宮部みゆき 著 「おそろし 三島屋変調百物語事始」を読みました。
17歳のおちかは、ある事件を境に、ぴたりと他人に心を閉ざした。
ふさぎ込む日々を、叔父夫婦が江戸で営む袋物屋「三島屋」に身を寄せ、黙々と働くことでやり過ごしている。
ある日、叔父の伊兵衛はおちかに、これから訪ねてくるという客の応対を任せると告げ、出かけてしまう。
客と会ったおちかは、次第にその話に引き込まれていき、いつしか次々に訪れる客のふしぎ話は、おちかの心を溶かし始める。
久しぶりに宮部みゆき作品を読みました。
しかも時代小説で怪奇物・・・。
”一体どんな話や~”と読み始めたら、こられが結構面白い!
心を閉ざしたおちかの前で語られる残酷で、切なく、おそろしい物語・・・。
日本古来の曼珠沙華、武家屋敷、蔵、竹薮、・・・。
しかし、その話はどれも単に怖いのではなく、人間の情が絡んでいて独特の情感を感じさせます。
主人公のおかちとともに、いつしか宮部ワールドに引き込まれました。
この小説の満足度:☆☆☆☆
佐々木譲 著 「ストックホルムの密使」を読みました。
パリに暮らす博打打の不良日本人森四郎はゲシュタポと揉め事をおこし国外追放の身となり、スウェーデンに来た。
そこで駐在武官の大和田から極秘情報をベルンの日本大使館に伝えてほしいと依頼される。
最初はしぶる森だが武官夫人の人柄に触れ承諾、亡命ポーランド人将校のコワルスキとベルンを目指す。
しかし大使館での接触に失敗、紆余曲折の末シベリアを横断し日本を目指すこととなる。
一方、海軍省書記官の山脇は海軍の和平派首脳とともに終戦工作に動いていた。
彼の身辺を追求する憲兵将校秋庭は、憲兵隊の中に米内暗殺の気配を察知する…。
『ベルリン飛行指令』、『エトロフ発緊急電』につづく“第二次世界大戦秘話3部作”のラストの作品です。
前2作が、めちゃくちゃ面白かったので、本作も期待して読みました。
前2作が太平洋戦争開始前の話だったのに対して本作は終戦直前を描いています。
ソビエトの参戦、アメリカによる二度の原爆投下、そして日本の無条件降伏。
その裏舞台ではどんな事が起こっていたのか・・・。
史実を踏まえた見事なストーリーで描かれていきます。
期待通り、読み応え十分な作品でした。
この小説の満足度:☆☆☆☆☆
真夜中の金魚」を読みました。
ツケを払わん奴は盗人や。
ばんばん追い込みかけんかい!
社長が吠えたその日からバーの名ばかりチーフのおれの災難は始まった。
問題の客は明らかにその筋の匂いがし、お目当てのホステスはおれが密かに同棲している女ときた。
そこへ現れた昔なじみが取り返しのつかない出来事に結びつくなんて、あの時は思いもしなかった―。
前回読んだ「すじぼり」がなかなか良かったので2作目として読みました。
「すじぼり」よりも先に書かれた作品のようです。
今回も九州の田舎町でのワルな主人公のお話。
夜の世界に生きる主人公の周りにはクズながらも魅力ある人物が、次々と登場してきます。
パチンコ、競馬、ぼったくりバー、極道者、テキヤの掟、喧嘩に悶着、様々なウラの世間模様が描かれます。
ストーリー展開もスピード感があって全く飽きさせない期待通りの一冊でした。
この小説の満足度:☆☆☆☆
ティーヴ・ハミルトン 著 「解錠師」を読みました。
八歳の時にある出来事から言葉を失ってしまったマイク。
だが彼には才能があった。
絵を描くこと、そしてどんな錠も開くことが出来る才能だ。
孤独な彼は錠前を友に成長する。
やがて高校生となったある日、ひょんなことからプロの金庫破りの弟子となり、芸術的腕前を持つ解錠師になるのだが・・・。
口が利けない少年が天才金庫破りに成長していくというミステリーと云うよりも青春ストーリーです。
主人公マイクルの心の闇とは・・・
ヒロインのアメリアとの恋の行方は・・・
そして金庫破りは成功するのか・・・
それらを通じて主人公が徐々に少年から男になっていくプロセスも面白く読み応え十分の作品でした。
金庫の解錠シーンは緊張感とスリル満点です!
「MWA賞最優秀長篇賞」、「CWA賞スティール・ダガー賞」など世界のミステリー賞を獲得。
「このミステリーがすごい! 2013海外編」、「週刊文春海外ミステリーベストテン海外部門」でともに第1位。
この小説の満足度:☆☆☆☆
プラチナデータ」を読みました。
国民の遺伝子情報から犯人を特定するDNA操作システム。
警察庁特殊解析研究所・神楽龍平が操るこのシステムは、現場の 刑事を驚愕させるほどの正確さを持って次々と犯人を特定していく。
検挙率が飛躍的に上がる中、新たな殺人事件が発生。
殺さ れたのは、そのシステム開発者である天才数学者・蓼科早樹とその兄・耕作で、神楽の友人でもあった。
彼らは、なぜ殺されたの か?
