報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

原案紹介 8 取りあえず今日はここまで

2013-10-12 19:31:11 | 日記
 ユタが人形達に連れて行かれた部屋は、いかにも拷問部屋といった感じの部屋だった。入口は1階にあって、ドアを開けると地下に続く階段がある。そこを降り切ると、“鉄の処女”とか、ギロチンなんかが置いてあった。つまり、1階からの吹き抜けになっているのである。
「死にたいのなら、ここで死ね」
「な、何故だ!?」
「ここで死んでも、お前の死体は見つからない。つまり、行方不明のままだ。永久に、ずっと……。お前の周りの人間は、北朝鮮に拉致されたとでも思うだろう。もしくは、あの妖怪が疑われるだろうな」
「そんな……!」
 ユタは人形達によって吊るされた。
「では、実験を始める。人形にされたいか、人形にバラバラにされたいか、好きな方を選べ」
「どっちも嫌だ!」
 ユタが叫び声を上げると、
「待てーっ!」
 威吹が飛び込んできた。
「ユタを返せ!」
 持っていた刀をマリアに向けて振るうが、素早く移動してきた人形に妨げられた。
「いいタイミングでやるなぁ……。妖怪の分際で」
 マリアは意外そうな顔をした。
「ほざけ!」
 威吹は人形の攻撃を交わしながら、ユタを吊るしているロープを切り落とした。
「ちょうどいい。では、そこの妖怪。お前も実験台になるか?2人一緒なら怖くないだろう?」
「バカ言うな!」
「そうか?私なら、どんな辛いことでも2人一緒なら大丈夫だったけどな」
「それって、アンジェラさんって人のこと?」
 ユタが言うと、マリアの顔色が変わった。
「僕の身の上話を聞いたんだ。今度はマリアさんの身の上話を聞かせてくださいよ!」
「黙れ!」
「オレはお前の弱点を見切ったぞ。そこを突かれる前に、降伏したらどうだ?」
「行けっ。殺していい」
 マリアは憮然とした顔で、人形達に命じた。人形達が威吹に向かっていく。
「威吹!」
「はぁッ!」
 威吹は素早い動きで人形達の攻撃を交わした。
(分身の術!?)
 というより、残像を残す妖術といった方がいいか。人形達は残像に惑わされ、威吹本体を攻撃することができない。
 そして、マリア本人に近づく。
「ぐっ……!」
 そして、刀の切っ先を喉元に当てた。
「あんたが男の魔法使いだったら、殴り飛ばすところだが、女は殴れない。だけど、オレの勝ちだな」
 人形達が遠巻きにして威吹に武器を向けるが、それ以上何もできなかった。
「こりゃ一体、どういうことなんだ?」
 ユタも慣れたもので、威吹から離れていると逆に人形達に人質にされかねない為、威吹に近づいていた。
「この女は魔術で人形達を操っているのは知ってるだろう?」
「ああ」
「魔術を使っている間、この女は何もできないんだよ」
「……どうして分かった?」
「あんたが強い魔道師だというのは分かった。でもその割には、人形達があんたを物々しい雰囲気で護衛してるのが気になったんだ。これはもしかしたら、あんた自身には戦う力も守る力も無いんじゃないかって思った。だから、人形に護衛させてたんじゃないかなって……。当たったようだ」
「ちっ。ご名答。それならこの刃物で、早く首を刎ねろ。妖狐達の掟にあるんだろう?『負けた者は全てを失う』と」
「確かにそうだが、それは命を賭けた男同士の戦いでのこと。女にはそれは適用されん」
「ふん……」
「それに、あんたが悪い魔道師だとも思えないんだ。あんたがユタを殺そうしたのは、ユタがコソ泥をしようとしたからで、それ以外に理由は無いんだろう?」
「そうだが……」
「いい加減、ユタの望む通りにしてやってくれ。頼むよ」
「ふっ……ふふふふふ……ははははははははは!」
 すると、マリアが笑い出した。
「何がおかしい?」
「おかしいに決まってるだろう。お前も所詮、そこの人間を殺すつもりだとはな……」
「何だと?」
「一人前の証として“笑い”を捨てたはずだが、どうやら『バァさん』が甘かったようだ。いいだろう。教えてやる。2人仲良く“幻想郷”で死にな」
「なにっ、幻想郷!?」
「?」
 
