報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスター”「狂科学者の孫娘」 5

2014-01-27 22:24:22 | 日記
[2月23日07:00. 敷島のマンション 敷島孝夫&エミリー]

「おはよう・ございます」
「ああ、おはよう」
 いつもの時間に起きると、エミリーはいつもの通り、朝食の用意をしていた。
 昨日の如く、アリスはまだ起きていない。
 先に顔を洗うことにした。

「なあ、エミリー」
「何でしょう?」
 洗面所から戻ると、敷島は昨夜のことについて聞いた。
「アリスの泣き声が聞こえて来たんだが、何かあったのか?」
「ああ……その……」
「別に、聞いてどうこうするわけじゃないよ」
「ドクター・アリスが・泣かれていたのは・本当です」
「何で?」
「寂しさのあまり・時々・そうなる・そうです」
「……!?」

[2月22日02:00. アリスとエミリーの部屋 アリス&エミリー]
(尚、本来は英語で話しているところですが、日本語に訳しております)

「パパ……ママ……どうしていなくなっちゃったの……」
 充電を終え、“起床時間”までスリープ状態になっていたエミリーは、アリスの声に反応して再起動した。
「シンディ……お祖父ちゃん……どうして死んじゃったの……」
 エミリーは啜り泣くアリスに近寄ると、スッと抱き寄せて膝枕をした。
「何も・御心配・いりませんよ」
「シンディ……」
「私が・シンディの・代わりに・なります。どうぞ・好きなだけ・泣いて・ください」
 その時、アリスの脳裏に幼い頃の記憶が蘇った。
 まだ、養護施設から引き取られたばかりの頃。それでも寂しさは紛れるわけでもなく、よく泣いた。
 その時、そっと寄り添ってくれたのはシンディだった。シンディもまた、エミリーと同じ言い回し(口調は違うが)で、アリスを慰めてくれたものだ。
 アリスはエミリーに抱きついて、わんわん泣いた。

[2月23日07:30.敷島のマンション(ダイニング) 敷島孝夫&エミリー]

「……と・いうわけ・です」
「そ、想像できん。あのシンディが……!」
 敷島にとっては、狂ったように笑って、ついには作り主を笑いながら刺し殺した暴走ガイノイドのイメージしか無いのだが……。
「敷島さんに・復讐をする為に・動いていた時は・寂しさも・忘れていた・そうですが」
「まあ、人間そんなもんだ。目標を失ったら、確かにそんな気分になるだろうな。分かったよ。まあ、とにかく、アリスを起こしてくる」
「イエス」
 敷島はアリスの部屋に向かった。

「おーい、入るぞー」
 敷島はドアをノックした。
「う……」
「クカー……」
 前回と同じ、180度ひっくり返った体勢でいびきをかいているアリスの姿があった。
(本当に泣きじゃくったのかよ……)
 まあ、エミリーが嘘をつく性格ではないというのは知っているので、本当なのだろう。
「おい、起きろよ」
 敷島はアリスの肩を揺さぶった。
「うう……ん……。あ……おはようなの……」
「ああ。もう朝飯できてるから、早く起きて着替えろよ」
「OK.……シキシマ。今日はペーパー(新聞紙)丸めて叩かないの?」
「何度も同じ手使ったらウケないだろうが。じゃ、早くしろよ」
「ウケ?……何か、今日は優しいね?」
「そうか?同じ手は使わない主義なだけだよ」
 敷島はそう言うと、ダイニングの方へ向かった。
「Good morning.」
 アリスは立てかけているポートレートに向かって言った。
 そこに写っていたのは、幼い頃の自分と一緒に写るドクター・ウィリーとシンディの姿だった。
(アタシも日本で頑張るから。絶対に見ててね)
 心の中で亡き“肉親”達に言うと、アリスは着替えを始めた。
 自分のことを『狂科学者(マッド・サイエンティスト)の孫娘』と呼ぶ科学者が多いのは知っている。
 血の繋がりは無いが、そう呼ばれることをアリスは疎ましく思う。養祖父とて、違う形とはいえ、人類の為のロボットを作っていたのは間違いない。
(マッド・サイエンティストの孫娘じゃなく、天才科学者の祖父となるまで……ね)

                                             『狂科学者の孫娘』 終
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“アンドロイドマスター”「狂科学者の孫娘」 4

2014-01-27 00:39:39 | 日記
[2月22日18:00.財団仙台支部 敷島孝夫&エミリー]

