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共産教育論(連載第20回)

2018-11-28 | 〆共産教育論

Ⅳ 基本七科各論

(3)数的思考
 数的思考科目は、数という概念を理解し、その基礎と応用を学ぶ科目である。当科目も、言語表現科目と並び、基礎教育課程の基幹的科目であるので、基礎教育課程全13ステップで、発展的に割り振られる。
 当科目は、伝統的な学校教育上の教科で言えば数学(算数)に該当するが、内容上は相当な相違点がある。すなわち、伝統的な数学科目が数学上の計算式や公式を暗記し、正解値を求める「算術」に終始しがちなのに対し、数的思考科目は、まず数学の基層にある様々な「思考」そのものの理解からスタートする。
 その点では、数学そのものというより、いわゆる「数学の哲学」に近い内容を持つ。実際、数学とは数字という世界共通文字(ないし図形)を用いた一つの論理的な表現行為である。その意味で、数学は言語表現の一種であると同時に、科学的思考法の有力な手段ともなる。まさに数的「思考」であり、それは言語表現科目と科学基礎科目とをつなぐ科目とも言えるものである。
 もちろん、基礎教育の初等段階では加算・減算・乗算・除算の基礎的な四則演算法の習得も目指されるが、最終的な目標はそうした計算式を覚えて正解を出すことにあるのではなく、これらの演算がどのような意味を持っているのかの理解に到達することを目指す。
 従って、教材についても、機械的な計算ドリルのようなものではなく、むしろアニメーションなどを活用したビジュアルな通信教材を用いて、数の概念を視覚化したり、計算問題に関しても、数式の羅列ではなく、視覚化された図式を使用して考察させるなどの工夫がなされるだろう。―視覚障碍者向けには、点字版の提供などの配慮もされる。
 基礎教育課程のステップを進むにつれ、次第にいわゆる「高等数学」に属するより抽象性の高い微分積分・幾何代数・関数といった分野に進むが、こうした「高等数学」段階になると、従来の数学教育では数学嫌いの脱落者を出しがちであった。
 その点、数的思考科目で取り扱われる「高等数学」は、抽象的で複雑な計算問題を解くのではなく、「初等数学」段階と同様に、それぞれの数式命題や定理の基礎にある「思考」そのものを理解することが目指される。
 それと同時に、それら「高等数学」の実社会における応用例について学習し、自身でも簡単な活用が可能になることが目指される。その点では、「高等数学」というよりは、「応用数学」と言える内容である。それに関連して、基礎教育課程終盤では、統計学の基礎も重視される。
 当科目の方法論としては、上述したようにビジュアル教材が広く活用されるが、基礎教育課程のステップを進むにつれ、コンピューターを使った計算法も学習する反面、暗算のような特殊技能は除外される。現代の市民的素養として必要な数的思考としては、計算機による演算のほうが必要性が高いからである。
 また、基礎教育課程全般について妥当することであるが、与えられた問題の正解を導くのではなく、自ら問題を立て、探求するという方法が全ステップで貫かれる点は、当科目についても同様である。


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