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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第37回)

2024-07-01 | 世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

五 汎ヨーロッパ‐シベリア域圏

(6)イタリア‐サンマリノ

(ア)成立経緯
主権国家イタリアとイタリア半島内陸の小国サン・マリノが合併して再編される複合領域圏。ただし、イタリア離島部のシチリアとサルデーニャは単立の領域圏として分立し、次項の環西地中海合同領域圏に加入する。またスイス領内の飛地カンピョーネ・ディターリアも前出スイシュタイン領域圏に編入される。 

(イ)社会経済状況
資本主義時代の工業化の成果が持続可能的計画経済に継承される。深刻だったイタリア半島の南北間格差は、貨幣経済を廃した共産主義計画経済の導入によって解消される。もっとも、南部は依然として農業が主軸であり、産業種別上の南北相違は残される。資本主義時代のイタリア経済の影の柱であった地下経済は貨幣経済の廃止に伴い消滅するが、もう一つの宿痾である汚職問題については、反汚職オンブズマンの設置により、防止と摘発体制が強化される。

(ウ)政治制度
複合領域圏のため、主権国家時代のイタリアの州を継承する地方圏と、イタリアの特別州にサン・マリノを加えた複数の準領域圏から混成される。準領域圏は特別州以上に高度な自治権を持つ。全土民衆会議は、各地方圏及び準領域圏から人口に比例した定数抽選された代議員で構成される。加えて、準領域圏には各一名ずつ追加議席が与えられる。

(エ)特記
19世紀のイタリア統一以来、イタリアの一部であったシチリアとサルデーニャの両離島の分離をめぐっては議論があり得る。特にサルデーニャはまさにイタリア統一運動の中心であったことから、島内でも議論は分かれるであろうが、両島ともイタリア本土とは異なる歴史文化と言語を持つ独自の地域であることから、世界共同体の創設に当たり、分立を果たす。

☆別の可能性
4世紀の建国と伝わり、独立気風の強いサン・マリノはイタリアに統合されず、世界共同体直轄自治圏の道を選択する可能性もある。

 

(7)環西地中海合同

(ア)成立経緯
西地中海に点在する離島領域圏であるマルタ、シチリア、サルデーニャ、コルシカに、加え、沿岸小国モナコが合同して成立する合同領域圏。このうちシチリア、サルデーニャは上記のとおりイタリアから、コルシカはフランスから分立する。イタリア‐サンマリノも招聘領域圏として参加する。

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の5圏である。いずれも統合領域圏である。

○マルタ
主権国家マルタを継承する領域圏。

○シチリア
イタリアのシチリア自治州から分立する領域圏。

○サルデーニャ
イタリアのサルデーニャ自治州から分立する領域圏。

○コルシカ
フランスのコルシカ地域圏(コルス地方公共団体)から分立する領域圏。

モナコ
主権国家モナコを継承する領域圏。大公制(準君主制)は廃止され、大公は称号のみの存在となる。

(ウ)社会経済状況
イタリア時代から多角的産業化が進んだサルデーニャを主軸に、農業はシチリアを軸とする共通計画経済計画が施行される。また、モナコを軸に環境的に持続可能な観光計画も計画経済に取り込まれる。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、マルタのバレッタに置かれる。5圏で言語が異なるため、合同の第一公用語はエスペラント語だが、域内で通じやすいイタリア語に加え、フランス語も準公用語に指定される。

(オ)特記
旧版では「環地中海合同領域圏」としていたが、当合同の地理的範囲は西地中海域に限局されるため、掲記の名称とした。

☆別の可能性
そもそも当合同が形成されず、マルタとモナコ以外は現行どおり、イタリアまたはフランスに留まる可能性もある。その場合、マルタとモナコは単立の領域圏か世界共同体直轄自治圏のいずれかとなる。

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