Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
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誘拐ラッシュ

2005-12-07 02:09:34 | 中東
また誘拐された。。。今度はアメリカ人だ。

これでここ10日の間にイラクで誘拐され人質となった外国人は7人になった。その国籍はフランス、カナダ、ドイツ、イギリス、職種も警備コンサルタント、平和運動家、エンジニアなど多岐に及ぶ。まさに誘拐ラッシュである。

誘拐は、僕ら報道者にとっても一番の脅威だ。

銃撃戦などの戦闘状態はまだいい。経験をつめばある程度どう行動すればいいかわかるようになるし、運悪く弾に当たったり爆撃に遭遇しても、特に僕だけが狙われたというわけではないし、取材に対してそれなりの覚悟もある。

しかし誘拐は違う。自分自身がターゲットになるのだ。自分の知らないところで行動を監視され、隙のあるところで襲われる。前線のはっきりしている戦闘と違って、アパートや、タクシー乗車中、通りや市場のなかなど、誘拐はどこでもおこり得るし、犯人となる相手もまったく見えないので疑心暗鬼に陥ってしまう。

だからそれを完全に防ごうと思うなら、警戒の厳重な宿泊地に閉じこもっているか、外出するとしても何人もの武装ガードマンを連れて行かなくてはならなくなる。結局こんな状態ではろくな取材などできやしないし、写真撮影などなおさらだ。一週間前の僕のバズラでの滞在もほぼこんな感じだったので、欲求不満ではちきれそうになったのだ。

誘拐は、実際に政治、宗教的に頭のガチガチになった過激派の手で直接行われる場合もあれば、単に金目当ての盗賊の類いが手を下す場合もある。盗賊の場合は、誘拐した人質を過激派に売りつけて金儲けをしようとするので、人質が売られていく前に救出しなくてはならない。人質が過激派上部の手にわたり、ビデオが撮られテレビで放映される段階まで進んでしまうと、交渉が難しくなってしまうからだ。

手遅れになる前に内密に釈放交渉する場合や、身代金目当ての裕福なイラク人誘拐などのケースはまず報道されないので、僕らがニュースで耳にするよりも実際におこっている誘拐事件数は遥かに多いのだ。

2003年のバグダッド陥落以来、イラク国内での誘拐事件は数千件といわれているが、外国人の誘拐が200件以上、そのうちおよそ50人が殺されている。

人質になってしまった彼等が、無事に釈放されるよう心から願う。。。


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明日、ロンドン経由の飛行機でシカゴに戻ります。