Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
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カトリーナの傷跡

2005-12-15 15:18:57 | 北米
ルイジアナ州のバトンルージュにやって来た。

とはいっても、バトンルージュの宿がどれも一杯だったので、そこからさらに車で45分程西にいった小さな街のホテルに泊まっている。

この地を訪れたのは、ハリケーン・カトリーナの取材以来だ。

今回の取材はハリケーンとは関係ない石油問題プロジェクトの一環なので、ニューオリンズに立ち寄る機会はないだろう。それでも、被災し家を失い、帰る場所をなくした人々はいまだに多数存在している。そんな被災者たちは、バトンルージュを含めたニューオリンズ近郊の街で、いまだにホテル暮らしを強いられているのだ。

バトンルージュの宿がみな一杯だったのも、そんな理由があったのだ。

夕食を食べようと、近くにあったシーフードレストランに立ち寄った。

こじんまりとした作りの店には、僕の他に客は一人だけ。中年男性がだまって食事をとっていた。

食事を待っている間、店のオーナーである女性と話をした。

この夏まで店はニューオリンズの南部海沿いにあったという。親子3代続いていた老舗のレストランだったそうだ。

カトリーナが上陸し、付近にあった建物とともに、このレストランも全壊した。

レストランは再建されたが、土地も変わり、建物も変わってしまった。50年以上の歴史を刻んだレストランの母屋は消え去った。

彼女の話では、ニューオリンズの住民のなかには、浸水による環境汚染のために、この先5年間も住んでいた土地に戻ることのできない人々もいるという。

被災から4ヶ月近くたち、あれほどの大事件になったハリケーン被害もほとんど報道されることもなくなった。

それでも、カトリーナの傷跡は今も深く残っている。