goo blog サービス終了のお知らせ 

僕の前世はたぶんオランダ人。

おもしろきこともなき世をおもしろく

妖怪(司馬遼太郎)

2024年09月30日 | よむ

司馬遼太郎長編史上こんなに短時間で読了したのは初めてかも。
と思うほどあっという間の2日間で読み終えた。
会話主体で虚実織り混ざった
誰が主役とも言い難い
応仁の乱の前日譚。
略歴によるとこの仕事が終わる直前から
坂の上の雲に取り掛かったようだが、
徹底したリアリズムと
現代日本の根幹ともいえる明治の思想を
時代と共に徹底して掘り下げた
坂の上の雲と同じ時期に書いたとは
とても思えないほどに
作風が異なる幻影小説。
司馬遼太郎版「邯鄲の夢」といってもいい。

三日間の幸福(三秋縋)

2024年09月22日 | よむ
ユーチューブショートでの
お勧め動画から手に取ってみたが
いかにもライトノベルな
ご都合主義と
登場人物の少なさ、
中二病のような一人称と
掘り下げの浅さが目立って
なんとも薄っぺらく合わない作風だった。
ユーチューブの動画も
お勧め対象をよく理解してからでないと
なんでも飛びつくのはよくないのかな、
という意味では勉強になった。
とどのつまり中学生向けのファンタジーだったわけね。

残像に口紅を(筒井康隆)

2024年09月16日 | よむ

初めての筒井康隆。
1989年の作品ながら
2017年の読書芸人ブームにより
カズレーザーが紹介したことで
話題となり
さらには2021年にもネットで話題となって
なんどもなんども売れているのだそう。
ちなみに幽遊白書にでてくる海藤の能力
「禁句(タブー)」の元ネタでもあり
これは1993年の話。
と、その実験的手法から話題に事欠かない一冊。
やっていることといえば、
使える文字を制限しながら
空想随筆を進めるというもので
内容はともかく
こんなことができるのか!
という実験設定の驚きに満ちている。
とはいえその仕掛けが全てと言っても過言ではなく
随筆の内容自体はなんともいえない仕上がり。
おりしも「僕は明日、昨日の君とデートする」
をみたばかりであり
逆から読み進めて
言葉の増加とともに
ビッグバンのように爆増する表現を楽しむのも面白い。

役員室午後三時(城山三郎)

2024年09月08日 | よむ

近所の美容師さん(SF好き)からの推薦図書。
他の推薦は1984、アンドロイドは羊の夢をといった
ゴリゴリの古典SFなのに
なぜここで元祖経済小説推しなのだ...。
結論から言ってこれはもう城山三郎の代表作だわ!
圧倒的に読みやすく
序盤からページをめくる手が止まらない。
登場人物が少なく
展開も大きく変わらないことから
短編小説のような読み応えではあるが
うわぁ、こういう経営者いらっしゃるなぁと
名前や顔が浮かんでは消えてゆく。
登場人物が若手も含めて戦争経験者というところに
時の虚を感じるが
少し遡るだけで
戦争は当たり前にいて
そう遠くない延長線に生きていることに驚く。
幸か不幸か
社長が何回も変わるような構造の会社に勤めているわけではないが
やはり社長になるということは
勤め人の1つの夢なのだろうか。
最近ではその夢をかなえるために
起業という手段をとる人の方が
多いようにも感じるが。
会社は運命共同体だと
矢吹は語っているが
ずいぶん古い考え方のようにも感じられ
企業の形や、株主・従業員との関係も
大きく変わっていることを
当たり前のようだが
改めて感じられた。

三体(劉慈欣)

2024年08月24日 | よむ

長かった・・・。
2月に第一部が発行されて
4月に第二部x2冊
6月で完結第三部x2冊の順番だったが
計5冊をようやく読了。
その間、石神井の梁山泊やら
神田のジンコックやらに本を忘れてくるという
2回にわたる遭難の憂き目にもあったりしつつ。
とにかく長かった。
いや、読了に要した時間ではなく
物語中で経過した壮大な時間が。
今までの読書の最長記録は
中国神話の時代から南宋の滅亡まで4000千年。
小説でいくとクラウドアトラス
奴隷貿易時代から惑星移住時代までの
約500年を読んだが
この三体に至っては
1960年代の文化大革命から
190万年後の新世紀まで途方もない時間にお付き合いすることとなる。
第一部こそ
テッド・チャンの神話のような世界観で進むが
第二部以降どんどんリアルな物質的な話になって
宇宙はどこまで広がっとんねん。
な流れになり
第三部に至ってはもう広がりすぎてお手上げながら
そんな話あったっけ?
と言いたくなるような数百年前の伏線を回収しだして
190万年すすんで
人類の発芽のような新世紀が始まり
途方もない可能性を残して最後のページを閉じる。
物理的な理屈はさっぱり分からないことだらけ。
万が一、
C・ノーラン監督が実写化してくれるようなことがあれば
その時は是非見たいと思う。
しかし思い起こせば文化大革命のトラウマから
人類滅亡計画のボタンを押そうだなんて
あまりにも稚拙な動機過ぎるが
それ以上に毛沢東の責任がでかすぎるだろ笑。
オバマ大統領
マークザッカーバーグ
ジェームズキャメロンといった
当時の文化人がこぞって絶賛した
話題のSF超大作。
人類と宇宙の無限の可能性の中の
ほんの一つを示唆しただけでこの厚み。
という本。