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共産教育論(連載第26回)

2018-12-18 | 〆共産教育論

Ⅳ 基本七科各論

(9)障碍者包摂教育
 これまでにも随所で言及してきたように、基礎教育課程は障碍者と非障碍者を分離しない包摂教育を実施するため、前回まで見てきた基本七科は、基本的に障碍生徒もカバーする共通科目である。とはいえ、障碍生徒にはその障碍の内容や程度に応じて、基本七科を部分免除したり、療育目的で履修内容に修正を加える必要性は否めない。
 その点、知的な障碍の有無及び程度が大きな目安となる。知的な障碍がなく、視聴覚を含めた身体面の障碍にとどまる生徒は、基本七科は内容を修正する必要なく、そのまま履修することができる。ただし、身体障碍の内容に合わせて、教材面では補助ツール―例えば点字表記や音声化、手話通訳動画等―の提供を要する。
 また車椅子常用等の要介助生徒であっても、原則通信制の基礎教育課程の履修上は問題ないが、一部の通学科目では介助サービスを提供する。ただし、健康体育科目については要介助者専用コースを提供するが、身体の状態によりそれも困難な場合は免除する。
 ちなみに、聴覚障害者にとって現状では最も有力な意思疎通手段となる手話は、聴覚障害生徒に対しては、言語表現科目の付随分野として必修化し、かつ非障碍生徒も任意で履修することができるようにする。携帯端末を利用する筆談ツールが高度化し、広く普及した場合、手話が必要なくなる可能性もあるので、手話必修化は暫定的な措置である。
 一方、知的障碍生徒に対しては、基本七科全体の修正または部分免除が必要となる。その点、基本七科の中でも最も基本的な言語表現科目と数的思考科目は、知的障碍生徒でも免除されない最低限度の必修科目となる。もっとも、その内容は知的障碍の原因や程度に応じて徹底的に個別化しなければないので、非障碍者向けの教材とは相当に異なるものとなる。 
 科学基礎科目や歴史社会科目、社会道徳科目といった抽象度の高い科目については、重度の知的障碍生徒に対しては全部免除せざるを得ないであろう。生活技能科目や健康体育科目のような実技系科目については、障碍の程度に応じて修正された内容が提供される。
 こうした包摂教育では全教員が障碍者教育の基本的な知識・技能を有することが前提的な義務となるから、普通教員免許と特別支援教員免許の区別は存在しない。ただし、最も教育困難な知的障碍者教育は専門性が高いため、相応の専門知識と技能を有し、特別な免許を持つ療育教員が充てられる。


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