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原案紹介 7

2013-10-12 18:10:49 | 日記
 マリアが寝ているとされる部屋は、朝日の差し込む明るい部屋だった。先日の応接室といい、魔道師の割には明るい所を好むようである。そして彼女はそこにいた。応接室にあったソファとよく似た所に仰向けになっており、その周りを武器を持った人形達が護衛していた。
「まだ寝てるじゃないか。……ってか、生きてる……よな?」
 目を閉じているお人形さんみたいだ。だが近づこうとすると、護衛の人形達が一斉にその刃の切っ先をユタに向けた。
 離れると、また武器の位置を元に戻す。で、また近づくと切っ先を一斉に向ける。しかし、部屋から退出は求められなかった。ミクも後ろで見ているだけである。とはいえ、さすがに魔道師とはいえ、若い女性が寝ているというのに同室するわけにはいかないだろう。挨拶しようと思っていたので、起きるまで別の部屋で待っていようかと思った。
(昨日の応接室辺りでいいかな?)
 そう思った時、マリアが声を上げた。
「うう……アンジェラ……どうして……」
「!」
 振り向くとマリアは苦悶の顔を浮かべ、両目から涙を流していた。
「あ、あの!」
 心配になって駆け寄ろうとしたが、また人形達が武器をユタに向けた。
「はっ……!」
 そこへようやくマリアが目を覚ました。
「あ、あなた……!」
「大丈夫ですか、マリアさん?」
「私は何か言ってたか?」
「アンジェラさんって、お友達か何かですか?」
「……朝になったんだ。さっさと帰れ」
「昨日の死生樹のことは教えてもらえませんか?」
「教えないと何回言ったら分かるんだ」
「……すいません。お世話になりました」
 ユタは素直に頭を下げて、屋敷をあとにした。

 ……はずだったが、何故かその姿は屋敷の外周にいた。
「あの資料室、絶対怪しい。あの中に、絶対死生樹のことについて書かれた本があるはずだ」
 魔道書はユタが見たって分からないはず。なのでユタが入ったところで、痛くも痒くも無いはずである。それなのに、どうして人形はユタを追い出して鍵を掛けたのか。人形を操っているのは、マリア自身である。
 ユタは自分が寝泊りした部屋に向かった。もう後片付けされたのか、そこに人形達の姿は無かった。
「……よし」
 窓は施錠されていなかった。昨夜窓を開けた時、鍵を掛けた記憶が無かった。ユタはその窓から侵入した。
 そっと足音も立てず、例の資料室に向かう。昨夜はあれだけいた人形達だったが、嘘みたいに今はいない。
 魔道師の屋敷だから、屋敷の構造が変わっていたり……なんてことを考えていたが、意外とそうでもないようだ。
 そして、ユタは例の資料室の前にいた。やはり鍵が掛かっていたが、こんなこともあろうかと、実は昨日、威吹からピッキング用の金具をもらっていた。威吹は剣客だが、妖狐の中には盗賊として活躍する者もいて、同族同士、ギブ・アンド・テイクでやることもあるという。見た目はただの針金だが、それを鍵穴に差し込むと……。
(開いた!)
 カチッという音がして、鍵が開いた。そして、そっと中に入る。昨夜と変わらぬ資料室の風景。ユタは急いで、死生樹に関する資料を探した。
(おおっ、あった!)
 こりゃまた意外にも簡単に見つかった。よしよし。これを持って……。
 その時、部屋の外で大型バイクのエンジンのような音が聞こえた。
「わあっ!?」
 びっくりして振り向くと、そこには大型のチェーンソーを持ったミク人形が目を光らせてユタを見ていた。
「私の目が節穴だったのか?まさか、コソ泥だったとは……」
「ま、マリアさん……」
 マリアは侮蔑と自嘲をごちゃ混ぜにした顔で、ユタを見据えた。彼女の周りにはミク人形の他に、大きな刃物を持ったフランス人形が3体ほど宙を舞っていた。
「お前……よほど死にたいようだな?」
「それくらいの覚悟はあります!だから、死生樹の行き方を教えてください!」
「ダメだ」
 マリアは周りにいた人形達に目配せすると、ユタを取り押さえた。テディベアくらいの大きさしか無いのに、物凄い力だ。
「お前は魔術の実験台にする。連れて行け」
「ちょ……冗談でしょ!?」
「素直に帰れば良かったものを……。愚かな人間め」
 ユタは人形達に引きずられ、屋敷の奥へ連れて行かれた。
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原案紹介 6

