報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

あとがき

2013-10-16 21:00:25 | 日記
 最後まで読んで下さった方、真にありがとうございます。中途半端な終わり方になってしまいましたが、何ぶんこの程度の才能で……。
 因みに長野県が舞台になってますが、当の作者は長野県には1度しか行ったことがありません。それも、顕正会員だった頃、長野で男子部の大会が開催された時です。やれ人数の水増しやら何やらで、山門入り口さん辺りにさんざんっぱらコキ下ろされた、あの大会の時です。
 なので、ユタ達が飯田線に乗ったのを羨ましく思っています。作者の願望も入っているのですね。
 御受戒してから長野県に行かなくなったとの終わり方は、ある意味を込めたオマージュでして、どうしても御受戒してから遠出の旅行というと大石寺になってしまうものですからね。
 だけどそれは、魔女に頼らなくてもいいということでもあります。
 早く作者も幻想を追わないで、現実を直視した信仰姿勢を取れればいいんですけど。

 マリアの性格はクールで無口という設定ですが、威吹よりもセリフ多いですね(笑)。ま、ユタに気を良くして喋ったということで。

 明日からまた通常の日記に戻ります。ありがとうございました。
コメント (2)
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原案紹介 14

2013-10-16 18:15:10 | 日記
(視点は再び三人称へ)

 威吹は確信した。ユタには実は死生樹の葉は効いていないのだと。何故ならユタはバスに乗る前、生花店で花束を買い、洋菓子店でケーキを買い求めたからだ。
 車中でバスに揺られながら、威吹は意を決したかのように聞いた。
「もうユタは思い出したんじゃないのかい?」
「うん。思い出した」
 あっさり認めた。
「最初から?」
「いや、1番変だなと思ったのが、飯田線に乗ろうと言った時。何か……本来なら中央本線を名古屋方面まで行く計画だったのに、飯田線って言った理由が分かんなかった」
「そこからか……」
 そして目的地の町まで行った時、確信したという。
「あんなに苦労して魔界に行ったのになぁ……」
 威吹は残念そうな顔をした。
「いや、甲斐はあったと思うよ」
「えっ?」
「とにかく、マリアさん達に話があるんだ」
「……?」

 バスはいつもの通り、森の入口に到着する。魔道師のことだから、屋敷ごと行方をくらますことは序の口だと思ったが、そんなことは無かったようで、立て札形式の道標は健在だった。
「うへ、もう1度クイズやれって?」
「更に難しくなってる……」
 ここで1時間くらいはロスしたかと思う。

 どうにか屋敷に到着した時だった。
「ん?何か、中から音楽が聞こえない?」
 威吹が長くて尖った耳を澄まして言った。
「ピアノの音が?」
「それもあるけど……」
「あれ?こんなの、前あったっけ?」
 玄関ドアの横に、インターホンが付いていた。押すとちゃんと、ピンポーンって鳴る。
「こんにちはー」
 ドアが開くと、そこにはフランス人形達がいた。
「マリアさん、いらっしゃいます?」
 すると、人形がスーッと奥へ向かった。
「誰か歌ってるな?」
「あいつが?」
「いや、マリアさんの声でも、イリーナさんの声でもない」
 ユタ達は人形に誘われ、奥へ向かった。

「わたしは歌うの♪誰の為に♪あなたの為に♪でもわたしが1番歌いたいから♪」
 歌詞が聴き取れるくらいにまで、はっきりと歌声が聞こえてくる。
「一体、誰が歌ってるんだ?」
「ボク達以外に、来客があるのかな?」
 ドアを開けると、そこにいたのは……。
「あ、あなた達……」
 マリアとミク人形だった。

