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三尾沿岸の濁水問題裁判に判決 〈2015年4月1日〉

2015年04月01日 08時30分00秒 | 記事

判決言い渡し後、記者会見に応じる村尾組合長(左)と弁護団


 アワビなどの漁獲量が激減したのは、日高川上流の椿山ダムから流れ出た濁水が三尾沿岸の磯焼けを起こしたことが原因として、美浜町三尾漁協(村尾敏一組合長)と組合員58人がダムを管理する県を相手に約5億7100万円の損害賠償等を求めた裁判の判決で、和歌山地裁は30日、訴えを退けた。平成23年2月の提訴から4年余。訴訟の前哨となる平成16年6月の公害紛争調停申立てから数えれば10年余にも及ぶ長きにわたる漁民らの請求は、かなわなかった。

 橋本眞一裁判長は冒頭、漁協らが求めた三尾周辺海域の岩礁に堆積している濁質撤去などの請求を却下、水揚げの減少による被害と豊かな海を汚されたことによる慰謝料等支払請求は棄却との主文を述べ、事実や理由については触れずに閉廷。
 判決後、村尾組合長と由良登信代理人弁護士らは、弁護士会館で記者会見を行い、判決に対する見解を語った。
 村尾組合長(81)は「意外な不当判決にびっくり仰天している。主文だけを聞く範囲では、不当で承服しかねる」と不服を述べ「何を今更そんなことを。人をバカにするものええかげんにせえ、という気持ち。海で生活する私たちの思いと、検証を重ねた客観的事実を織り交ぜてこれまで訴えてきて、(相手方は)その時々では分かったような顔をしていたのに」と憤りをみせた。
 由良弁護士は「判決文をまだ十分には読み込んでいない」とした上で、「この判決は逃げていると思えます。こちらの主張を認めるところは散見されるが、それだけでは認められぬとの見解が多々。(判決文にある)『高度の蓋然性があると立証されたとはいえず、因果関係は認められない』との言い回しで逃げている」とし「県やダム行政に影響があるかもしれないが、勇気を持って判断してほしかった。逃げの姿勢では司法はダメになる」と突いた。
 濁質撤去請求につき「濁質は海水の流れ等により常に流動しており・・・対象が特定されているということはできない」との理由で却下されたことには「特定は足りていると思うが、そんなふうに請求を切ってきたのだ。元の海に回復して欲しいというのがこちら側の第一の願いだったのに、そういう切り方自体が不当判決だ」と主張。「判決は、県の敗訴を出さぬよう汲々としていると思う」と加えた。
 三尾漁港の漁獲量は、椿山ダムが完成した翌年の平成元年をピークに年々減少。水揚げ高は1億5000万円から500万円と、30分の一まで落ち込んだ。今回の裁判は、その原因が、椿山ダムから流出した濁水が三尾沿岸まで流入し、堆積した濁物が貝のエサとなる海草を枯らしたことにあるとして、漁協は組合員58人とともに、損害賠償等を求め平成23年2月に提訴したもの。専門家による実態調査を繰り返し、計20回に及ぶ公判を経て、昨年11月14日に結審していた。
 今後の方向について村尾組合長は「判決文を見ながら組合員らと相談して検討する」としている。


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