報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスター”、この話のタイトルは「遺志を継ぐ者」

2014-01-17 21:57:46 | 日記
[同日20:20.仙台空港アクセス鉄道線(SAT) 仙台空港駅〜美田園(みたぞの)駅間 敷島孝夫&エミリー]

「後ろの車両に避難してください!」
 SATは基本的に、何両編成でもワンマン運転である。
 よって避難誘導は、運転士1人に任されることになる。
 あいにくと敷島達が乗っていたのは、2両編成を2台つないだ4両編成。
 つまり、単純計算でいつもの2倍の乗客がいるということだ。
「お客様も後ろの車両に!」
 運転士が敷島に避難を促したが、
「いや、私はあのガイノイド(女性型アンドロイド)の管理者ですので。他の乗客を避難させてください」
 と、敷島は断った。
(それにしても、ありゃ何なんだ?ウィリーとは別の狂ったヤツが現れたってことか?いや、しかし……)
 現れたロボットは3体。大きさはバージョン・シリーズとほぼ同じ。
 2足歩行で、それまではガンダムのザクに似た形状だったが、今度は……。
(……ドム……かな?)
 エミリーの戦法は、まず相手1機を集中攻撃して倒す。
 基本的にバージョン・シリーズは単体で現れることはなく、複数でフォーメーションを取るため、1機でも倒されるとそれが崩れて、戦闘力が落ちるということを知っているからだ。
 だが、今回は……確かに最初の1機は倒せた。しかし、残りの2機は最初から個人プレーをするのが定番かのように、エミリーを的確に捉え、手堅い攻撃を加えている。
(分が悪い)
 敷島はそう思った。一対一ならいいのだろうが……。
「何とか1機減らさないと……」
 敷島は辺りを見回した。
「うん?」
 その時、荷物置き場にゴルフバッグが置かれているのが見えた。
「ちょっと失礼!」
 敷島はゴルフバッグから、クラブを1本取り出した。
 それと、他の荷物からゴムバンドを拝借してヘッドの先に取り付けた。
 もう片方には、運転室内にあった工具箱の中からバールを取り付ける。
「よーし!」
 運転席横の貫通扉を開けた。
「食らえ!!」
 敷島はクラブを投げた。ロボットのいる方向へは投げたが、直接は投げない。
 クラブが架線に触れた。そして、もう片方のバールがロボットのボディに当たった。
「やった!……けど、すげっ!!」
 交流2万ボルトの短絡を受けたロボットは、爆発といっても良いほどのダメージを受けた。
「エミリー、残りは1機だ!」
「イエス!」
 そのエミリーも、左手をだらりと下げていた。彼女もまた、左手が使い物にならないくらいのダメージを受けていた。

[1月10日 10:00.財団仙台事務所 敷島孝夫&平賀太一]

