[2月23日07:00. 敷島のマンション 敷島孝夫&エミリー]
「おはよう・ございます」
「ああ、おはよう」
いつもの時間に起きると、エミリーはいつもの通り、朝食の用意をしていた。
昨日の如く、アリスはまだ起きていない。
先に顔を洗うことにした。
「なあ、エミリー」
「何でしょう?」
洗面所から戻ると、敷島は昨夜のことについて聞いた。
「アリスの泣き声が聞こえて来たんだが、何かあったのか?」
「ああ……その……」
「別に、聞いてどうこうするわけじゃないよ」
「ドクター・アリスが・泣かれていたのは・本当です」
「何で?」
「寂しさのあまり・時々・そうなる・そうです」
「……!?」
[2月22日02:00. アリスとエミリーの部屋 アリス&エミリー]
(尚、本来は英語で話しているところですが、日本語に訳しております)
「パパ……ママ……どうしていなくなっちゃったの……」
充電を終え、“起床時間”までスリープ状態になっていたエミリーは、アリスの声に反応して再起動した。
「シンディ……お祖父ちゃん……どうして死んじゃったの……」
エミリーは啜り泣くアリスに近寄ると、スッと抱き寄せて膝枕をした。
「何も・御心配・いりませんよ」
「シンディ……」
「私が・シンディの・代わりに・なります。どうぞ・好きなだけ・泣いて・ください」
その時、アリスの脳裏に幼い頃の記憶が蘇った。
まだ、養護施設から引き取られたばかりの頃。それでも寂しさは紛れるわけでもなく、よく泣いた。
その時、そっと寄り添ってくれたのはシンディだった。シンディもまた、エミリーと同じ言い回し(口調は違うが)で、アリスを慰めてくれたものだ。
アリスはエミリーに抱きついて、わんわん泣いた。
[2月23日07:30.敷島のマンション(ダイニング) 敷島孝夫&エミリー]
「……と・いうわけ・です」
「そ、想像できん。あのシンディが……!」
敷島にとっては、狂ったように笑って、ついには作り主を笑いながら刺し殺した暴走ガイノイドのイメージしか無いのだが……。
「敷島さんに・復讐をする為に・動いていた時は・寂しさも・忘れていた・そうですが」
「まあ、人間そんなもんだ。目標を失ったら、確かにそんな気分になるだろうな。分かったよ。まあ、とにかく、アリスを起こしてくる」
「イエス」
敷島はアリスの部屋に向かった。
「おーい、入るぞー」
敷島はドアをノックした。
「う……」
「クカー……」
前回と同じ、180度ひっくり返った体勢でいびきをかいているアリスの姿があった。
(本当に泣きじゃくったのかよ……)
まあ、エミリーが嘘をつく性格ではないというのは知っているので、本当なのだろう。
「おい、起きろよ」
敷島はアリスの肩を揺さぶった。
「うう……ん……。あ……おはようなの……」
「ああ。もう朝飯できてるから、早く起きて着替えろよ」
「OK.……シキシマ。今日はペーパー(新聞紙)丸めて叩かないの?」
「何度も同じ手使ったらウケないだろうが。じゃ、早くしろよ」
「ウケ?……何か、今日は優しいね?」
「そうか?同じ手は使わない主義なだけだよ」
敷島はそう言うと、ダイニングの方へ向かった。
「Good morning.」
アリスは立てかけているポートレートに向かって言った。
そこに写っていたのは、幼い頃の自分と一緒に写るドクター・ウィリーとシンディの姿だった。
(アタシも日本で頑張るから。絶対に見ててね)
心の中で亡き“肉親”達に言うと、アリスは着替えを始めた。
自分のことを『狂科学者(マッド・サイエンティスト)の孫娘』と呼ぶ科学者が多いのは知っている。
血の繋がりは無いが、そう呼ばれることをアリスは疎ましく思う。養祖父とて、違う形とはいえ、人類の為のロボットを作っていたのは間違いない。
(マッド・サイエンティストの孫娘じゃなく、天才科学者の祖父となるまで……ね)
