“ボーカロイドマスター”より。『もう1人のターミネーチャン』一部抜粋
鏡音レンがさらわれた!
リンが事務室に飛び込んで来た。
「ほんの一瞬だけど緊急SOS信号が飛んできて、しかもその後全く交信できなくなったんだってば!」
リンが悲痛な叫びを上げる。
「マジかよ!?」
敷島はPCを操作した。GPSまでは破壊されておらず、高速度で移動しているのが分かった。
「飛行機で移動しているのか!?」
だが、そこへやってきたエミリーが険しい顔をしていた。
「シンディ・です。あいつしか・考えられません」
「ウィリーの奴、ついに実力行使に来たか!……で、もう1人のターミネーチャンが来たということは……もうダメだな……」
「うわぁぁぁん!!」
敷島の絶望的な言葉に、リンが泣きじゃくる。慌ててMEIKOが抱き寄せ、ルカが敷島に抗議した。
「プロデューサー、何てこと言うんです!」
「いや、だって本当のことだろうが!財団事務所まで襲撃されて、何体の試作機が破壊されたと思ってるよ!?」
「御心配・いりません。私が・必ず・救い出します」
「大丈夫なのか?」
「ん……」
レンが再起動する。自動復元されたメモリーによると、確か金髪のサイドテールをしたガイノイドに電気ショックを与えられて、シャットダウンしたのだった。
「どう?気分は?」
「エミリー姉ちゃん!?これは何のつもりだ!?……って、あれ?エミリー姉ちゃん……じゃない?」
「はい、ブブーッ。でもね、当たらずも遠からずではあるね。髪の色も髪型も違うけど、顔は同じだし、スペックも全部同じだからね。間違うのも無理無いね」
レンは両手に手錠をはめられている。
「思い出したぞ。確か、ドクター・ウィリーの所の……シンディ!?」
「はい、正解。ハワイにご招待しようかしら?」
「ボクを壊すのか!?」
「んー、そうしてもいいんだけど、あいにくとドクターからそういう命令は受けてないんだよね~。まあ、キミが抵抗したから壊したってことにしてもいいんだけどォ~……」
「エミリー姉ちゃんが助けに来てくれるさ!」
「そうね。エミリー姉さんなら、必ずここに来るわね。何てったって、『ターミネーチャン』だから」
「姉さん!?」
「私は同じ設計図から作られた、言わばキミ達と同じ双子。もっとも、キミ達は姉弟だから男女の違いによる設計差はあるけどね、私達は全く同じなの」
「ボクを人質に取って、エミリー姉ちゃんを破壊するのか?」
「そういう命令もあるにはあるんだけど、私にとってもハイリスクなんだよね、それ。まだ姉さんが来るまで時間があるから、私と少しお話しようか」
「……ウィリーの手先と話すことなんて無いよ」
「そんなこと言わないで。そもそもさ、どうしてエミリーを破壊するのに人質が必要だったにしても、キミをさらったと思う?誰でもいいわけじゃん、人質なら?はい、シンキングターイム!いい答え考えて~」
「MEIKOりんやルカ姉ちゃんはそこそこ強いし……」
「はい、ブブーッ。キミじゃないとダメな理由があるの」
「ぼ、ボクが!?」
「そう。……前にキミ、うちのドクターから失敗作呼ばわりされたんだってね?」
「ああ……」
「ドクターね、あの言葉を反省してるのよ。結構見てたらキミ、優秀作じゃないかって」
「何を今さら……」
「だよね。でね、そのお詫びも兼ねて、うちの研究所に来ないかって」
「は!?」
「うちのドクターなら、もっとキミを使いこなすことができるっていうのね」
「お断りだ!ウィリーなんかの手先になれないし、皆を裏切るなんてできない!」
「でもね、キミが断ったら、ここにリンちゃんの首を持って来させろって、変な命令なのよ」
「な、なに……!?」
「確かに私の力なら、リンちゃんの首と胴体を引きちぎることなんて簡単だからね、ドクターの勧誘を断った大罪として、リンちゃんの首を……」
「や、やだ!やめてくれ!壊すなら、ボクを壊せ!」
「まあ、落ち着いて。そもそもさ、レン君だけってのが無理なんだよね。だってさ、鏡音リン・レンで一対じゃない?どっちか片方だけなんてさ……。ドクターはレン君だけって言ってるけど、私はそうじゃないと思うのね。私だって敵対しているとはいえ、“姉機”がいるわけだから、少しはキミの気持ちも分かるのよ」
「えっ……?」
「リンちゃんをここに連れてきてあげる。もちろん、無傷でね。お姉ちゃんと一緒ならいいでしょ?ドクターには、私から言っておくから」
「そ、それは……」
「はい、再びシンキングタイム!よく考えて~。リンちゃんの首だけがここに来る方を選ぶか、無傷の五体満足でここに来る方がいいか?2つに1つだよ?」
「ぼ、ボクは……」
だが、シンディは急に眉を潜めて、後ろを振り向いた。
「チッ。もう来たのか。せっかちな女だね~」
建物の壁を破壊して、飛び込んできたのはエミリーだった。
「鏡音レン・そいつの話を聞くな!シンディ!鏡音レンを・惑わすな!」
「え、エミリー姉ちゃん!!」
エミリーは既に右手をマシンガンに変形させていた。
「鏡音レンを・返してもらう!」
「はー、やれやれ……。めんどくさい命令だけど、やるかぁ~。エミリーの破壊命令」
気だるそうにシンディはエミリーと正対した。
鏡音レンがさらわれた!
