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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第39回)

2024-07-09 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

五 汎ヨーロッパ‐シベリア域圏

(9)フランス

(ア)成立経緯
主権国家時フランスを継承する統合領域圏。ただし、離島のコルシカは分立するほか、帝国主義時代の名残である海外領土もすべて分立するか、周辺領域圏と合併する。先述したように、フランス大統領が共同大公の一人を務めてきたスペイン国境の小国アンドラはスペインから分立するカタルーニャと統合されてカタランドラとなり、スペイン飛地領だった町リヴィアもフランスに編入される。

(イ)社会経済状況
資本主義時代に達成された高水準の多角的な工業化を継承するが、農業分野でも汎ヨーロッパ‐シベリア域圏内ではロシアに次ぐ生産力を擁する。資本主義時代に依存率がトップクラスだった原子力発電は、世界共同体の原発廃止政策に沿って、廃炉作業が長期進行していく。

(ウ)政治制度
中央集権制の強かった主権国家時代からの伝統を引き継ぎ、統合型領域圏であるが、民衆会議制度の下、広域地方行政体である地方圏の自治権が強化され、地方自治の拡大が実現する。スペインから編入のリヴィアは特別地方圏として、最も高度な自治権が保障される。

(エ)特記
旧版では、フランスに接する小国モナコをフランスに統合していたが、モナコの独自性を考慮し、単立の領域圏としたうえ、環西地中海合同領域圏に包摂した。

☆別の可能性
可能性は高くないが、分権化を一層進めて連合領域圏となる可能性がある。また、コルシカが分立せず、フランスに留まる可能性もある。

 

(10)ブリティッシュ‐チャンネル諸島合同

(ア)成立経緯
グレートブリテン・北アイルランド連合王国を構成した邦のうちイングランド、スコットランド、ウェールズに、主権国家アイルランドが加わって成立する合同領域圏。英王室属領のマン島とチャンネル諸島、連合王国構成主体の北アイルランドは合同直轄自治域となる。旧連合王国時代に保有していた海外領土はすべて分立し、もしくは他領域圏や世界共同体直轄圏に編入され、消滅する。なお、英国及びその旧植民地諸国を中心とする緩やかな国家連合であった英連邦も世界共同体の設立を機に解体される。

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の4圏である。いずれも統合領域圏である。

アイルランド
主権国家アイルランドを継承する領域圏。

スコットランド
スコットランドを継承する領域圏

ウェールズ
ウェールズを継承する領域圏。

イングランド
イングランドを継承する領域圏。

(ウ)社会経済状況
旧連合王国の産業基盤をベースに、アイルランドの農業を加味した共通経済政策が施行される。連合王国の貴族制度は世襲か一代限りかを問わず全廃され、階級社会は消滅する。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏及び合同直轄自治域の民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、エディンバラに置かれる。旧連合王国時代の君主制は廃止されるが、英王室は革命後も全廃されず、称号のみの存在として残される。居城は連合民衆会議の所有管理下に置かれ、王や王族も一般公民として職に就く。カトリックとプロテスタントの宗教紛争が根強い北アイルランドには合同の紛争調停機関として北アイルランド高等評議会が常設される。

(オ)特記
旧版では、ケルト系のアイルランド、北アイルランド、スコットランドでケルティック合同領域圏を想定し、イングランドとウェールズ及びマンをサウスブリテン領域圏、チャンネル諸島を世界共同体直轄自治圏としたが、補訂版では連合王国の四つの構成主体をそれぞれ分立させたうえ、アイルランドを含むブリティッシュ諸島とチャンネル諸島を包摂する合同に整理した。

☆別の可能性
グレートブリテン・北アイルランド連合王国がそのままの構成で連合領域圏に移行する可能性もある。また、君主制廃止に伴い、英王室属領のマン島とチャンネル諸島が世界共同体直轄自治圏を選択する可能性もある。

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