーの一喝で、そいつみたいにおとなしくなりそうなものだが……」
一部の4.0みたいに、最近製造された為にマルチタイプのことを知らない個体や、あえてマルチタイプへの畏怖を外されたタイプだと厄介だ。
少なくとも3.0においては、そのようなことはないが……。
奥には何が待ち受けているか?