現場に残された毛髪を解析した神楽は、特定された犯人データに打ちのめされることになる。
犯人の名は、『神楽龍平』――。
追う者から追われる者へ。
事件の鍵を握るのは『プラチナデータ』という謎の言葉。そこに隠された陰謀とは。
果たして神楽は警察 の包囲網をかわし、真相に辿り着けるのか。
嵐の二宮君が主演の映画が公開されてTVでさかんに宣伝しているので
”どんだけ面白いんじゃ~!?”と期待して読んでみました。
管理社会をテーマにした近未来SFサスペンスですが・・・
それほど目新しさもなく、ラストに感動もありません。
まあ、想定範囲内と云うやつです。
東野作品にしてはもう一つ物足りない出来でした。
この小説の満足度:☆☆☆
誘拐児」を読みました。
やがて、犯人から脅迫状が届く。
「使い古しの新圓で百萬圓を用意しろ。場所は有樂町カストリ横丁」。
警察は犯人逮捕に全力をあげ、屈強な刑事たちが闇市を張り込むが、誘拐犯はその目前で身代金を奪ったうえ、子どもを連れて逃げてしまった。
あれから15年、手がかりは何もなく、迷宮入りしたかに見えた。
しかし、とある殺人事件をきっかけに、再び児童誘拐事件が動き出した!
昭和20年代から30年代に掛けての誘拐事件を巡る話で読んでいて戦後の香りがプンプンします。
同じ事件を別のアプローチで探る二組の刑事が登場して描かれています。
若干展開に無理があるような気もしましたが、それでも最後まで飽きることなく読めました。
「八月の蝉」の男性版。
第54回江戸川乱歩賞受賞作

苦役列車」を読みました。
劣等感とやり場のない怒りを溜め、埠頭の冷凍倉庫で日雇い仕事を続ける北町貫多、19歳。
将来への希望もなく、厄介な自意識を抱えて生きる日々を、苦役の従事と見立てた貫多の明日は―。
父親が性犯罪者、中卒、家出、人足で日銭を稼ぐ、常に空腹で孤独で、夢も希望もない。
その日暮らしだった作者自身の陰鬱な青春時代を描いた私小説です。
自堕落的な生活の中に存在する孤独感、嫉妬、劣等感といった負の感情ばかりが鬱積されて青春時代の爽快感はゼロ・・・。
成程! 流石は第144回芥川賞受賞作だ!
この小説の満足度:☆☆☆
床下仙人」を読みました。
「家の中に変な男が棲んでるのよ!」
念願のマイホームに入居して早々、妻が訴えた。
そんなバカな。
仕事、仕事でほとんど家にいないおれにあてつけるとは!
そんなある夜、洗面所で歯を磨いている男を見た。
さらに、妻と子がその男と談笑している一家団欒のような光景を!
この作家の初めて読んだ作品「ヤッさん」がなかなか良かったので二作目を読みました。
サラリーマンの悲哀を描いた5編の短編集です。
それぞれに奇想天外なストーリーで、日常に潜む不思議な出来事の数々をたっぷりの皮肉とユーモアで描いています。
しかし、それほどの意外性はありませんでした。
この小説の満足度:☆☆☆
壊れるもの」を読みました。
大手百貨店に勤める西川英雄は、四十歳をすぎて手に入れた郊外の一軒家で家族三人暮らし。
裕福ではないが、大きな不満もない。
しかし、そんなありふれた日常に生じた一点の染みが、突如、絶望の底なし沼となって男を呑み込んでいく。
「やばいとこ住んでるね。“イミチ”って、聞いたことある?」。
精神の迷路に踏みこむ、狂気のサイコホラー。
この作家の初めて読んだ作品「すじぼり」がかなり面白かったので、本作も期待して読み始めました。
「すじぼり」では大学生がひょんな事からヤクザの世界へと引き込まれてゆく様子が描かれていましたが
本作では普通の中年サラリーマンが崩壊してゆく様子がリアルに描かれてゆきます。
百貨店業界や広告代理店、大手家電販売業界の実態もリアルに再現されていて、
ホラー小説と云うよりも社会派小説と云ってもいいくらいです。
それにしても、会社からも身内からもジワジワと裏切られ、陥れられていく主人公の姿がかなり息苦して、マジで怖い・・・。
一気に読了でした。
この小説の満足度:☆☆☆☆
矢月 秀作 著 「もぐら 讐」を読みました。
警部補の惨殺事件が発生。
警視庁は特別捜査本部を設置し、組対の垣崎、楢山らが捜査に乗り出す。
一方刑事局長の瀬田は、殺人罪で服役中の影野竜司に極秘の任務を依頼する。
やがて動き出す謎の教団アレース―
新宿、そして竜司がいる刑務所を爆破し、警視総監に聖戦が布告される…。
もぐらシリーズの2作目です。
1作目の事件により服役中の影野が又しても事件に巻き込まれる・・・。
どこにいても事件に巻き込まれる奴だな~!!
この辺が”日本版ダイ・ハード”たる由縁です!!
今回、立ち向かうのはテロ教団のアレース
その教団の行動の陰にはさらなる目的があった・・・
本作もハードボイルド全快で読み応えがありました。
この小説の満足度:☆☆☆☆