『狂科学者の孫娘』 終
「おはよう・ございます」
「ああ、おはよう」
いつもの時間に起きると、エミリーはいつもの通り、朝食の用意をしていた。
昨日の如く、アリスはまだ起きていない。
先に顔を洗うことにした。
「なあ、エミリー」
「何でしょう?」
洗面所から戻ると、敷島は昨夜のことについて聞いた。
「アリスの泣き声が聞こえて来たんだが、何かあったのか?」
「ああ……その……」
「別に、聞いてどうこうするわけじゃないよ」
「ドクター・アリスが・泣かれていたのは・本当です」
「何で?」
「寂しさのあまり・時々・そうなる・そうです」
「……!?」
[2月22日02:00. アリスとエミリーの部屋 アリス&エミリー]
(尚、本来は英語で話しているところですが、日本語に訳しております)
「パパ……ママ……どうしていなくなっちゃったの……」
充電を終え、“起床時間”までスリープ状態になっていたエミリーは、アリスの声に反応して再起動した。
「シンディ……お祖父ちゃん……どうして死んじゃったの……」
エミリーは啜り泣くアリスに近寄ると、スッと抱き寄せて膝枕をした。
「何も・御心配・いりませんよ」
「シンディ……」
「私が・シンディの・代わりに・なります。どうぞ・好きなだけ・泣いて・ください」
その時、アリスの脳裏に幼い頃の記憶が蘇った。
まだ、養護施設から引き取られたばかりの頃。それでも寂しさは紛れるわけでもなく、よく泣いた。
その時、そっと寄り添ってくれたのはシンディだった。シンディもまた、エミリーと同じ言い回し(口調は違うが)で、アリスを慰めてくれたものだ。
アリスはエミリーに抱きついて、わんわん泣いた。
[2月23日07:30.敷島のマンション(ダイニング) 敷島孝夫&エミリー]
「……と・いうわけ・です」
「そ、想像できん。あのシンディが……!」
敷島にとっては、狂ったように笑って、ついには作り主を笑いながら刺し殺した暴走ガイノイドのイメージしか無いのだが……。
「敷島さんに・復讐をする為に・動いていた時は・寂しさも・忘れていた・そうですが」
「まあ、人間そんなもんだ。目標を失ったら、確かにそんな気分になるだろうな。分かったよ。まあ、とにかく、アリスを起こしてくる」
「イエス」
敷島はアリスの部屋に向かった。
「おーい、入るぞー」
敷島はドアをノックした。
「う……」
「クカー……」
前回と同じ、180度ひっくり返った体勢でいびきをかいているアリスの姿があった。
(本当に泣きじゃくったのかよ……)
まあ、エミリーが嘘をつく性格ではないというのは知っているので、本当なのだろう。
「おい、起きろよ」
敷島はアリスの肩を揺さぶった。
「うう……ん……。あ……おはようなの……」
「ああ。もう朝飯できてるから、早く起きて着替えろよ」
「OK.……シキシマ。今日はペーパー(新聞紙)丸めて叩かないの?」
「何度も同じ手使ったらウケないだろうが。じゃ、早くしろよ」
「ウケ?……何か、今日は優しいね?」
「そうか?同じ手は使わない主義なだけだよ」
敷島はそう言うと、ダイニングの方へ向かった。
「Good morning.」
アリスは立てかけているポートレートに向かって言った。
そこに写っていたのは、幼い頃の自分と一緒に写るドクター・ウィリーとシンディの姿だった。
(アタシも日本で頑張るから。絶対に見ててね)
心の中で亡き“肉親”達に言うと、アリスは着替えを始めた。
自分のことを『狂科学者(マッド・サイエンティスト)の孫娘』と呼ぶ科学者が多いのは知っている。
血の繋がりは無いが、そう呼ばれることをアリスは疎ましく思う。養祖父とて、違う形とはいえ、人類の為のロボットを作っていたのは間違いない。
(マッド・サイエンティストの孫娘じゃなく、天才科学者の祖父となるまで……ね)
『狂科学者の孫娘』 終