熊本熊的日常

日常生活についての雑記

不良少年

2012年03月14日 | Weblog
このところ窯の回転が早く、焼きに出すとこれまでに比べて短時間で焼き上がってくる印象がある。今週は壷が4つ本焼きを完了していた。写真の壷はそのなかの2つで、こうして横から見れば特に変哲の無い伊羅保の壷だが、どちらも底に直径いっぱいのヒビが走っている。ヒビは貫通していてこのままでは器としての用を成さないので、昨夜このヒビをエポキシ樹脂で埋め、今日は樹脂が乾燥したところで整形して漆を塗った。漆は飯粒を潰して糊状にしたものに混ぜてペースト状にして細い筆で塗る。漆は乾燥が難しいのだが、とりあえず浴室に置いておく。次の作業は漆が乾いてから。漆を扱った後の片付けにはテレピン油を使うので狭い住処の中はシンナーを吸う不良少年の部屋のような臭いに染まる。漆製品は使うほどに風合いに深みが出て気持ちよいのだが、作る方はたいへんだ。扱うときは使い捨てのメディカルグローブを着用するので、今の時期は良いのだが、夏場は手が自分の汗でふやけてしまう。陶磁器の破損を扱う機材を備えようかどうしようかと今日のようなことがあるたびに思うのだが、ヒビが入るというようなことは滅多にあることではないし、現に手元の漆なども買ったのはずいぶん前のことだ。ただ、道具というのは持っているだけで嬉しいということもある。

そんなわけで、今日は天気が良いというのに終日住処に籠って壷のヒビを埋めたり、壷の高台の裏にヤスリをかけたりして過ごしていた。4の付く日は地蔵通りの縁日で、殊に今日のように天気に恵まれると住処の前の通りがたいへん混雑するので出かけたくないということもある。混雑をやり過ごすのは雑作の無いことなのだが、たとえ短い時間であっても、嫌なものは嫌なのだ。時々ここにも書いているのだが、それほど残りの長い人生ではもはやないので、嫌なことはしない、という自分の中の基本方針はできるだけ守りたいのである。

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