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共産法の体系(連載補遺)

2020-02-23 | 〆共産法の体系[新訂版]

第2章 民衆会議憲章

(6)憲章の解釈と適用
 
民衆会議憲章は一つの法規として司法的執行を予定した最高法規である。この点でも、国家憲法と重なる部分はあるが、国憲にあっては、憲法裁判所のような特別裁判制度を持つにせよ、司法裁判所による具体的な事件ごとの適用によるにせよ、憲法の司法的執行が消極的になりがちであることとは相違する。
 民衆会議憲章の司法的執行体制は、まず各領域圏のレベルを基礎に構築される。すなわち、民衆会議における常任委員会の一つである憲章委員会が憲章をめぐる裁判機関としても機能する。この点では、憲法訴訟専門の憲法裁判所と類似するが、通常司法部も具体的な訴訟中で憲章を適用することが可能である。
 憲章委員会はまた、民衆会議代議員の提訴により、公的諸機関の活動が憲章に違反しているか否かを審理し、判決することができるというように、日常的な憲章監察機関としての役割も果たす。
 市民が憲章違反を訴える場合は、まずこれら領域圏レベルの民衆会議に対して提訴することが前提となるが、それでも所期の解決が得られない場合は、世共レベルの司法機関に提訴することができる。
 そうした世共レベルの司法機関としては、違憲審査機関としての憲章理事会と、人権救済に特化した人権査察院の二系列の主要機関がある。
 憲章理事会は、領域圏の法令が世共憲章に違反しているかどうかについて審理・判決する終審的な権限を持つ。他方、人権査察院は個人や集団に対する具体的な人権侵害行為が世共憲章に違反するかどうかを審理・判決する終身的な権限を持つ。
 いずれの場合も、領域圏内部での司法的解決手段がすべて尽くされていることが提訴の要件となるため、世共レベルの司法機関への提訴は民衆会議憲章の司法的執行体制としては終局的な最後の砦という位置づけとなる。


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