日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

大阪市立東洋陶磁美術館特別展「安宅英一の眼」へ

2007-08-20 15:20:36 | 音楽・美術
大阪市立東洋陶磁美術館で開館25周年記念特別展「安宅英一の眼」が催されている。この美術館の名前は今年2月に訪れた台北故宮博物院での北宋汝窯特別展にその所蔵品が何点か参考出品されていたので知っていた。大阪市中之島中央公会堂の向かいにあるこの美術館に夏の一日、厳しい残暑を押して出かけた。

安宅コレクションの所蔵で有名であるが、パンフレットはこのように説明している。

《安宅コレクションとは、かって日本の十大商社の一つであった安宅産業株式会社が、事業の一環として収集した約1000点におよぶ東洋陶磁コレクションです。》

《安宅コレクションの母体である安宅産業は昭和52年、事実上の崩壊に追い込まれました。幸い、安宅産業の主力銀行であった住友銀行を中心とする住友グループ21社によって、コレクションは大阪市に寄贈され、散逸を免れることができました。大阪市はそれを受けて昭和57年、大阪市立東洋陶磁美術館を設立しました。》

この美術館の成り立ちの経緯がよく分かる。

中途半端な収集ではない。今回は特別展ということで、惜しげもなく展示された国宝2点と重要文化財12点の素晴らしさにはただただ圧倒されてしまう。コレクターの安宅英一氏は安宅産業のオーナー社長であったのだろうか。戦前ならともかく戦後にこれだけ収集をやってのけたとは気宇壮大な方である。『収集』と『会社崩壊』の因果関係を私は知らないが、会社を潰してでもの意気込みを私は感じてしまった。

この東洋陶磁美術館の建物はこぢんまりとしていて、中にはいるととてもアットホームな感じがする。感心したのは青磁の色が最も美しく見えるように、と自然光で照明する特別な仕掛けの展示室を一室設けていることである。確かに自然光の暖かみと柔らかさがいい。展示品はすべてガラス越しに鑑賞することになるが、反射を可能な限り抑えるためにこの展示室ではよく磨かれたガラスが使われているとのことであった。

これはすべての展示室でそうであるが、ガラスに沿ってちょうど適当な高さに木製の手すりのようなものが張り巡らされている。他の人への気配りさえ忘れなければ、ここに肘をついて気に入った展示品をゆっくりと思う存分鑑賞できるのが素晴らしい。大阪市はいいこともしているんだな、とふと思った。

国宝の一つが関白秀次の許にあったと伝えられる油滴天目茶碗で、もう一つが飛青磁花生、ともに中国からの輸入品であろう。この2点が並べておかれている。眺めているとうっとりとしてきた。大阪市長にでもなれば、この茶碗でもてなして貰えるのだろうか。

途中でボランティアの女性が説明して廻る一群に合流した。要領を得た説明でとてもいい勉強になった。そのあとで見逃したものやらもう一度見たいものの所に戻ったが、入館者もほどほどで自由に動き回れたのがよかった。休憩場所も何カ所かにあり坐っているとついうとうと、一時のまどろみをとても贅沢に感じた。

追加(8月20日)
美術館ホームページで割引券をプリントして持参すると800円の入場券が650円になる。