2013-10-12 14:01:17 | 日記
 初音ミクにフランス人形の衣装を着せたような人形に誘われ、入った部屋はホテルのシングルの部屋を簡素化したような造りだった。しかし、小ぎれいに手入れはされていた。この人形達は喋ることはないし、人形なので表情を変えることもない。但し、初音ミクのような人形だけはぜんまいが動いて、表情を変えた。しかし、喋ることはない。あくまで、ジェスチャーでユタに何か伝えるのみ。
 しかし、こうやって客室を用意しているということは、やはり訪問者を想定しているということか?
「好きに使っていいんだね?」
 便宜上、初音ミクに似た人形にそのままミクと名付けたユタ。ミクは更に部屋備え付けのシャワーとトイレのドアを開けた。
「ここも使っていいということか」
 それから、クロゼットの中を開ける。そこに置かれていたのは、A3サイズくらいの鏡。これを持った。
「ん?鏡がどうしたの?」
 ユタの顔を映していた鏡だったが、それが黒くなる。そして、そこにマリアが浮かび上がった。
「言い忘れていたことがある」
「な、何でしょうか?」
「屋敷の中は、自由に歩いて構わない。但し、鍵の掛かっている部屋には入らないように」
「は、はい」
「調度品なども自由に使ってくれ。但し、あなたの世話をする人形も含めて、全ての人形を粗末に扱ったりしたら……この屋敷からは生きて出さん」
「わ、分かりました!」
 ユタが大きく首を縦に振ると、鏡はまた元の鏡に戻った。
「まるでタブレットみたいだなぁ……」
 しかし、要は関係者以外立入り禁止箇所と、人んちの物は丁寧に扱えというごく最低限のことさえ守ればそれでいいということだろう。

 しばらくすると、夕食が運ばれてきた。
「あれ?ここで食べていいの?」
 ミクはこくこくと頷いた。
「マリアさんのは……。あ、そうか。いいのか」
 魔道師は何も食べなくても平気である。
(威吹、心配してるだろうなぁ……)
 食べている間、そう思う。この屋敷は……森全体がそうなのだが、ケータイは完全に圏外である。
 ユタは夕食を食べ終わった後、観音開きの窓を開けてみた。3月の長野県はまだ寒く、開けると冷気が入って来た。ということはこの屋敷、集中式の暖房でも入ってるのか?見たところ暖房機は見当たらないが、とても暖かい。
「おーい、威吹!」
 外に向かって威吹を呼んで見た。他の季節なら虫の鳴き声でも聞こえてくるのだろうが、まだ雪が降り積もる時季とあっては、シンと静まり返っている。
「……屋敷から離れた所にいるのかな?」
 ユタは首を傾げて窓を閉めた。
(まだ寝るには早いな……)
 屋敷の中を出歩いても良いということなので、そうさせてもらうことにした。

 廊下などには所々ランプが灯っているものの、やはり薄暗い。そもそも住人がマリア1人というだけでは、照明も必要無いのだろう。
(ホラーだったら、ゾンビとか出てきそうだなぁ……)
 ゾンビの代わりに寝転がったり、歩いたり、飛んだりしているのは人形達である。
「ん?資料室?」
 あるドアの前に来た。何故かそのドアには日本語で、『資料室』と書いてある。ドアノブを回してみると、ドアが開いた。
(資料室というより、図書室だな……)
 そう思うほど大量の本が保管されていた。全てが魔道師の……魔法に関わる本なのだろう。
「うわっ!?」
 手近にあった本を1冊取ろうとすると、後ろから右肩を掴まれた。振り向くと、そこには鉄製の警棒のようものを持ったフランス人形がいた。そして、クイクイと廊下の外を指差す。出ろということか。
「す、すいません」
 ユタはそそくさと部屋の外に出た。人形はそれを確認すると、ドアを閉めて鍵を掛けた。
「はー、びっくりした……」

 他にもダンスホールみたいな所もあって、そこでは人形がピアノを弾き、それに合わせて他の人形達が社交ダンスを踊るようなこともしていた。正に、人形の館である。
 この屋敷に、自分の居場所は無いと判断した。なので、早々に部屋に戻ることにした。
「やっぱり今日は早く寝た方が良さそうだ」
 明日中に戻らないと、威吹が屋敷に放火しそうで怖い。

