ザ・コミュニスト

連載論文&時評ブログ 

共産教育論(連載第25回)

2018-12-17 | 〆共産教育論

Ⅳ 基本七科各論

(8)社会道徳
 社会道徳科目は、共産主義社会の成員としての基本的な道徳について学ぶ科目である。当科目は付随的な特別科目ではなく、基礎教育課程における基本七科の一つとして位置づけられる科目である。
 共産主義的道徳教育の最大重点は、反差別教育である。貨幣経済によらない共産主義社会は全成員の無償の社会的協力を通じて運営されていく社会であるから、互いに異質な者同士が排斥し合うのでなく、協力し合う社会慣習の涵養が不可欠だからである。
 そこで、「人間をその先天的または後天的に獲得された特徴・属性のゆえに劣等視してはならない」という道徳規範を基礎教育課程の全体を通じ、その発達度に応じて徹底的に体得させていかなければならない。このことはまた、いじめの防止にも効果的と考えられる。なぜなら、対象生徒の自殺を招くような深刻ないじめとは子どもの領分における差別行為にほかならないからである。
 反差別教育の方法論として、生徒に事物を弁別し、差別化する思考法が未発達な基礎教育課程の初等段階では、通学による交流体験を中心として実施する。この段階では、主として障碍生徒と非障碍生徒との交流を中心に、互いの共生をごく自然なこととして体験させることが目指される。
 中等段階に進むと、少数民族などより抽象度の高い被差別当事者との交流体験を取り入れ、ゲスト当事者の話を傾聴し、質疑応答するといった教科学習的な方法が採り入れられる。同時に、通信でも、差別の意味やその要因を考察する教材が提供される。
 終盤段階では、反差別教育の総まとめとして、人種差別や性差別といった差別をめぐる論争的なテーマについて、歴史的な考察を踏まえて、反差別的価値観を各自が確立することを手助けする通信教材が提供される。
 社会道徳科目の二本目の柱は、高度情報社会で不可欠となっている情報倫理である。情報倫理では、生活技能科目で学ぶ情報技能を前提に、情報ネットワークを正しい目的で利用するための倫理について学ぶ。インターネットを通じた差別言説の流布やいじめといった現象も惹起されているように、反差別教育と情報倫理教育は内的関連性を有する。
 このように当科目は独立した基本科目として位置づけられることから、専任の教員が充てられる。同時に、交流体験も多く導入されることから、外部ゲストを招聘する機会も多い点が当科目の特質となる。


コメント    この記事についてブログを書く
« 犯則と処遇(連載第14回) | トップ | 共産教育論(連載第26回) »

コメントを投稿