 マリアはミク人形を膝に抱いて、ソファに座った。
「少し魔力が向上したので、このコに魔法を掛けてみた。そしたら望み通り、歌えるようになったのだ」
「名実共に、ボーカロイドか」
 ユタは納得したように頷いた。
「来る度にヒヤリとさせる連中だ。ここに来たということは、死生樹の葉は効かなかったのか?」
「いや、それは効いたと思いますよ」
「ならば……」
「マリアさん達の想定通りにはいかなかっただけの話で」
「稲生よ。私が口添えするから、イリーナに弟子入りしたらどうだ?相当な魔道師になれるかもしれんぞ?」
「いえ、結構です。僕は普通の人間でいたいんで」
「それは残念だ」
「それより、気になったのはもっと別のことです」
「?」
「もともと、死生樹の葉なんてものは存在しなかったんじゃないかって」
「は?」
「どうしてそう思う?では、そこの狐妖怪が嘘情報流したというのか?」
「いや、威吹は悪くない。威吹が持って来てくれた情報は本当でしょう」
「では……」
「当初は『死んだ人を生き返らせる』という、はっきりとした内容でした。それがいつの間にやら、『悲しみを無くすだけ』という曖昧なものに変わってしまった。妖狐族に伝わる内容と、僕達が取ってきた葉っぱは別物の可能性も……」
「…………」
 マリアは、参ったような顔になった。
「おい、マリアンナ。お前が嘘情報流したのか!」
 威吹が憤慨するように言った。
「いや、私も嘘は言ってない。ちゃんと稲生氏にも、内容に沿う資料を見せた」
「それにしたって、内容がかけ離れ過ぎてる。本当は別に、あるんじゃないですか?」
「責任問題を言うなら、多分そこの妖狐にあるだろう」
「何だって!?今度は責任逃れか!」
「死生樹には、確かにある部分に死人を蘇らせる効果のあるものが存在する。それは、葉っぱではない」
「ええっ!?」
「何だ、それ!?」
「花だよ」
「花ぁ!?」
「花なんて咲いてなかったけど……。うっ、桜と同じで季節物か!?」
「季節物どころではない。100年に1度咲けばいいだけだ。前回咲いたのは10年前と聞いた」
「てことは……次に咲くのは90年後!?……僕、生きてない……」
「そこでもう1度相談だ。魔道師になれば、90年なんぞ風の一吹きだぞ?何せ師匠は概算で1000年は生きてることになるくらいだ」
「それでも、結構です」
「ユタ……」
「……そうか。やはり、葉っぱなど飲ませるべきではなかったか」
「悲しみを消す効果があるというのは本当のようですね。おかげで今、スッキリしています」
「そうか」
 それで魔界に行った甲斐はあったと言ったのか。
「何だかんだ言って、マリアさんやイリーナさんにはお世話になりましたので、お礼を……」
 ユタは花束とケーキを差し出した。
「ああ。……ありがとう」
「イリーナさんはどちらへ?」
「今は日本にいない。いつまたここに来るかも分からん。師匠には、あなた達のことは伝えておく」
「よろしくお願いします」

 珍しく屋敷の外まで、マリアが見送ってきた。
「今までありがとうございました」
「歳を取ってからでもいいので、もし魔道師になりたくなったら、いつでも訪ねてきてくれ。時と場合によっては、私が師匠になるかもしれん」
「はい。それじゃ……」
 ユタ達は屋敷をあとにした。
 見送った後で屋敷に戻るマリア。
「それにしても……」
 マリアは抱き抱えていたミク人形のぜんまいを巻いて、床に置いた。自分で床の上を歩くミク人形。
「……やっぱりあの稲生氏、ただ霊力が高いだけの人間ではないような気がする」
「ふふふ。やっぱり私の弟子ね」
「あっ」
 いつの間にか屋敷の中に、イリーナがいた。
「師匠。ヨーロッパ放浪に行ったんじゃなかったのでは?」
「気がかりなことがあって、戻ってきたのよ」
「気がかり?」
「この国でね、何かありそうな気がしてね」
「この国で?」
「まあ、たまに私の取り越し苦労ってのもあるんだけど……」
「それは何ですか?」
「まだ調査中。でも、この国の人間達も薄々気づいてるみたいだから、大丈夫なんじゃないの?」
(富士山でも噴火するのか?それとも、南海トラフ?)
「それよりこの人形、一段と可愛くなったね?」
「ああ。私の魔力というより、あの稲生氏の霊力によるものが大きい。本当に歌まで歌うようになってしまった」
「名前は何ていうの?」
「何か知らんが、『初音ミク』という名前だった」
「いい名前ね。よろしくね」
 イリーナが右手を差し出すと、小さな右手を差し出してコクコク頷くのだった。