 翌朝……。適当な時間に目が覚めて、朝の身支度を整えていると、人形達が朝食を運んできた。これを食べたら、マリアに挨拶して行こう。今の状態では、何をどう言っても教えてくれそうにない。
 しかしユタは、マリアが全てを話してくれたようには見えなかった。
「あのさ、この後、マリアさんに挨拶したいんだけどいいかな?」
 ユタはミクに聞いてみた。ミクは頷いた。
 朝食を食べ終え、ミクの案内でマリアの部屋まで行ってみる。
「もう起きてるよね?」
 ミク人形は肩を竦めた。
「知りませーん」
 ということか。屋敷の主人の部屋らしく、入口には死神の鎌のようなものを持ったフランス人形が両脇に立っていた。ミクが一緒だったおかげで、その人形達に鎌を振り落とされずに済んだ。
「失礼します」
 入ってみると、そこには……。
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原案紹介 5

2013-10-12 13:32:40 | 日記
 魔女……もとい、魔道師のマリアがユタにしてきた質問。それは……。
「その死生樹の葉を使って、誰を生き返らせるつもりだ?」
 という、ごく一般的な質問だった。
 だからユタは素直に答えた。自分の身の上話も交えて……。
「僕には好きなコがいまして……」
 ユタの話に耳を傾けるマリア。そして、
「つまり、そのコを生き返らせたいというわけだな?」
 一通り話を聞き終えると、まとめるように確認してきた。
「そうです。そうなんです!だからどうか、教えてください!」
 するとマリアは、少し哀れむような顔を浮かべた。
「あなたは、死生樹のことを本当に分かっていない。あの妖怪に、何を吹き込まれたのかは知らんが……」
「えっ?」
「あなたは悪い人間ではなさそうだ。だから、教えられない」
「えっ!?何故ですか!?」
「あなたがあの妖怪と結託して、私を倒そうという魂胆ならば、教えてやっても良かった。だが、あなたはいい人間だから却って教えられない。以上だ」
「そ、そんな……!どうしていい人間だとダメなんですか?」
「悪い人間は成敗したいと思わんか?」
「えっ?そ、そりゃあ……。でも、それとこれとどういう関係が……!?」
「その死生樹の葉を取りに行った人間は、誰1人としてこの世に戻って来た者がいないからだ。この世から消したい悪い人間になら教えるが、あなたはいい人間だから消すのは惜しい。だから、教えられない」
「そ……それじゃ意味が無い」
「死んだ人間を生き返らせたい。今までどれほど多くの残された人間が、そう思ったのやら……。もっとも、私もその1人だったがな」
「えっ!?それじゃ、マリアさんが魔女……じゃなかった。魔道師になったのは……」
「いや、それとこれとは違う。とにかく、普通の人間が取りに行くのは不可能だということだ。これだけ理解すれば良い」
「本当に何も無いんですか!?何か1つでも無いんですか!?」
「食い下がるな。無いものは無い」
「僕の命と引き換えでいいです!」
 するとマリアは、フッと嘲笑めいた笑みを浮かべた。
「あなたが好きだったコは、あなた以外にも死んで悲しんだ人間がいただろう」
「もちろんです!その人達の為にも……」
「同時に、あなたが死んで泣いてくれる人間はいないのか?少なくとも、あの妖怪は泣いてくれそうだがな」
「そ、それは……」
「とにかくだ。どんな方法を取ろうが、死に行くであろう人間を引き留めたくなるのは人情だろう。私もまだ18歳で魔道師になってから、たったの5年だ。まだ少し、人の感情が残っているのだろうな」
「もう1度出直します!マリアさんは絶対に知ってるはずなんです!」
「どう思おうが勝手だが、今は帰らぬ方がいいぞ」
「どうしてですか?」
「外を見てみろ」
「えっ?」
 ユタは外を見てみた。いつの間にか外は暗くなっていた。
「あれ!?」
「あなたの身の上話、面白かった。だが、あまりに長い話で日が暮れたようだ」
「そ、そんなに!?」
「暗い森の中、どうやって帰るつもりだ?私は森の外まで送るつもりは無いぞ」
「ああ、威吹が待ってますから……」
「遠慮はいらん。明日の朝まで、泊まっていっていい」
「えっ?」
「広い屋敷だ。空いてる部屋を好きに使ってくれて構わない。案内は私の人形達に任せよう」
 すると応接室の中に入って来たのは、威吹が壁に叩きつけた初音ミクみたいな人形だった。よく見ると、この人形の背中にだけぜんまいが付いている。他のフランス人形には、何も付いていないのだが……。
「明日の朝まで、この人形達の案内に従ってくれればいい」
「あ、ありがとうございます」
 部屋を出ようとする時、マリアはこう言った。
「死んだ人間の後追いはやめることだ。後を追っても、追いつくことはないから」
「は?はあ……」
 
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