リンが事務室に飛び込んで来た。
「ほんの一瞬だけど緊急SOS信号が飛んできて、しかもその後全く交信できなくなったんだってば!」
リンが悲痛な叫びを上げる。
「マジかよ!?」
敷島はPCを操作した。GPSまでは破壊されておらず、高速度で移動しているのが分かった。
「飛行機で移動しているのか!?」
だが、そこへやってきたエミリーが険しい顔をしていた。
「シンディ・です。あいつしか・考えられません」
「ウィリーの奴、ついに実力行使に来たか!……で、もう1人のターミネーチャンが来たということは……もうダメだな……」
「うわぁぁぁん!!」
敷島の絶望的な言葉に、リンが泣きじゃくる。慌ててMEIKOが抱き寄せ、ルカが敷島に抗議した。
「プロデューサー、何てこと言うんです!」
「いや、だって本当のことだろうが!財団事務所まで襲撃されて、何体の試作機が破壊されたと思ってるよ!?」
「御心配・いりません。私が・必ず・救い出します」
「大丈夫なのか?」
「ん……」
レンが再起動する。自動復元されたメモリーによると、確か金髪のサイドテールをしたガイノイドに電気ショックを与えられて、シャットダウンしたのだった。
「どう?気分は?」
「エミリー姉ちゃん!?これは何のつもりだ!?……って、あれ?エミリー姉ちゃん……じゃない?」
「はい、ブブーッ。でもね、当たらずも遠からずではあるね。髪の色も髪型も違うけど、顔は同じだし、スペックも全部同じだからね。間違うのも無理無いね」
レンは両手に手錠をはめられている。
「思い出したぞ。確か、ドクター・ウィリーの所の……シンディ!?」
「はい、正解。ハワイにご招待しようかしら?」
「ボクを壊すのか!?」
「んー、そうしてもいいんだけど、あいにくとドクターからそういう命令は受けてないんだよね~。まあ、キミが抵抗したから壊したってことにしてもいいんだけどォ~……」
「エミリー姉ちゃんが助けに来てくれるさ!」
「そうね。エミリー姉さんなら、必ずここに来るわね。何てったって、『ターミネーチャン』だから」
「姉さん!?」
「私は同じ設計図から作られた、言わばキミ達と同じ双子。もっとも、キミ達は姉弟だから男女の違いによる設計差はあるけどね、私達は全く同じなの」
「ボクを人質に取って、エミリー姉ちゃんを破壊するのか?」
「そういう命令もあるにはあるんだけど、私にとってもハイリスクなんだよね、それ。まだ姉さんが来るまで時間があるから、私と少しお話しようか」
「……ウィリーの手先と話すことなんて無いよ」
「そんなこと言わないで。そもそもさ、どうしてエミリーを破壊するのに人質が必要だったにしても、キミをさらったと思う?誰でもいいわけじゃん、人質なら?はい、シンキングターイム!いい答え考えて~」
「MEIKOりんやルカ姉ちゃんはそこそこ強いし……」
「はい、ブブーッ。キミじゃないとダメな理由があるの」
「ぼ、ボクが!?」
「そう。……前にキミ、うちのドクターから失敗作呼ばわりされたんだってね?」
「ああ……」
「ドクターね、あの言葉を反省してるのよ。結構見てたらキミ、優秀作じゃないかって」
「何を今さら……」
「だよね。でね、そのお詫びも兼ねて、うちの研究所に来ないかって」
「は!?」
「うちのドクターなら、もっとキミを使いこなすことができるっていうのね」
「お断りだ!ウィリーなんかの手先になれないし、皆を裏切るなんてできない!」
「でもね、キミが断ったら、ここにリンちゃんの首を持って来させろって、変な命令なのよ」
「な、なに……!?」
「確かに私の力なら、リンちゃんの首と胴体を引きちぎることなんて簡単だからね、ドクターの勧誘を断った大罪として、リンちゃんの首を……」
「や、やだ!やめてくれ!壊すなら、ボクを壊せ!」
「まあ、落ち着いて。そもそもさ、レン君だけってのが無理なんだよね。だってさ、鏡音リン・レンで一対じゃない?どっちか片方だけなんてさ……。ドクターはレン君だけって言ってるけど、私はそうじゃないと思うのね。私だって敵対しているとはいえ、“姉機”がいるわけだから、少しはキミの気持ちも分かるのよ」
「えっ……?」
「リンちゃんをここに連れてきてあげる。もちろん、無傷でね。お姉ちゃんと一緒ならいいでしょ?ドクターには、私から言っておくから」
「そ、それは……」
「はい、再びシンキングタイム!よく考えて~。リンちゃんの首だけがここに来る方を選ぶか、無傷の五体満足でここに来る方がいいか?2つに1つだよ?」
「ぼ、ボクは……」
だが、シンディは急に眉を潜めて、後ろを振り向いた。
「チッ。もう来たのか。せっかちな女だね~」
建物の壁を破壊して、飛び込んできたのはエミリーだった。
「鏡音レン・そいつの話を聞くな!シンディ!鏡音レンを・惑わすな!」
「え、エミリー姉ちゃん!!」
エミリーは既に右手をマシンガンに変形させていた。
「鏡音レンを・返してもらう!」
「はー、やれやれ……。めんどくさい命令だけど、やるかぁ~。エミリーの破壊命令」
気だるそうにシンディはエミリーと正対した。