 帰りのバスが無いので、本当に威吹に背負ってもらうユタだった。
「悪いねぇ……」
「想定内だからいいよ。ったく!葉と花を間違うなんて、笑い話にも程がある!あの魔女も、最初から花だと言えばいいものを……!」
 結局、最初から最後まで振り回されたのは威吹であったようだ。
「花だと最初から言ってたら、僕は悲しみを抱えたままだったよ。むしろ、マリアさんの優しさだったと思うね」
「ま、おかげで魔女というのがどんな奴らか分かったけどさ」
 そして、その恐ろしさも。
(今は味方になってくれたからいいようなものの、敵に回ってきたら厄介だな……)
「威吹の跳躍力で行けば、快速“みすず”に間に合うな。これで飯田まで行って、そこで1泊して、明日は特急“(ワイドビュー)伊那路”2号に乗ろう」
「……鉄道マニアの記憶も消して欲しかったかな?」
「ん?何か言った?」
「何でもなーい」
 以上がユタが顕正会を辞めてから法華講に入るまでの、不思議な不思議な体験の一部始終である。
 尚、御受戒後、ユタが再び長野県を訪れた記録は残っていない。
                                  終
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原案紹介 13 

2013-10-16 15:50:39 | 日記
(物語は威吹の視点で進む)

 ユタは鉄道マニアらしく、ホームに入線してきた電車の写真を撮っていた。ボクはそんな彼の“活動”を横目に、4人座れる向かい合わせの座席を確保した。ユタは、こういう席を好むからだ。もっとも現段階で乗客は少なく、相席を求められることは無さそうだ。
 それにしても、魔界という名の幻想郷とはよく言ったものだ。いや、幻想郷という名の魔界か。妖狐の里でも噂される“冥界鉄道公社”。今、死んだ者は三途の川を渡るのに、鉄道で向かう。それに裏技を使えば、生きている者でも乗車可能である。その裏技を、あのマリアという魔女は教えてくれた。
「ただいまー」
「いい写真撮れた?」
「まあね」
 発車時刻間際になって、ユタが戻って来た。すぐにボクと向かい合わせに座る。
 そして、古めかしいが、しかしボク達が魔界へ行く時に乗ったものよりは新しい電車は定刻に発車した。