「さーて、今日も1日働いたな」
「お疲れさまです。敷島さん」
 受付の所に行くと、エミリーが待っていた。
「おっ、お前もお疲れさん。アリスは?」
「大会議室で・講演中です」
「ほお……。まだやってるのか」
 あの世界的なマッド・サイエンティストの孫娘ということで、学界でも俄かに注目されているアリス。
 特に修理不可能とされたエミリーを直したということで、更に話を聞きたがる学者達が事務所を訪れていた。
「アリスのことだから、講演料取ってんじゃないのか?」
「それは……」
 エミリーは答えに詰ってしまった。
「まあいいや。まだ時間掛かるってんなら、先に帰ろう。腹減ったし」
「イエス」
 敷島がエレベーターホールへ向かおうとした時、大会議室から拍手が聞こえてきた。
「終わった・ようです」
「そうか」
 ゾロゾロと出て来る聴聞者達。
「ウィリーの孫娘というだけで、相当な注目度だな」
「イエス」
 南里も世界的な権威を持っていたが、弟子の平賀はあまり注目されているとは言えない。
 もっとも、平賀とて若くして大学教授になった天才であることに変わりはないのだが。
「どうせまだ時間掛かるだろうから、先に帰るぞ」
「イエス。……ノー。お待ちください」
「ん?」
 すると、大会議室から慌ててアリスが出て来た。
「Wait!レディを置き去りにして帰る気!?」
「何がレディだよ。無差別テロロボット2機の護衛付きでよく言うよ」
 もっとも、今は事務所奥の倉庫に保管中。

[同日18:30.帰宅の途→マンション 敷島孝夫、エミリー、アリス・フォレスト]

「オフィスからアパートメントまで歩ける距離だなんていいね」
 アリスが言った。
「どっちがいいのやら……」
「What’s?」
「いや、南里研究所にいた頃は、そこからチャリで5分の所に住んでいたからさ。今の職場からマンションまで徒歩20分と、どっちが楽かなぁって」
「自転車で通勤できないの?」
「ああ。財団事務所は原則、公共交通機関だけしか認められていない。なまじっか市街地にあるせいでな。理事達ですら、ビルの地下駐車場を借りたりとかしてる人が何人かいるけど……」
「ロボットに担いでもらうのはOK?」
「日本じゃすぐ警察に通報されるから、許可しかねます」
 敷島はキッパリと答えた。
「シビアね」
「嫌なら、アメリカに帰ってもいいんだぞ。自由の国なんだろ?」
「フン……。エミリーを連れて行けるんだったら、そうしてるよ」
 というよりも、まだアメリカに帰国できない事情があるようだ。
 ヒュウと寒風が吹きすさぶ。
「あー、今日も冷えるな」
「まもなく・雪が降る・もようです」
 と、エミリーが言った。
「なに?通りで、余計寒いわけだ」
 敷島はマフラーを締め直した。
「降られる前に、急いで帰ろう」

[同日22:00.敷島のマンション 敷島、アリス、エミリー]

「シキシマ。もう寝るね」
「おう。お疲れー……じゃなかった。お休み」
 敷島は自分用のプライベートPCで、DVD観賞。就寝はいつも、日付が変わる頃である。
(若いのに、意外と早寝だなー)
 まだ時差ボケでもあるのだろうか。タンクトップにショートパンツといったラフな格好で、アリスは寝泊まりしている部屋に潜り込んだ。そこには、充電中のエミリーもいる。

[2月23日02:00.同場所 敷島孝夫]

 敷島はふと目が覚めた。ここ最近、夜中に目を覚ますことが多い。年を取ると寝付きが悪くなったり、眠りが浅くなるという。正にそれかと思うのだが……。
「ったく……」
 敷島は起き上がると、トイレに向かった。寝室内はエアコンの暖房を入れてあるが、その外は寒い。

 震えながら用を済ませると、足早に自分の部屋に戻ろうとした。
「!?」
 その時、アリスの部屋からすすり泣く声が聞こえて来た。
 まるで心霊スポットにおける、女幽霊の泣き声のようで、敷島は一瞬びっくりしたが、
(アリスか。何なんだ?)
 その出所と正体に気づき、そのまま部屋に戻ろうとしたが、
(っえーい!)
 どうも気になったので、ドアに近づいてみた。
(んん?)
 何か言っているようだが、どうも英語のようで、敷島には何のことかさっぱりだった。
 しかし、何かあるなら同室のエミリーが動くはずだ。
 朝になったら聞いてみようかと思った。
コメント (2)
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