「……というわけで、何とか倒しましたよ」
「架線の電流を使うなんてアイディア、メチャクチャですよ……」
 平賀は敷島の戦法に呆れた。
「エミリーの修理、終わるんですよね?」
「ええ。今、理事達からの最終チェックを受けています」
「新幹線用の交流25000ボルトだと、さすがにエミリーまでブッ壊す恐れがあったので」
「いや、多分仙石線や地下鉄の直流1500ボルトでも危険だったかと」
 交流2万ボルトより、直流1500ボルトの方が強い。ヒントは電気機関車をご覧あれ(by西村京太郎先生)。
「それより敷島さん、大変ですよ」
「電車の運行を止めたのは例のロボットをけしかけたヤツなんだから、賠償請求はそこにしてくださいよ」
 しかし、停電させたのは敷島である。
「いえ、そうじゃなくて……。そのロボットなんですけどね、どうやらバージョン・シリーズのようなんです」
「はあ!?あんなの見たこと無いですよ?エミリーの左手を壊すなんて、ザコロボットにできるはずが……」
「どうやら、それまでの……4.0までは既存のシリーズをマイナーチェンジしただけでしたが、今度はフルモデルチェンジした、バージョン5.0とも言うべきヤツのようです」
「ええっ!?えっ、だって、ウィリーはもう死んだはず……」
「信じたくないですが、この世のどこかに、ウィリーの遺志を継いで活動を始めたヤツがいるのは本当のようですね」
「ええっ?でも、あのロボット……5.0は……」
「ですから相手は、ウィリーに匹敵する科学者だということです」
「でも、そんなのがいたら、とっくに財団で把握してるはずじゃ……?」
「だから、俄かには信じ難い話なんですよ。学会にもいないなんて……」
「ウィリーにも、平賀先生みたいな弟子がいた……?」
「だったらそれはそれで、財団の網に掛かってるはずでしょう?」
「そ、そうか……。5.0の……メモリーの解析状況は?」
「それが、メモリー媒体を発見できなかったんです」
「えっ?」
「今までは頭部に装着されていましたが、無かったんです。無論、ボディを回収して調査しましたが、どこにも媒体らしきものは見当たりませんでした」
「んん?」
「それと敷島さん、どうやら今度の相手は敷島さんが目的のようです」
「は?何で?」
「それは分かりません。しかし、今までバージョン・シリーズがやってきた所に共通していたのは、敷島さんだけなんですよ」
「えっ?」
「思い出してみてください」
「あっ……」
 北陸道に現れた4.0、十条家に現れた3.0、アクセス鉄道に現れた5.0……。
「ただの偶然でしょう?」
 敷島は否定した。
「奴らは何の目的も無く現れません。明確な命令を受けて動くんです。そこに敷島さんがいたのは、偶然とは思えないんですよ」
「そ、そんな……」
「敷島さん、科学者に個人的な知り合いは?」
「財団の平賀先生ご夫妻と十条理事……あとはやっぱり財団関係者しか知りませんよ」
「ウィリーの関係者との接点は?」
「あるわけないでしょ!……シンディはもう処分されたし」
 敷島の一言に、平賀が反応した。
「……!いや、まさかな……」
「何がです?」
「マルチタイプは、バージョン・シリーズを使役することができます」
「それが何か?」
「実はマルチタイプが全部で何体製造され、何体残っているかの正確な数字は出ていないんですよ」
「ええっ!?」
「南里先生は、エミリーの他にも何体か製造したと仰ってました」
「で、生き残ってるのはエミリーだけでしょう?」
「ウィリーもまた何体か製造してるんですが、生き残ったのがシンディだけだという保証はどこにも無いんですよ」
「ええっ!?……でもそれにしたって、誰かがその生き残ったマルチタイプを所有して、整備して稼働させないとダメでしょう」
「まあ、それはそうですけど……。でも、それが科学者でなくてもいいわけですから。どこかのテロ組織の手に渡っていたとしたら、大変だ」
「でも、それだと、じゃあ5.0を作ったのは誰かってことになりますよ?」
 敷島のツッコミに、平賀は答えを失った。
「科学者か……。でも、誰だ?」
「ウィリーの身辺を洗い直してみる必要がありますね」
 敷島は、帰りの飛行機の中で見た夢の内容を思い出していた。
「ヒントは、ゼルダ・フォレストです」
「聞いたことないなぁ……」
 平賀は首を傾げた。
コメント (2)
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日記のネタが無いので……。

2014-01-17 00:09:01 | 日記
 “アンドロイドマスター”より、前回の続き。

[??? ??? ??? ウィリアム・フォレスト、シンディ、謎の少女]

 とある研究室と思しき場所。
 1人の老科学者が、何やらロボットの整備をしている。
 その傍らには、シンディがいた。
「ドクター。お嬢様がお見えよ」
 シンディは部屋のドアを一瞥すると、老科学者に言った。
 それまで一心不乱にロボットに向き合っていた老科学者は作業の手を止め、振り向きながら掛けていたゴーグルを外した。
「おっ、そうかね」
 その顔は綻んでいた。それはまるで、孫に会うのを心待ちにしていた老人のそれそのものであり、とても狂った科学者とは違う顔をしていた。
「お祖父ちゃん!」
 部屋に飛び込んできたのは、まだ12、3歳くらいの金髪碧眼の少女。
 ウィリーを祖父と呼び、その胸に飛び込む。
「見て見て!ハイ・スクールの合格通知よ!」
「ほっほっ!さすがは、わしの孫じゃ。わしの目に狂いは無かった。お前は天才じゃ。この調子で、大学も飛び級で行くのじゃぞ」
「うん!」
「そして、行く行くは、わしの後を継いで……」