 乗車駅から1時間ほどは乗っただろうか。流れる車窓にも飽きたユタが、鞄の中を漁った。そこから取り出したのは、ユタが『折伏理論書』と呼ぶ本だった。
「ユタ、顕正会を……あっ!」
「ん?なに?」
「……何でもない」
 ユタが朝、勤行をやっていた理由が分かった。ユタがそもそも顕正会を辞めた理由。それはユタの好きな女が死んだから。しかし今、ユタの記憶からはそれが完全に抹消され、新たに刷り込まれた記憶は顕正会と全く関係無いのだから、辞める理由も無いのだ。
「今月の誓願、まだ達成してないんだよなぁ……。いつもギリギリで、ほんと申し訳無いよ」
「あ、ああ……」
「威吹、また妖術で対象者を引っ張ってきてくれないか?」
「あ、うん。そうだね。手を打っておくよ」
「頼むよ」
 これは不正ではないのか。自分の利益の為なら不正も正に変えるのも厭わないのが、妖狐であるけれども、何かここ最近、ボクは気にするようになった。
 変わったのは仏法とやらをやっているユタではなく、ボクの方なのかもしれない。
「正攻法でやっても、誓願達成できないんだ。それじゃ先生に申し訳ない。威吹も昔は人喰い妖狐だったみたいだけど、こうして間接的にでも協力していれば、妖怪でも成仏できるよ」
 ユタは得意気に言った。……正攻法でやって達成できない数字を課す方がおかしいんじゃないのか?
「正攻法でやっても達成できない数字を課す方がおかしいんじゃないかい?」
「!?」
「!」
 そこへ、ボク達に話し掛ける男がいた。ボク達より大柄の男で、一見強面である。ボクの心の中の指摘をそのまま口にした男は、人間に間違い無いが……。
「もしかして、顕正会員?」
「そうですけど?」
「いやあ、こんな田舎の電車で顕正会員に会えるとはねぇ……」
「オジさん、誰?」
「あっ、私はね、こういう者ですよ」
 30代と思しき男は、ユタに名刺を差し出した。ボクも、それを覗き込んでみる。
『日蓮正宗○○山××寺支部法華講 男子部南関東地区東京班班長 藤谷春人』
 と、書かれていた。
「ほ、法華講員!?」
「折伏の対象者を探してるんだって?じゃあ、私がその対象者になろう」
「結構です!法華講員と話すことはありません!」
「まあ、そう言いなさんな。悪いことは言わないから。てか、キミ達は折伏の対象者を選ぶのかい?それは浅井会長の言う『大聖人様御在世の頃の信心』の精神に反すると思うけど?」
「僕、そんなこと言ってませんけど?」
 ユタは不快な顔をした。この男がユタの敵になるというのなら、排除しなくてはならないな。ボクが前に出ようとすると、電車が駅に到着した。
「ま、とにかく、まずは御挨拶だ。私も駅弁一人旅の途中でね、電話待ってるよ」
 そう言って、藤谷と名乗る男は降りていった。
「……何だアイツ」
 ユタは不快そうな顔をして、座席に座り直した。
「まあ、ユタ。機嫌直して」
 その1年後、ユタがあの男の紹介で法華講に行くことになるとは、この時はまだ想像もしていなかった。

 それから更に1時間経って、電車はユタの目的地に着いた。
「何だろうね。この町、来たことあるような気がする」
「そ、そう?」
 ユタの言葉にボクはびっくりした。
「まあ、どこにでもある田舎町の風景だもんね」
「いや……。確かそこに、花屋さんがあって、向こうにはケーキ屋さんがあったはずだ」
「ギクッ……!」
 おいおい!あの死生樹の葉、ちゃんと効いてるんだろうな!?
「何だろう?デジャヴ……?」
「ど、どうだろうね?」
 ユタは駅前ロータリーのバス停に向かった。
「奥ノ森行き……1日2本のバス……」
「ゆ、夢でも見たんじゃない?」
「このバス、乗ってみたいな」
「で、でも、時間がだいぶ……」
「これくらい平気で待たなきゃ、“乗り鉄”失格だよ」
 電車ならまだしも、バスだぞ……。
「ユタ、やめようよ。帰れなくなっちゃうよ」
 するとユタは、ボクの目を覗き込んだ。妖怪の目を覗き込むのは、やめた方がいい。特にボクのように妖術を使う妖怪だと、目を合わせると妖術を掛けられる恐れがある。
 ユタはそれを知っているはずなのに、ボクの目を覗き込んだ。だけど、ボクは妖術を掛けることはできなかった。掛けてはいけないと、心の中に警鐘が鳴った。
「威吹にしては、弱気な発言だね。キミは江戸時代、どこへでも歩いて移動したんでしょ?」
「そりゃそうだけど、ほら、まだ雪が積もってるし……」
「威吹がいてくれれば大丈夫だと思ったんだけど……」
「う、うん。まあ……」
「いつものキミなら、『大丈夫。その時はボクがおぶって戻るから』って言ってくれると思ったんだけどね」
「ボクはいいけど、ほら、山の天気は変わりやすいから。吹雪いてきたりしたら大変だ」
「キミ、前に『雪女も雪男も、妖狐のボクには恐れるに足らず』と言ってなかったかい?」
「ボクはいいけど、誰かを守りながらの戦いは結構大変だからね」
「行きのバスは14時16分か。先にお昼を食べよう」
「ユタ!」
「それとも……。あっ、あの踏切!絶好の撮影ポイントだなー!」
 一体、ユタはどうしたのだろう?本来のユタだって、“乗り鉄”は観光なんかしないって言ってたのに……。
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