[2014年1月3日19:40.IBEXエアラインズ機内 敷島孝夫&エミリー]

「……敷島さん。敷島さん」
「……はっ!?」
 そこで敷島は目が覚めた。
「仙台空港に・着陸しました」
「えっ!?あっ、そうか」
 敷島は周りを見渡した。乗客達がぞろぞろと出口の方に向かって歩いている。
「すっかり、寝落ちしちゃったのか」
 敷島は急いで席を立った。

 予定通り、日もすっかり暮れた小松空港から飛行機に乗り、無事に帰ってきたのだった。

[同日20:00.仙台空港駅 SAT-E721系車内 敷島&エミリー]

 飛行機から降りた後、すぐにその足で仙台空港駅へ向かう。
 ちょうどやってきた降り返しの電車に乗り込むと、空いてるボックシートに向かい合って座った。
〔この電車は、仙台空港アクセス線、普通、仙台行きです〕
 時折、首都圏のJR電車でも流れる自動放送を聞き流しながら、夢の内容について考えてみた。
「随分と生々しく、変な夢だったよ」
「?」
 敷島は目の前に座るエミリーに言ったが、突然のことで、エミリーは首を傾げる反応をした。
「ウィリーとシンディが出て来てさ、何か、まともなんだよ。気持ち悪いくらい。でさ……」
 敷島は夢の話をシンディにしてみた。
「本当にウィリーは天涯孤独だったのか?」
「……検索・してみます」
 エミリーは目を閉じた。
 数分位経って目を開けたが、
「検索・できませんでした。ドクター・ウィリーの・家族データは・ありません」
「じゃあ、やっぱりただの夢だったのか……」
「シンディの・メモリーが・解析できれば・答えが・出るかも・しれません」
「そんなこと言ったって、もうこの世に無いんだから」
 敷島は文句を言った。実はシンディ処分前に、メモリーを抜き取って解析しようという試みがあった。
 しかし、それも罠だった。メモリーを解析しようとした途端、その媒体がPCごと爆発し、重傷者を出す羽目になったのである。
「結局、真相は闇の中かよ」
 敷島は大きなため息をついた。

[同日20:14.SAT-E721系車内 敷島&エミリー]

 電車は定刻通りに発車した。
〔今日も、仙台空港アクセス線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、仙台空港アクセス線、普通、仙台行きです。……〕
 高架上のホームを出発した電車は左にカーブして行き、急にその高度を下げる。
 ワンマン電車の自動放送は、首都圏のJR電車と同じ声優、言い回しである。
「もう1度寝たら、夢の続きが見られるかな?」
「分かりません。仙台駅・到着まで・20分少々ですので・起きていらっしゃることを・お勧めします」
 エミリーは微笑を浮かべて言った。
 電車は地下トンネルの中に潜り込む。
 路線自体は名取駅までずっと高架線(よって、踏切は無し)なのだが、どうしてもそれだと航空機の離着陸に支障が出る為、滑走路付近については地下線になっている。

 エミリーは今までバージョン・シリーズが付近にいたり、接近したりしてくると、すぐにそれを察知して警戒・防衛態勢に入る。
 だから、今回の場合は不思議だった。
「ん!?」
 トンネルを出た途端、電車がけたたましい警笛を鳴らした。
〔急停車します。ご注意ください。お立ちのお客様は、お近くの吊革、手すりにおつかまりください〕
 そして、急停車。
「な、何だ!?」
「パパー、変なロボットがいるよー」
 運転室のすぐ後ろ、ブラインドが下ろされていない部分の窓から前展望を楽しんでいた子供がそんなことを言った。
「な、何っ!?」
「感知できません」
 エミリーは困惑した様子だった。敷島は窓を開けて身を乗り出し、前方を見た。(SATは単線であり、確かに対向電車の心配は無いが、良い子はマネしないでね)
「な、何だありゃ!?……うおっと!」
 敷島が身を引っ込めるのと、マシンガンの弾が飛んでくるのは同時だった。
「エミリー、お前の出番だ!行けっ!」
「イエス!」
 エミリーは敷島が開けた窓から車外に飛び出し、電車の進路を阻んでいるモノに向かって行った。
 エミリーが感知できないロボットとは一体……?
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